男装の英雄は用済みだと棺桶に入れられた

翔千

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気がついたら棺桶の中

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 寝苦しく感じる意識の中、レインは息苦しさとむせ返るような花の匂いに目を覚ました。

 ここは、?

 言葉を出そうとしたが、まだ身体が痺れて口どころか指一本動かせない。
 両手は胸の前で組まされている。
 目の前には壁。四方八方壁。
 人一人入る箱。寝返りは打てそうに無いほど狭い。
 そして箱の中に敷き詰められた真っ白い花。

 箱?いや、箱と言うよりも・・・・・。

 レインはすぐに自分が長方形の棺桶に入れられた事を理解した。

 なんで、私が棺桶に??

 そう、まだよく回らない思考で考えていると、

「レイン!!!なんで、折角ジルベールが英雄になって帰って来たのに!!」

 母上の悲痛な声が聞こえて来た。

「レイン、お前はジルベールに比べれば不出来な子だった。だが、姉としてせめて弟の生還を共に喜ぶ事は出来なかったのか?」

 父上の声も聞こえる。

「姉さん。僕に嫉妬して男の様な真似事をするような人だったけど、せめて、普通の女性として幸せになって欲しかったよ」

 ジルベール。

 何を言っているんだこの人達は。
 今までそんなに気にかけてくれた事も無かったし、なんでずっと侯爵家の別荘で引きこもっていたジルベールが英雄なんだ?
 不出来な子?どんなに頑張っても成果を出しても、まともに見てもくれなかったくせに。男の様な真似事?男装をする様に強要したのは両親なのに、私が悪いの?
 男装して、仮面を付け、魔王軍の討伐して、やっと家族に認められたと思ったのに。

 怒りよりも、どうしようも無い虚しさがレインを襲う。
 身体も口も動かせない。
 腕の一つでも動かせれば、今すぐ目の前の壁を打ち抜いて、文句を言えるだろうが、まだ身体が痺れて動けない。

「ルヴァンヌ卿」
「ああ、頼む」
『ッ!?』

 棺桶がグラリと揺れた。
 感覚的に、下に降ろされていく感覚だ。
 2Mくらいの深さに降ろされた。
 ひんやりとした冷気が壁越しに感じる。

 ドサ、ドサ、ドサ。

 目の前の壁に何かが落とされるような音と振動が棺桶内に響いた。
 これは、土の匂いだ。

 ああ、私、埋められるんだ。
 まさか、息子可愛さに、実の娘にここまでやるとは、怒りを通り越してある意味感心するよ。

 レインはぼんやりそう思った。

 そして、何かが吹っ切れた。

 徐々に圧迫感が増していく。
 しばらくすると、降ってくる土の音が止んだ。
 息苦しさと圧迫感が半端ない。
 棺桶の中に残っている空気は数分も持たないだろう。
 このままでは、どちらにしろ窒息してあの世行きだ。

 もう、いいよね?

 棺桶の中でレインは小さく笑った。

 レインは出来る限り大きく息を吸い込んだ。
 身体中の魔力を右手の人差し指に集中させる。魔力の光を灯す指先。
 痺れる身体を必死に動かし、震える指で目の前の壁に、魔法陣を描く。
 指でなぞった所から光が連なり歪んだ線が生まれ、指を壁から一度も離すことなく歪な魔方陣が出来る。

「ッッ、」

 棺桶内の酸素が薄くなって来たのか、目の前が霞んできた。
 ・・・・・時間がない。

「ッ、ヴォレ!!」

 棺桶内に光が溢れ、レインを包み込み、一瞬でレインの身体が棺桶の中から消えた。


 
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