国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ

文字の大きさ
43 / 64

43,それでも信じてはくれない。

しおりを挟む


 廊下を歩けば臣下が軽蔑した目で見てくる。この城中がウィリスとレイを好奇の目で見ていた。

(仕方ない、か…)

 周りからすれば、卑しい身分だったくせにリヴィウスを裏切って、アグシェルトを手玉にとった、まるで悪女のようだと思われているのだ。
 ただ、ウィリスに本当に申し訳ない。

「ごめんね…」

 不甲斐ない母親で、本当にごめんね。守ってあげたいのに、やはり自分の保身に回っている。
 だって傷付けたくない。大切な人を裏切りたくない。けれどもう自分だけが助かるのは、嫌なんだ。
 どうすればいいのか分からない。
 知らないよ、俺は。人を守る方法なんて知らないよ。だってずっと一人だったんだ。

「…かあさま」
「っ!アルバート…」

 突然後ろに立たれて驚いてしまう。どうしてここに、と尋ねる。

「かあさまがここにいるって聞いたから」
「どうかしたの?」
「…とうさまがこわかったの」

 あぁ。こんな小さい子にも、迷惑をかけてしまったのか。

「…ごめんね、アル…」
「僕は、大丈夫だよ」

 駄目なことですか。都合の悪いことを隠そうとするのは、そんなに悪いことですか?
 人間誰しも隠し事なんてあるんじゃないですか?後ろめたいことがあるんじゃないですか?
 そんなに俺は、間違っていますか?

(ねぇ、信じてよ)

 お願いだから、貴方くらいは信じてほしかったよ、陛下。何があったって信じるって、言って欲しかった。



「…レイ様」
「ん?」
「そろそろ折れません?」
「なんで?」

 何を折れるというのだろう。

「分かっているんですか?このままじゃアグシェルト様が、尋問ではなく拷問に切り替えられるんですよ!?」
「…心配してるんだ?」
「っ………」
「それをアグシェルト様に伝えてあげたら喜ぶと思うよ、あの人」
「レイ様!!」
「…アグシェルト様はまだ何も言わない?」
「無言を貫いています」
「そう。じゃ、俺も無言を貫こうかなーーねぇ、陛下?よろしいですか?」

 ガタリと部屋の扉が揺れる。

「…気付いていたのか」
「ローレンになら話すと思いました?まどろっこしいやり方をなさるのですね」

 クスクスと笑うと、二人揃って罰の悪そうな顔でうつ向く。けれどリヴィウスはすぐに向き直った。

「そろそろ観念して話したらどうだ」
「観念も何も、ウィリスは貴方の子ですよ。それに間違いはありませんから、何を話せと言われてもそれが全てです」
「だから、」
「ねぇ、ローレン」
「は、はい?」
「この足を捨てて逃げるのも素敵かもね。こんな窮屈な場所、やっぱり俺には合わないや」

 その瞬間、バンッと大きな音が響く。リヴィウスがテーブルを蹴ったのだ。ローレンは驚いて肩を震わせたけれど、レイは冷静だった。
 ゆっくりと視線を交わらせ、精一杯睨み付ける。

「もしもアグシェルト様が傷一つでも付くようなことがあれば、死んでやる」

 彼に救って貰った命だ。彼のために使えるのならば本望だ。

「…ふざけるな。そんなに、アグシェルトが大切か」
「えぇ、大切です」
「俺よりもか」
「…そういう言い方は、好きじゃない」

 うっかりロイス兄様と答えかけたのは内緒だ。

「ーーおい、ローレン。ちゃんとコイツを見張っておけ」
「はっ」
「…逃げても地の果てまで追いかけるからな」

 笑ってしまう。そんなことを言うくらいなら、信じてくれたらいいじゃないか。

「あんまりしつこいと、他に男作りたくなっちゃいますよー」
「…馬鹿が」

 知ってる。自分が馬鹿だってこと、本当はずっと前から知ってたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

複数番ハーレムの中に運命の番が加わったら破綻した話

雷尾
BL
合意を得なきゃだめだよね。得たところで、と言う話。割と目も当てられないぐらい崩壊します。

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

処理中です...