「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

76話 来てくれたのは

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「クトー様!」

 僕は後ろからの声にチラリと目を向けると、そこには筋骨隆々の大きな女騎士が僕に向かって迫っている。

「誰!?」

 思わず心の声が出てしまった。
 あんな大柄な女性は見た事がないし、出会ったら数年は忘れる事はないように思う。
 赤みがかった茶髪を短髪にしていて、腰には双剣をいている。
 白金の鎧はかなり美しいけれど、やはり見た記憶はない。

「わたくしはこちらです!」

 そう僕を呼ぶ声に目を少しずらすと、そこには手を振ってこちらに走ってくるフェリスがいた。

「フェリス!?」
「お待たせしました! 近衛騎士団長を説得して何とか連れてきました!」
「ええ!? 近衛騎士団長ってあの!?」

 確かロード・バルバロイと唯一互角に戦えるっていう事を言われていたあの。
 それが僕の前にいる女騎士だろうか?

 彼女たちは僕の側に来ると、前に立つ敵を睨みつけて、口を開く。

「あれがわたしが倒すべき相手か」

 その声は思った以上に高い声で、女性らしいものだった。
 少し所かかなり驚いてしまった。
 こう……バーバリアンみたいな声を想像していたからだ。

「……は、はい。〈選ばれし者ギフターズ〉のナンバー持ちの人達です」
「ほう……ではロードはわたしがもらおうか。一度は戦ってみたいと思っていた」

 ニヤリと笑う彼女はまるで女騎士ではなく女戦士という言葉がぴったりだと思う。
 決して口には出さないけれど……。

 そんなことを話す騎士団長をフェリスが止めた。

「ダメです。オリヴィア。ロードはクトー様が戦ってくださいます。わたくし達は残りの者達の相手です」
「フェリス様。それは……」
「大丈夫です。ロードにはクトー様が勝ってくださいますよね?」

 フェリスはそう言って僕に笑顔を向けてくる。
 その信頼感は僕をやる気にさせてくれるには十分だった。

「うん。詳しい話は後で教えてくれるのかな?」
「詳しい話ですか?」
「うん。何をしに戻っていたのか……とか」
「それでしたら簡単です。今お話……と思いましたけど、目の前の敵に集中しなければなりませんかね」
「そうだね。後でゆっくり教えてよ」
「はい。その時にはクトー様のお部屋でゆっくりとするといたしましょう」
「僕の部屋は女子が入って来たらダメだよ」
「サナの部屋には入っているのにですか?」
「……どこでそれを?」
「あら。やっぱりだったのですか。カマをかけてみただけなんですが」
「……今は目の前の人達と戦うことに集中しようか」
「はい」

 こうやって僕たちが話している間も、奴らはじっと待っているだけで手を出しては来なかった。

 彼らの方を見ると、ロードが話しかけてくる。

「もういいのか?」
「待ってくれてたの?」
「いや? 俺達は俺達でやることがあるだけだ。それでは行くぞ」

 ロードの口からその言葉が出ると同時に、奴は僕に向かって剣を振りかぶって迫る。

「はぁ!」
「ッ!」

 僕は奴の攻撃を間一髪でかわしながら後ろに下がる。

「残りは任せてもいい?」
「勿論ですわ!」
「フェリス様が言うので仕方ありません。他の雑魚で我慢いたしましょう」

 そう言って2人は残り5人の方に向かって行く。

 僕は目の端でそれを見送り、目の前の相手に集中した。

「【タコ化:クラーケン】」

 いつもの両手を触手にして、奴の攻撃を見切ろうと努める。
 隙を見つけ反撃をしたい所だけれど、彼の攻撃は鋭い。
 油断したら簡単に切り刻まれてしまう。

「どうした! 逃げるだけか!」
「……」

 僕はゆっくりと下がりながら彼の行動を見続ける。

「【保護色カラーコート】」

 両手を透明にして、人の部分を見せたままにする。
 彼のスキルは攻撃に特化したもの、であればこちらの攻撃を防ぐのは難しいのではないかと思う。

「何……?」

 現に、彼は僕の触手が4本消えた事を警戒して足を止める。
 でも、それがこちらの思惑通りだ。

 触手を彼の足に伸ばす。
 後は掴んで締め上げれば……。

「そこか!」

 シュパッ!

「嘘!?」

 透明にして彼に近付いていた触手が4本とも切り飛ばされてしまう。
 見えないはずなのにどうして……。

 考えようとしたけれど、彼は近付いて来てその暇を与えてくれない。

「そらそら! 貴様! 俺がその程度も見抜けぬと思ったか!」
「攻撃スキルを伸ばし続けたんじゃないの!?」
「ぬはは! 当然伸ばしておる! だが、俺はSランク冒険者だぞ!? 防御も、回避も、索敵も当然の様に修練を積んでおるわ!」

 そう言いつつも彼の剣筋はドンドンと鋭くなり、僕の傷も増えて行く。

 かと言ってここで体を大きくする事は出来ない。
 簡単に切られてしまうだけで、的を大きくするだけだからだ。

「【自己再生オートリペア】」
「何という速さ……。切ったと思ったらこれか……」
「こっちにも攻撃させて欲しいんだよね。【墨吐きブラックアウト】」

 ドバッ!

「ッ!?」

 彼の目を塞ぐようにして墨を大量に吐く。
 少しの時間と作れればそれだけでこちらから攻撃出来るように……。

「【破壊の衝撃よデストロイ・ショック】」

 彼がスキルを使った途端に、僕の墨が全て消え去ってしまう。

 今……一体何が起きたんだ……?
 信じられずに目を疑うと、彼の周囲が壊れて行くのが分かる。

 彼の周囲に浮かぶ物や、地面さえ少し壊れていた。
 もしかして、スキルを衝撃として出し、それで僕の墨を破壊・・したのだろうか?

 それは……でも、止まる訳にはいかない。
 彼はスキルを使いながらも迫ってくるのだ。

「【水流切断アクアセーバー】」
「【破壊の衝撃よデストロイ・ショック】」
「これも!?」

 僕のスキルは簡単に消され、彼はニヤリとして近付いて来る。
 このままでは不味い。
 何か違ったスキルを……。

「【闇の牢獄ダークプリズン】!」

 僕と彼の前に漆黒の空間を作り、真っすぐに来ることが出来ないようにする。

「【破壊の衝撃よデストロイ・ショック】!」

 彼はまたしてもスキルを発動させるけれど、【闇の牢獄ダークプリズン】を消すことは出来なかった。
 彼はその場で止まり、少し回り込むようにして僕に追いすがってくる。

 なるほど。
 彼のスキル……それも、さっき使ったスキルは物体がないと意味がないらしい。
 墨とか、水とか。
 そう言った物を破壊し、威力を消しているらしい。

 なので物質を伴わない攻撃。
 それを仕掛けて行けば奴からの攻撃はない。

「でも……そういう攻撃ってもってないんだよね……」

 今までは使いなれたスキルを優先的に使って来ていた。
 一応、他に使えそうなスキルはあるらしいけれど、使った事がない。

 そんなスキルを使って、ロードに効くのか?
 という疑問は残り続ける。
 うまくいかなかった時の隙を突かれて攻撃を食らわないかを不安に思う。

「逃げるだけでは俺には勝てんぞ!」
「だよねぇ」

 僕はそう彼に返しつつも、彼の進路上に【闇の牢獄ダークプリズン】を置きながらどうするべきかを考える。

 このままではどうしようもないことに気が付き、僕はやはりあれがいいかと思いつく。

「【闇の牢獄ダークプリズン】【次元の門ディメンジョンゲート】」

 彼の進路上に再び棺の空間を出すのだ。
 当然それを避ける。

「さっきから何度同じことをするのだ!」
「今回は違うよ」

 僕は直ぐ傍に出したゲートに触手を入れ、【闇の牢獄ダークプリズン】のすぐ後ろ、彼がかわした横合いから触手を伸ばして奴の左腕を掴んだ。

「もらった」
「何!?」

 グシャ!

 彼の腕は簡単にへし折れる。
 確かに防御や回避も修練しているとは言え、次元を超えられる僕の敵ではない。

「降伏してくれると楽でいいんだけれど?」
「小僧が……この程度で俺を……俺を殺せると思うなよ! 【破壊者デストロイヤー】」

 僕の触手をスキルで破壊する。
 彼は残った右腕を懐に入れ、何か小さな小瓶を取り出す。

「使いたくはなかったが……やらざるを得ん」

 そう言って、彼は小瓶を飲み干した。
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