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最終章
79 本人は外れている感覚ありません
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「試験勉強?」
「そうなの。今度東京に帰った時に進級試験があるの。だから、数日は死神業は少しにして勉強するから、るー君暇になっちゃう。るー君に悪いし、うちに来るのはお休みにしたらどうかと思って」
死神業で魂を一人回収して、家に帰りながら流雨にそう話す。
「俺は紗彩が勉強中でいいから、会いたいんだけれど。勉強も教えられるよ」
「いいの? 私もるー君に会えるのは嬉しいけれど。勉強中はジークと双子も一緒に勉強するの。ジークがなかなか勉強ができるんだ! るー君よかったら、ジークの勉強見てあげて?」
「いいよ」
家に帰り、さっそく勉強会である。ジークと双子と私が机に向かい、流雨がそれぞれの勉強を見ている。
「紗彩の課題、すごい量だね……全部終わってるの?」
「一ヶ月分の課題だから、量が多いの。私って一ヶ月に数日しか学校に通ってないから。でも課題はもう終わってるんだ。試験勉強も範囲が分かってるから、ちゃんと勉強してれば試験は受かるはずなの」
私は試験範囲の問題集を解いていく。流雨はジークが首を傾げている問題を丁寧に教えていた。双子の問題も解けているものを見ては、流雨は双子を褒めている。流雨はやはり子供が好きなのだろう。双子はもともと人懐っこいが、流雨には特に懐いているように見える。
勉強の休憩にみんなでお茶をしようとしていたところ、咲がやってきた。どうやらお菓子を狙っているようである。咲はわざと双子のお菓子を取って食べて、双子をからかっていた。
「もう、咲! お菓子はたくさんあるんだから、わざわざ人のを取らないの! ほらヴィー、こっちのを食べて」
泣きべそかきそうな双子のヴィーにお菓子を渡す。まったく、可愛いからって、咲はすぐ双子やジークをからかうのだ。
それからもお菓子とおしゃべりを楽しんでいると、双子のディーが歌を歌いだした。それを聞いていた流雨が口元に手をやり、なんだか震えている。
「これって、ちょっと前に流行っていた歌だよね。こんな歌だったっけ?」
「………………」
流雨が何を言いたいのか分かって、恥ずかしくて下を向いていると、咲が「何何!?」と近寄ってきた。
「俺、日本の最近の曲を知らないからさ、ディーがよく歌うこの曲は、こういう歌なんだと思ってたんだけど違うの?」
咲もニヤニヤとして私を見ている。どうせ答えが想像ついて言っているのだ。かあっと顔が赤くなっているのを感じながら、顔を上げた。
「何よぅ! 分かってて言ってるでしょ!? 私が歌う音痴な歌を、それが正しい音程だと思って耳コピしたディーが歌ったらこうなるの!」
「ぶはっ!」
咲が腹抱えて笑っている。そして流雨は下を向いて震えている。
「るー君も咲もひどい!」
「ごめっ……紗彩、最初からそうだろうなって思ってた!」
「そうでしょうとも!」
私だって、人が外れた音で歌っているのを聞くと、音程が違うのが分かるのだ。なのに、どうして自分で歌うと音程が外れるのか分からない。今だって、ディーが歌うのは音程が外れてるなと思っていたのだ。ディーは音程が外れた私の歌を聞いて、外れた音のまま歌っているだけで、つまりディー自身は歌がうまいということである。
「何度かディーが歌っているのを聞いて、それ外れてるよ、って教えるでしょ? そしたら、ディーが私にもう一回歌ってって言うの。だから歌ってあげると、外れてないよ? って言うの……。どうやって外れているのを教えればいいか分からなくて、私が迷子」
「はははっ」
別に笑わかせようと思っているわけではないのに。楽しそうですね。
「お、俺は紗彩の歌好きだよっ」
「震えながら言われても、うれしくないっ」
「ごめんごめん、そんな紗彩も可愛いから、見てて楽しくなっちゃうんだよ」
流雨は笑いながら私を抱き寄せた。可愛いって言えば許すと思っているな? 許すけどね!
それからも、ディーが別の曲を歌うけれど、どれも私経由で耳コピした歌なので、少しずつ音程が外れている。笑いのピークは去ったのか、流雨も咲も今は微笑ましそうにディーの歌を聞いていた。いや、もしかしたら、間接的に私が微笑ましいと思われている可能性もある。
あと一曲だけディーが歌ったら勉強を再開しようと、最後の歌を歌うディーを見ながら流雨が首を傾げた。
「この曲は聞いたことないな」
「え? そう? 有名な曲だと思うんだけれど。……もしかして音程が外れすぎてて分からないとか――」
「違う違う。これはそこまで外れてなさそうに感じるよ。流行りそうな曲にも感じるけど、俺は知らないと思って」
「すごく有名な歌だよ。女の子みたいな男の子が美声で歌ってて、すごく流行ったでしょ?」
「うーん、分からないな……」
歌っていたのは何という名前の男の子だったっけと思い出そうとするが、思い出せない。有名だったはずなのになぁ、と首を傾げる。
ディーが歌い終わった。さて、休憩終わり、と私たちは再び勉強をするのだった。
「そうなの。今度東京に帰った時に進級試験があるの。だから、数日は死神業は少しにして勉強するから、るー君暇になっちゃう。るー君に悪いし、うちに来るのはお休みにしたらどうかと思って」
死神業で魂を一人回収して、家に帰りながら流雨にそう話す。
「俺は紗彩が勉強中でいいから、会いたいんだけれど。勉強も教えられるよ」
「いいの? 私もるー君に会えるのは嬉しいけれど。勉強中はジークと双子も一緒に勉強するの。ジークがなかなか勉強ができるんだ! るー君よかったら、ジークの勉強見てあげて?」
「いいよ」
家に帰り、さっそく勉強会である。ジークと双子と私が机に向かい、流雨がそれぞれの勉強を見ている。
「紗彩の課題、すごい量だね……全部終わってるの?」
「一ヶ月分の課題だから、量が多いの。私って一ヶ月に数日しか学校に通ってないから。でも課題はもう終わってるんだ。試験勉強も範囲が分かってるから、ちゃんと勉強してれば試験は受かるはずなの」
私は試験範囲の問題集を解いていく。流雨はジークが首を傾げている問題を丁寧に教えていた。双子の問題も解けているものを見ては、流雨は双子を褒めている。流雨はやはり子供が好きなのだろう。双子はもともと人懐っこいが、流雨には特に懐いているように見える。
勉強の休憩にみんなでお茶をしようとしていたところ、咲がやってきた。どうやらお菓子を狙っているようである。咲はわざと双子のお菓子を取って食べて、双子をからかっていた。
「もう、咲! お菓子はたくさんあるんだから、わざわざ人のを取らないの! ほらヴィー、こっちのを食べて」
泣きべそかきそうな双子のヴィーにお菓子を渡す。まったく、可愛いからって、咲はすぐ双子やジークをからかうのだ。
それからもお菓子とおしゃべりを楽しんでいると、双子のディーが歌を歌いだした。それを聞いていた流雨が口元に手をやり、なんだか震えている。
「これって、ちょっと前に流行っていた歌だよね。こんな歌だったっけ?」
「………………」
流雨が何を言いたいのか分かって、恥ずかしくて下を向いていると、咲が「何何!?」と近寄ってきた。
「俺、日本の最近の曲を知らないからさ、ディーがよく歌うこの曲は、こういう歌なんだと思ってたんだけど違うの?」
咲もニヤニヤとして私を見ている。どうせ答えが想像ついて言っているのだ。かあっと顔が赤くなっているのを感じながら、顔を上げた。
「何よぅ! 分かってて言ってるでしょ!? 私が歌う音痴な歌を、それが正しい音程だと思って耳コピしたディーが歌ったらこうなるの!」
「ぶはっ!」
咲が腹抱えて笑っている。そして流雨は下を向いて震えている。
「るー君も咲もひどい!」
「ごめっ……紗彩、最初からそうだろうなって思ってた!」
「そうでしょうとも!」
私だって、人が外れた音で歌っているのを聞くと、音程が違うのが分かるのだ。なのに、どうして自分で歌うと音程が外れるのか分からない。今だって、ディーが歌うのは音程が外れてるなと思っていたのだ。ディーは音程が外れた私の歌を聞いて、外れた音のまま歌っているだけで、つまりディー自身は歌がうまいということである。
「何度かディーが歌っているのを聞いて、それ外れてるよ、って教えるでしょ? そしたら、ディーが私にもう一回歌ってって言うの。だから歌ってあげると、外れてないよ? って言うの……。どうやって外れているのを教えればいいか分からなくて、私が迷子」
「はははっ」
別に笑わかせようと思っているわけではないのに。楽しそうですね。
「お、俺は紗彩の歌好きだよっ」
「震えながら言われても、うれしくないっ」
「ごめんごめん、そんな紗彩も可愛いから、見てて楽しくなっちゃうんだよ」
流雨は笑いながら私を抱き寄せた。可愛いって言えば許すと思っているな? 許すけどね!
それからも、ディーが別の曲を歌うけれど、どれも私経由で耳コピした歌なので、少しずつ音程が外れている。笑いのピークは去ったのか、流雨も咲も今は微笑ましそうにディーの歌を聞いていた。いや、もしかしたら、間接的に私が微笑ましいと思われている可能性もある。
あと一曲だけディーが歌ったら勉強を再開しようと、最後の歌を歌うディーを見ながら流雨が首を傾げた。
「この曲は聞いたことないな」
「え? そう? 有名な曲だと思うんだけれど。……もしかして音程が外れすぎてて分からないとか――」
「違う違う。これはそこまで外れてなさそうに感じるよ。流行りそうな曲にも感じるけど、俺は知らないと思って」
「すごく有名な歌だよ。女の子みたいな男の子が美声で歌ってて、すごく流行ったでしょ?」
「うーん、分からないな……」
歌っていたのは何という名前の男の子だったっけと思い出そうとするが、思い出せない。有名だったはずなのになぁ、と首を傾げる。
ディーが歌い終わった。さて、休憩終わり、と私たちは再び勉強をするのだった。
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