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よろしいですね。旦那様
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よく晴れた陽気の良い午後。
とある屋敷の季節の花々が彩る東屋にテーブルを囲みお茶を飲みながら談笑をする女性と男性。そして女の子と男の子がいた。
「で、その時の渾身の土下座で、お父様はお母様に愛の告白をしたのよ」
そう言いながら朗らかに笑うロザリア。
「うわー、父様流石にそれは引きます」
「せめて、段取りを踏んで花束を持っていくべきだったのでは?男として」
「うぅぅぅ・・・・・。勘弁して下さい。ロゼさん・・・・」
「だって、子供達が、私達の馴れ初めを聞きたいって言うものですから」
先日12歳の誕生日を迎えた娘のクリスティーナ。11歳になる息子のカールベルト。
そして、今やロザリアの夫となったフィリップが顔を真っ赤にして誤魔化す様に紅茶を飲んでいる。
「でも、よくお祖父様とお祖母様、それに、伯父上がお許しになりましたね」
「それに、その場に、テオ先生達も居たんでしょう?」
「もちろん、みんな反対したわね。特にランなんて止めに入るどころかトドメを刺しに行く勢いで、テオとキノが二人がかりで抑えていたわね」
十数年前のあの事件を思い出し、笑いが溢れる。
あの日パーティ会場からロザリアが拐われた事件でフィリップはロザリアに告白をした。
もちろん、直後に駆けつけたロザリアの家族は猛反対をした。
利用されたとは言え、娘を拐った男に娘をやれるものかと、当時のアークライド公爵が大激怒。
今回の事件の首謀者であるマルシュス公爵はマルシュス公爵家の満場一致で表向きには隠居となり、何人かの使用人と共にとある小島に送られた。
新たなマルシュス公爵家当主はフィリップの長兄が就任することで落ち着いた。
前マルシュス公爵当主は横暴な態度で有名だったが、三人の子息達は優秀に育ち、マルシュス公爵家を支えて来ていた。
だが、公爵家の娘であるロザリアを拐った事は大きな問題となり、マルシュス公爵家はアークライド公爵家に多額の慰謝料を支払うこととなった。
本来ならば、フィリップは接近禁止を告げられ、廃嫡もされて、家を追い出されていても可笑しくはなかった。
だが、フィリップは告白後も、家も兄弟も地位も財産も全て捨ててロザリアの元へ嫁ぐとその身一つでロザリアの父に嘆願した。
そんなフィリップに手を差し伸べたのが、ロザリア本人だった。
半ば暴走していたと思うが、フィリップの熱意と愛娘のとある提案にアークライド公爵が手元に置き監視する事にした。
その提案とは
『3年間、実家からの援助禁止。無償でライド商会に貢献し、優秀な成績を残す事。もし期待以上の功績を残せなかった場合、マルシュス公爵家に請求した慰謝料と同額をフィリップに請求しアークライド公爵家に支払う』
と言うものだった。
それからフィリップは父の監視下の元ライド商会の一社員として酷使される日々が始まった。
だが、何故かフィリップは生き生きと職務を全うし、時にロザリアが褒めると異様なほどに成果が伸び、叱りつけると恍惚の表現で喜んでた。
薄々と感じてはいたが、彼はそう言うタイプの人間なんだろう。
だが、人当たりも良く、仕事が出来、仕事への意欲もある。そして、なによりもロザリアへの愛情が側から見ても分かり易かった。
仕舞いには『ロザリア・アークライドの犬』とまで噂されるようになったが、何故かフィリップ本人は嬉しそうに笑っていた。
それから3年の月日が流れ、ライド商会へ大きな貢献を果たしたフィリップ。その頃には訝しみ警戒していたランをはじめとする使用人達やロザリアの母親と兄の信頼を得る事が出来、3年越しに漸くロザリアと婚約が許され、更に1年後フィリップはロザリア・ミラ・アークライドの娘婿となった。
それから一年後に娘であるクリスティーナが誕生し、その翌年には息子のカールベルトが誕生した。
ロザリアとフィリップとの結婚の話を聞いた者の中には、前夫であるファーガスの、にの前になるのでは無いかと噂する者いたが、二人の夫婦仲は極めて良好。
子供達も祖父母となったロザリアの両親に溺愛され、使用人達から愛されて成長していった。
現在、ライド商会会長の兄を支える専務として仕事に勤しむロザリアをフィリップは夫としてサポートをしてくれている。
「でも、お母様はお父様と結婚して良かったって思っているのよ」
「本当に?」
「ええ。だって、お父様は優しくて、可愛いい。気配りも出来て、いつもお母様の事を想ってくれているの。そしてなによりも私達の可愛い可愛いクリスとカールを私に授けてくれた大切な人なんですもの」
「母様。父様頭から湯気が出そう」
「あら?」
息子のカールベルトの言葉で夫の方を見ると、テーブルに突っ伏した状態になっている。髪の隙間から見える耳が真っ赤になっていた。
「ね?可愛いでしょ?」
「うーん?よく分からないです」
「僕も」
「うふふ、貴方達もいつかわかる日が来るわ。思わずイジメてしまいたくなる位に愛おしい人が出来たらね」
年齢を重ねても、まだまだ若々しく笑うロザリア。
「奥様」
不意に声をかけられ、振り向くとそこには顔に貫禄が出てきたヨハネスとメイド長のアンナが控えていた。
「そろそろお嬢様とおぼっちゃまのお稽古のお時間です」
「あ、いけない」
「今日、テオ先生の体術の日だった」
ヨハネスの言葉に、子供達が慌て席を立つ。
子供達はテオに体術。キノに語学。ルイスに剣術。そしてアンナに礼儀作法を習っている。ランは2人の影をして護衛をしている。
子供達は一通り身嗜みを整え、一呼吸おいて、
「それでは、母様、父様。行って参ります」
「行って参ります」
クリスティーナはドレスの裾を少し持ち上げ、カールベルトは右手を左胸にあてる。二人は紳士淑女らしく私達にお辞儀をする。
「はい、いってらっしゃい。アンナ2人の事お願いね」
「承知致しました」
「怪我に気をつけて、ちゃんと学ぶのだぞ」
「はい!!」
「はい」
元気に返事をして、我が子達は稽古に向かう為東屋を出た。
「奥様、今夜開催される夜会の準備を」
ヨハネスの言葉に、フィリップの肩が微かに動いた。
「あら、もうそんな時間?」
「いえ、夜会は午後7時からです。ですが、今晩の夜会にお召しなられる筈のはライド商会の新作ドレスが少々手直しが必要なそうなので、修正の確認をお願いします」
「そう、それなら早めに終わらせてしまいましょう」
そう言いながら、ロザリアが席を立ち離れようとするロザリアの手をフィリップがそっと握った。
「・・・・・・。どうかしました?」
ロザリアが尋ねると、フィリップは迷子になった子供の様な目でロザリアを見上げる。
「・・・・・・、行ってしまうのですか、」
「ええ、お仕事ですので」
「今日は、もう少し側にいられると思っていました」
「最近、一緒にいられる時間が少なかったですもんね」
「・・・・・・・・・・、」
「淋しくなってしまいました?」
「ッ、」
ロザリアの質問にフィリップは気まずそうに視線を逸らす。だけど、彼の頬は紅潮していた。
「今夜の夜会は小さな集会ですし、ドレスの宣伝と先方との商談を目的としたものなので、終わり次第直ぐに帰ってきますよ」
私がそう言うものの、夫は不満げな表情をする。
そんな夫に私は、
「私のお仕事の邪魔をしない。これが私達の決めた契約のはずですよ」
淡々とそう告げる。
「・・・・・・、分かっています。すみません・・・・」
フィリップは名残惜しそうに妻の手から手を引いた。
だが、離した妻の手が、真っ直ぐ自分の方へ差し伸べられ、
「ッえ??」
しなやかな指先でクイッと顎を持ち上げられた。
「今晩、いい子でお留守番が出来れば、ご褒美を差し上げます」
「え、ぁ・・・・」
「旦那様はずっと私のサポートを頑張ってくれているから、ちゃんと労わって差し上げます。だから、」
そう言ってロザリアは妖しく妖艶に微笑んだ。
「んん!?!?」
そんなロザリアの笑みに再び顔を真っ赤にするフィリップ。
「よろしいですね。旦那様?」
「ぁ、は、はぃ・・・・・」
か細い声で答え壊れたブリキのオモチャの様に首を縦に振る。
「うふふ。出来るだけ早く帰ってきますね」
そんな夫の反応がとても可愛く見えたロザリアは真っ赤な顔のフィリップの唇に
チュッ
「ッ!?!?」
小さくキスを落とした。
「いい子で、待っていてくださいね」
そう言い残し、満面の笑みのロザリアは赤面の顔で惚け動けなくなった夫を東屋に放置して東屋を出る。
「さて、可愛い旦那様の為にも、お仕事、頑張りましょう」
不意に吹いた風に舞った花びらが、ロザリアの笑顔を彩った。
完
とある屋敷の季節の花々が彩る東屋にテーブルを囲みお茶を飲みながら談笑をする女性と男性。そして女の子と男の子がいた。
「で、その時の渾身の土下座で、お父様はお母様に愛の告白をしたのよ」
そう言いながら朗らかに笑うロザリア。
「うわー、父様流石にそれは引きます」
「せめて、段取りを踏んで花束を持っていくべきだったのでは?男として」
「うぅぅぅ・・・・・。勘弁して下さい。ロゼさん・・・・」
「だって、子供達が、私達の馴れ初めを聞きたいって言うものですから」
先日12歳の誕生日を迎えた娘のクリスティーナ。11歳になる息子のカールベルト。
そして、今やロザリアの夫となったフィリップが顔を真っ赤にして誤魔化す様に紅茶を飲んでいる。
「でも、よくお祖父様とお祖母様、それに、伯父上がお許しになりましたね」
「それに、その場に、テオ先生達も居たんでしょう?」
「もちろん、みんな反対したわね。特にランなんて止めに入るどころかトドメを刺しに行く勢いで、テオとキノが二人がかりで抑えていたわね」
十数年前のあの事件を思い出し、笑いが溢れる。
あの日パーティ会場からロザリアが拐われた事件でフィリップはロザリアに告白をした。
もちろん、直後に駆けつけたロザリアの家族は猛反対をした。
利用されたとは言え、娘を拐った男に娘をやれるものかと、当時のアークライド公爵が大激怒。
今回の事件の首謀者であるマルシュス公爵はマルシュス公爵家の満場一致で表向きには隠居となり、何人かの使用人と共にとある小島に送られた。
新たなマルシュス公爵家当主はフィリップの長兄が就任することで落ち着いた。
前マルシュス公爵当主は横暴な態度で有名だったが、三人の子息達は優秀に育ち、マルシュス公爵家を支えて来ていた。
だが、公爵家の娘であるロザリアを拐った事は大きな問題となり、マルシュス公爵家はアークライド公爵家に多額の慰謝料を支払うこととなった。
本来ならば、フィリップは接近禁止を告げられ、廃嫡もされて、家を追い出されていても可笑しくはなかった。
だが、フィリップは告白後も、家も兄弟も地位も財産も全て捨ててロザリアの元へ嫁ぐとその身一つでロザリアの父に嘆願した。
そんなフィリップに手を差し伸べたのが、ロザリア本人だった。
半ば暴走していたと思うが、フィリップの熱意と愛娘のとある提案にアークライド公爵が手元に置き監視する事にした。
その提案とは
『3年間、実家からの援助禁止。無償でライド商会に貢献し、優秀な成績を残す事。もし期待以上の功績を残せなかった場合、マルシュス公爵家に請求した慰謝料と同額をフィリップに請求しアークライド公爵家に支払う』
と言うものだった。
それからフィリップは父の監視下の元ライド商会の一社員として酷使される日々が始まった。
だが、何故かフィリップは生き生きと職務を全うし、時にロザリアが褒めると異様なほどに成果が伸び、叱りつけると恍惚の表現で喜んでた。
薄々と感じてはいたが、彼はそう言うタイプの人間なんだろう。
だが、人当たりも良く、仕事が出来、仕事への意欲もある。そして、なによりもロザリアへの愛情が側から見ても分かり易かった。
仕舞いには『ロザリア・アークライドの犬』とまで噂されるようになったが、何故かフィリップ本人は嬉しそうに笑っていた。
それから3年の月日が流れ、ライド商会へ大きな貢献を果たしたフィリップ。その頃には訝しみ警戒していたランをはじめとする使用人達やロザリアの母親と兄の信頼を得る事が出来、3年越しに漸くロザリアと婚約が許され、更に1年後フィリップはロザリア・ミラ・アークライドの娘婿となった。
それから一年後に娘であるクリスティーナが誕生し、その翌年には息子のカールベルトが誕生した。
ロザリアとフィリップとの結婚の話を聞いた者の中には、前夫であるファーガスの、にの前になるのでは無いかと噂する者いたが、二人の夫婦仲は極めて良好。
子供達も祖父母となったロザリアの両親に溺愛され、使用人達から愛されて成長していった。
現在、ライド商会会長の兄を支える専務として仕事に勤しむロザリアをフィリップは夫としてサポートをしてくれている。
「でも、お母様はお父様と結婚して良かったって思っているのよ」
「本当に?」
「ええ。だって、お父様は優しくて、可愛いい。気配りも出来て、いつもお母様の事を想ってくれているの。そしてなによりも私達の可愛い可愛いクリスとカールを私に授けてくれた大切な人なんですもの」
「母様。父様頭から湯気が出そう」
「あら?」
息子のカールベルトの言葉で夫の方を見ると、テーブルに突っ伏した状態になっている。髪の隙間から見える耳が真っ赤になっていた。
「ね?可愛いでしょ?」
「うーん?よく分からないです」
「僕も」
「うふふ、貴方達もいつかわかる日が来るわ。思わずイジメてしまいたくなる位に愛おしい人が出来たらね」
年齢を重ねても、まだまだ若々しく笑うロザリア。
「奥様」
不意に声をかけられ、振り向くとそこには顔に貫禄が出てきたヨハネスとメイド長のアンナが控えていた。
「そろそろお嬢様とおぼっちゃまのお稽古のお時間です」
「あ、いけない」
「今日、テオ先生の体術の日だった」
ヨハネスの言葉に、子供達が慌て席を立つ。
子供達はテオに体術。キノに語学。ルイスに剣術。そしてアンナに礼儀作法を習っている。ランは2人の影をして護衛をしている。
子供達は一通り身嗜みを整え、一呼吸おいて、
「それでは、母様、父様。行って参ります」
「行って参ります」
クリスティーナはドレスの裾を少し持ち上げ、カールベルトは右手を左胸にあてる。二人は紳士淑女らしく私達にお辞儀をする。
「はい、いってらっしゃい。アンナ2人の事お願いね」
「承知致しました」
「怪我に気をつけて、ちゃんと学ぶのだぞ」
「はい!!」
「はい」
元気に返事をして、我が子達は稽古に向かう為東屋を出た。
「奥様、今夜開催される夜会の準備を」
ヨハネスの言葉に、フィリップの肩が微かに動いた。
「あら、もうそんな時間?」
「いえ、夜会は午後7時からです。ですが、今晩の夜会にお召しなられる筈のはライド商会の新作ドレスが少々手直しが必要なそうなので、修正の確認をお願いします」
「そう、それなら早めに終わらせてしまいましょう」
そう言いながら、ロザリアが席を立ち離れようとするロザリアの手をフィリップがそっと握った。
「・・・・・・。どうかしました?」
ロザリアが尋ねると、フィリップは迷子になった子供の様な目でロザリアを見上げる。
「・・・・・・、行ってしまうのですか、」
「ええ、お仕事ですので」
「今日は、もう少し側にいられると思っていました」
「最近、一緒にいられる時間が少なかったですもんね」
「・・・・・・・・・・、」
「淋しくなってしまいました?」
「ッ、」
ロザリアの質問にフィリップは気まずそうに視線を逸らす。だけど、彼の頬は紅潮していた。
「今夜の夜会は小さな集会ですし、ドレスの宣伝と先方との商談を目的としたものなので、終わり次第直ぐに帰ってきますよ」
私がそう言うものの、夫は不満げな表情をする。
そんな夫に私は、
「私のお仕事の邪魔をしない。これが私達の決めた契約のはずですよ」
淡々とそう告げる。
「・・・・・・、分かっています。すみません・・・・」
フィリップは名残惜しそうに妻の手から手を引いた。
だが、離した妻の手が、真っ直ぐ自分の方へ差し伸べられ、
「ッえ??」
しなやかな指先でクイッと顎を持ち上げられた。
「今晩、いい子でお留守番が出来れば、ご褒美を差し上げます」
「え、ぁ・・・・」
「旦那様はずっと私のサポートを頑張ってくれているから、ちゃんと労わって差し上げます。だから、」
そう言ってロザリアは妖しく妖艶に微笑んだ。
「んん!?!?」
そんなロザリアの笑みに再び顔を真っ赤にするフィリップ。
「よろしいですね。旦那様?」
「ぁ、は、はぃ・・・・・」
か細い声で答え壊れたブリキのオモチャの様に首を縦に振る。
「うふふ。出来るだけ早く帰ってきますね」
そんな夫の反応がとても可愛く見えたロザリアは真っ赤な顔のフィリップの唇に
チュッ
「ッ!?!?」
小さくキスを落とした。
「いい子で、待っていてくださいね」
そう言い残し、満面の笑みのロザリアは赤面の顔で惚け動けなくなった夫を東屋に放置して東屋を出る。
「さて、可愛い旦那様の為にも、お仕事、頑張りましょう」
不意に吹いた風に舞った花びらが、ロザリアの笑顔を彩った。
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完結お疲れ様でした🎉😉❤️もはやロザリアちゃんの独断場‼️楽しく拝読しました😃。
ハイヒールで踏み潰すかナイフで切り取ってやれば良いのに😒💢💢ロザリアちゃんは優しいね😅。
感想ありがとうございます
アークライド公爵家は、ロザリアの家なのですよね?次期当主がいるのに、なぜ婿入り?婿の母親がしゃしゃり出てくるのはなぜだ?
感想ありがとうございます。
ネタバレになりますが、
兄のアレックスは公爵家の跡継ぎとして領地の視察や地方への仕事へ行く事が度々あった。
だが、ファーガスにはそれが遊んでいるように見え、ファーガスの中ではアレックスは仕事せず妹であるロザリアに家督を譲ったドラ息子と思い込んでおり、更に『家督は男が継ぐモノ。女のロザリアには公爵家を継がせられない。公爵家を継ぐのは婿に入ったファーガス!!』と謎の理論を母親に吹き込まれた。
と言うのが、私の裏話です。
本編に出し切れなくてすみません。