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いつも通り…?
しおりを挟む信じられないなんて思いながらも時間は過ぎる。
[相変わらず来ないお前の代わりに代返しといたぞ]
そんなメッセージにどう返せばいいのか分からず、行かなかったのはお前にどんな顔をすればいいのか分からなかったと、そうも言えず。
ただ一言、いつものように返す。
[ありがと]
既読はついたけれどそれ以上会話も何もなく、終わった。
「…あ」
相変わらずチャラチャラしている男を見つけて、俺はどうしたものかと考えた。
が、考えるよりも早く、向こうが俺に気付いてこちらに近付いてくる。
「やっほ、あきら。久しぶりだなお前!」
「お、おう」
なんだコイツ、普通だな。
「次の講義必須だろ?いつまでも俺が代返してくれると思うなよ~」
「お、おう」
「行こうぜ」
「お、う…」
物凄く、いつも通り。本当にこれでいいのか?って思うほどいつも通りで、驚いた。
「そういえばさ、あきら」
「…なんだよ」
「お前のせいでケツめっちゃ痛いんだけど、どうしてくれるんだよ」
飲みかけていたお茶で噎せてしまった。余りにも突拍子もないことを言うから。いや、突拍子もないことを言うのはいつも通りなんだけれど。
……いつも通りって、何だっけ?
「…ごめん」
とりあえず謝ると、くくっと笑い声がする。
「お前、ほんとバカだな~」
「…お前に言われたくはないけど。俺のどこがバカなんだよ」
「別に?ていうかさ、このあと時間ある?話があるんだけど」
話という言葉に少しだけ緊張する。コイツがこんな風な表情をしたことはなかったから。
「…わかった」
「俺、お前のこと脅すわ!」
「ーーは?」
大学内のカフェテリアで、また突拍子もないことを言い出した黒崎に俺は間抜けな声を出す。
「だからさ。お前のこと脅すけど、いいよな?」
にっこり笑った黒崎は続ける。
「お前とのセックス、意外と気持ちよかったからさ。またシたいなって思って」
「ーーはあっ!?」
突然何を言い出すんだよ、コイツは!!!!
「…今までも何回かあるんだけどさ?あんなに気持ちよかったのって初めてなんだよね。だからまたヤってよ」
「何言ってるんだよ、ヤるわけねぇだろ!?」
「へー、そんなこと言っていいんだ?」
「な、なんだよ」
「言っただろ?脅しって。…さぁ、どうする?」
「お、脅しって何だよ、なにかあるのかよ」
グルグルと頭の中で色々と渦巻く。この用意周到な男のことだし、絶対に何か脅す材料があるに違いない。そしてそれは絶対に、相手を窮地に立たせるほどのものでないとこんな風に不敵な笑みを向けては来ないだろう。
「…クズが」
「知ってるけど?」
「死ねば?」
「手ぇ出したのはお前のくせに」
クスクス笑う黒崎にぐうの音も出ない。
「お前、彼女いたんじゃねぇのかよ」
「彼女ってか、彼氏かな。俺ってバイだから」
「ーーはあっ!?」
生まれてからずっとそばにいたのに知らなかった新事実。
「あれ、知らなかった?」
「知るわけねぇだろ!てかお前、ネコなのかよ!」
「それも知らなかったのかよ」
呆れたような眼差しを向けてくるけど、知らないものは知らないのだから仕方ない。
「んで?話を戻すけどさ。どうすんの?」
「っ…拒否権以外、ねぇくせに…」
「まぁね」
「……分かったよ、お前が飽きるまでな。俺も相手探さなくていいから楽だし」
「おっけー。飽きたら終わりってことで」
「…おう」
そうして、俺たちの奇妙な関係ーーではない、明確な『セフレ』という関係が出来たのだ。
黒崎は相変わらずいつも通り、普通に笑って先にカフェテリアを出ていった。
残された俺もコーヒーの残りを飲んで、その場を後にした。
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