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過去編
彼女を思って
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翌日の昼休み、僕らはみんなで作戦会議をしていた。
各々が意見を出し合い、部活動設立において必要なことを挙げていった。一番に挙がったのは、もちろん部室だ。
みんなにあてはあるかと聞いてみる。もちろん、そんなものはなかった。第一全員が帰宅部なのだ。同じクラスである聡と美玖は、それなりに同じ学年の人間との交流があるはずだ。だから彼らならば話は早いだろうと確信していたのだが、そんなことはなかった。
そもそも僕は馬鹿だった。「あの教室使ってないし、部室に使えるっぺ」と言える生徒などいないに決まっている。やはり教師に頼るしかないか。
そうして、僕は美幸先生に掛け合った。
「美幸先生」
僕は先生をそう呼んだ。彼女は愛嬌があり、生徒からもよく好かれている。この高校の本元である大学の医学部では、准教授も務めているのだが、それと同時に高校の担任を受け持っている。副業は認められているのかについて疑問はあるものの、誰も聞けていない様子だ。
あまりの万能さに驚かれるのか、一説には二人いるらしい。
そんな美幸先生ならば、部室のあてを見つけることくらいお安い御用だろうと思い、近付いたというわけだ。
「なんだい? 石岡くん」
「実はですね、部活を作ろうと思いまして」
「石岡くんが? へぇ~良いね、どんな部活?」
「実は、僕の能力を使って人生相談でも受けようかなと思いまして」
この能力については美幸先生にも教えていた。正確には教えたというより、知られたという方が正解か。
ある日、僕の挙動不審なところを見た美幸先生は疑ったのだ。『未来視』を言い当てたわけではないが、何かがあると思ったそうだ。そして問い詰められた僕は、美幸先生になら話してもかまわないだろうと思い、全てを話したのだった。
その全てには、美玖や聡にも話していないことも含まれていて、身近な人間の中だと、一番の理解者となっている。
「なるほどね、良いと思うよ。便利な能力だしね。でも、相談を受けても占いのような使い方しかできないのじゃない?」
「僕一人だとそうですね。なので、解決を手伝うアドバイザー兼客集めのような仕事を他三人に頼んでいます」
「メンバーは私の知っている人かな?」
「ええ、一人だけ恐らく知らないと思います。四人は僕、美玖、聡、それと一年生の咲美未来という女の子が集まりました」
「あ、咲美さんね。知っているよ」
「本当ですか?」
「まぁ、いろいろとね」
なるほど。確かに、進学早々校庭のそばで俯いて座っていたら目立ちもするか。
「石岡くん、咲美さんと仲良くなったのだね。これからも頼んだよ」
「もちろんです。それで話は変わるのですが、仮名人生相談部の部室に困っていまして、ぜひとも美幸先生に協力を仰げたらなと思いましてね」
「なるほどね。それなら私が打って付けの話だね。もちろん、石岡くんに協力させてあげるよ。なんせその能力は興味深いからね」
「本当ですか!」
「うんうん、もちろんだよ。それに、顧問にも困っていない? 私が担当してあげてもいいよ」
「本当ですか!」
「うん、部室はあてがあるよ。医学部棟になってしまうけど、それでも良い?」
「もちろんですとも!」
なんてするするといくのだろうか。美幸先生に頼んだのはどうやら大正解だったようだ。早速みんなへと報告に行き、結果を喜んだ。このまま行けば、僕らの作戦は上手くいきそうだ。
翌日、改めて美幸先生に呼び出された。職員室の窓辺に立った先生を見つけ、「おーい美幸先生」と呼んだ。
美幸先生は、僕を小さく手招きしこそこそとした声で言う。
「こっちへ来て」
僕は怪しんだものの、言われたとおりにする。そばへと近づくと、しゃがみ込んで話すことを求められた。
「石岡くん、口裏を合わせよう」
「な、なんですって?」
「私は、この部活を確実に作りたいと思っているんだ。石岡くんもそう思っているでしょう?」
「ええ、もちろんですが」
「私は残念ながら、部活の顧問というのは初めてなんだ。だから、よく知らないのだけど、疑り深い私は、推薦のような形で部活設立の申請をしても、通らないんじゃないかと思ってしまう」
「そ、そうですか? そんなことはないと思いますけど……」
「いいや、念には念を入れよとよく言うだろう? だから口裏を合わせよう」
「え、ええ」
美幸先生の意外な面を見たと思った。思いのほか、臆病なようだ。
「そこでだ。私は敢えて、部活のことなど何のことやらと知らんぷりするから、石岡くんは目の前にいる教師にでも能力を使って欲しい。そして信ぴょう性を持たせた後、私が提案する形で顧問と部室をあてがう。良いね?」
「ええ、わかりました」
そこまでせずとも作れると思うが、と僕は素直に思った。しかしイエスマンなため、ここはええと応じるしかなかったのだった。
そして、迎えた部活設立の申請。結果は、すんなりと通った。ちょっとしたミスはあったものの、何ら障害となる壁はなかった。何故あそこまで不安に思っていたのか定かではないが、どうやら美幸先生の思い過ごしだったようだ。
遂に、「部活設立が決まった」という話をみんなへと報告しに行った。その結果を聞き、一番喜んでいたのは未来だった。本当に良かった。
数日経つと、美幸先生に案内されて部室に向かった。医学部棟には初めて来たので、少し意外に思いながらも視線を方々へと向けた。
「ここが、君たちの部室です」
鍵を開け、美幸先生は言った。
扉を開け、部室の中を見てみると、種々雑多なものが置いてあった。右側には大きなラックが並んでおり、そこには医学部で使っているだろう専門書が大量に置いてある。
中央には二つの長方形の机が長辺同士合わさっていて、周りには数脚の椅子が収まっている。
奥の窓側には一枚のホワイトボードがあり、それら周りの床には不要と思われる紙類が放ってある。
これは、掃除をしなければならないな。それでも使えるものは多くありそうだった。
「よーし、私たちで掃除しますか! やろう未来ちゃん」
「うん、がんばろー」
ラック上にある専門書類は、触れないでくれと頼まれたので、そこには手を付けず、不要な紙類をゴミ捨て場へと持って行き、床全体を掃き掃除した。その後、雑巾で拭き掃除をして終了となった。思いのほかすぐに終わった。
「ふぅ~終わったー」
聡は、大して動いてはいないものの息を大きく吐き、椅子へと座った。その姿を見て僕は言う。
「そうだ、まずは席を決めよう」
「そうですね、ヒロくんが先に決めて良いですよ」
「うん、兄さんがリーダーだからね」
「俺も異議なし」
そう言って、僕を囃し立てる。それを聞いて嬉しくなったので、調子に乗って窓側奥の椅子に座り、踏ん反り変えった。我ながら様になっているような気がしなくもないが、気のせいかもしれない。
他三人は各自自分の席へと着いた。聡は僕から見て右、左側には未来と美玖が順に座っている。
様になっているじゃないか……
「美幸先生、少し僕の前に座ってください」
「はい、了解」
そうして座り、僕に対面する。僕は率直に近いと思った。
「先生、近いですね」
「そう?」
「ほら、僕にはいろいろありますから」
察してよという意味を込めて言った。合点のいった美幸先生は言う。、
「ああ、なるほど。じゃあ、もう二つ長机を用意しようか」
僕は続けて「お願いします」と言うと、美幸先生はそれを聞いて立ち上がり、この場を離れた。
座りながら、周りを眺める。未来と美玖は二人で最近ハマっているスイーツの話をしていて、聡はというと何やら小説を取り出して読んでいる。時々、未来から話し掛けられ、最近読んだ小説の話や、ふと気になった未来と美玖の顔が瓜二つなことについての話をした。
そして思った。
心地が良いな。
今までの中学生活と高校生活では、何の部活動にも所属していなかった。それに、昨年末からずっと孤独感で一杯だった。
そんな中こうして、仲間が増え、人生を楽しめるようになった。自分が居てもい場所、自分が楽しいと思える場所があるということはこんなにも心地が良いのか、と初めて知った。
みんなには、過去の自分の行いとこれから起こるであろう『未来』を隠している僕が、こんなに幸せで本当に良いのだろうか。みんなは僕のことをどう思っているのだろうか。仲間と思って信頼してくれているのだろうか。
こうして考えていると、嬉しさと申し訳なさの綯い交ぜになった感情が心を動き回り、目からは涙が溢れてくる。それに気付いた未来は言う。
「大丈夫ですか? 元気出してください。わたしたちはこれからずっと一緒ですよ」
「うん、うん。ありがとう」
僕はワイシャツの袖で涙を拭いた。
「何泣いてるんだヒロ。調子狂うだろうが」
「そうだよ、兄さん、元気出そう」
こうしてみんなは僕を励ましてくれる。
元はと言えば、この部活は未来のためを思って設立した部活だというのに、こうして僕だけが元気付けられていては意味がないじゃないか。そう考えるといてもたってもいられなくなり、頬をぱしんと叩いた。
「よし、みんな、この部活のモットーを決めよう」
「いきなりだねヒロくん。モットーですか、何が良いでしょうか」
「うーん、みんな明るく仲良く?」
「美玖ちゃんのそれはないと思うな。俺は現実的な話をすると、一ヶ月で三十人の相談に乗る! だな」
「聡、お前はなんて営業職に向いている人間なのだろうな。却下です」
「おい、ヒロ。それじゃあお前は何だって言うんだ」
「そうだなぁ……」
熟考し、一つ良い案を思いついた。
「僕らは一緒に昼食を食べる仲から始まった関係だ。そして、この部活動の本分は人生相談という名の奉仕活動だよな。ようは善行なわけだ。よって、一つダジャレを思いついた。一日一膳と一日一善という言葉をモットーにしようと思う。食器を載せる台の膳と、善人の善だ」
「お、おう。ヒロは変なことを思いつくな。でも、一日一善って結局のところ俺が言った一ヶ月三十人とほとんど同じじゃないか? 結局、一ヵ月経てばひと月三十善になるぞ」
「それなら私の案でも良いと思うけどなぁ」
そうして聡と美玖が冷たい反応を見せる中、未来は言う。
「わたしは良いと思います! 活動の趣旨と合致したモットーは、それ以上のものがないと思います!」
僕は大いに喜んだ。
「多数決で二対二だな。僕の権限が三人分だからよって僕の案が採用だ!」
そう言うと、美玖と聡は、「やれやれ」と言い、不承不承ながらも承諾した。それを見た僕は最後に一致団結の意味を込めてこう言った。
「みんなで頑張ろう」
三人は僕の言葉を受け、頷いた
各々が意見を出し合い、部活動設立において必要なことを挙げていった。一番に挙がったのは、もちろん部室だ。
みんなにあてはあるかと聞いてみる。もちろん、そんなものはなかった。第一全員が帰宅部なのだ。同じクラスである聡と美玖は、それなりに同じ学年の人間との交流があるはずだ。だから彼らならば話は早いだろうと確信していたのだが、そんなことはなかった。
そもそも僕は馬鹿だった。「あの教室使ってないし、部室に使えるっぺ」と言える生徒などいないに決まっている。やはり教師に頼るしかないか。
そうして、僕は美幸先生に掛け合った。
「美幸先生」
僕は先生をそう呼んだ。彼女は愛嬌があり、生徒からもよく好かれている。この高校の本元である大学の医学部では、准教授も務めているのだが、それと同時に高校の担任を受け持っている。副業は認められているのかについて疑問はあるものの、誰も聞けていない様子だ。
あまりの万能さに驚かれるのか、一説には二人いるらしい。
そんな美幸先生ならば、部室のあてを見つけることくらいお安い御用だろうと思い、近付いたというわけだ。
「なんだい? 石岡くん」
「実はですね、部活を作ろうと思いまして」
「石岡くんが? へぇ~良いね、どんな部活?」
「実は、僕の能力を使って人生相談でも受けようかなと思いまして」
この能力については美幸先生にも教えていた。正確には教えたというより、知られたという方が正解か。
ある日、僕の挙動不審なところを見た美幸先生は疑ったのだ。『未来視』を言い当てたわけではないが、何かがあると思ったそうだ。そして問い詰められた僕は、美幸先生になら話してもかまわないだろうと思い、全てを話したのだった。
その全てには、美玖や聡にも話していないことも含まれていて、身近な人間の中だと、一番の理解者となっている。
「なるほどね、良いと思うよ。便利な能力だしね。でも、相談を受けても占いのような使い方しかできないのじゃない?」
「僕一人だとそうですね。なので、解決を手伝うアドバイザー兼客集めのような仕事を他三人に頼んでいます」
「メンバーは私の知っている人かな?」
「ええ、一人だけ恐らく知らないと思います。四人は僕、美玖、聡、それと一年生の咲美未来という女の子が集まりました」
「あ、咲美さんね。知っているよ」
「本当ですか?」
「まぁ、いろいろとね」
なるほど。確かに、進学早々校庭のそばで俯いて座っていたら目立ちもするか。
「石岡くん、咲美さんと仲良くなったのだね。これからも頼んだよ」
「もちろんです。それで話は変わるのですが、仮名人生相談部の部室に困っていまして、ぜひとも美幸先生に協力を仰げたらなと思いましてね」
「なるほどね。それなら私が打って付けの話だね。もちろん、石岡くんに協力させてあげるよ。なんせその能力は興味深いからね」
「本当ですか!」
「うんうん、もちろんだよ。それに、顧問にも困っていない? 私が担当してあげてもいいよ」
「本当ですか!」
「うん、部室はあてがあるよ。医学部棟になってしまうけど、それでも良い?」
「もちろんですとも!」
なんてするするといくのだろうか。美幸先生に頼んだのはどうやら大正解だったようだ。早速みんなへと報告に行き、結果を喜んだ。このまま行けば、僕らの作戦は上手くいきそうだ。
翌日、改めて美幸先生に呼び出された。職員室の窓辺に立った先生を見つけ、「おーい美幸先生」と呼んだ。
美幸先生は、僕を小さく手招きしこそこそとした声で言う。
「こっちへ来て」
僕は怪しんだものの、言われたとおりにする。そばへと近づくと、しゃがみ込んで話すことを求められた。
「石岡くん、口裏を合わせよう」
「な、なんですって?」
「私は、この部活を確実に作りたいと思っているんだ。石岡くんもそう思っているでしょう?」
「ええ、もちろんですが」
「私は残念ながら、部活の顧問というのは初めてなんだ。だから、よく知らないのだけど、疑り深い私は、推薦のような形で部活設立の申請をしても、通らないんじゃないかと思ってしまう」
「そ、そうですか? そんなことはないと思いますけど……」
「いいや、念には念を入れよとよく言うだろう? だから口裏を合わせよう」
「え、ええ」
美幸先生の意外な面を見たと思った。思いのほか、臆病なようだ。
「そこでだ。私は敢えて、部活のことなど何のことやらと知らんぷりするから、石岡くんは目の前にいる教師にでも能力を使って欲しい。そして信ぴょう性を持たせた後、私が提案する形で顧問と部室をあてがう。良いね?」
「ええ、わかりました」
そこまでせずとも作れると思うが、と僕は素直に思った。しかしイエスマンなため、ここはええと応じるしかなかったのだった。
そして、迎えた部活設立の申請。結果は、すんなりと通った。ちょっとしたミスはあったものの、何ら障害となる壁はなかった。何故あそこまで不安に思っていたのか定かではないが、どうやら美幸先生の思い過ごしだったようだ。
遂に、「部活設立が決まった」という話をみんなへと報告しに行った。その結果を聞き、一番喜んでいたのは未来だった。本当に良かった。
数日経つと、美幸先生に案内されて部室に向かった。医学部棟には初めて来たので、少し意外に思いながらも視線を方々へと向けた。
「ここが、君たちの部室です」
鍵を開け、美幸先生は言った。
扉を開け、部室の中を見てみると、種々雑多なものが置いてあった。右側には大きなラックが並んでおり、そこには医学部で使っているだろう専門書が大量に置いてある。
中央には二つの長方形の机が長辺同士合わさっていて、周りには数脚の椅子が収まっている。
奥の窓側には一枚のホワイトボードがあり、それら周りの床には不要と思われる紙類が放ってある。
これは、掃除をしなければならないな。それでも使えるものは多くありそうだった。
「よーし、私たちで掃除しますか! やろう未来ちゃん」
「うん、がんばろー」
ラック上にある専門書類は、触れないでくれと頼まれたので、そこには手を付けず、不要な紙類をゴミ捨て場へと持って行き、床全体を掃き掃除した。その後、雑巾で拭き掃除をして終了となった。思いのほかすぐに終わった。
「ふぅ~終わったー」
聡は、大して動いてはいないものの息を大きく吐き、椅子へと座った。その姿を見て僕は言う。
「そうだ、まずは席を決めよう」
「そうですね、ヒロくんが先に決めて良いですよ」
「うん、兄さんがリーダーだからね」
「俺も異議なし」
そう言って、僕を囃し立てる。それを聞いて嬉しくなったので、調子に乗って窓側奥の椅子に座り、踏ん反り変えった。我ながら様になっているような気がしなくもないが、気のせいかもしれない。
他三人は各自自分の席へと着いた。聡は僕から見て右、左側には未来と美玖が順に座っている。
様になっているじゃないか……
「美幸先生、少し僕の前に座ってください」
「はい、了解」
そうして座り、僕に対面する。僕は率直に近いと思った。
「先生、近いですね」
「そう?」
「ほら、僕にはいろいろありますから」
察してよという意味を込めて言った。合点のいった美幸先生は言う。、
「ああ、なるほど。じゃあ、もう二つ長机を用意しようか」
僕は続けて「お願いします」と言うと、美幸先生はそれを聞いて立ち上がり、この場を離れた。
座りながら、周りを眺める。未来と美玖は二人で最近ハマっているスイーツの話をしていて、聡はというと何やら小説を取り出して読んでいる。時々、未来から話し掛けられ、最近読んだ小説の話や、ふと気になった未来と美玖の顔が瓜二つなことについての話をした。
そして思った。
心地が良いな。
今までの中学生活と高校生活では、何の部活動にも所属していなかった。それに、昨年末からずっと孤独感で一杯だった。
そんな中こうして、仲間が増え、人生を楽しめるようになった。自分が居てもい場所、自分が楽しいと思える場所があるということはこんなにも心地が良いのか、と初めて知った。
みんなには、過去の自分の行いとこれから起こるであろう『未来』を隠している僕が、こんなに幸せで本当に良いのだろうか。みんなは僕のことをどう思っているのだろうか。仲間と思って信頼してくれているのだろうか。
こうして考えていると、嬉しさと申し訳なさの綯い交ぜになった感情が心を動き回り、目からは涙が溢れてくる。それに気付いた未来は言う。
「大丈夫ですか? 元気出してください。わたしたちはこれからずっと一緒ですよ」
「うん、うん。ありがとう」
僕はワイシャツの袖で涙を拭いた。
「何泣いてるんだヒロ。調子狂うだろうが」
「そうだよ、兄さん、元気出そう」
こうしてみんなは僕を励ましてくれる。
元はと言えば、この部活は未来のためを思って設立した部活だというのに、こうして僕だけが元気付けられていては意味がないじゃないか。そう考えるといてもたってもいられなくなり、頬をぱしんと叩いた。
「よし、みんな、この部活のモットーを決めよう」
「いきなりだねヒロくん。モットーですか、何が良いでしょうか」
「うーん、みんな明るく仲良く?」
「美玖ちゃんのそれはないと思うな。俺は現実的な話をすると、一ヶ月で三十人の相談に乗る! だな」
「聡、お前はなんて営業職に向いている人間なのだろうな。却下です」
「おい、ヒロ。それじゃあお前は何だって言うんだ」
「そうだなぁ……」
熟考し、一つ良い案を思いついた。
「僕らは一緒に昼食を食べる仲から始まった関係だ。そして、この部活動の本分は人生相談という名の奉仕活動だよな。ようは善行なわけだ。よって、一つダジャレを思いついた。一日一膳と一日一善という言葉をモットーにしようと思う。食器を載せる台の膳と、善人の善だ」
「お、おう。ヒロは変なことを思いつくな。でも、一日一善って結局のところ俺が言った一ヶ月三十人とほとんど同じじゃないか? 結局、一ヵ月経てばひと月三十善になるぞ」
「それなら私の案でも良いと思うけどなぁ」
そうして聡と美玖が冷たい反応を見せる中、未来は言う。
「わたしは良いと思います! 活動の趣旨と合致したモットーは、それ以上のものがないと思います!」
僕は大いに喜んだ。
「多数決で二対二だな。僕の権限が三人分だからよって僕の案が採用だ!」
そう言うと、美玖と聡は、「やれやれ」と言い、不承不承ながらも承諾した。それを見た僕は最後に一致団結の意味を込めてこう言った。
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