「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

78話 ハメる

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 僕はロードと距離をとって彼を見つめた。

 彼は肩で息をして、かなり疲れている様だ。
 仮にもSランク冒険者がこの程度の攻撃で疲れるだろうか?
 そう考えると、今の状態が彼にとっては辛い事なのではないだろうかと思う。

 そもそも、スキルを今の所3つ使っているけれど、幾ら薬といえどそんな事が出来るのがおかしい。
 何の代償も無しに使えるなどあるはずがないのだ。

「であれば、僕がやることは時間稼ぎに徹する事か」

 僕はそう判断して、彼に向かってスキルを放つ。
 彼がフェリスや騎士団長の元にいかない様にする為だ。

「【水流切断アクアセーバー】」
「何!?」

 奴は僕の攻撃を食らって、地面に倒れ込んだ。
 今はスキルを使っていなかったらしい。
 左目は緑色に光っていなかったからだ。

「まだまだ行くよ【水流切断アクアセーバー】【水流切断アクアセーバー】【水流切断アクアセーバー】」

 僕は連続で遠距離から攻撃を放つ。

 彼の強い点。
 それは近距離での剣技と未来視……恐らくスキルだろう。
 それを使ったこちらの行動の先読み、そして、こちらの攻撃をスキルでほとんど撃ち落としてくること。
 更に、糸操作で体の強化をして、更に鎧までまとっているので移動速度は桁違いだ。

 うん。化け物ではないだろうか?
 こんな相手にどうやって勝てばいいのか。
 正直分からないレベルで強い。

「【水流切断アクアセーバー】」
「遠くから舐め追って! 今にチリにしてやる!」

 ロードはそう怒りを露わにして、僕に向かって突っ込んで来る。

「【水流切断アクアセーバー】」
「既に見えておるわ!」

 彼の左目が再び緑色に輝き、僕の攻撃を全て紙一重でかわして来る。
 あの目の時は僕のスキルが効かないと見ていい。
 でも、そんな相手だからこそ、効くかもしれない事があるのだ。

「【墨吐きブラックアウト】!」
「これは!?」

 ドバッッッ!!!

 彼に向かって奴の体全体を覆うように、一切の逃げ場を与えないようにしてスキルを使った。
 未来が見える。
 けれど、かわす場所がなければ見えた所で意味はない。

「【破壊の衝撃よデストロイ・ショック】!」

 しかし、僕のスキルは簡単に消え去ってしまう。
 先ほども同じようになっていたのだから当然かも知れない。

 これは最初から想定していた事だったので、僕は少しでも距離を取るために後ろに向かって走り出す。
 ただ、相手の方が体を強化しているのでいずれ追いつかれるだろう。
 けれど、それは問題ない。

「貴様! 俺と勝負をつけに来たのではないのか!」
「もちろんそのつもりだよ。でも、僕はゆっくり貴方と戦うと決めただけ、別にいいでしょ?」
「貴様……!」

 彼は顔を真っ赤にさせて僕を睨みつけて追いかけてくる。
 やはり彼の方が足が速い。
 【水流切断アクアセーバー】や【墨吐きブラックアウト】等で時間を稼いでも数瞬程度しか稼げない。
 でもそれでいい。

 ほんの少しの積み重ねが、やがて大きな変化に繋がるのだから。

 彼は僕まで後少しの所まで近付いて来る。

「もらったぁ! 【破壊者デストロイヤー】」

 彼はそれでも警戒しながらの一撃だ。

 僕は、スキルを発動させる。

「【次元の門ディメンジョンゲート】」

 彼の後ろ100mの場所に移動用の門を作り、僕は躊躇わずにそこに入る。
 そして、僕が入ると同時に門は消す。

 ドオオオオオオオオオオオン!!!

 僕の遥か前方。
 ロードの攻撃が地面を砕いた音だ。

 彼は周囲をキョロキョロと見回して、僕の事を見つけた。
 急いで走り出し、物凄い速度で迫ってくる。

「【水流切断アクアセーバー】」
「貴様! さっきからそればかり!」

 彼は怒りと焦りからか、僕のスキルが多少体をかすりながらでも躊躇ためらわずに前に出てくる。

「自分の得意な方にハメて攻撃をし続ける。それでいいんでしょ? 貴方の本に書いてあったと聞いたよ?」
「そんなことまで……!」
「確かにそうだよね。貴方はその身体力で詰めてきて、こちらに思考する時間を与えずに常に攻め続ける。それは確かに強いよ。でも、一度距離を取られると、攻撃手段がない」
「……」
「もしくは、あり得ない位に消耗するから使いたくない。でしょ?」
「……」
「じゃないと使わない理由がないもんね。それに、時間制限もあるんでしょ?」
「……」
「他人のスキルを使えるなんてことが代償もなしに出来るなんてある訳ないもんね」
「貴様。どこでそれを」
「これだけ戦ってたら僕でもわかるよ。あんなに急いで決着をつけようとしていたし、汗の量もあり得ない。Sランク冒険者がこの程度の運動で息を切らすなんてどう考えてもおかしいよね?」

 彼から逃げながら……それなりに考えた結論だ。
 でも、きっとこれで間違ってはいないはず。

「貴様……そこまで分かっているのならもうためらいはしない。見せてやろう。俺の最強の技を」

 ゾクリ

 彼から放たれる圧力がこれでもかと僕の背筋を凍らせる。
 何をして来るのだろうか。

 彼の体にまとわりついていた糸の鎧はなくなり、左目が緑色に光っている。
 剣からも何度か見た破壊のオーラとでもいうのだろうか。
 それが立ち上っている様に感じる。

 彼はこれから為すことを口を開いて教えてくれる。

「【未来視サイト・ビジョン】と、我が【破壊者デストロイヤー】のスキルの組み合わせ。これにより、貴様は決して逃れることの出来ない破壊を味わうのだ!」
「逃げればいいだけだよね」

 僕がそう言うと、彼は笑う。

「ふん。周りの雑魚ごと消してやる。それで貴様がいいならば……だがな?」
「貴様!?」

 彼は視線をフェリスの方に一瞬向けると、彼女たちも、自分の部下ごと巻き込むと宣言したのだ。

「1人で泣き叫ぶがいい! 出来んだろう! そうだ、未来の貴様は俺の一刀で死ぬ! 食らえ! 残すは瓦礫のみロード・デストロイ】!」

 彼はその場に剣を振り下ろす。
 それは1秒にも満たない時間。

 その時間を僕は引き延ばされたかのように過ぎ、僕は彼に向かって少しでも近付いて行く。

 どうしたらいい。
 どうしたらフェリスを救う事が出来る。

 頭の中では今まで色々なスキルが駆け回っている。
 けれど、今は持てる技を修練しようと思って新しい技をほとんど使ってこなかった。

 その事を後悔する。
 この状況で最適なスキルを選択しなければならない。
 どうか……どうか力を貸して欲しい。
 サナ。

 こんな時に妹に祈るなんておかしな話かもしれない。
 サナは神でもなんでもないのに。
 いや、美しさの女神ではあるかもしれない。

『兄さん』

 サナの声が聞こえた。

『このスキルを選んで』

 サナに言われるままに、僕はスキル名を叫ぶ。

「【次元の城塞ディメンジョンフォートレス】」

 僕と……フェリス達を囲うようにして、半透明の城が一瞬にして築かれた。

 次の瞬間、ロードのスキルが炸裂さくれつする。
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