神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

文字の大きさ
8 / 204
第1章 旅立ち

ツヴァリアの陰謀(1)

しおりを挟む

 リディア達が到着してから1カ月がたった。

 そのリディアだが、前の酒宴での記憶が無いらしい。かなり飲んでいたようだったからな。あの時の出来事は、全てリディアには伏せられている。

 リタ曰く、『素面の時に自分のとった言動を知ったら……きっと自殺するわ』とのことらしい。


 そしてこの1ヶ月間、俺は明確に日毎に増すを感じていた。

 小さい頃、俺はテンさまに会ったことがある。敵意を感じる事が出来るように、と頼んだんだが、

 ―――

『ダメだね。どんな理由があるにせよ、そんな特殊な能力をこの世の創生神たる僕が、この世の住人に授ける事は出来ないな。不公平だからね。神なんかに頼らず、精進する事だよ』

 ―――

 にべもなく、断られた。

 ……にしては、俺のこの肌感覚は、今まで外れた事がない。この感覚によって、幼い頃から何度も危ない所を切り抜けている。

 もはや、俺にとっては絶対の感覚、いや、能力だ。


 しかし、敵意の出元がわからないんだ。

 そもそもモンスターなのか? 人間なのか?

 きっと相当離れた所にいるんだろう。近くにいたらそれなりに相手が絞れるんだがな……。


 そんな事を日々考えていたんだが、どうにも手の施しようがなく、悶々としていた。そんなある日の朝、いつものようにモンスターの発見報告が入ったんだが、内容がいつもとは違っていた。

「そうか。ちょうどいい。皆いる事だし、そのまま報告してくれ」

 その時、俺達は今後の話を打ち合わせるのに、朝のミーティングをしており、主立ったメンバーが集まっていた。

「モンスター……3日振りか」

 そう言ったのは、この砦の副長でもあるハンス・シュタール。
 俺の幼馴染で、歳も同じ24。俺より少し背が高く180センチは超えているイケメンだ。小さい時から頭が良く、文武両道を地で行くやつだが、ここではもっぱら政務を任せている。俺が苦手だからなんだが。
 この砦は彼が支えてくれていると言っていい。

「なかなかいなくならないわね」

 ハンスや他の皆と同じく『シシ』からの同僚、リタ・ケルル。
 酔っぱリディアを作ったA級犯罪者だ。赤髪、浅黒、筋トレ好きのスレンダーマッチョ。基本的に気が効く優しい美人なんだが、よく男をひっかけては酒場で盛り上がっている。弓使いであり、双剣使いでもある。本人は言わないが、歳はもう30前後のはずだ。

 そして、ヴィンセンツとクリストフに、『シシ』組としてヘルマン隊長とリディアもいた。

「報告します。3カ所でモンスターの発生を同時に確認致しました」
「3カ所……同時にだって? 一体、どこだ?」
「ロールシャッハ村付近、ニール村付近、メンザス村付近の3カ所です!」

 1つ目のロールシャッハ村は、1カ月前にゴブリンロードを倒し、リディア達を助けた場所だ。

「どこもここから1日はかかる位置だな。村同士の距離もかなりある」

 ハンスが俺に向けて言う。

 こんな時の為に最低限の守備隊を各地に駐屯させている。また、迅速に救援が出せるよう、狼煙により敵が現れたことを素早く伝達し、更に煙の色によって、ある程度の規模を伝える仕組みも整っている。

「駐屯部隊だけで撃退は難しいと思われます」
「全く違う場所……俺達は隊を分けなくちゃならんな」

 兵士の報告に頷き、少し笑いながら皆に顔を向ける。

「何がおかしいんだ?」

 ヴィンセンツが口を挟む。

「だってさ……同時に人里に出てきたんだぜ? モンスターが徒党でも組んでいるというのか? おかしな事だらけだ」
「といって、ゆっくりはしてられないわ!」

 リディアの真剣な眼差しに頷いて応える。

「その通りだ。……ハンス!救援を派遣する。至急、編成を頼む」
「承知した」
「但し」

 浅めにお辞儀をし、席を立って出て行こうとするハンスを呼び止める。

「今回、俺とリディアは編成から外してくれ」



 ―

 ハンスの編成により、以下のように分けられた。

 ロールシャッハ村方面にはヘルマン。
 ニール村方面にはハンスとクリストフ。
 メンザス村方面リタとヴィンセンツ。

 援軍は急を要するため、20名ほどの小隊とされた。


「おい、マッツ。何をするつもりか知らんが……無茶はするなよ?」

 いつも先頭に立っている俺が編成から外れたのが、ハンスには気になるらしい。

「いつもお前に頼りになりっ放しだし、たまには休んでおくといい」
「ああ。そうするよハンス。ありがとう」
「……」

 明らかに俺の言葉を信じていない。何やら物言いたげな顔をしているが、1つため息をついただけで踵を返す。

「行こう、クリス」
「はい! ハンスさん。それでは隊長、行ってまいります!」

 2人の背中の何と頼もしいことか。

「頑張ってこいよ~~!」

 俺の声援に手をあげて応え、行ってしまった。リタやヴィンセンツ、他の救援組も同じようにして部屋から出て行く。

 出がけに残っている俺とリディアが目に入り、ヘルマンはまた悪い癖で何か言おうとしたが、1カ月前の恐怖が蘇ったのだろう。結局、何も言わずに出て行った。

 そうそう。それでいいんだ、ヘルマン。
 1つ、賢くなったな。


「出撃しないなんて…… 珍しいわね?」

 ヘルマンの不審な所作には気付かなかった様子のリディアが不思議そうに俺に声をかける。

「リディア、『追跡トラサーラ』って使えたよな?」
「え? う、うん。学校で習ったわ。と言っても生徒同士で掛け合いをした程度だけど……」

 俺はうんうんと頷きながら、リディアに今日の真の目的を告げる。

「ひょっとしたら、今日、使うことがあるかもしれない。不安だったら、復習しておいてほしい」
「どういうこと?」
「使わずに済めば俺の思い過ごし、だが、リディアの出番が来た時は…… 『敵』の正体を暴きに行く」



 ―

 それから8時間位たったであろうか。

 もう日も沈みかけている。
 今までの襲撃パターンからして、今日はもう出てこないだろうと思われた。

「俺の考え過ぎだったか……?」

 杞憂であれば良いが、どうにもムズムズする。敵意が消えないからだ。


「マッツ~~~!」

 暇だったらしく、リディアはあちこちを掃除していた。
 見ると、手にバケツを持っている。

「ねぇ、この砦に、こんな変なバケツ、あったかしら」
「バケツ?」

 何を呑気な、と思ったものの、確かに見たことのない、なんとも言えない奇妙なバケツを手にしている。

 少なくともこの国で作られているような量産型の、重い銅製バケツではない。極彩色のバケツだ。材料はちょっと見当もつかない。見る限り、とても軽そうだ。

「どこにあったの? 見たことないな」
「厨房の前」
「厨房?」

 コックか誰かが作ったのだろうか。
 センスのかけらもないが。

「わかんないな。コックや兵士達の誰かが使っているのかもしれない。元あった場所に戻しておいで」
「うーん。何か妙な『気配』があるのよねぇ。これ」

 言いながら、素直に厨房へと戻って行く。
 確かに妙な『気配』は俺も感じる。だが、悪意や敵意ではない。むしろもっと神聖なものだ。

 どう考えてもこんなモノがここにあるのはおかしいが、一旦、今は放っておこう。


 だが、これの出番は後日、すぐに来る事になる ―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...