俺の前に出るな

マグロ

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学園生活開幕

10 ビルサイド

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会長の手の甲を見て言葉を失った。
ローライズ様と同じ模様が刻まれていたから。

入学式で見たアベリー様も右手の甲に同じように模様が刻まれていた。

あれはきっと、ずっとローライズ様の近くにいる事を許された人しか付けられない印。

学園を卒業してもローライズ様がまた姿を現さなくなったとしてもこの王国を出たとしてもずっと一緒にいられる印。

あれは俺が欲しかったのに。
俺はS階級で同学年だからローライズ様とクラスは一緒のはず。

そこから俺を認めてもらってずっと一緒にいれるようにコトを運ぼうとしたのに。

悔しい。何で会長なんだ。

一目惚れだった。
ローライズ様がお姿を見せた瞬間から全てが動き出したんだ。

S階級と判断された時から両親の期待が凄かった。
両親は互いにA階級。王家のバトラー(最上級の使用人)として働いていた。

自分の息子がS階級だと分かった時からずっとS階級についての心得を聞かされた。

この世界では階級がもっとも重視される。
だからどこの国の王もS階級の中で選ばれる。
血筋とかは関係なく。

王家の血筋の中でS階級が生まれたとしても器がなければ認められず王にはなれないのだ。

両親も王家に仕える身だからこそ将来の王になれるように厳しく指導された。

だけどそこに俺の意思はない。

小さいながらに悟ったのだ。
もし俺がS階級じゃなければ両親はこんなにも厳しくしなかったのではないか。
むしろS階級じゃなければ自由に生きられたのではないか。

小さい頃から色々と制限され友達とも遊べず関わっていいと言われた人達はA階級以上でなければいけないと言われ続けて来た。

S階級という俺に取っては重荷でしかない力。
別に偉くなりたいわけじゃない。
普通に生きたいんだ。

誰にも縛られず自由に過ごしたかった。

もう諦めたけど。
何もかも俺の意思は無視され続け、親の敷いたレールを歩くだけにした。

感情なんてもうとっくの昔に捨てた。
そうすれば何も考えなくていいし楽だから。

それはSSS階級と診断されたローライズ様も一緒だと思った。
生まれてすぐに全世界の絶対的王者になると決まっていて王室からも隔離されていたから。
ローライズ様も厳しい教育を受けている。と両親から聞かされていたから。

だけど違った。

入学式で初めてお姿を見た時のローライズ様は表情こそ無かったものの全てを受け入れ堂々とされていた。

俺のように全てを諦め、言われるがまま歩んで来たのでなく自分の意思をしっかりと持ち威圧感のあるそのお姿があまりにも綺麗に見えた。

あぁ、俺はこの方を支えるべくして力を持って生まれたんだ。
本気でそう思った。

なのに…

ローライズ様はなぜ会長を選んだのか。
どうして会長と接触したのか。

悔しくて堪らなかった。

だが今回は諦めない。
ローライズ様に勇気をもらった。
自分の意思で行動しよう。
もう親の敷いたレールは歩かない。

俺はローライズ様のお側に…。

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