神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第2章 超人ヒムニヤ

王女誘拐(4)

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 宿を出て3日がたつ。

 道中、ヘンリックがずっと無口、もちろん4人の賊達も喋らない。

 つまり、旅の間、ずっと女子3人のトークが耳に入ってくる。
 いや、勿論、耳障りな訳では無い。むしろ、超人と対決しないといけないかも、という気の重い問題をひととき忘れさせてくれ、癒してくれる。

 たまに俺とヘンリックも会話に入れてもらう。もっぱら俺に話しかけてくれるのはリディアとアデリナ、ヘンリックへはバルバラだ。

 しかし、よくそれだけ喋ることがあるもんだ……と感心してしまう。

 聞いていると、話の内容は多岐に渡る。
 この辺りの景色から始まって、お互いの国の風土、気候などの地理的な話、ファッション、アクセサリー、食べ物、流行りの店、など、文化的な話、リディア、アデリナによる魔神アスラ、エッカルト退治の話、バルバラによるテオドール王の英雄譚、5人の兄の話などなど、まったく話題は尽きないようだった。


「ねえねえ、今の聞いてた? マッツ。ビルマーク王国って、最近、空を飛んでいるドラゴンが目撃されてるんだって!」

 リディアが興奮気味に言う。

「本当かい? そりゃすごい……けど、これから北に向かう俺達には、悲報だな」
「気をつけるが良いぞマッツ。城より北に行くほど遭遇率は上がっていると聞く。そなたが如何に強いかは既に聞いたが、いくら何でもドラゴンには敵うまい」
「戦かったことないからわかんねーが……とてもじゃないが無理だろうな。そもそも人と比べるような生き物じゃないだろう」

 この頃には、俺もバルバラから丁寧な物言いは不要、とのお許しを得ていた。

 バルバラの第一印象は最悪だったが、一緒に旅をしてみると噂のような酷い、粗暴な振る舞いは見受けられない。子供が背伸びして自分を大きく見せようとすることなんて、よくあることだ。百聞は一見にしかず。噂なんか当てにならないものだと痛感。

 その夜、適当な平原にテントを設営、食事を終えた後。

 キ――――――ン!

 敵意感知。

 狙っているのはバルバラだろうが、俺達が護衛しているため、敵意が向き、センサーに引っかかったのだ。

「皆、構えろ」

 すぐさま、敵襲に備えるリディア、アデリナ、そしてヘンリック。

 バルバラは俺の敵意感知能力についても聞いていたらしく、小さく『おお、これが噂の―――』と呑気に呟いていた。

 それから1分も経たない内、目の前に20人程の見るからに暗殺者のナリをした奴らが現れる。俺達の捕虜になってる奴らと同じ格好、黒装束の集団だ。

「これ以上、捕虜が増えても困るんだがな」

 少し、挑発してみる。

「……」
「……」

 表情を変えずに、冷静に俺達を囲む。
 乗ってこないか。まあいい。

「行くぞ!」
「ああ」
「ディー・ラン・ザンツ・マイ・ヌ・ファインズ!!」

 リディアがいきなり詠唱に入る。

「『鈍い足スピィツフゥゼ』!!」

 指定範囲に効果がある鈍足の魔法だ。鈍足は相手が空でも飛んでいない限り、基本的にどんなシーンでも役に立つ汎用性の高い魔法だ。

「さすが! リディアねーさん!」

 言いつつ、瞬時に弓矢を構え、数人の肩を射抜く。アデリナもさすがの腕前だ。射抜かれた奴らは悶絶してのたうち回っている。

 どうやら魔法耐性がある奴らが混じっている。明らかに鈍足の動きではない奴らが襲いかかってきた。

 ここからは俺とヘンリックの出番だ。

「ヘンリック!」
「おう!」

 阿吽の呼吸でそれぞれが戦う相手を決め――― 倒す。

 一瞬で大勢は決した。
 鈍足にかかった奴らは次々に弓の餌食になり、かかっていない数人は逃げていく。

青竜剣技ブリュドラフシェアーツ!『フリィ』!!」

 わざと体には当てず、足下をかすめるように、脅しの『飛』を放つ。人間相手では下手に当てると死んでしまうからな。

 驚き、恐れの表情を見せながらも後退し、逃げ出す襲撃者達。

「ヘンリック、バルバラを頼む」

 言い捨て、すぐに追いかける。
 旅の間、何度も襲われるのはゴメンだ。


 ―

 しばらく、攻撃しながら追いかけたのだが、うまく森に逃げ込まれ、見失ってしまう。

 逃げ足の速い奴らだ。

 結局、収穫無しで引き返したのだが、道すがら、何か違和感を持つ。そして、アデリナが弓矢で射抜いた奴らが、そこにいないことに気付く。

 嫌な予感がして、急ぎ、テントに返ってみると……。


 太い槍を携えた見知らぬ男とヘンリックが戦っているではないか!

 一瞬でわかる。

 『只者では無い』と。

 槍でヘンリックと渡り合う事自体、凄い事なのだが、それどころか、見る限りはヘンリックが押されている。こんな光景は初めて見た。

「ヘンリック!!」

 走りながら、剣を構える!
 俺の声に男が驚き、俺の方へ振り向く。

 金髪と青い目をしているところから、諸島より東の人間なのだろうということはわかる。2メートルを超える上背があり、筋骨隆々な体躯がタンクトップの皮鎧上から見て取れる。

 そして男は……ニヤッと笑った。

「こりゃいかん。恐ろしいお邪魔虫が来たぞ? フフッ」

 何だ、コイツ! 何がおかしい!?

 だが、誰だろうと何だろうと構うものか。ヘンリックと互角以上に戦う奴に手加減などできない。とはいえ、フルパワーで修羅剣技を放つと確実に死んでしまうだろう。

 一瞬、躊躇した後、魔力は半減させ、その代わりに火属性で継続ダメージを与えてやる事にした。しかもヘンリックと挟み撃ち! これなら捕らえられるだろう。

火竜剣技フラムドラフシェアーツ!」

 男は俺の方に向き直り、槍を構える、と見せかけて槍の石突き(槍の尾の部分)でヘンリックの槍を見事にかち上げ、

 ガキィィィンッッ!

「な!」

 ヘンリックの槍が宙を舞い、呆然とした表情が目に映る。バカな! えぇい!!

「『シューヴ』!!』

 最強剣技の突きをお見舞いしてやる。爆炎を伴いながら、スクリュー状になり、相手の喉元を破壊!!

 ――― するはずだった。

 戦士はその豪槍で、巻き付けるように炎を絡め取ると、何と、それをヒョイっと右上後方に、


 ドゴォーーーーーーン!!!

 馬車の遥か後方で、投げられた『突』が爆発する。

 なんだって―――!?


「クックック。修羅剣技の使い手、しかもその頂点に君臨する剣聖シェルド・ハイなどと戦う趣味はないのでな。一旦、退かせて貰うぞ」
「な、何を―――」

 戦士はそう言うと踵を返し、硬直している俺達を尻目に、恐らくは乗ってきたのであろう、栗毛の馬で逃げようとする。

「おっと、そうだ」

 が、馬の前で立ち止まり、何やら急に語り出す。

「戦士として名乗っておこうか。私はルーペルト。地元では魔戦士と呼ばれている。もちろん私の名なぞ、ランディアやビルマークまで届いておらんだろうが……。会えて嬉しいよ、高名なマッツ・オーウェン。縁があればまた会おう」

 そう言うと、馬に跨り、今度こそ逃げて行ってしまった。

 あまりの事に、俺達は後ろ姿を目で追いかけることしか出来なかった……。
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