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第1章 旅立ち

ツヴァリアの戦い(3)

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「エッッッッカルトォォォォ!!」
「ん?……クフフ…… あの小僧は……死んだかね?」
「死なせるわけ、ねぇだろがッッッ!!」

 そのまま、左肩口からエッカルトを切り裂く。
 多少のシールドはその魔力ごと切る事が出来るのだ。

 ……だが、しかし、エッカルトのシールドは「多少」では無いらしい。剣はヤツの体を通らない。

 ギギギギギギ……

「!!!」

 振り向き、しまった! と思うが早いか、

 ドォォォォォォォン!!

 爆風にあおられ、付近の廃墟まで吹き飛ばされる。

「あー、いってぇな、クソッッ!」
「ツェイツェイ・ミィリーター・ニャ・ヴォルダー・テンペラー……」
「あ?」

 詠唱に気付き、見上げると空に薄くドラゴンが現れており、俺に向かってでかい口を開けている。

ドラゴンッ……!?」

 本物のドラゴンがいるわけでは無いだろうが、これはやばい。

「『水龍の息ワズドラフアーティム』!!」

 ドラゴンの口から大量の水が凄まじい勢いで吐き出され、津波の様に押し寄せる。

火竜剣技フラムドラフシェアーツ! 『アネヴォム』!!!」

 眼前に迫り来る水流をポイントし、エッカルトに向けて爆発させる。

 この水は物理的な「水」ではなく、いわゆる魔力のイメージだ。対して、火竜剣技は魔法に対しても滅法強い。物理攻撃と耐性、魔法攻撃と耐性、全てを破壊する火竜の名を冠した最強の剣技。

 アスラには効かなかったが、どうだ??

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!


「……やるではないか、マッツ・オーウェン……」

 笑いもせずにエッカルトが呟く。やつのローブが焼け焦げ、煙を吐いている。

 火竜の爆撃は、水龍の津波を押し分け、エッカルトに届き、今度は少なからず、ダメージを与えたようだ。

「このまま捻り殺してやりたいところだが、貴様はアスラの餌にするのでな。可愛がってもらえ……」
「こっちは魔神なんかに用は無いんだよ! 俺がぶちのめしたいのは貴様だ。エッカルト!」

 ギギ……ギギ…………

 くそっ!
 邪魔だ!アスラッッッ!!

 そう毒付いたのと同時に、アスラの右の拳が振り下ろされる。

地竜剣技エアドラフシェアーツ!『岩砕フェルセヴェルグナ』!!!」

 相殺!
 しかし、間髪入れず、左の蹴りが飛んでくる。

「だぁりゃぁぁぁぁ!! 火竜剣技フラムドラフシェアーツ! 『アネヴォム』!!」

 ズッッッドォォォォォォォォォォォン!!

 勢いは多少軽減されたようだが、やはり、吹き飛ばされる。『爆』では、広範囲の爆発力を完全に殺す事が出来ない。

 いってぇぇ……体はズタボロだ。

 全身打撲、流血、骨折。しかし……まだ体は動く。

「アァスゥラァァ…… 何なんだよお前、関係ねぇだろうが…… 引っ込んでろよ……」

 剣を杖代わりに起き上がり、アスラに吐き捨てる。

「ウ……マッツ……オーウェン……ナゼ……キサマハ……ワタシノ……テキ……ナノ……ダ……?」
「知るかぁぁ! ボケ魔神! そんなジジイに操られてんじゃねぇッッッ!!」

 怒りが全身を支配する。

 散々やられたお礼に魔竜剣技で吹き飛ばしてやりたいところだが、詠唱が長い。エッカルトが邪魔をするだろう。魔神に効くかどうかも微妙だが……。

「アスラよ……我の命に従え。マッツ・オーウェンを殺すのだ!」

 エッカルトが魔韻を含んだ言葉でアスラに命じる。

青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!」

 エッカルトの防御魔法『霊幕』は、前面にしか効かない筈だ。なら、全方位からぶち抜いてやる!

「『クライシス』!!!」

 エッカルトの周囲に『魔剣シュタークス』の分身が何十と発現する。

「……おおお、マッツ・オーウェン!!」
「分身とは言え、『シュタークス』の能力をコピーしてるんだぜ……? 攻撃特化魔術師のお前に……耐えきれるかな?」

 コピーされた『魔剣シュタークス』の分身達は、エッカルト目掛け一斉に奴を串刺しにする!

 シュンシュンシュンシュンシュン!!!
 ズサッズサッズサッズサッ!!

「……どうだっ!?」


 ……


「……………………おおお……今のは、少し……危なかったぞ? マッツ・オーウェン……」

 ドサッ
 ドサッドサッドサッ
 ドサッドサッ!

 空中にいるエッカルトの周囲から何かが落ちてくる。

 ……ゴブリン? オーク……ウェアウルフ!

 野郎!

 自分の周囲にモンスターを何重にも召喚し、盾代わりにしやがった……

 僅かに勢いを殺された『シュタークス』の攻撃はエッカルトの防御シールドを突き破れず、表面を削るだけで止まってしまったようだ……

 ギギ……

 !!

 アーーーッッ! クソッッッ!

 アスラの爆撃が来るッッッ!


(ドスッッッッ!!!)


地竜剣技エアドラフシェアーツ!!!」

 むっ?

 アスラの動きが止まっている。そして剣技に入る前の音……あれは、何かが刺さったような音だ。

 ドサァッッッ!!

 何だ?

 エッカルトが…………落ちてきた。


「……う……ぐ……うおおおお……!! 誰だ!!!」

 見ると、エッカルトの背中から腹にかけて長い矢が突き刺さっている!

 あの矢は見た事があるぞ。

 あれは……アデリナの弓矢だ!

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