神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第4章 聖武具

《放浪者》対《滅導師》(4)

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 ここにはつい先程まで、見渡す限りの強力なモンスターが巣食っていた筈だ。

 今、エッカルトの目に映るのは、果てしなく続く広い地底の空間に、無残にばら撒かれたモンスターの死骸、破片。

 動くモノは何一つとして、無い。

「す……凄い……」

 エッカルトは目を見開いて、言葉を絞り出す。

「ハァハァ……参った……三万を超えているとは……思わなかった……ハァハァ……」
「だ、大丈夫ですかッッ!? 先生!!」

 2人はゆっくりと下降、地底に足を着ける。

 すぐにコンスタンティンは膝をつき、そして仰向けになってしまう。体力、魔力が根こそぎ奪われている。

 それを見てエッカルトは先程の超絶スペルの原理がわかったような気がした。

 あれはコンスタンティンの魔力、そのものなのだ。

 空中に浮かんだ印、あれがレーダーの役目を果たすと同時に、コンスタンティンの魔力を転換、ビームにして確実に一体ずつ仕留める、それが範囲内の全ての敵が死に絶えるまで繰り返される。

 従って、コンスタンティンの魔力が続く限りは、相手を確実に死に至らせる、必殺の魔法。

 つまり今回のように、相手の数が予想以上に多かったり、魔法耐性が強く、仕留めるのに魔力を大量に使うような場合は、コンスタンティンの消耗が著しく激しくなるという事だ。

 コンスタンティンが持つ膨大な魔力があってこそ成り立つ、究極の範囲魔法。

「先生、敵は全滅致しました。少し、休みましょう」
「ハァハァ……ああ。ちょっとだけ……休ませてもらうよ。だが、気は抜かないでくれ……ハァハァ」

 胸が上下し、苦しそうなコンスタンティンを前に、エッカルトは己の無力さを噛み締めていた。

 そしてエッカルトが見てもわかる。


 もうコンスタンティンに殆ど力が残っていないことが。


 ―

 1時間ほど経っただろうか。

 力はさほど戻ってはいないが、体力の方は少し回復したようだ。そう判断し、エッカルトに、そろそろ行こうか、と声を掛けるコンスタンティン。

「承知致しました」

 洞窟の上にはテンペラが待ち構えている。戻る事は出来ない。

 ここにずっといても回復するどころか、餓死するだけだ。いずれにしても前に進むしかない。

 2人はゆっくりと歩き始めた。

 広い地底を少し進むと、時々、ニュッと空間からモンスターが発生してくる。

 エッカルトがそれらを退治しながら進む。


 タッタッタッタッタ……

 不意に走ってくる足音が聞こえた。

 新手! 無論そう考えて、2人共、身構える。

 だが……

「キャア―――ッッ!! あ……え? 人?」

 先に向こうがこちらを見て悲鳴を上げた。

 見ると15、6歳位の少女だ。
 茶髪のポニーテールに魔術師風の服装をしているが、血だらけで衣服もあちこち破れたり、焦げたりしている。

「誰だッッ!」

 エッカルトがそれ以上は近付くな、とばかりにロッドで牽制する。

「貴方達がここのモンスターを……その……全部?」
「そうだ。正確にはこのお方一人で、だが。お前、人間の女だな……何故、こんな所に居る?」

 警戒を解かないエッカルトを前に、何故か少女はコンスタンティンを見て、ポーッと赤くなっている。

「あの、私、アスガルドから派遣されたパーティに居たんですが、仲間が全滅した上、ここがモンスターだらけで出るに出られず……私、ソフィと言います」
「ソフィ……」

 名前に覚えでもあるのか、名前を反芻し、怪訝な顔をしながらも、コンスタンティンの後ろにスゴスゴと下がるエッカルト。

 すると、コンスタンティンに駆け寄り、抱き着く少女ソフィ。

「お願いです、助けて下さい!! 追われています!」
「何に……追われてるんだ?」

 そういうコンスタンティンだが、色んな疑問が心に浮かぶ。あれだけのモンスターがいて、どうやってここまで来れた? アスガルド王国が一体、何の用で? だが、それを口にするのが億劫になる程、消耗が激しい。

「ヒッ!!!」

 不意にソフィがコンスタンティンの背後に向けて目を見開く! 釣られてコンスタンティンが振り向くと僅か1メートルほどの距離にデヴィルロードが!!

「バカなッッ!! いつの間に! エッカルトは!?」
「あそこ……」

 デヴィルロードの後方を指差すソフィ。
 エッカルトはソフィが指差す辺りの地面に、うつ伏せになって倒れていた!!

 瞬間、最後に残った魔力を掻き集め、デヴィルロードに向けて指からビームを放つコンスタンティン。

 両手を前に出し、首を振りながら後ずさるデヴィルロードに直撃! ビームを食らって吹っ飛ぶ。

 ……と同時に、デヴィルロードの姿が人の姿に変わってゆく。

 そして、後方で倒れていたはずのエッカルトが、先程、『死の雨』で倒したモンスターの一部に変わる。

「……待ってくれ……どういう……事だ……」

 自分が撃ったデヴィルロードは、既に見慣れた人物の姿に完全に戻っていた。

 そう、コンスタンティンが撃ち抜いたのはデヴィルロードではなく、エッカルトだったのだ。

「待ってくれ……待って……エッカルト! エッカルトォォォ!!」

 よろよろとエッカルトに近付き、膝から崩れ落ちるコンスタンティン。

「ごめんね、コンスタンティン……」

 そのコンスタンティンの背後で眉を潜め、泣きそうな顔をしている少女。

 いつの間にやら、スラっとした細身の身体にピタッとくっつく黒いビキニとミニスカート、ストッキングにヒール、といった姿に変わっている。

 腰まである真紅の長髪に、この世のものとは思えない美形、その彼女にコンスタンティンが口を開く。

「君は……何者だ……」
「私は……魔神ゾフィー。そこの男は薄々、気付いていたようだけれど……何故、黙っていたのかしら」
「何だって……」

 もう一度、エッカルトを見て、訳が分からないと首を振るコンスタンティン。

「ごめんね……」

 スッと手をコンスタンティンに向ける。
 ……が、撃たない。躊躇している。

「何故、殺さない?」

 エッカルトを抱きながら、振り向きもせずにコンスタンティンが言う。

「…………」

 ゾフィーは答えない。
 そして……手を下ろす。

「私……貴方に惚れちゃったわ……」


 すると、突然、コンスタンティンとエッカルトの前に闇の壁が現れるッ!!


(何とまあ……役に立たん魔神もいたものだ)


(魔神が人に惚れるなど、聞いたこともないわ)


 総毛立つコンスタンティン。
 こいつ!!

 自分の両親を躊躇無く殺した憎い奴!

《滅導師》ヘルドゥーソ!!!


「うるさいッッッ! 黙ってろ、クソジジイ!!」

 ゾフィーの口調が急に荒くなる。
 テンペラにしても、このゾフィーにしても、ヘルドゥーソに召喚され、意に反して動かされている、とコンスタンティンは理解した。

「ハァハァ……ゾフィー。もし、僕をからかっているのでないのなら……エッカルトを助けてくれ、頼む……頼むよ、お願いだ……ハァ……ハァ」

 少し考える魔神。
 だが、すぐに交換条件を出す。

「私のものに……なってくれる?」
「ああ……なるとも」

 即答するコンスタンティン。

「オッケー!!!」

 掌をエッカルトに向け、一瞬、念じると……
 コンスタンティンの腕の中のエッカルトが目を覚ます!

「エ……エッカルト!!」
「あ、あれ? 先生!!」

 何が起こったのかわからない、と周りを見渡すエッカルト。

「よかったね、死んでなくて。死んでたら私でも無理だったから」
「ゾフィー……ありがとう……ありがとう!!」
「……いやん、ダーリンったら」

 両手で真っ赤になった顔を隠すゾフィー。


(…………)


(何をやっとるんだ、お前は……)


 ヘルドゥーソの顔が歪む。

「私はこの人と、遠い遠い、誰も来ないような景色の良い所で、幸せな家庭を築くのよ!! 邪魔したら殺すから」

 腕を組んでコンスタンティンの後ろに立ち、ヘルドゥーソを睨む。


(やれやれ。奔放な魔神とは知っていたが)


(……ま、好きにするがいい)


(但し、マッツ・オーウェンが来るまではだめだ)


(コンスタンティンもそれまではわしのもの)


「ふん、たかだか人間の癖に偉そうに! ……ごめんね、ダーリン。もうちょっとだけ、我慢してね?」
「マッツ……! お前の……狙いは……マッツか……」

 膝をつきながら、上目にヘルドゥーソを睨む。


(正確にはあいつが持ってくる神の種レイズアレイクだが……)


(他の超人達より……奴は私にとって危険だ)


(あいつを地上で殺す事は諦めた)


(確実に! ここで、殺す)


 ヘルドゥーソの顔がニヤリと笑ったかと思うと、両手がニュッと空間から出現する。


(食らうがいい、《放浪者》よ。『闇の波動』!!)
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