幼馴染みに脅されてます

榎本 ぬこ

文字の大きさ
2 / 8

襲ってしまったのは幼馴染み

しおりを挟む


 その日はバイトに行って、散々ミスをして、やけ酒を飲んで。その後のことはよく覚えていない。
 ただ分かるのは。
「黒崎…?」
 隣で寝ているのは、昨晩自分が襲ったであろう相手。いつもは絶対に自分の家に上げたりしなかったのに、と考えて気付く。この男は、俺の幼馴染みではないか?
「ーーおい、ちょ、待って、え?」
 思考が停止しそうになるのを必死でフル回転させながら、男の顔を覗き込む。
(や、やっぱり黒崎だよな…?なん、で、黒崎が…)
 酒を飲んだ。過去最高記録だろうということは、目の前のテーブルの上の空き缶の量で分かる。
「…黒崎、起きろ」
「ーーん」
 昔と変わらず、目をつぶったまま起き上がった黒崎が目をこする。
「…とりあえず、おはよ」
「……おはよ」
 返事が来たことに安堵しながら、黒崎の身体に目が行く。裸なのは多分、俺が脱がせたから。俺も裸だし。
「…いまなんじ」
 おぼつかない足で立ち上がって床に落ちていた服を着る黒崎から目を背け、スマホを見る。
「…十一時」
「やっば。もう講義始まる。お前、もっと早くに起こせよ」
「はぁ!?」
 起こしてやったのに、何だよその言いぐさ!!
「ったく、役に立たねーな」
「おっまえ…!」
 こんなヤツ起こすんじゃなかった!!てか何でこんなヤツを家に入れたんだ、俺。
 幼馴染みの腐れ縁といっても、コイツと俺は昔から馬が合わなかったーーというか、そもそもの価値観が違うのだ。両親同士が仲良いからといって、俺たちまで仲良くする必要はなかった。けれど幼稚園から大学までずっと同じで。
 たまに代返をしてくれるのは感謝しているし、ノートを写させてくれるのも感謝している。
 けれどやっぱりコイツは嫌いだ、った、のに。
「…あ、そうだ」
 思い出したように黒崎が笑って言う。
「けっこー気持ち良かったぜ?」
 にやりと笑ったアイツは、呆けた俺を残して家から出ていった。
「…マジかよ…」
 俺のその呟きは、ゆっくりと宙に消えていった。
 幼馴染みを襲ってしまうほど、俺は不自由していただろうか…?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 毎日更新

処理中です...