旦那様、本当によろしいのですか?【完結】

翔千

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一件落着、と思ったら

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ロザリアがパーティー会場から姿を消した事は予想以上に大騒ぎになっていた。
主人が行方不明になった事でロザリアの忠臣である数人の使用人達が直ぐ様、ロザリアの捜索を開始した。
だが、思った以上に捜索は困難し、アークライド公爵家の家族、使用人、衛士総動員でロザリアを探した。

そして、とある手掛かりをきっかけに、ロザリアの忠臣であるテオ、キノ、ランがある建物へ突撃した。
建物の中で寛いでいた数人の男達をテオ、キノ、ランが瞬く間に締め上げた。

「言え、ロザリアお嬢様を攫った首謀者は誰だ。偽りを言えば、」
「グ、ヒィ!!!」

屈強なテオが男の一人に圧をかけ、

「お前の手足を右手から順に、砕く」

無表情だが、テオの鋭い眼光に取り押さえた男は威殺されると、本気で思い震え上がる。

「ヒィィ!!!マ、マルシュス公爵様です!!!御令嬢様は、2階の、お、奥の部屋に。マルシュス公爵様とフィリップ様とその他に男が2人、そ、その部屋に」

首謀者が誰かを聞き出し、主人が監禁されている建物の最奥の部屋を知らされる。

「そうか」

テオは低くそう答えると、男の首に腕を回し、

グギ!!

「グエ!?」

男の首を締め上げ、意識を刈り取った。

「行くぞ」
「ああ、」
「ん」

静かな怒気を全身に纏わせ、テオ、キノ、ランは無表情で2階の奥の部屋へ向かった。

すると、奥の部屋につながるドアから、

「~~~ッ!!んん!!」

誰かの苦しげなか細い声が漏れている。

「ッッ!!お嬢様!!!」
「、待て、キノ!!」

その声を聞いた途端、キノがテオの静止の声を振り払い、奥の部屋のドアを、

バキャ!!!!

豪快に蹴破った。
そこで3人の目に飛び込んで来た光景は、

「んん!!!んー!!んぐ!?」
「あら?テオ、キノ、ラン。良かった。来てくれていたのね」

主人であるロザリアが、文字通りマルシュス公爵を踏ん縛っていた。
口にはオアシスカラーのアーム・ロングで猿轡。逆海老反りに両手両足を背中に回され、腹ばいになって転がされているマルシュス公爵の背中を真っ白な素肌の脚が踏み付け、腕と足を拘束する縄を縛っている真っ最中だった。

満面の笑みとは裏腹な行動がなんともミスマッチ・・・・・。

「って!!??お嬢様!脚!!御御足が!!」

キノが直様ロザリアに駆け寄ろうと踏み出すが、キノよりも先にランが動いていた。

「お嬢様」

ランは自分が着ていたマントを脱ぎ素早くロザリアの腰に巻き付け、露出していた脚を隠した。

グニッ。
「ンググ!?!?」

どさくさに紛れてマルシュス公爵の頭を踏み付けながら。
マントを脱いだランの右腕から首元にかけた素肌には古い大きな火傷の痕が刻まれている。

「あらあら、ありがとう。ラン」

ロザリアはそんなランの火傷の痕を気にせずランに笑いかけた。
そんなロザリアとランに一足遅れてテオとキノも駆け寄り、素早くマルシュス公爵からロザリアを遠ざける。

ゲジッ、ガン!!

「ンガ!?ンガ!!」

もちろん、マルシュス公爵に一回蹴りを入れる事も忘れずに。

「お嬢様。ご無事でございますか?どこか怪我は、気分は悪く無いですか?」
「ええ、大丈夫よ。キノもテオも心配をかけて、ごめんなさい」
「いいえ。お嬢様、コチラを」

テオがそっとある物をロザリアに差し出す。
それは、ハンカチに包まれた小さな白い花と赤い宝石がついた髪飾りだった。

「ふふ、拾ってくれてありがとうテオ」

髪飾りを見て、ロザリアは満足げに笑った。
テオは無骨で大きな手でそっと髪飾りを持ち、そっとロザリアの髪に髪飾りを飾った。

「この建物入り口近くに落ちていました」
「ありがとう。担がれた時にでも落ちたのかしら?」

わざとか、偶然なのかクスクスと笑いながらテオにつけて貰った髪飾りにそっと触れる。

「・・・・・お嬢様、救出するのに時間がかかってしまい、申し訳ありません」
「うんん。大丈夫。みんな、仕事が早い!!流石私の自慢の子達ね」
「お嬢様がパーティ会場から姿を消したと同じ時間帯に複数の貴族専属の馬車がパーティ会場を出て行き、確認を取るために予想以上に時間がかかってしまいました。申し訳ありません」
「ごめんなさい。お嬢様」

3人の使用人がロザリアの前で片膝をつき、深く頭を下げる。

「私は、みんなが私を探して助けに来てくれるって、必ず来てくれるって信じていたから。
来てくれて嬉しいわ。ありがとう、みんな」
「お嬢様・・・・」

謝罪をする三人に優しく笑いかける。

「それよりも、此処には貴方達だけで?」
「少人数制のほうが動きやすいので。ですが、伝書用の鷹を飛ばしましたので、直ぐに警備士が此方に来てくれます。そこに転がっている不届者を捕える為に」

そう言いながら、キノが床に転がるマルシュス公爵を汚物を見るような目で見下ろす。

「ンンン!!!ンググ!!!」
「あらあら、なんだかとてもデジャヴね」
「同感です。お嬢様」
「ん。同じ」

あの日あの場にいたロザリアとテオとランが同じ記憶を思い出していた。

「あ、そうそう、マルシュス公爵様」
「ングガガ!?」

何かを思い出したのか、ロザリアは猿轡で言葉を塞がれ、手足を縛られているマルシュス公爵の目線を合わせる様に近く。

「例のブランド肉の事業にご興味がお有りでしたね」
「・・・・・ッ」
「全てをお任せする事は出来ませんが、丁度、マルシュス公爵様にお勧めしたいお仕事があります」
「ンンン!!」

ロザリアの甘い言葉に希望を見出し目を輝かせるマルシュス公爵。

「うふふ。私の可愛い可愛い、ワイルドピッグのお世話をするお仕事です」

だが、ロザリアは笑顔でその希望を砕いた。

「離島での自給自足の生活ですが、私の元夫と元義母さんもそちらで働いているんですよ?」
「ンンン!!」
「まあ、今までの様な華やかな生活とは程遠い質素な暮らしになるでしょう。
それに、私の豚さん達はみんか元気いっぱいですから、多少の手足の欠如はお覚悟下さいませ」
「ンン、ンンンン!!!」
「言いましたよね?この事は、私の両親が許さない事でしょう、っと」
「・・・・・・ンンン!!!ンガガ!?!?」

コチラを睨み上げ、口を塞がれ何を言いたいの解らないけど、想像はつく。
本当に元夫との離縁会議の時と状況が似ている。笑えてしまうくらいに。

ただ、マルシュス公爵の口を塞ぐ為に猿轡にしているアーム・ロングが唾液まみれになるのは、なんとも不快な気分になる。

「アークライド公爵家令嬢である私を拉致、暴行を目的とした監禁。いくら公爵様でも・・・・、いえ、貴族だからこそ、周囲の人達が許さないでしょ。貴族と言えど、罪を犯せば罰せられるのが、ロロビア王国ですから」
「ングガガ、グググ」
「言いたい事があるのであれば、是非、警備士さん達にお願いします。
もっとも、どんなに言い訳をしようと、悪あがきをしようと、法の隙間を掻い潜ろうと尽力しようとも、必ず、相応の罰を受けてもらいます。マルシュス公爵様」

冷たい笑顔のロザリアが、そう告げると、部屋の外から複数人の足音が聞こえてきた。


そうこうしている間に逆海老反りに両手両足を縛られていたマルシュス公爵と床で気を失っていた手下の男二人が駆けつけた警備士さん達に連れて行かれた。

マルシュス公爵は随分と抵抗をしていたが、私のドレスが大きく引き裂かれていた事と、部屋に縄とナイフ。
そして私に使うつもりだったであろう、媚薬や催淫効果のある薬がマルシュス公爵の懐から押収され、申し開きも無く、連行された。

「お嬢様」
「うん?なに?ラン」

私達も早々に引き上げようとしたら、ランがそっと私に近づき、声をかけるか。

「あれ、」
「あれ?」
「・・・・・・・、あ!!」
「あれは、」

ランが指差した先に、ソファの陰で座り込んでいるマルシュス公爵の息子、フィリップがいた。

「何故アイツが此処にいる」
「警備士に連れて行かれなかったかの」

キノとテオがフィリップを睨む。
だが、当のフィリップはずっと俯いて顔が見えない。

「フィリップ様は、私を連れ出した事は確かですが、実際に指示を出したのはマルシュス公爵。私に暴行しようとしたのは手下の男達。警備士さん達にそう説明しましたから、フィリップ様は利用されていたと思われたのでしょう」
「警備士、仕事甘すぎ」

ランが眉間に皺寄せる。

「フィリップ様」
「ッッ、」

ロザリアが声をかけると俯向くフィリップの肩がビクッと震えた。
咄嗟にテオとキノがロザリアとフィリップの間に入ろうとするが、ロザリアが視線でそれを静止する。

「御父君の事は、自業自得だと私は思っています。マルシュス公爵は私情を持ち込み、私を誘拐して手篭めにしようとしました」

淡々と静かな言葉でフィリップに語りかけるロザリア。

マルシュス公爵自身、あの様な人だったが、マルシュス公爵家は功績、人脈、富、地位。アークライド公爵家と並ぶ名家。
きっと、マルシュス公爵がお母様に未練を残していなければ、今頃ただの昔話の笑い話で済んでいただろう。

「私の両親は確かに私に過保護で厳しい人達です。ですが、貴方があの時言った、私を嫁に迎えたいと言う言葉が本当の気持ちであれば、御父君の言いなりでは無く、フィリップ様自身、誠心誠意の態度を見せれば私の両親も無碍にはしなかったはずです。
そうすれば、こんな強引な行動をしなくても、両家はとても友好的な関係を築けていたのでは無いのでしょうか」
「・・・・・・・・ッ、」

フィリップが恐る恐る顔を上げると、少し困ったように微笑むロザリアがいた。

「御父君はこの事で相応の罰を受ける事になります。当然、マルシュス公爵家も相応の対応が科せられるでしょう。
私は貴方に怨まれても仕方がないと思っています」
「ロザリア、様・・・・・、私は、私は・・・・」
「これでも、私、フィリップ様を評価しているんです。社交的で公爵家の人間としての兄君達と共に勤めを全うし、時に領地へ赴き、領民に寄り添い、領民に慕われている貴方を。
これから大変でしょけど、もし、あの言葉に嘘がなければ、もう一度頑張って、婚約を申し込みをしに来てください」
「・・・・・・、」
「こんなバツイチの私でよろしければ、ですけど」

フワリと笑うロザリアの笑顔を見て、

「ッ・・・・、ぁ、」

フィリップの体は無意識に動いていた。

フィリップの動きに瞬時に気がついたテオがフィリップに対処しようとしたが、

「な、・・・・・」

フィリップの行動にその動きを止めてしまった。
フィリップの見上げた顔は、頬が紅潮に染まり、目はまるで夢を見ている様に惚けている。
そのまま、ロザリアに向かって座り込んでいる床に額を付け、平伏していた。
そして、

「ロザリア様!!どうか、私と結婚してください!!!」

建物の外にまで響くのでは無いかと思うくらいの大声でそう叫んだ。

「・・・・・・・はい?」

あまりの唐突な告白にロザリアは目を丸くした。
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