『シルフィード王国物語』〜 神聖法師イヴと女王シルフィア 〜

静風

文字の大きさ
22 / 112
天啓編

蒼翔光の庵

しおりを挟む
イヴとエリオットは幻翠林の奥地へと進んでいきました。だんだんと周りの光景が異様なものに変わっていき、イヴは気分が悪くなってきました。そして、その中で突如として幻が現れ、二人を襲いました。

エリオットは幻を斬りつけますが、幻は容易く消え去ることなく、二人を取り巻く幻想の世界がますます強くなっていきました。イヴは目を閉じて祈り続けましたが、幻想は侵食し続けます。エリオットも幻想の中で迷い、自分がどこにいるのか分からなくなってしまいました。

イヴは自分が持つ聖なる力を使い、幻想から自分たちを解放しようと試みますが、幻想はますます強くなっていきます。その時、エリオットがイヴに近づき、手を取って「大丈夫だ、俺が守る」と言います。イヴはエリオットに力を借り、二人は幻想の中で進んでいきました。

イヴとエリオットは幻に苦しんでいたが、そこに突然ツインヘッドウルフの親子がやってきた。親のツインヘッドウルフは自分たちを見つめ、子供の方を見ると、人間の言葉は話せないが、その目で「ついてこい」と訴えかけているかのようだった。イヴは瞬く間に親子の意図を理解し、エリオットに向かって「ついていこう」と言った。エリオットは戸惑いながらも、イヴがそのような判断を下したことに信頼を寄せ、二人は親子に続いて森の中へと進んでいった。

蒼翔光が住んでいる庵は、幻翠林の奥深く、滝のそばに建てられた小さな木造の建物である。周囲には自然の石を積んで作られた仕切りがあり、庭には草花や竹が植えられている。庵の入口には手作りのカーテンが掛けられ、その奥には畳敷きの部屋がある。部屋には仏壇や書斎が置かれ、蒼翔光が暮らす様子が窺える。庵は静かで、自然と一体となった雰囲気が漂っている。

二人が歩みを進めると、目の前に小さな庵が現れた。周囲には木々が生い茂り、静寂がただよっていた。庵は質素ながらも美しい建物で、屋根は古びた茶色の瓦で覆われ、外壁は木の板でできていた。正面には懐かしい感じの扉があり、庵の前には美しい庭園が広がっていた。庭園には青々とした草木や、色とりどりの花々が植えられ、滝や池が設置されていた。その中央には、一人の老人が座っていた。それは一面に輝く水面の上に浮かび、周囲には青い光が煌めいていた。

蒼翔光の白髪はやや膝に達し、髭は豊かに生えている。額のしわや目尻のくっきりとしたしわから、長い年月を生きた証が伺える。彼の顔は知恵と経験による穏やかな印象を与え、哲学的な思索によって深みを増している。表情は常に熟考的で、優しさと力強さが融合したような存在感を放っている。彼の容姿は、まさに幻翠林に住まう賢者そのものであった。

「すみません、こちらが蒼翔光さまの庵でしょうか?」とイヴが尋ねました。

老人は熟考の末、ゆっくりと頷きました。「そうです。私が蒼翔光です。何かご用でしょうか?」

エリオットは敬意を込めて頭を下げてから話を始めました。「私たちは、あなたの助けが必要なのです。」

蒼翔光は真剣な表情で聞き入っていました。「それは大変ですね。しかし、私はこの通り、もう老いぼれでして」

蒼翔光は、眉をひそめてイヴとエリオットを見つめました。彼の目は、深い哲学的思索による知恵と経験の痕跡が表情に刻まれており、穏やかで熟考的な印象を与えます。

「私の幻術魔法は、普通の人間には解けないように設計されています」と彼は言いました。「しかしながら、あなたたちはそれを簡単に突破してしまったようですね。」

イヴは、ツインヘッドウルフが案内してくれた、と言いました。エリオットは、それはイヴの力だと言いました。蒼翔光は、その答えに感心し、彼らをじっと見つめました。

「あなたたちは、まさに私が求めていたものです」と彼は言いました。「それならば、私もあなたたちの力になります。王国再建のために、私の魔法が必要とされるのであれば、私は喜んで手助けします。」

蒼翔光は目を閉じ、深いため息をついた。

「しかし、私はもう老いぼれで、長年の修行によって得た力も限界を迎えている。しかし、私の弟子エリク・シャドウスティールは、私以上の魔術師として、あなたたちの力になることができるでしょう」と蒼翔光は言いました。

イヴとエリオットは、驚きとともに、エリク・シャドウスティールについて詳しく聞くことにしました。蒼翔光は、エリクが幼い頃から自分のもとで修行し、魔法の才能を開花させたことを語りました。

「彼は私の一番弟子であり、私が死んだ後には私の術を受け継いでシルフィア王国を守ることになるでしょう」と蒼翔光は続けました。

エリオットは、エリクが本当に自分たちの力になることができるのか、心配そうに尋ねました。蒼翔光は、自信を持ってエリクを推挙した理由を説明しました。

「エリクは、魔法の知識や技術において私を凌駕するほどの才能を持っています。また、彼は非常に忠実で、誠実な人物です。私がここにいる間に、彼を訓練し、指導してきました。彼にはシルフィア王国を守るために必要な全ての力が備わっているのです」と蒼翔光は語りました。

イヴとエリオットは、蒼翔光の言葉に安心し、エリク・シャドウスティールのもとに向かうことに決めました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...