都会を抜け出して地方で始めた農業~頻繁に呼びに来てくれる可愛い子はもしかして脈ありなんですか?~

土偶の友

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ボーリング

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 ドライブを始めて1時間くらい経った頃、次の場所に行くことを切り出す。

「そろそろボーリングと行くか?」
「うん。お腹も多少良くなってきたよ。これなら酷いことにならないで済みそう」
「良かった。あれだけ食べた後だと心配だからな」
「うぅ、そういうことは言わないでよ。ご飯が食べにくくなるじゃん。マラソンでも行っとく?」
「流石にそれは俺が死んじゃう」
「大丈夫だって。一緒に行ってあげるから」
「そんなに走るの好きだったか?」
「そこそこかな」
「お、そろそろ着くぞ」
「もう? 早いね」
「この辺りをずっと走らせてたからな」
「道理で同じような景色ばっかりだと思った」

 俺はそのまま車を駐車場に入れて止める。時間が時間だからか、そこまで混んではいないようだった。

 俺達はそのまま建物に入って2階に上がる。この建物は入り口以外の1階全てが駐車場になっていて、肝心のボーリング場は全て2階になっているからだ。

 俺達は靴をレンタルしてゲームを開始する。

「おりゃあああああ!!!」

 パッカーン!

「ナイスショット!」
「ふふん、だろう?」
「3本しか倒れてないけどね」
「いいんだよ! 速度が出ていたんだから!」

 俺はボーリングを始めてすぐに遊び方を変えていた。それはいかに速度を出すか。ここのボーリング場には速度計がついているため、その最高速度を出すために俺はボールを放っていた。

「そんなんじゃ勝てないよ? 勝った報酬は何にしようかなー?」
「え? そんな事は決めてない……」
「それー」

 彼女はそう言ってボールを投げる。速度こそ余り出ていないがレーンの中央を綺麗に走っていた。そして綺麗にストライクを決める。

「いえーい」

 彼女はVの字にした指を俺に見せつけてくる。その顔には笑顔が浮かんでいて嬉しそうだ。

 くそう。圧倒的なスコア差にこのままでは負けてしまいそうだ。

「おめでとう……」
「全然祝ってる感じじゃないじゃん」
「ぐぬぬぬ、女子に負けるのは男としてのプライドが……」
「あはは、速度では勝ってるんだからいいんじゃない?」
「遊びだったらいいが勝負ごとになったのなら全力だ! それが男ってもんだろう」
「そう? さっきのは冗談だったんだけど……そうだね。負けた方が何か一個お願いできるようにしようか」
「何でも?」
「何でも」
「今何でもって言ったよね?」
「ちょ、その顔は怖い。勝ったら私に何をさせる気なの?」
「ぐへへ、何でもないですでゲス。とっても楽しいことでゲスよ」

 ちょっと彼女にはぴちぴちのスクール水着を着てもらって、色々零れそうになるのを心配する中一緒に公営プールに行って色々してもらうんだ。ふひ。楽しみだなあ。

「その楽しさって一体誰にとって楽しいのよ……」
「皆だよ?」
「私も入ってる?」
「皆さ」

 俺はにっこりと笑って彼女を見つめ続ける。彼女に向ける笑顔で俺の邪念は伝わらないだろう。

「不用意に言うんじゃなかった……。私の方が負けられない戦いになっちゃった」

 もう後悔しても遅い。

「それじゃあ俺の番だったでゲスね」
「その語尾は止めない?」
「ん? 流石にまずいでゲスか?」
「うん。ちょっと気持ち悪い」

 そういう彼女の顔は本気で嫌がっている顔だった。

「ぐふ。分かった。頭の中だけに留めるわ」
「……頭の中も止めて欲しいけど」
「それじゃあいっきまーす!」

 俺はさっきまでのスピード勝負を止めて全力を出す。

 パッカーン!

 ボールはそこそこ重たい物を使っているため、コースさえあっていれば意外と簡単に飛ぶ。自分でも予期していなかったストライクになった。正直適当に投げただけなので偶々だ。偶然って怖い。

 その事を知らない彼女は顔を真っ青にしている。この後に自分に訪れる格好に羞恥するがいい。中学校の、いや、小学校のを着させてやる。

「えええ。さっきあれだけ遊んでたから、下手だったのをゴマかす為かと思ってたのに!」
「ふふ、約束。忘れたとは言わせないぞ?」
「私も本気出す」

 そう言って彼女は自分の鞄からグローブを取り出した。

「ちょっと本気でボール選んでくる」
「え? マジでそう言う感じの人?」

 彼女はスタスタとボールを選びに行ってしまった。そして数分間はボールを持ったり握ったりして感触を確かめていたが、一つのボールに納得したのか帰ってくる。

「見ててね? これから本気出すから、ていってもこのボールだとちょっとずれてるから7割って所だけどね?」
「お。おう」

 どうしようか。このまま行くと俺がぴちぴちのスク水を着て公営プールに行くことに。それだけは回避しなければ。

「あ」
「あ」

 彼女の自信満々な表情を見ていたら、レーンが自動的にピンを倒してしまう。これは……あれかな? ずっとピンが倒されないままだと強制的にどかされる的な……。

「その……どんまい?」

 彼女呆然とした後に俺に向かってハッキリと言った。

「泣かす」

 なんでだよ。

 それからは圧倒的な差が更に圧倒的になった。具体的に言うと最終スコアはダブルスコア。これで察して欲しい。というかこれ以上は許してほしい。

 彼女が最後の一投を投げて俺に笑いかけてくる。

「いえーい。私の勝ちだね。あのストライクも偶々だったとはね。お願いは何にしてもらおうかな」
「うぅ、酷い。これから公営プールに行ってピチピチのスク水を着て、一緒に泳ぐなんて何考えてるんだ!」
「ちょっと待って! その考えは私じゃないよ! ああ! 今通って行った人達の顔が犯罪者を見る顔だったよ!」
「それでどうするの? 滑り台から何度も滑らせてポロリでも期待するっていうの? この鬼畜! 変態!」
「しない! しないから! それ言うの止めて! 止めてってば! 立場は逆なんじゃないの!?」
「嘘! だってさっきから嫌らしい目で見てたんだもん。最後の方の勝利を確信した時の顔なんて、どう遊んでやろうかって顔してたじゃないか!」

 この顔はマジでしてた。本気で何をされるのか怖くなったもんだ。

「分かった! お願いはそうやっていうのを止めて! それでいいから!」
「ホント?」
「ほんとだから!」
「じゃあ止めるわ。いやー良かった。何されるかわかんなかったからな。助かったー」
「もう……。ここ来れないよ……。通りがかったスタッフさんの顔見てないの? 私たちの事を変態みたいに見る目だったよ?」

 彼女はそう言いながら俺の隣に座ってくる。本気を出したから薄っすらと汗を掻いているようだ。その汗は冷や汗かもしれないけど。

「そう言うのもありかと思って」
「ないよ! 私も巻き込まないでよね。何で勝ったのに罰ゲーム受けてるんだろ……」
「まぁまぁ。次は勝負じゃなくて普通にボーリングを楽しもうよ。まだまだ力は余ってるだろ?」

 後1ゲームか頑張って2ゲームといった所か。

「そうだね。久々にスイッチ入っちゃったからまだまだやりたいな。10ゲーム位でいいよ?」
「腕もげるわ」

 俺の考えていた桁が違う。流石に明日の農作業に影響が出るだろう。

「力で投げてるからだって。力の入れ具合を調整すればそれくらいいけるって」
「ダーメ、明日は仕事があるんだから」
「あ、そっか、ごめん」

 彼女は思い出したかのように申し訳なさそうにする。

「そんな謝ることないって。それだけ楽しんでるんだろ? 俺も楽しいしさ。そう言う風に思ってくれるだけで俺は嬉しいよ。俺も本当はもっとやりたいんだから」
「ホント? じゃあ後5ゲーム位ならいいよね?」
「お、お前……」
「ふふ、今夜は休ませないよ?」
「それ意味わかってる?」

 彼女の笑顔に釣られて後5ゲームやった。
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