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ハナツオモイの章
22.光と抱擁
しおりを挟む蓮也は吐血し、その場にうずくまった。
そして、やがて意識を失った。
ヘティス
「・・・はっ!」
「蓮也のオーラが消えかかっている・・・!」
ヘティスはヘパイトスに、蓮也の救出を頼んだ。
しばらくの間、ヘティスの中で緊張が走る。
既に日が落ちていたので、ヘティスはランプに火をつけた。暖炉の火とランプで部屋は少し明るくなった。
ヘティス
(何事もありませんように・・・)
やがて、扉が開き、ヘパイトスが蓮也を運び込む。
蓮也の身体は冷え切っており、口からは吐血の跡が見られる。
ヘパイトス
「蓮也は体温がかなり低下している。命の危険性がある」
ヘティス
「あーん、もう、だからダメだって言ったじゃないの・・・!何で無茶するのよ!」
ヘパイトス
「どうすればいい?」
ヘティス
「とにかく身体を温めないと・・・」
ヘティスはヘパイトスに蓮也をベットに仰向けで寝かせ、濡れた衣服を脱がせ、毛布をかけるように指示した。その間にヘティス自身は薪を焚べ、なるべく部屋を暖かくするようにした。部屋にはロープが横に張ってあり、そこにヘパイトスは衣服をかけた。
ヘティスは蓮也のエネルギースキャンを行い、胸部及び腹部のヒーリングを開始する。しかし、強いレベルの冷気が蓮也の身体に入り込み、ヘティスのヒーリングがなかなか効かない。
ヘティス
「・・・どうすればいいの。なかなか体温が上がってくれないわ・・・」
ヘパイトス
「体温低下、危険、危険」
ヘティス
「わかってるわよ・・・!だから、今、こうやって全力でやってるの!」
蓮也の心拍数や血圧、呼吸が低下して来ており、極めて危険な状態であることがヘティスにはわかっていた。しかし、どうすることもできずにヘティスは焦った。
ヘティス
(もし、蓮也が死んじゃったら世界はどうなるの・・・?)
(いや、そうじゃなくって・・・、そんな後の世界のことじゃなくって・・・)
(・・・今は、この人に生きてもらいたい、とにかく蓮也が生きていて欲しい、私の願いは、ただ、それだけよ・・・)
(お願い、神様・・・)
ヘティスはしばらく目を閉じ、無心の状態となったが、やがて覚悟を決めた。
ヘティス
「ねぇ、ヘパ」
「・・・スリープ」
ヘパイトス
「おやすみなさい」
ヘティスの命令で、ヘパイトスはスリープ状態となり、ヘパイトスは部屋の片隅で蹲って眠った。
ヘティスは蓮也の冷えた身体から手を離すと、ランプの火を消し、自分の衣服を脱ぎ出した。
ヘティスは衣服を全て脱ぐと、ベッドの中に入り、仰向けで寝ている蓮也の冷えた身体に自分の素肌を重ね合わせた。そして、お互いの胸と胸を重ね合わせ、ヘティス自身の体温で、蓮也の身体を温めることを選択した。
ヘティス
(私、こんな姿で男の人と・・・)
ヘティスは、裸で異性と密着するなど考えたこともなかったので、表現することができないほどの恥ずかしさだった。しかし、今の状態では恥ずかしいとは言ってられない、そう言う思いの方が強かった。
ヘティス
(お願い・・・!死なないで・・・!)
ヘティスは目から涙を零しながら、強く蓮也の身体を抱きしめた。しかし、蓮也の体温はなかなか上がらず、心拍や呼吸が低下していくのが感じ取れた。
ヘティス
(呼吸をさせるには・・・)
(・・・どうやるんだろう)
ヘティスは自分の唇を蓮也の唇に重ね合わせた。
そして、口から呼吸を送ろうとした。その瞬間、ヘティスのハートが柔らかく暖かいエネルギーを放ち出した。そして、蓮也のハートと共鳴しだし、二人を包み込む。
ヘティスは蓮也の体温が少し上がったのを感じると、少し安心した。
ヘティス
(よかった・・・)
安心し、それまでの緊張と解けると、ヘティスは力尽きたかのように眠った。
蓮也は子供になった夢を見た。もしかしたら子供の頃のことかもしれない。
声
「レン~、レン~」
蓮也
「ボクはレンじゃないよ。蓮也だよ」
声
「なんでアナタはいつも無表情なの?なんで笑なわいの?」
蓮也
「別に楽しいことなんてないし、笑う意味なんてないだろ?」
声
「いつも一人で何もしていないし、何でそんなに無気力なの?」
蓮也
「別に何もすることないしね」
声
「人生、生きてたら楽しいことがきっとあるわ!今日はお姉さんが特別に抱きしめてあげる~!」
蓮也
「やめろよ~、鬱陶しいなぁ。そんなことしなくていいよ~」
夢の中で蓮也は、このような出来事があっただろうか、と自分に問いかけたが、記憶が曖昧だった。その後の夢は、光の中に自分自身が包まれていて、ただ温かかった。
しばらく時が過ぎ、夜明け近くになった頃、蓮也は目を覚ました。
そして、自分の身体に上に暖かく柔らかなものを感じた。
蓮也
(桃の香り・・・)
蓮也はヘティスの身体をゆっくりと離し、ヘティスを仰向けで寝かせ、そっと毛布をかけた。
蓮也は衣服を着ると、再び、外へと出る。
覚悟を決め、蓮也は最後のエネルギーでバリアを張る。
しばらくするとオオモノノヌシが現れる。
オオモノノヌシ
「胸に病を抱えたものよ、再び私に何の用だ」
蓮也
「俺は大切な人を、そして大切な人たちを守らなくてはいけない。それを今、心から感じた。オオモノノヌシよ、だから俺に力を貸してくれ」
オオモノノヌシ
「神に対して恐れもせず、そのものの言い様は気にくわぬが、お前の心境は一応確認した」
「それが正しければ永久凍結の滝は破壊されるが、もし無理なら命の保証はない」
蓮也
「いいだろう。神の前では神の力を見せるのが礼儀と言うもの」
再び蓮也は剣を抜き、潜在能力を解放する。
蓮也
「潜在運動系・・・、解放!」
「クンダリニー覚醒!」
蓮也の身体から螺旋状のエネルギーが立ち上がる。それは、まるで竜が天を駆けるようであった。
オオモノノヌシ
「おお、これぞまさに神の力・・・!」
蓮也
「エンチャント・ファイヤー」
「谷神よ、その永遠の眠りから目覚めよ!」
蓮也は、永久凍結した滝の一番上まで跳躍し、そこから下まで大きく薙ぎ払った。
すると、その巨大な氷結群は轟音とともに崩れ出した。
オオモノノヌシ
「見事だ。覚えておくがよい。技は心境なり。心境なき技は技ならずなり、と」
蓮也
「技は心境なり・・・」
オオモノノヌシ
「そして、七輪山のオオモノノヌシは、お前の力になることを約束しよう」
そう言うとオオモノノヌシは白い光と共に消えた。そして、吹雪は静まり、冷気は穏やかになり、雲の隙間から光が差し、蓮也を祝福するように照らし出した。そして、蓮也の中心部であるエネルギーセンターから、白い光が立ち上がる。
ヘティスは外から聴こえる轟音によって目を覚ました。部屋を見渡しても蓮也がいない。急いで服を着て外に出ると、蓮也が白いオーラで輝いているのが見える。ヘティスは蓮也に走り寄り、そして抱きついた。
ヘティス
「心配したんだから・・・、本当に心配したんだから・・・!」
蓮也は何も言わず、ヘティスの頭をやさしく撫でた。
その時、蓮也は自分でもわからないくらいであるが、ほんの少しだけ微笑んでいたかもしれない。
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