男装の英雄は用済みだと棺桶に入れられた

翔千

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「・・・・・・・ヨハン。この事は、私の事は、ジュネード伯爵家にも伝わっているの?」
「!、はい。伝わっています」

私の質問にヨハンは答える。

「ジュネード伯爵卿に手紙を送り、その日の内に屋敷の魔写鏡が繋がり、連絡がありました。ジュネード伯爵卿も『別れの5日間』に参加を希望されておりました。
ですが、ご主人様が不要だと断りを入れていました」

元両親はあの人の事をあまりよくは思っていなかった。
でも、

「今なら逆に、好都合かも・・・・」

そう呟いたレインがソファから立ち上がる。

「お嬢様?」
「ねえ、ちょっと私に付き合ってくれない?」
「え?」

レインの言葉に、皆、目を見開く。

「今から、ジュネード伯爵に会いに行こう思う」
「「「「「ええええ!?!?」」」」」

レインの言葉に若い使用人の4人とエドモンドが声を上げて驚く。

「ジュネード伯爵卿に、ですかい?お嬢様、でも、また、なんで?」

困惑するトムゾワーズ。

「ジュネード伯爵卿は、私の叔父上。幼い頃数回あった位にしか面識は無いけど、とても可愛がってもらったんだ。もしかしたら、力を貸してくれるかもしれない」

トムゾワーズの質問に私は答える。

ジュネード伯爵卿は元父親の弟。
現在、アリニア王国の小さな領地を治める領主だ。

私が10歳になるまで何度か屋敷を訪れて会ったことがあるが、とても優しく、弟ばかり贔屓する両親に対して叔父上はよく私を可愛がり、優しくしてくれた。

幼心で、叔父上が父親だったらと何度も思った。

だが、ある頃から、叔父上はパッタリと屋敷を訪れなくなってしまった。
それ以降、私は叔父上と連絡する事も魔写鏡で顔を合わせて話す事も両親から禁止されてしまった。
辛うじて手紙だけは両親の目を盗んで内緒でヨハンに頼み、年に二度だけ送る事が出来た。
だが、魔王軍討伐に行ってから一年半以上、手紙は送る事が出来なかった。

「正直、数年間顔を合わせいないし、私がもうこの世に居ない人間だとジュネード伯爵家に伝わっているのなら、信じてもらえるかは分からない。
・・・・・・・でも、叔父上なら、皆んなを匿ってくれると思うんだ」
「ん??、って、お嬢様、皆んなって、ここに居る全員でジュネード伯爵卿の所へ行くんですか!?」

私の提案に驚いていたレヴィが慌て声を上げる。

「うん、私の事はともかく、みんなの事情は恐らく叔父上も無碍にはしないと思う。
最悪叔父上の元で働けなくても、多分、叔父上がちゃんとした働き口を斡旋してくれると思う。
まぁ、半ば叔父上の所に押し掛けと丸投げになってしまうけど、皆んなが不安定な職を探すよりもずっと効率がいい筈、」
「お嬢様・・・・」
「ん?何、婆や?」

私の言葉を遮りるように婆やが声をかけるか。
婆や顔を見ると、何故か呆れ顔の婆やが。
何故か他の皆んなもため息を吐きながら呆れ顔をしている。

「え?どうしたの婆や、私何か変な事言った?」
「・・・・いいえ、変と言うよりも、」

そう言いながら婆やが神妙な顔でツカツカと私の元へ歩み寄り、私の正面まで来た婆やが、

ムギュ

「ウニュ!?」

いきなり私の両頬を引っ張り出した。
痛くは無いけど、変な声が出てしまった。

「どうして、そう、他人の事ばかり考えるんですか!?ちょっとはご自分の身の事を考えなさい!!」
「え、な、何?あ、もしかして、皆んな、もう再就職先見つけてた?」
「そうじゃ事ではありません!!」
「あいたたた!!」

レインの言葉に婆やは両頬を引っ張る手に力を込める。
だけど、すぐに両頬は解放された。

「ううぅぅ、痛い」
「今のは流石にお嬢様が悪いですよ」
「右に同じです」

引っ張られて痛む頬を両手で押さえていると、ミアとジュリアにため息を吐かれた。

「お嬢様の考えは分かります。私達は仕事を解雇され、一から仕事を探さなければいけないのは事実です。ですが、その事情を全てお嬢様に任せるのは筋違います」
「で、でもヨハン・・・」
「でも、ではありません」

静か口調だが、有無を言わせないヨハン。

「ううぅぅ・・・・」
「まったく、身内の人間を優先するのはお嬢様の良い所でもあり、悪い癖ですね」

呆れ顔でヨハンと婆やにもため息を吐かれた。

「・・・・・ですが、この辺りの働き口の殆どはルヴァンヌ侯爵家の傘下に入っています。現に今回の一件で解雇された使用人がこの辺りの働き口を探していましたが、どこも雇ってもらえず仕方なく故郷に帰った者や別の土地で仕事を見つけた者もいるのもまた事実です」
「・・・・・・侯爵家の圧力がかかっている、という事?」
「断定は出来ませんが、恐らくは」

気に入らないモノは遠ざけたがる。あの人達がやりそうな事だ。

「なので、是非、お嬢様の話に乗らせていただきたいと思います」
「ん?」

沈んでいた場の空気がヨハンの言葉で一変した。

「え?」
「ヨハンさん、さっきお嬢様に俺達の事情を任せるのは筋違いだって、」
「はい。なので、お嬢様の伝によりジュネード伯爵卿へ口利きをして貰えれば、後は自分の力で職に就くつもりです」

そう言ってにこやかに笑うヨハン。

「・・・・・・・」

そう言えば、ヨハンはこう言う性格だったっけ。

産まれる前からルヴァンヌ侯爵家に仕えていたヨハンは初老ではあるが1人で7人分の仕事を熟す猛者。それに加えて頭もキレ、口も達者で、元両親や元弟の無茶振りを未然に防ぎ上手く言い包めていたっけ。

「・・・・・相変わらず、強かだね。ヨハンは」
「強かでなければ、ルヴァンヌ家仕え続けるのは出来ませんでしたからね」
「確かに・・・・・・」

思わず苦笑するレイン。

「で、みんなはどうする?これは、みんなの自分の意思で決めて欲しい。私に着いて来るか、別の道を進むか」
「お嬢、」
「強制はしない。ジュネード伯爵家に行っても受け入れて貰えない可能性もある。もし、行きたい場所があるのなら、私が送り届ける。みんなの好きに選んで」

不安、困惑、戸惑い、そんな表情の使用人達を見渡しレインははっきりとそう言った。

「・・・・・・お嬢様、本当にいいのですか?」
「ミア・・・・」

不安そうな目に涙を溜め、ミアが聞いてくる。

「お嬢様について行って、本当にいいのですか?」
「・・・・・完璧な保証は出来ないけど、それでもいいなら、連れて行くよ」

柔らかくだが、はっきりと告げるレインの言葉にミアの頬に涙だ流れた。

「ッ、行きたです、お嬢様について、行きたいです!!」
「私も!!」
「俺も、お嬢様について行きます!!」
「俺も、連れて行って下さい」

ミアの願いを皮切りにジュリア、レヴィ、カイルが名乗りを上げる。

「わ、私も、是非ご一緒に!!・・・・・ご、ご迷惑でなければ・・・」
「お、お前にしては積極的じゃねぇか。エドモンド。お嬢、もちろん俺もついて行きやすぜ」

珍しく自分の意見を言うエドモンドに楽しそうに朗らかに笑うトムゾワーズ。

「ここまで来たのです。どうか、御同行させて頂きます」
「皆、答えが出てようですね。お嬢様」

優しい笑顔の婆やとヨハン。

「うん」

そんなみんなの顔を見て私は力強く頷く。

「よし!!じゃあみんな、身の回りを整理して30分後に必要な物を持って、この応接間に集合ね」
「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

レインの号令に皆が元気よく返事をする。




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