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新生活
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「転移、完了」
ジャスパーの声と同時に魔法陣の光りが収まり、皆が辺りを見渡す。
其処は、何処かのお屋敷の広い部屋だった。
部屋は、窓にカーテンが掛けられて薄暗く、家具も何も無いだだっ広い部屋だった。
「ここが、ルガノ、ですか?」
ミアが部屋を見渡し、カーテンが閉められた大きな窓へと近づき、閉められたカーテンを少し開けた。そして、外の様子を確認する。
すると、
「わああ!!」
窓の外を見たミアが歓喜の声を上げる。
「ミア?」
ミアの声を聞いて、レインがミアの側に歩み寄る。
「どうしたの?ミア」
「お嬢様!!見て下さい!!」
興奮冷め止まないと言った風に目を輝かせるミアは、カーテンの布を思いっきり開いた。
「わあ、」
ミアが開けたカーテンに遮られていた日光が部屋に暖かく差し込む。
そして、窓の先の景色は、快晴の空。淡い緑の樹々。その先には大海原と大きな美しい港街。
まるで、どこかの海外の絵画様に美しい景色だった。
「・・・・凄い」
窓を開けて、外の景色を見ると、風に乗って潮の香りがした。
どうやらこの屋敷は海が見渡せる高台の上に建っているらしい。
「これは、美しい・・・・・」
「ええ、素晴らしい景色ですわね、お嬢様」
「はぁ、凄いです・・・・・」
皆が窓へと外を見に来て、ヨハン。婆やとジュリアが感嘆のため息吐く。
「海だ!俺、海初めてです!!」
「港街が有ります!!朝市もやっているんでしょうか!?」
「ほほう!!こりゃ、料理のしがいが有るってもんよ」
「お、大きな、街、ですね・・・・」
皆が、窓から見える景色に興奮するようにはしゃいでいる。
「ここは、ルガノの港街マリアスだ」
「ここが、ルガノ・・・・とても綺麗な街です・・・」
「この国は、他国との平和協定を実現しており、魔族との交流も盛んです」
「っ、魔族・・・・」
「はい、もちろん、祖国のアリニア王国とは違い、魔族とも友好関係を築いています」
ジャスパーの言葉に、レインの顔色が少し影を落とす。
「そうね・・・・。本来なら、人間も魔族も共に共存出来る世の中なのに、アリニア王国では魔族を拒絶していた」
アリニア王国では幼少期から魔族は異質な存在だと、悪だと教えられ、魔族は迫害されて来た。
「そして、私は、英雄として戦争で多くの魔族兵をこの手で葬った」
ただ課せられた任務、魔王軍の魔王を倒す為に。
向かってくる敵を、潜んでいる敵を、自分を殺してなんの感情も無く、女と言う事実を隠し、素顔を仮面で隠し、ジルベール・ルヴァンヌとして敵を倒し、やがて誰かが私の事を『死神の勇者』だと言い出した。
私に立ち向かってくる魔族兵達にも家族や仲間がいた筈なのに。
敵と決め付け倒して来た。
「レイン様」
そんな、レインを見たジャスパーがレインの肩に手を置く。
「確かに、貴女は、先の戦時で魔王を倒した英雄です。ですが、それは、既に過去の話です。今、ここに居るのは、私の義娘であるレイン・クラウドです」
「ジャスパーさん・・・」
「今は、まだ新しい生活に違和感を感じてしまうかもしれません。ですが、私が、義父として、全力で貴女をサポートをいたしま、・・・・」
ふと、ジャスパーさんの言葉が途切れた。
「全力で、ここに居る皆でレインを守っていく」
「ぁ・・・・」
先程まで敬語だったジャスパーさんの口調が和らぎ、私を見る眼差しも柔らかくなっていた。
その眼差しは優しく、どこか、アミリア様に似ていた。
「ありがとう、お義父さん」
「・・・・フッ、旦那様に、小言を言われてしまうな」
困ったように眉を下げて苦笑するお義父さん。
不器用だけど、優しい。
この人が私の父親になってくれて、本当に良かった。
「お嬢様」
声をかけられて振り向くと、みんなが笑っていた。
「さあ、ここから、新しい生活を始めましょう」
婆やが優しく微笑む。
ふと、大きく開いた窓から柔らかな風が吹き込み、レインの長い赤髪を揺らす。
無意識に窓の外を見ると、不思議と世界が輝いて見えた。
「そうだね。ここから、始まるんだね。新しい私が・・・・」
不思議だ。
ずっと心のどこかで燻っていた。
不安や、前の自分への後めたさ、そして、この幸せが壊されるかも知れないと言う、恐怖。
だけど、微かに香る海の香りと庭に咲く花の香りが、心を穏やかにして行く。
「もう、後戻りなんてしない。戻りたくない。私は、私だ」
もう、あのルヴァンヌ侯爵家に飼われていたレイン・ルヴァンヌは棺桶に入った時に死んだんだ。
素直に振り向くと、私の好きな大切な人達が居た。
「お義父さん、みんな」
不安はある。でも、もう新しい自分に躊躇しない。
「始めよう。新しい新生活を」
今度こそ、自分で大切なものを守ってみせる。
その決意を胸に密かに誓い、顔を上げる。
「これからよろしくお願いします!」
その表情に迷いはもう無かった。
今日から、輝かしい、新しい新生活が始まる。
ジルベール・ルヴァンヌとルヴァンヌ侯爵夫妻はそう信じて疑わなかった。
自慢の我が子が勇者として戦地に赴き、勇敢かつ華々しく活躍し、全国民からアリニア王国を救った英雄だと讃えられ、敬われる。
そして、今後のアリニア王国の歴史の1ページにその名、ジルベールの名前を刻まれる事になる。
はずだった。
そのはずだった。
アリニア王国最大の大聖堂。
今日、神聖なるこの場所でアリニア王国第三王女であるジョセフィーヌ姫と結婚し、ルヴァンヌ侯爵家は栄光と共に全国民から皆に羨ましがられ、華々しく王族へと迎えられる。
そうなる未来のはずだったのに!!
ジルベールは目の前で起こっている現実を受け入れる事が出来なかった。
突如現れた禍々しい存在。
一瞬にして薙ぎ払いわれた衛兵。
逃げる事が出来ない大聖堂の中、来賓していた貴族達が我先にと逃げ惑い助けを叫ぶ。
なんで、なんで、此処に魔王が居るんだ!!!
目の前で禍々しいオーラを放ち、佇むは、魔族の長、魔王ゲインオルド。
かつて姉だった片割れが倒した、はずの魔王。
もう、この世に居ないはずの世界を滅ぼそうと目論んでいた魔王が無表情で見下ろす。
突如現れた事の恐怖で腰を抜かすジルベールを、
「は?・・・・・誰だ、お前」
そう言い放つ魔王は無表情から怪訝な顔をした。
ジャスパーの声と同時に魔法陣の光りが収まり、皆が辺りを見渡す。
其処は、何処かのお屋敷の広い部屋だった。
部屋は、窓にカーテンが掛けられて薄暗く、家具も何も無いだだっ広い部屋だった。
「ここが、ルガノ、ですか?」
ミアが部屋を見渡し、カーテンが閉められた大きな窓へと近づき、閉められたカーテンを少し開けた。そして、外の様子を確認する。
すると、
「わああ!!」
窓の外を見たミアが歓喜の声を上げる。
「ミア?」
ミアの声を聞いて、レインがミアの側に歩み寄る。
「どうしたの?ミア」
「お嬢様!!見て下さい!!」
興奮冷め止まないと言った風に目を輝かせるミアは、カーテンの布を思いっきり開いた。
「わあ、」
ミアが開けたカーテンに遮られていた日光が部屋に暖かく差し込む。
そして、窓の先の景色は、快晴の空。淡い緑の樹々。その先には大海原と大きな美しい港街。
まるで、どこかの海外の絵画様に美しい景色だった。
「・・・・凄い」
窓を開けて、外の景色を見ると、風に乗って潮の香りがした。
どうやらこの屋敷は海が見渡せる高台の上に建っているらしい。
「これは、美しい・・・・・」
「ええ、素晴らしい景色ですわね、お嬢様」
「はぁ、凄いです・・・・・」
皆が窓へと外を見に来て、ヨハン。婆やとジュリアが感嘆のため息吐く。
「海だ!俺、海初めてです!!」
「港街が有ります!!朝市もやっているんでしょうか!?」
「ほほう!!こりゃ、料理のしがいが有るってもんよ」
「お、大きな、街、ですね・・・・」
皆が、窓から見える景色に興奮するようにはしゃいでいる。
「ここは、ルガノの港街マリアスだ」
「ここが、ルガノ・・・・とても綺麗な街です・・・」
「この国は、他国との平和協定を実現しており、魔族との交流も盛んです」
「っ、魔族・・・・」
「はい、もちろん、祖国のアリニア王国とは違い、魔族とも友好関係を築いています」
ジャスパーの言葉に、レインの顔色が少し影を落とす。
「そうね・・・・。本来なら、人間も魔族も共に共存出来る世の中なのに、アリニア王国では魔族を拒絶していた」
アリニア王国では幼少期から魔族は異質な存在だと、悪だと教えられ、魔族は迫害されて来た。
「そして、私は、英雄として戦争で多くの魔族兵をこの手で葬った」
ただ課せられた任務、魔王軍の魔王を倒す為に。
向かってくる敵を、潜んでいる敵を、自分を殺してなんの感情も無く、女と言う事実を隠し、素顔を仮面で隠し、ジルベール・ルヴァンヌとして敵を倒し、やがて誰かが私の事を『死神の勇者』だと言い出した。
私に立ち向かってくる魔族兵達にも家族や仲間がいた筈なのに。
敵と決め付け倒して来た。
「レイン様」
そんな、レインを見たジャスパーがレインの肩に手を置く。
「確かに、貴女は、先の戦時で魔王を倒した英雄です。ですが、それは、既に過去の話です。今、ここに居るのは、私の義娘であるレイン・クラウドです」
「ジャスパーさん・・・」
「今は、まだ新しい生活に違和感を感じてしまうかもしれません。ですが、私が、義父として、全力で貴女をサポートをいたしま、・・・・」
ふと、ジャスパーさんの言葉が途切れた。
「全力で、ここに居る皆でレインを守っていく」
「ぁ・・・・」
先程まで敬語だったジャスパーさんの口調が和らぎ、私を見る眼差しも柔らかくなっていた。
その眼差しは優しく、どこか、アミリア様に似ていた。
「ありがとう、お義父さん」
「・・・・フッ、旦那様に、小言を言われてしまうな」
困ったように眉を下げて苦笑するお義父さん。
不器用だけど、優しい。
この人が私の父親になってくれて、本当に良かった。
「お嬢様」
声をかけられて振り向くと、みんなが笑っていた。
「さあ、ここから、新しい生活を始めましょう」
婆やが優しく微笑む。
ふと、大きく開いた窓から柔らかな風が吹き込み、レインの長い赤髪を揺らす。
無意識に窓の外を見ると、不思議と世界が輝いて見えた。
「そうだね。ここから、始まるんだね。新しい私が・・・・」
不思議だ。
ずっと心のどこかで燻っていた。
不安や、前の自分への後めたさ、そして、この幸せが壊されるかも知れないと言う、恐怖。
だけど、微かに香る海の香りと庭に咲く花の香りが、心を穏やかにして行く。
「もう、後戻りなんてしない。戻りたくない。私は、私だ」
もう、あのルヴァンヌ侯爵家に飼われていたレイン・ルヴァンヌは棺桶に入った時に死んだんだ。
素直に振り向くと、私の好きな大切な人達が居た。
「お義父さん、みんな」
不安はある。でも、もう新しい自分に躊躇しない。
「始めよう。新しい新生活を」
今度こそ、自分で大切なものを守ってみせる。
その決意を胸に密かに誓い、顔を上げる。
「これからよろしくお願いします!」
その表情に迷いはもう無かった。
今日から、輝かしい、新しい新生活が始まる。
ジルベール・ルヴァンヌとルヴァンヌ侯爵夫妻はそう信じて疑わなかった。
自慢の我が子が勇者として戦地に赴き、勇敢かつ華々しく活躍し、全国民からアリニア王国を救った英雄だと讃えられ、敬われる。
そして、今後のアリニア王国の歴史の1ページにその名、ジルベールの名前を刻まれる事になる。
はずだった。
そのはずだった。
アリニア王国最大の大聖堂。
今日、神聖なるこの場所でアリニア王国第三王女であるジョセフィーヌ姫と結婚し、ルヴァンヌ侯爵家は栄光と共に全国民から皆に羨ましがられ、華々しく王族へと迎えられる。
そうなる未来のはずだったのに!!
ジルベールは目の前で起こっている現実を受け入れる事が出来なかった。
突如現れた禍々しい存在。
一瞬にして薙ぎ払いわれた衛兵。
逃げる事が出来ない大聖堂の中、来賓していた貴族達が我先にと逃げ惑い助けを叫ぶ。
なんで、なんで、此処に魔王が居るんだ!!!
目の前で禍々しいオーラを放ち、佇むは、魔族の長、魔王ゲインオルド。
かつて姉だった片割れが倒した、はずの魔王。
もう、この世に居ないはずの世界を滅ぼそうと目論んでいた魔王が無表情で見下ろす。
突如現れた事の恐怖で腰を抜かすジルベールを、
「は?・・・・・誰だ、お前」
そう言い放つ魔王は無表情から怪訝な顔をした。
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