国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ

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49,娼館の美少年

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 疲れて家に帰り、彼のために少しでも身綺麗にしていようと思ったところに押しかけてきた美少年。
 美少年と彼の話をまとめるとこうだ。

 ローレンを抱いたあの日、彼は『普通ですね』という感想をもらったのが納得いかず、とある娼館に出向いたのだという。
 だがもちろん女ばかりのその店に、接客をしていた美少年ことメイルと出会ったのだという。
 確かによく見てみれば彼は幼い頃の自分によく似ていた。
 破格の金を払う代わりに商品ではない彼を抱いたのだと。それも俺の名前を呼びながら、俺に触ったように。

「いや本当に違って、まさか貴方と結婚できるなんて思わなかったから」
「自分からゴリ押ししておいてよく言う」

 ため息をつきながらも、ローレンはほんの少し嫉妬と共に罪悪感を感じていた。彼との行為が普通だと言ったのは照れ隠しではない。本心だ。けれど口に出す必要はなかった。

「それで、君は何が目当て?お金かな?」
「っ…僕はロイス様を愛しています!聞きましたよ?僕はロイス様が初めてだけど、貴方はそうじゃないって!」

 すかさず睨むと、いや本当に違うんだと泣きそうな顔で訴えかけられる。

「だったら?初めてを捧げたから娶れなんて、娼館で働く身分で随分と図々しい。ここがどこか分かっているのか?」

 これは別にこの家に嫁いだ余裕なんかじゃなくて、武官として、この国の秩序を守ってきた者としての言葉だ。
 この国ではオメガは蔑まれる立場だ。けれどそれ以上に身分階級の壁は大きい。
 まだ幼いこの少年には分からないかもしれないが、高位貴族は平民に何をしても許されてしまうのが現状だ。

「私は君よりも年上なんだ。それなりに人生の年数を積んできた。こんな歳まで何の経験もないなんて、ないに決まってるだろう?理解したなら帰ってくれるかな。私はこの人と話すことがあるからね」

 目を細めて少年の頰に触れると、彼はボンっと顔を赤くして身を翻し、部屋を出て行った。

「…さて、どう調理してやろうか」
「ち、ちがっ…本当に、愛してるのは貴方だけで、」
「私も貴方を愛してますよ」
「えっ」

 状況を分かってるのか分かってないのか、嬉しそうに顔を上げる彼の首を思いっきり掴んでやる。

「ふざけんなよ?俺もアンタの名前で喘ぎながら他の男に抱かれてやろうか?」

 その瞬間、喰われると思った。彼の雰囲気がすぐに変わったのが分かって、身体を離そうと思うのにその前に抱え込まれる。
 気が付けば口を塞がれていて、舌が入り込んでくる。ねっとりと絡み合ってようやく満足したのか、彼の舌が糸を引いて離れていった。

「…もう二度としませんから」
「当たり前だ、ばか」
「……あと」
「…なんだよ」
「ローレンさんの、初めての人って」

 その言葉に思いっきり頭を叩いてやる。

「反省してないだろ」
「してますよ。けど私だけ全部知られて、しかも普通って言われて…!せめて元恋人の名前を知っておくくらいいいじゃないですか、勝手に私が警戒するくらい!」
「……バカだな、ほんとに」

 長くため息をついて、けれどもう一度レイに言ったことがあるのだから、別に隠す必要もないだろう。

「付き合ってたわけじゃないですよ。俺が一方的な片想いしてて、それを見てた人に慰めてもらっただけ」
「俺は貴方が初恋なのに…」

 ぶうっと頰を膨らまされても仕方ない。生まれたのは自分の方が先だし、ロイスと知り合う前の話だ。

「その人に何回抱かれましたか」
「それ聞いてどうすんの」
「上書きします。ソイツのこと忘れるくらい」
「なら、別に聞かなくてもいいだろ?」

 密着していた身体を上手く寄せて、彼の背に腕を回す。

「アンタと出会って間も無く一週間もヤり続けたんだから、とっくに越してますよ」

 ふわりと香水の匂いが鼻に届く。すっきりするような、爽やかな匂い。ふと脳裏に浮かんだ俺を慰めていた男は、いつも吐きそうなくらい甘ったるい匂いを漂わせていた。
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