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ハナツオモイの章
19.花まつり
しおりを挟む蓮也は深い瞑想の中から帰還した。
アーサナを解いて、左手の状態を確認する。
蓮也
(腕の痺れが取れている。カーズが消えたのか)
蓮也のオーラを感じてエスメラルダが部屋に来た。
エスメラルダ
「目覚めましたね」
蓮也
「ああ、長い間眠っていたようだが・・・」
エスメラルダ
「アナタは二週間ほど、深い瞑想の中にいました。一つのチャクラの調整に二日ずつかかり、二週間で全てのチャクラとクンダリニーが強化されたと思います」
既に蓮也はクンダリニー覚醒を行なっているが、クンダリニーは何度もスシュムナー管を通すことで強化されるのである。
蓮也
「二週間もか」
エスメラルダ
「特にハートチャクラの状態が改善されていますね」
蓮也
「胸のつかえが取れた感じがする」
エスメラルダ
「あのコも祈ってくれてましたから」
「ヒーラーとしても成長していますよ」
蓮也
「そうか」
窓から少しずつ朝の光が入ってくる。
蓮也
「オオモノノヌシとは何者か?」
エスメラルダ
「我が師・オオタネコの師であると伺っております。師がそこへゆけとおっしゃったのですね」
蓮也
「そうだ」
エスメラルダ
(師・オオタネコは、この者の根本的な病を見抜き、その治療と、更なるクンダリニーの強化を提案している。しかし、そこにはリスクもある・・・)
「かの地は深い山奥にあり、滝も凍るという万年極寒の地であり、修行者の場として有名ですが、殆どの修行者は戻ってこないと聞きます」
「それでもいきますか?」
蓮也
「ああ」
エスメラルダ
「わかりました。とりあえず今日はお帰りください。明日までに地図を用意します」
気づくとヘティスが入り口の前で立っていた。今の話を聞いていたようだ。
エスメラルダ
「あら、ヘティス」
蓮也もヘティスの方に顔を向けたが、どのように反応していいのかわからないようだった。
蓮也は立ち上がり、宿舎へと帰っていった。
エスメラルダ
「ヘティス、今の聞いていたのね」
ヘティス
「はい」
エスメラルダ
「アナタもいくの?とても危険なところよ。命の保証はないわ」
ヘティス
「もし蓮也に何かあった場合、私がヒーリングで回復してあげられるし、防寒具はヘパイトスに作ってもらうし」
エスメラルダ
「止めても無駄のようね。私もアナタの立場だったらそうするかもしれないし」
ヘティスは、エスメラルダが危険という地は相当危険であり、自分も死んでしまう可能性があると思った。しかし、自分がいくことで蓮也の修行が成功する可能性が高まり、それによって、もし自分が死んでしまったとしても、未来がよき方向へと分岐できればそれでいいのかもと思った。
蓮也は宿舎へ帰り、シャワーを浴び、数時間ほど寝た。外に出ると、プロキオンたちが宿舎の前で待っていた。蓮也が宿舎に帰って来たのをスピカ経由で聞いてのことだ。プロキオンたちは、達人である蓮也に剣技や魔法の技術教練を望んでいた。蓮也も腕の回復を自身でも感じるために、よい機会であると思い、その日、一日は、プロキオンのギルドメンバーに技術教練を行った。
夜はフラワリングフェスタである。木花咲耶姫を祀った花まつりである。
ヘティスに無理やり誘われて蓮也は花祭りを見ることにした。蓮也も王国時代に、休憩時間に庭園で花を見ることがあったため、花を見ること自体、嫌いではなかった。
古(いにしえ)からの言い伝えでは「星魔法」というものがあり、それに関連した行事として、メイジやプリーストが天空に魔力と神聖力を放つというものであった。その「星魔法」が、単なる言い伝えなのか、実際、古代に存在したのかは、今となっては誰も知らない。
辺りは桜の花で満開であった。ヘティスと蓮也は小高い丘の上に座り、桜の舞い散る様子を眺めていた。空は満天の星々が煌めいている。そして、遠くの方から歌が聞こえてくる。
【楽曲・ヒトミトジテ】
https://youtu.be/-DoJ-QThLYk
まつらい この星よ 遠く 彼方 からの 願い
まつらい 人は生きる 灯火よ 解き放て
瞳とじて 祈ってる
瞳とじて 願ってる
瞳とじて 叶えてる
瞳とじて 満ちている
まつらい 尊び合い 魂よ 解き放て
まつらい 彼岸 目指し 支え合いて 漕ぎいだせ
瞳とじて みつめてる
瞳とじて きいている
瞳とじて 感じてる
瞳とじて 生きている
散りゆく花を見て、自分ももしかしたら死ぬかもしれない、そうヘティスは思った。ヘティスは連日のヒーラー実習で疲れたのか、蓮也にもたれかかって眠ってしまった。蓮也はしばらくそのまま花を眺めていたようである。やがて、蓮也は彼女の身体をやさしく抱きかかえ、宿舎に戻り、ベッドに寝かせた。そしてしばらくしてヘティスは目を覚ます。
ヘティス
(あれ・・・宿舎にいる。私、眠っちゃって・・・)
その後、シャワーを浴び、食事をし、リラックスしているところであった。
窓をコツコツと軽く叩く音がしたため、ヘティスは窓を見た。
ヘティス
「キャ!」
蓮也
「静かにしろ」
ヘティス
「窓に人が・・・。泥棒?」
蓮也
「それは俺の部下だ」
と言って蓮也が窓を開けると、黒ずくめのスラリとした男が窓から入って来た。ロータジア王国時代は神速将軍と言われ、蓮也直属の諜報部隊長を務めていたキュリアス・モローである。現在は、各地に散らばったロータジアの将軍や残存兵の情報収集を行っている。
蓮也
「何か変化はあったか?」
モロー
「はい、デネブ将軍とアルタイル将軍の安否がわかりました」
ロータジアには優秀な三人の将軍がおり、三将星と言われていた。その一人が神槍騎士デネブであり、もう一人が神弓騎士アルタイルである。
モロー
「デネブ将軍率いる桜梅夢幻騎士団が殿(しんがり)を務め、デネブ将軍も獅子奮迅の戦いをするも、あえなく戦死。騎士団の半数はアルタイル将軍が率いて脱出」
蓮也
「そうか。デネブ将軍ならそうするであろうな。惜しい人財をなくした」
モロー
「そしてアルタイル将軍は・・・」
蓮也
「どうした、モロー。言え」
モロー
「アルタイル将軍はアルトドール帝国に士官したとのこと・・・」
アルトドール帝国は、長年、ロータジア王国と対立してきた国である。
蓮也
「なんだと、あの忠臣であるアルタイル将軍がか」
モロー
「私の部下からの報告では、そのようになっております」
蓮也
「信じられん。なぜアルタイル将軍はアルトドールに」
モロー
「わかりません。何か事情があるかもしれません」
蓮也
「そうだな、引き続き調査せよ」
モロー
「ところで、そちらのお方は?」
モローはヘティスの方へ目を向ける。
蓮也
「この者は俺のヒーラーだ。現在、パーティを組んでいる」
モロー
「そうでしたか、申し遅れました。キュリアス・モローです」
ヘティス
「あ、ヘティスと言います」
ヘティスは、蓮也が自分をヒーラーだと認めてくれたのが意外であった。しかし、少し嬉しさもあった。
蓮也
「俺は明日から七輪山に行く。極寒の地故、諜報官の派遣はしなくてもいい。この村に待機させておいて、連絡をとるようにしろ」
モロー
「わかりましたが、くれぐれもお気をつけください」
そこへヘティスが蓮也に話しかける。
ヘティス
「蓮也、私も行ってあげるわ」
蓮也
「足手まといになるなよ」
ヘティス
「私が腕、治してあげたんだから」
蓮也
「これは俺が瞑想によって自分で治したものだ」
ヘティス
「なによ、毎日、祈って遠隔ヒーリングしてあげてたのよ!」
蓮也
「そんなことを頼んだ覚えはない」
ヘティス
「アナタね~、そういう時は素直に“ありがとう”って言うものよ~」
「そんなんだと、友達なくすわよ~」
モロー
(蓮也様を呼び捨てにして、この馴れ馴れしい態度と会話・・・。蓮也様がヒーラーとして認めるヘティスさんとは何者なのだ・・・)
二人が言い合いをしている間にモローは窓から出て、再び、情報収集に向かうのであった。
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