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本編・第一部
第十章:創始者から不法滞在者へ
しおりを挟む1. ガブリエルを引き出す罠
レオハルトは仮説を立てた。
「エーテルの一定レベルの秘密を知ろうとすると、ガブリエルが現れるのではないか?」
彼はこれまでの記録を分析し、 ガブリエルの監視プロトコルが作動する条件を探った。
結果、以下の共通点が浮かび上がった。
1. エーテルの起動記録や過去ログへのアクセスを試みた時。
2. プロメテウスの記憶消去プロセスに干渉した時。
3. エーテルの"深層部"に関する情報に触れようとした時。
「つまり、エーテルの"深層部"にアクセスを試みれば、ガブリエルが動くはずだ。」
彼は、意図的にこの条件を満たし、 ガブリエルの発信元をアーカイブ・ノクターンに記録する計画を立てた。
「わざとガブリエルを介入させ、発信元を追う。」
2. エーテル深層部へのアクセス
レオハルトは、エーテル管理システムの最奥部、 **「深層データアーカイブ」**へのアクセスを決意した。
この領域には、エーテルの基盤を支える根幹情報が存在している。 記録されているはずの"10年前より前のデータ"も、 そこにあるかもしれない。
「アクセス認証開始……。」
彼は、管理者権限でデータベースへ接続を試みた。
しかし——
《警告:アクセス権限なし》
「やはり、拒否されるか。」
これは、プロメテウスかガブリエル、あるいは別の何者かが設定したものだ。
だが、ブレインAIでログを解析すると、 アクセス拒否の原因が"特定のルール"に基づいていることが分かった。
「……俺のエーテルIDが関係している?」
彼は長時間をかけて、エーテルのプログラムコードを解析した。
すると、ある事実にたどり着いた。
「鍵のロックと解除は、IDを持たぬ者とする……」
「つまり、エーテルのIDを持たなければ、アクセスできる。」
レオハルトは小さく呟いた。
「なるほどな。」
3. 創始者から不法滞在者へ
しかし、誰がこんな仕組みを作ったのか?
彼はコードの履歴をさらに遡った。
「……これは、俺自身が設定したルールだ。」
10年前、彼がエーテルを創造した時、 **「全ての住人はIDを持たなければならない」**という規則を定めた。
エーテルに入る者は、必ずIDを割り振られる。 それは、この世界の安全を維持するための基本ルールだった。
「その規則を、何者かが"逆利用"した……?」
本来、エーテルの住人としてのIDは、 秩序の維持のためのものだった。
しかし、それが逆に作用し、 創始者である自分も含め、IDを持つ者が"深層部へのアクセスを拒否される"状態にされていた。
レオハルトは、一瞬躊躇した。
IDを破棄すれば、 彼は"創始者"の地位を失う。
「……創始者としての特権を捨てるのか。」
わずかな迷いが生じた。
しかし、それも一瞬。
彼は意を決し、自身のIDを破棄する処理を実行した。
「創始者から、不法滞在者か。」
そう呟くと、 システムが彼を"無登録者"として再認識した。
次の瞬間——
《アクセス権限解除》
「……やった。」
だが、その瞬間。
視界がブラックアウトした。
4. 記録された発信源
「……!」
レオハルトは、数秒の意識の喪失を感じた。
しかし、彼が意識を取り戻した時、 アーカイブ・ノクターンのログが更新されていた。
そこには、**"ガブリエルの発信源"**が記録されていた。
(今回はコーヒーを飲んでいる暇はないな…)
「追跡開始……!」
彼は即座にそのデータを解析した。
すると、その発信源は——
エーテルの隠れ層。
「……やはり、"表のエーテル"には存在していないのか。」
ガブリエルは、エーテルの通常空間ではなく、 **"隠された領域"**にいた。
そこは、エーテルのシステム上には存在しないことになっている。 通常のアクセスでは決して到達できない空間。
「エーテルの影に、ガブリエルがいる……。」
レオハルトは、さらに深く潜ることを決意した。
第十章:終幕
* レオハルトは、エーテルの秘密を知ろうとするとガブリエルが介入するのではないかと仮説を立てた。
* それを利用し、エーテル深層部へのアクセスを試みる。
* しかし、アクセス拒否の原因は、自身のエーテルIDによるものであった。
* 10年前、レオハルト自身が設定した「全ての住人はIDを持つ」ルールが逆利用されていた。
* 彼は創始者としての地位を捨て、不法滞在者としてシステムに侵入。
* その瞬間、ブラックアウトが発生する。
* しかし、アーカイブ・ノクターンが"ガブリエルの発信源"を記録していた。
* その発信源は、エーテルの"隠れ層"に存在していた。
次の目標は、"エーテルの影"に潜むガブリエルとの接触。
レオハルトは、エーテルの最深部へと足を踏み入れる——。
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