Blue Star: Echoes

れみっしゅ

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Echo.02:ノートに咲いた星

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放課後の図書室は、ひとけが少ない分、光が綺麗だった。

夏の午後。校庭のセミの声を遠くに聞きながら、僕は読みかけの本を閉じて、次に何を読もうか迷っていた。

棚の奥にあった、少し色あせた本。
背表紙には金の文字で「星にまつわる100の物語」と書かれていた。

ぱらぱらとめくっていくと、目に飛び込んできたのは一輪の花の写真だった。

青くて、小さくて、でもまっすぐに咲いている花。
名前は――ブルースター。

その横には、こう書かれていた。

“この花には、誰かの夢が宿っていると信じられています”

夢が、花の中に?

僕は、それがどういう意味なのか分からなかった。

でもなぜか、その言葉が胸の奥に、やさしく刺さった。



家に帰って、母に訊いてみた。

「お母さん、ブルースターって知ってる?」

「あら、あの青い花でしょ?お母さん、昔もらったことがあるわ」

「誰から?」

「お父さんよ」

その言葉に、少しだけ胸が締めつけられた。

僕のお父さんは、もういない。
3年前、病気で亡くなった。

あの日から、家の中には静けさがずっと残っている。

でも、母のその一言で、ほんの少し、家の空気が動いた気がした。



次の日、図書室に戻った僕は、花のページを開いて、自由帳に書き写した。

“ブルースター――夢を託された花”

隣のページには、自分で描いた絵を貼った。
青い五枚の花びら。茎はまっすぐで、空に向かって伸びている。

その上に、少しだけ勇気を出して書いた。

「お父さんへ。
僕は、まだ夢が何か分かりません。
でも、この花を見ていたら、
きっと、何か見つけられるような気がします」



数日後の朝。担任の先生が言った。

「今日は特別に、語り手の先生が来てくれます。星の話をしてくれるそうですよ」

その人の名前は――稲生 耀作(いなお ようさく)先生。

図書室で読んだ“星の話”の著者と、同じ名前だった。

スライドに映ったのは、見覚えのある花の写真。

そう、ブルースターだ。

「皆さん、星に願ったことってありますか?」

教室が静まりかえる。
先生は続けた。

「誰かの願いは、言葉になって、花や星に宿ることがあります。
そして、それを受け取った誰かが――また誰かにそれを渡していく。
それが、“想いを継ぐ”ということです」

僕は、ノートの中の花を思い出していた。

「夢は、見つけるものじゃなくて、託されることもある。
君たちが誰かの願いを受け取ることがあるかもしれません。
そのとき、どうか、それを大切にしてください」



講演のあと、僕は勇気を出して稲生先生に声をかけた。

「先生……この花、僕、描いたんです」

自由帳を見せると、先生はとても静かな顔で、にっこり笑って言った。

「君の中にも、もう“星”が芽生えてるんだね」

それは、誰かに褒められたというより、
誰かが“見つけてくれた”ような気がした。



夜。

ベッドの中で、窓の外の空を見上げた。

空には、たくさんの星。

もしかしたら、どれかひとつが、僕のお父さんの願いかもしれない。

そう思うと、少しだけ寂しさがやわらいで、
心がふっと軽くなった。

ブルースター。
青い、小さな“夢の花”。

それはきっと、言葉にならなかった想いのかけら。
だけど僕の中で、たしかに“響いた”。

そして今、ノートの中でそっと咲いている。
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