幻想神統記ロータジア(ハナツオモイ編)

静風

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ハナツオモイの章

18.阿頼耶識にて

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瞑想の中で瞑想する。そうすると、そこには更に深淵なる世界が広がる。
蓮也は個人的無意識レベルの末那識(まなしき)で瞑想し、更に集合的無意識レベルの阿頼耶識(あらやしき)へと降りて行った。

暗いトンネルのようなものを抜けていくと、そこには時空間が折り重なるような感覚のする世界が広がっていた。そして、様々な何かが生まれ、そして何かが虚空へと消えていく。それは消えているようで、消えておらず、永遠の循環を感じる世界であった。



蓮也
「ここが阿頼耶識・・・」
オオタネコ
「にゃ、もう来たかにゃ・・・」
「やっぱ蓮也にゃん、只者じゃにゃいにゃ・・・」
蓮也
「まあな」
オオタネコ
「ここから現象界の全ての縁起が起こるとされてるにゃ」
「現象界では偶然と言われることは、この世界では必然にゃ」
「だからここに来ると必然が起こるべくして起こるにゃ」
蓮也
「ふむ」

地上では数日が経っていた。ヘティスは毎朝、治療院の祭壇で蓮也に祈りを捧げていた。その日は少し早めに行った。すると、エスメラルダが祭壇で祈りを捧げている。



ヘティス
(あ、先生も祈っているのね)

エスメラルダのハートを見ると、綺麗な桃色であり、まるで少女のようなエネルギーであった。そして、それが穏やかな深いグリーンに染まっていく。

エスメラルダ 
「あら、ヘティス・・・」
ヘティス
「ごめんなさい、邪魔しちゃって」
エスメラルダ 
「いいのよ、今日はいつもより早いのね」
ヘティス
「先生もお祈りをされているんですね」
エスメラルダ 
「そうよ」
ヘティス
「先生のハート、すごく綺麗・・・」
エスメラルダ 
「あら、やだ、見てたのね」
ヘティス
「ハートが桃色ってことは・・・」
エスメラルダ 
「今も想っているの」
ヘティス
「蒼き魔術師さんね」
エスメラルダ 
「ある時、消えてしまい、彼のオーラも消えてしまったので何も感じられなくなってしまったんだけど、まだ、この世のどこかにいるような気がしてね」
ヘティス
「ずっと祈って来たんですか?」
エスメラルダ 
「そう、ずっと。毎日ね」



ヘティスはいつか元の世界へと帰ってしまい、蓮也とも会えなくなる、それでも祈り続けるのだろうか、時空を超えて、それは伝わるのだろうか、と思った。

ヘティス
「もし蒼き魔術師さんが他の誰かを好きになっていて、他の人と一緒になってしまっていても祈るのですか?」
(あ・・・、私、何聞いているんだろ・・・!)
エスメラルダ 
「そうね、それでも彼の幸せを祈っている。表面の私はそうじゃなくても、深い部分の私がそう想うのよ」
ヘティス
「深い部分の私・・・」
(もし蓮也の幸せを祈るなら蓮也が好きな人と一緒になり、幸せになるのも祈ることになるのかな?今はこの世界にいるからだけど、元の世界に戻ったら、そういう気持ちになれるかな・・・)
エスメラルダ 
「ヘティス、私みたいになっちゃダメよ。アナタはアナタの幸せを手に入れるのよ」

自分の幸せを手に入れるには、自分の我を通さなければいけないのではないか、そしての深い部分の自分と表層の自我の望みが一緒ならいいのだが、そうでない場合、どうすればいいのか、とヘティスは考えた。

ヘティス
(“私”って何だろう。どの“私”が“私”なんだろう)

とヘティスは思うのであった。ただ、ヒーリングを学ぶと決意したということは、彼の幸せを心から願うのだ、とも思った。そして、それは何があっても、限りなくそうしようと思うであった。

一方、蓮也は深い阿頼耶識の世界でたたずんでいた。
この深層次元では、時空を超えた様々な情報エネルギーが交錯する。
しばらくすると、遠くから小さな光がやってきた。その光に蓮也は懐かしさを感じた。


「蓮也様・・・」
蓮也
「その声は・・・」
「・・・エウリディーチェ」

目の前にエウリディーチェがいた。



蓮也
「生きていたのか、エウリディーチェ」
エウリディーチェ 
「どなたかが私を蓮也様の下へと導いてくださいました」
蓮也
「もうロータジアはないが、一緒に帰ろう」

エウリディーチェは黙って首を横に振った。

蓮也
「なぜだ、今度は必ず俺が守る」
エウリディーチェ 
「私はもういいの。蓮也様の近くの大切な人を守ってあげてください」
蓮也
「俺が一番大切なのは、エウリディーチェ、お前ただ一人だ」
エウリディーチェ 
「あの日、私を救いに来てくれてありがとう・・・」
「アナタは私との約束を命懸けで果たそうとしてくれた・・・」
「とても嬉しかった・・・」

エウリディーチェは微笑みながら涙を流していた。

エウリディーチェ 
「もう十分、私はアナタから想いをいただきました」
「けど、残念ながら私はもう元の世界には戻れません」
「だから蓮也様の近くの大切な人を守ってあげて」
「私もアナタたちの幸せを祈ってます・・・」

そう言うと、エウリディーチェは光となって遠く彼方へと消えていった。

蓮也
「待ってくれ!エウリディーチェー!」

そこへ白き祝由師・オオタネコが現れた。

オオタネコ
「これで一つ因縁が解消されたにゃん」
蓮也
「因縁の解消だと?勝手に決めるな。俺の中ではまだ終わってはいない」
オオタネコ
「蓮也にゃんは頑固にゃーん」
「まあ、宇宙法則には逆えんから諦めるにゃ」
蓮也
「宇宙法則であろうが神であろうが、俺が納得できなければ、それ自体をぶっ潰す」
オオタネコ
「もう考え方が無茶苦茶にゃん」
「それよりも復活したサトゥルヌスを倒してくれにゃん。それが蓮也にゃんのお兄にゃんや彼女の供養になるにゃん」
蓮也
「それは、俺がこの手で必ず倒す」
オオタネコ
「そうにゃん、そうにゃん」
蓮也
「白き祝由師よ、お前はサトゥルヌスをその目で実際に見たであろう。今の俺と比べてどうだ」
オオタネコ
「率直に言うと、今の蓮也にゃんではサトゥルヌスには全然勝てんにゃん」
蓮也
「そうか」
オオタネコ
「そうにゃ、ネコのしぇんしぇーに会うにゃ。七輪山に住むオオモノノヌシにゃ」
蓮也
「なんだ、それは」
オオタネコ
「蓮也にゃんのクンダリニーエネルギーを底上げしてくれるエライしぇんしぇーにゃん」
「そろそろ蓮也にゃんの身体も限界にゃ」
「詳しくは地上に戻ってアンドレアに聞くといいにゃ」
「ネコもそろそろ疲れたから眠りにつくにゃ」
「また、遊びにくるといいにゃ」

と言って、オオタネコは光の中に消えていった。
そして蓮也の周囲が段々と明るくなってゆく。
夜が明けて朝になっていくような感じがした。
そして、蓮也は瞑想から元の世界へと戻った。

【解説】
阿頼耶識とは、唯識学の第八意識である。ここが縁起(現象)の拠り所となるが、それを阿頼耶識縁起と言う。そのため、ここを分析心理学上のシンクロニシティの場、集合的無意識と本作品では設定している。末那識=個人的無意識と解釈するため、そこでは蓮也個人の記憶の世界となるが、阿頼耶識=集合的無意識は、蓮也の記憶を超える全ての記憶の貯蔵庫として描いた。そのため、エウリディーチェの霊との遭遇がある。この遭遇を起こさせたのはヘティスの祈りである。彼女の祈りが個人意識を超えたレベルであるから、そのような現象が起こった。これが、ここで描くヒーリングの一つと解釈していただきたい。

尚、本作品における唯識・心理学・神智学の設定は以下の通りである。

第六意識:意識(唯識)=意識(心理学)=エーテル体(神智学)
第七意識:末那識(唯識)=個人的無意識(心理学)=アストラル体(神智学)
第八意識:阿頼耶識(唯識)=集合的無意識(心理学)=メンタル体(神智学)




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