俺の前に出るな

マグロ

文字の大きさ
13 / 29
学園生活開幕

7 徒会長ルーランドサイド

しおりを挟む
入学式の後片付けが終わり職員室で用事を済ませ、俺は青藍会室に向かう為、誰もいない静かな廊下を1人歩いていた。

ずっと頭にあるのは入学式でのローライズ様。
ローライズ様を見た時からずっと考えてる。

「おい」

すると後ろから声を掛けられた。
誰もいなかった筈の廊下。
人の気配も何もなかった。

しかし、この声は忘れるはずもない。
たった今の今まで考えていたお方の声だ。

まさか…まさかまさかまさか!
認識した途端に入学式の時の様な震えが起き出す。

「おい。2度呼ばせるな」

怒気を含んだ声に素早く振り向く。

そこには焦がれてやまないローライズ様が壁にもたれながら2つの金色の瞳でこっちを見ていた。

あぁ…ローライズ様の瞳の中に俺だけが映っている。
ローライズ様から俺に接触して下さっている。

あまりの嬉しさに目が潤み出す。
足が震えているのもあり簡単に泣き崩れてしまった。

「何故泣く?」

静かな声が俺に問い掛けて来た。

「もっ…申し訳ありません。まさかローライズ様からこんなに早くお声を掛けて下さるとは思っておらず嬉しさのあまり…」

すぐに涙を拭き、足に力を入れ立つ。

「こんなに早く?嬉しい?お前、入学式の時、リロイか俺を睨んでいたな。あれは何故だ」

「にっ!睨んでなんかおりません!私は小さい頃からローライズ様にお慕いしております。なのでローライズ様と話をしていたリロイ君に恐れ多きながら嫉妬をしてしまったのです」

「俺の事は赤子の誕生の時以外、知らないはず。どこに慕う要素がある?」

「全てでございます!確かに容姿や性格は噂でしか聞いた事はありません。ですが、小さい頃からローライズ様の階級や全属性を操れるお力に憧れを抱きました。そして今日、ローライズ様のお姿を拝見し、粋な計らいにより素晴らしいショーを見せて頂いて、更にお心を掴まれてしまいました。私の小さい頃からの夢はローライズ様のお側で仕える事でした。今もその気持ちは変わっておりません」

涙は止まったはずなのにまた声が震えて来てしまった。

そしてローライズ様の射抜くようなトゲのある追求に全て包み隠さず答えた。

ローライズ様に嫌われたくない。
嫌われてしまったらもう生きて行く価値がない。

「合格」

ふいにローライズ様がそう言った。

「え?」

聞き返すと同時にローライズ様が手の平を上に向け、人差し指だけを出しクイッと自分の方に向ける仕草をした。

すると俺の体が物凄い速さでローライズ様の所へ飛んだ。
ぶつかる!と目を瞑ったが衝撃はなく、ローライズ様のすぐ目の前で止まった。

呆然としていると

「お前の気持ちはよく分かった。悪い気はしない。俺の近くにいる事を許そう。ルーランド」

そう言って下さったのだ。

初めて名前を呼ばれ近くにいる事を許された。

まさかこんなに早くローライズ様のお近くにいることを許されるとは思っていなかった。

嬉しさのあまりまた涙が出て来てしまった。

「もったいなきお言葉でございます…」

それしか言えなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

混血の子は純血貴族に愛される

銀花月
BL
ヴァンパイアと人間の混血であるエイリアは、ある日死んだ父の夢を見る。 父から「忘れないで」と言われた言葉を覚えていなかったエイリアだったが、それは幼馴染みも知らない自分に関する秘密だった。 その夢が発端のように…エイリアから漂う香りが、元祖の血を狂わせていく――― ※改稿予定

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

僕を守るのは、イケメン先輩!?

BL
 僕は、なぜか男からモテる。僕は嫌なのに、しつこい男たちから、守ってくれるのは一つ上の先輩。最初怖いと思っていたが、守られているうち先輩に、惹かれていってしまう。僕は、いったいどうしちゃったんだろう?

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

処理中です...