転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友

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2巻

2-1

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 第1話


 わたしはサクヤ。日本で普通に働いていたのに、気が付いたら五歳児になって森の中にいた。
 混乱するわたしだったけど、隣に寝ていた真っ白な小虎ことらなつかれたので、ヴァイスという名前をつけたら……なんと、従魔になってくれた。
 それから森を彷徨さまよったわたし達は、とある洞窟どうくつに閉じ込められていたフェンリルを見つけて、そのフェンリルも封印を解いて、ウィンと名付けて従魔にした。
 その時に、「創造魔法そうぞうまほう」と「神聖魔法しんせいまほう」の両方を持つわたしは百万年に一人の存在だと教えられ、バレないように過ごすと決意した。
 街を目指して洞窟を出たわたし達は、クロノさんとリオンさんっていう冒険者さん達……転生特典の鑑定かんていのスキルで見たら本当は今いるファリラス王国の王子様だったんだけど、とにかくその二人と一緒に行動することになって、ケンリスの街に到着。
 魔道具を作らせたら国一番だというプロフェッサーや、魔物の研究では世界的な権威だという先生と知り合ったわたしは、街での生活に馴染なじんでいった。
 こっそり魔法で城壁じょうへきを直したり、エアホーンラビットっていう魔物の特異体とくいたい――いわゆる変異種と仲良くなったり……そんなことをしていたある日、街にとんでもなく強いスライムの魔物が迫ってきた。
 どうやらウィンを助けた時に、一緒に解放しちゃってたみたい。
 ヴァイスやウィン、エアホーンラビットに傷ついてほしくないわたしは、逃げたかったんだけど……そしたら街が大変なことになる。
 ウィンは自分が原因だから戦わせてくれと言ったけど、傷ついてほしくない。
 ウィンはそれでも、自分が原因だから、そしてわたしからの『お願い』は自分にとってうれしいことだからと、温かい言葉をかけてくれた。
 わたしは『お願い』をするのが苦手だったけど、その言葉に背を押され、彼に『お願い』をして……わたしの魔力を使ったことでウィンは、無傷で魔物を討伐してくれた。
 それからウィンのお願いで、かつてウィンが封印される前に過ごしていた村を見に行くことになったんだけど……とりあえずその日は、街の人達と一緒に、無事に街を守れたお祝いのうたげを開くことにしたのだった。


「むにゃむにゃ……はっ!」

 わたしが目を覚ますと、そこは宿の部屋ではなく、街中だった。当然ウィンの毛に包まれているけど。
 具体的に言うと、昨日の夜、みんなで一緒に飲んだり騒いだりした宴の跡地だ。近くでは、クロノさんとプロフェッサーがシートの上で横になってる。
 リオンさんはおらず、先生がぼんやりと酒瓶さかびんあおっていた。

「先生……朝起きてからまたお酒を飲んでるんですか?」
「ん……? 昨日からの続きだよ」
「え? 一晩中飲んでいたんですか?」
「まぁねぇ。ぼくはお酒強いから」

 そう言っている先生は、確かにほんのりと顔は赤いが、特に酔っぱらった様子はない。

「なるほど……」

 先生の側には酒瓶が二十本以上転がっているけど……。
 まぁいいか。先生だしきっと大丈夫だろう。
 すると、ウィンが念話で話しかけてきた。

『起きたか、サクヤ』
「おはよう。ウィン。昨日は寝ちゃってごめんね」
『気にしなくていい。サクヤは寒くなかったか?』
「全然。ウィンに包まれててとっても温かかったよ」
『それなら幸いだ』

 わたしはウィンの温かい毛皮にもぐった。やっぱり最高。
 二人で話していると、先生がのんびりと聞いてくる。

「今って念話をしているのかい?」
「あ、はい。流石さすがに外だと話す訳にはいきませんから」
「なるほどねぇ。とっても研究し甲斐がいがあるね……」

 先生の目つきが一瞬いっしゅんするどくなった。もしかして……。

「先生……昨日から寝てないのって、ウィンとかヴァイスがいたから……?」
「ん? そうだよ?」
「ああ……やっぱり……」
「でも何もしていないよ。何かする時はちゃんと同意を取るから」
「あ、はい」

 何かする気はあるんですね。という言葉はみ込んでおいた。
 そんなことを話していると、従魔を連れた青年が近くを通りかかった。

「うお……大きい従魔だな……」

 彼はそう言って立ち止まり、じっとウィンを見る。
 彼の連れている従魔はウィンを小さくして茶色にしたようなおおかみで、不思議そうにあるじである青年を見ていた。
 彼はしばらく迷ったあと、先生に向かって聞く。

「先生……その白い従魔は先生の従魔ですか?」
「いや、違うよ。この従魔はサクヤちゃんの従魔だよ」
「サクヤちゃん?」

 どこ……? と周囲に視線をめぐらせるので、わたしはウィンの毛皮の中からのそりと起き上がる。

「わたしです」
「うお!? 毛皮の中にいたのか?」
「はい。ウィンの毛皮はとっても温かいので最高なんですよ」

 わたしがそう言うと、ウィンが嬉しそうに、だけどちょっと恥ずかしそうに尻尾しっぽで顔をでてくる。
 青年はそんな仕草を見たあと、おそるおそる聞いてくる。

「もしよかったら……なんだが、触らせてはもらえないだろうか?」

 そう聞かれて驚いたわたしは、先生を見る。

「別にめずらしいことではないよ。従魔は大切なパートナーだからね。毛並みを手入れして、自慢じまんする人だっている。それをお互いに撫で合ったりするのも、従魔を連れているとよくあることだよ。もちろん、従魔が嫌がらなければ……だけどね」

 それを聞いて、わたしはウィンに聞いてみることにした。
 確かに、このモフモフは独占したいが、ぜひとも自慢したいという気持ちもあるからだ。

『ウィン、他の人に触られるのは嫌?』
『別に構わんぞ。ただし、背中だけだ』
「背中だけならいいそうです」

 わたしはウィンに聞いた言葉を、そのまま青年に伝えた。
 彼はとても嬉しそうに笑って、頭を下げてくる。

「おお! ありがとう! それでは失礼して……と、サクヤちゃんもよかったら、デフォルを撫でてやってくれ。こいつは撫でられるのが好きなんだ」

 彼はそう言って、デフォルと呼ばれた茶色い狼の魔物を前に出してくる。
 わたしが地面に降りると、デフォルはわたしに寄ってきて体を擦り付けるようにしてくる。

「おお……デフォルが初対面でこんなに懐くとは……じょうちゃんは魔物に好かれる何かがあるのかもな」
「どうなんでしょうね?」

 わたしはそう返して、楽しそうに尻尾をブンブンと振っているデフォルの頭をそっと撫でる。
 ウィンよりもちょっとごわっとしている……? でも、ウィンと比べるのはかわいそうかも。この子はこの子で結構なモフモフで、ずっとモフモフしていられそうなほどに素晴らしい。この子がダメなのではなく、ウィンが最高すぎるのだ。

「ハッハッハッハ」

 わたしが撫でていると、デフォルがとても気持ちよさそうに目を細めるので、なんだか撫でるのが楽しくなってくる。
 頭や背中など、全身を撫でていくと、デフォルももっと撫でろとばかりに身をよじっていた。

「ワフッ!」

 そうやって全身を撫でると、デフォルに顔をめちゃくちゃにめられた。親愛の情を感じるので、これはこれで嬉しい。

「デフォル。そこまでにしておけ」

 青年がそう言ってデフォルを止めてくれた。
 デフォルはちょっと悲しそうだったけれど、主には従うのか大人しく引き下がった。

「ありがとう。君の従魔はとても……素晴らしいね。デフォルの毛並みも結構自信があったんだが……もっと上があると知れたよ」
「それはよかったです」
「じゃあまた。今回はありがとうね」
「いえいえ。こちらこそ」

 そう言って彼が去っていくと、ウィンが言う。

『サクヤ。俺を撫でろ』
「ええ? どうして?」
『いいから』
「分かったけど……」

 わたしは言われた通りにウィンの体を撫でる。

『ふむ……やはりサクヤに撫でられるのが一番いいな』
「もう……わたしもウィンを撫でるのが一番いいよ」

 そんなやり取りをして、のんびりとした時間が過ぎていく。
 そこに、今までいなかったリオンさんが走ってきた。

「兄さん! どこ!? 兄さん!?」

 そんな彼に、わたしは声をあげる。

「リオンさん! クロノさんはここです!」
「本当!? 兄さん! 急いで来て! 城下町に行かないといけなくなったんだ!」

 そう言うリオンさんはとても慌てていた。
 このケンリスの街は、北部に領主の住む城と城下町があって、壁をへだてて下町が広がっている。今わたし達がいるのは、街の外側を囲む壁にほど近い下町の一角だ。

「城下町……?」

 クロノさんはリオンさんの声で起き上がり、少し寝ぼけた様子でリオンさんに答える。

「そうなんだ。実は……」

 リオンさんはわたし達以外誰にも聞かれないように、小声で話し始めた。
 それによると、領主の右腕と言われる筆頭書記官が、ギルドマスターとクロノさん、リオンさんを呼び出しているらしい。

「はぁ? なんでおれ達なんだ? いつもは……」
「あの人はあのスライムとの戦いの後遺症こういしょうで動けない。だから僕達に白羽しらはの矢が立ったらしい」
「なるほどな……そういうことなら……しょうがないか。すまん、サクヤ。おれ達はちょっと城下町に行ってくる」

 二人がそんな話をしているので、わたしはふと、城下町ってどんな所だろうと思った。
 下町はとてもいい場所だ。今もこうして楽しくしているんだけれど、城下町とやらも気になる。

『ウィン。わたし、城下町も気になるんだけど、先にそっちをちょっとだけ見てもいい? それが見終わったらウィンの言ってた村に行こう』
『それで構わないぞ。村に行くのも今日明日でなくともいい。サクヤの都合がいい時でな』
『分かった。ありがとう』

 わたしはウィンにお礼を言って、クロノさん達に声をかける。

「クロノさん」
「どうした?」
「あの……わたし達も城下町に入ってはいけないでしょうか?」
「……どうしたんだ? 突然」
「いえ、この街はとってもいい街です。ウィン達も受け入れてくれましたし、街の人達もとっても優しいです。だから、城下町も行ってみたいと思うようになったんです」

 わたしが考えていることを話すと、クロノさんは少し迷ったあとに頭をかく。そして、わたしがだまっていると、申し訳なさそうに口を開く。

「サクヤ。城下町はサクヤが思っているほどいい場所じゃない。それでもいいか?」
「はい。大丈夫です」

 自分の目で見ないと、なんとも分からないし。

「あとは条件がある。おれ達から……それとウィン様からも決して離れないこと。それでもいいか?」
「分かりました」
「それとエアホーンラビットだが……従魔じゃないんだよな……」

 クロノさんがそう言うと、エアホーンラビットは鳴く。

「キュイキュイ!」

 抗議こうぎするような声を出したあとに、姿を透明とうめいにした。これはエアホーンラビットという種族が持つ能力の一つだ。これならバレないだろうと言いたいのだろう。

「それなら行けるか……よし。さっさと行って、すぐに帰ってくるぞ」

 そう言って、クロノさんとリオンさんは進み出した。
 ウィンに乗ったわたしとヴァイスもついていこうとすると、先生に後ろから声をかけられた。

「サクヤちゃん」
「はい?」
「決して争ってはいけないよ。どんな目を向けられてもね」
「……?」

 どんな目を向けられても? どういうことだろう? 行ってみたらそれは分かるか。
 わたしはうなずいて、クロノさん達を追いかけた。


 城下町と下町を隔てる壁に到着したわたし達は、門を抜けて城下町に入る。
 その時――

『助けて』
「?」

 今の声は誰だろう? ウィンともヴァイスとも違ったような……。

「サクヤ? どうかしたか? 視線を感じたか? 人さらいか?」
「え? いや、そういう訳では……」
「そうか、怖かったらウィン様の中に隠れておくといい」
「はい?」

 クロノさんは何を言って……? と思っていたけれど、しばらく進んでいくと、彼がそう言った理由が分かった。

「……」
「……」
「……」

 わたし達が城下町に入ると、『なんでこいつらがいるんだ』と言いたげな目を向けられたのだ。
 下町で向けられたような優しい目つきではなく、害獣を見るかのような目が、これでもかとウィン達に突き刺さっていた。なんとなくだけれど、ウィンを警戒しているのかもしれない。

「サクヤ。行くぞ」
「はい」

 わたし達はクロノさんに守ってもらうように進むけれど、警戒心の強い目つきは変わらなかった。

『サクヤ。気を付けろ。敵意はないが、友好的でもないぞ』
『うん……なんでこんなに嫌われているんだろう?』
『よく魔物に襲われる街らしいからな。魔物が街の中にいるということが許せないのだろうさ』
『そんな……ウィンは襲ってくる魔物とは違うのに……』

 わたしはウィンやヴァイスの優しさを知っているから悲しくなる。
 聖獣だと明かせば、そんな扱いは受けないんじゃないか……そう思ったけど、ウィンの声が届く。

『サクヤ。気にしないでくれ。俺は確かに聖獣だが、それはサクヤにだけ知っていてもらえばいいんだ』
『ウィン……』
『それに、こういう場所にはもう来なければいいだけだろう? サクヤが来ようと言ったおかげで、こうやって知ることができたんだ。それでいい』
『……そうだね。ありがとう。ウィン』

 そうしてしばらく歩き、わたし達はとある宿に入っていく。

「ちょっと、魔物を部屋に入れるつもりかい?」
「聞き分けてくれるから問題ない。これでダメか?」
「……しょうがないね」

 クロノさんは宿の主に何かを渡すと、なんでもないかのようにこちらを振り返った。

「サクヤ達は隣の部屋で待っていてくれ。おれ達は用事を終わらせたらすぐに戻る」
「分かりました」

 あんな目線を向けられたあとで、街を歩き回ってみようなんて気持ちにはならなかった。
 だから、部屋でのんびりヴァイス達と遊ぶことにする。

「ウビャゥ!」
「キュイキュイ!」

 ヴァイスとエアホーンラビットは仲良く部屋の中で追いかけっこをしている。ヴァイスの方が少しだけ小さいはずだけれど、エアホーンラビットといい勝負をしていた。
 時々エアホーンラビットが本気を出して、壁に突撃しそうになっていたのはウィンが魔法で止めてくれていた。

「キュキュイ!」

 まるで止められたせいで捕まったと抗議するように、エアホーンラビットが鳴いている。
 ウィンはそれを見て苦笑いを浮かべて答えた。

「壁に穴を開けないように逃げる練習をしろ」
「キュキュイ……」

 未だに少し不満そうだったけれど、すぐに切り替えてまたヴァイスを追いかけ始めた。
 わたしはウィンにお礼を言う。

「ありがとうウィン……こんなことで壊したら怒られそう」
「だろうな。しかし、サクヤが直したら喜ばれるのではないか?」
「直すって……どうやって?」
「創造魔法で壁を作ればいい。城壁の時のようにすればサクヤなら簡単にできる。あるいは木魔法を覚えてもいいが」

 確かにそれでいいかもしれない。それにしても……

「木魔法もあるんだ」
「ああ、聖獣で言うと木は青龍だな。あいつの実力はやばい」

 それを聞いて、わたしは疑問に思う。

「あれ? 青龍って木なの? 水かと思ってた」
「水は玄武げんぶだな」

 はえー。青龍って青だし龍だし、水だと思い込んでた。
 それからわたし達は他愛たわいない話をしながら、クロノさんとリオンさんが戻るのを待つのだった。


 話し合いが終わった二人が戻ってきたのは、二時間くらい経過してからだった。

「悪い。待たせたな」
「いえ、無理を言ってついてきたのはわたしなので。それで、なんのお話だったんですか?」

 世間話で聞いてみたつもりだけれど、クロノさんの表情は重い。

「ああ、あのスライムを倒したのが誰なのか、領主が知りたいんだと」
「ええ? 領主様に直接聞かれたんですか?」
「いや、流石に領主は城下町まで来ない。来たのは領主の右腕。親の代から仕えている有能な奴さ。どうしてあんな領主に仕えているのか分からないくらい、優秀な奴だよ」
「そんな人が……」
「まぁ、その話はいい。それでは下町に戻るか」
「はい」

 わたし達はすぐに宿を出て、下町に出る。
 下町の通りを歩く人達の雰囲気は明るく、わたし達に向ける目もとても優しかった。

「うん。わたしはやっぱりこっちの方が好きだな」
「サクヤの言う通りだな。おれもこっちの空気の方が落ち着くよ」

 そんな感じでなごんだところで、わたしはクロノさん達に、ウィンが行きたい村のことを聞くことにした。

「あの、クロノさん、リオンさん。ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」
「どうしたんだ?」
「何か困ったことでも?」
「困ったことではないんですが、この街の近くにある村にウィンが行きたいそうなんです。昔滞在たいざいしていたとかで……それで、一人で出るのは多分年齢的に怒られるので、門を出るまでついてきていただけないでしょうか?」
「近くの村って……どの村のことかな?」

 リオンさんがウィンに向かって聞くので、ウィンはそちらの方角に首を曲げてわたしに念話を飛ばす。

『この方角……北西にある……昔はパルマの村と呼ばれていたな』
「北西方向にある、パルマの村という場所で――え?」

 わたしがそう言うと、クロノさんもリオンさんもさっきの城下町にいた時よりもかなり不安そうな顔になったので、わたしは言葉を途中で止めてしまう。
 そして、クロノさんが口を開く。

「パルマの村か……その村は黒いうわさが絶えない。道中も、盗賊とうぞくがかなり出るという噂で、しかもそれも実はパルマの村の者だと聞くし……怪しげな薬を使うとも……な」
「怪しげな薬?」
「人を強化する薬だったり、これは眉唾まゆつばだが、不老不死の薬を作っているとも聞くな」

 わたしはちょっと訳が分からずに二人に聞く。

「パルマの村が、盗賊をいっぱい出している……ということですか? しかも不老不死の薬を作っている?」
「あくまで噂だがな。そんな薬を作って何に使うのか……不死の兵隊でも作るのか……」
「……」

 ウィンの行きたい村は、かなりの危険地帯だった。
 しかし、ウィンは行きたいと言っていた。なら、わたしは……なんとかするべきではないか。
 不老不死の薬を作ろうとすること自体は、そこまでおかしいことでもない。地球でだって、賢者けんじゃの石とか始皇帝しこうていが求めていたとか、そんな話があったくらいだ。
 なら、問題は盗賊だ。

「ウィン。遠回りするのはどうかな? このまま最短距離を行くんじゃなくって、南西に一回下ってから北上するとか、それなら安全にいけそうじゃない?」

 わたしがそう言うと、クロノさんが目を見開いた。

「行く気なのか!?」
「……だって、ウィンが行きたいって言ってくれたんです。なら、わたしも行きたいんです」

 どんな気持ちを込めてその村に行きたいとウィンが言ったのか、わたしには分からない。
 でも少なくとも、軽はずみな気持ちではなく、昔あったことにケリをつけたいという思いで言ってくれたんじゃないのか……と思う。
 だからわたしは行きたい。


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