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口の悪い魔人達と俺様ノルト
023.俺様ノルト(4) 朝の喧騒
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ノルトが休む部屋のドアが乱暴に叩かれた。
「おい! 開けろ!」
怒鳴る様な男の声が響く。
突然の事に戸惑うノルトとアンナは顔を見合わせ、縋る様にロゼルタとドーンの顔を見た。
ところが。
「おー。なんか囲まれてんな。兵隊か?」
「殺気は無いようじゃな」
頼みの綱のその2人は部屋の窓に肘を置いて地上を見下ろし、まるで他人事の様に呑気に話をしている。
ドアの外で苛立つ兵士に関しては完全に無視を決め込んでいる様だ。
ドンドンドンッ!
ドアを叩く音と開けろという声は益々大きくなっていく。ノルトが困った様な顔で腰を上げかけたその時、ドアの向こうでバキッという鈍い音がした。
(あ。この音はもしかして)
その思いを見透かした様にロゼルタがノルトに片目を瞑って笑顔を見せる。
「やっぱ脳筋だな、あいつ」
すぐに先程の兵士を上回る大声でテスラの怒声が響き渡った。
「うるっせぇぞ! 朝からでけー声と音出しやがって!」
「が……い、痛ってぇ……き、貴様、何をする! 私は領兵長の……」
「知らねーよ。俺はこの国の人間じゃねーからな。テメーがナニモンだろうが知った事か」
「て、抵抗するのか? ラ、ラドニー様の御命令だぞ。貴様らを研究所に連れて来いとな」
「ラドニー? 研究所?」
ドアの向こうでテスラが言うのと全く同じタイミングでロゼルタとドーンもその名を口にした。
「ラドニーと言えば……確か、腐れクリニカの手下、だな」
「確かそうじゃ。会うた事はないが」
クリニカというのは元々はメルタノに住んでいた魔女だった。闇の女王、暗黒魔導師、淫乱魔女などと言われ、齢九百を越えるサキュバスだ。
かつてヴァンパイアクイーンのロゼルタ、アークウィザードのハルヴァラ、そしてサキュバスクイーンのクリニカの三人はメルタノの三賢者と言われ、強力な魔女軍団を統率していた。
彼女、クリニカは百年程前にメルタノから出奔、どういった経緯かは知られていないが、リド、マッカ、ドラック、サラと共に魔界討伐の英雄パーティ、つまり人間側についた魔族の魔導士である。
無尽蔵とも思える膨大な魔素を持ち、その闇魔法の数々は魔導王ネルソ=ヌ=ヴァロステに匹敵すると噂される程強力なもので、かつてはドーンとロゼルタも苦しめられたものだ。
だがラドニーというのは彼女の弟子である程度の記憶しかない。
「こんな所でクリニカの弟子が何をしておるんじゃろうな」
「気になるな」
ロゼルタはスタスタとドアの所へ行き、スッと開けた。
丁度ドアの向こうでテスラも同じ考えに辿り着き、怯えながらも精一杯強がっている兵士の胸ぐらを掴んで持ち上げながらどうしたものかと考えていた所だった。
彼の袖をひき部屋に呼び込むと再びドアを閉めてドーンを交える。すぐにテスラが小さな声で話し出す。
「どうする? 断るのは簡単だが情報収集のチャンスと言えなくもねーぜ」
テスラの考えが同じとわかり、ロゼルタとドーンの2人がうんと頷く。
「興味は大いにあるな。あの外道パーティの奴らが今、何を考えて何をしているのかは知っておきたいとこじゃ」
「あまり気乗りはせんが、クリニカの霊気は少なくともこの町では感じないしな。だがどうしてあたしらを……?」
「それも含めてラドニーに教えて貰おうではないか」
ドーンのその言葉で決まった。
テスラは部屋を出ると、皆引き込んでしまった為どうしたものかと困惑気味の兵士に言う。
「よし。何の用か知らねーが行ってやる」
「お、おう、そうか、よし」
「偉そーにしてんじゃねーぞ。客人扱いしろ」
「わ、わかった」
結局、テスラの勢いが勝った。
幸いサラの存在は兵士達に知られていない。かつて英雄パーティの一員だった彼女はラドニー程の相手には間違いなく顔が知られている。
彼女はひとり宿に残り、残りのメンバーだけで研究所へと向かう事になった。
「おい! 開けろ!」
怒鳴る様な男の声が響く。
突然の事に戸惑うノルトとアンナは顔を見合わせ、縋る様にロゼルタとドーンの顔を見た。
ところが。
「おー。なんか囲まれてんな。兵隊か?」
「殺気は無いようじゃな」
頼みの綱のその2人は部屋の窓に肘を置いて地上を見下ろし、まるで他人事の様に呑気に話をしている。
ドアの外で苛立つ兵士に関しては完全に無視を決め込んでいる様だ。
ドンドンドンッ!
ドアを叩く音と開けろという声は益々大きくなっていく。ノルトが困った様な顔で腰を上げかけたその時、ドアの向こうでバキッという鈍い音がした。
(あ。この音はもしかして)
その思いを見透かした様にロゼルタがノルトに片目を瞑って笑顔を見せる。
「やっぱ脳筋だな、あいつ」
すぐに先程の兵士を上回る大声でテスラの怒声が響き渡った。
「うるっせぇぞ! 朝からでけー声と音出しやがって!」
「が……い、痛ってぇ……き、貴様、何をする! 私は領兵長の……」
「知らねーよ。俺はこの国の人間じゃねーからな。テメーがナニモンだろうが知った事か」
「て、抵抗するのか? ラ、ラドニー様の御命令だぞ。貴様らを研究所に連れて来いとな」
「ラドニー? 研究所?」
ドアの向こうでテスラが言うのと全く同じタイミングでロゼルタとドーンもその名を口にした。
「ラドニーと言えば……確か、腐れクリニカの手下、だな」
「確かそうじゃ。会うた事はないが」
クリニカというのは元々はメルタノに住んでいた魔女だった。闇の女王、暗黒魔導師、淫乱魔女などと言われ、齢九百を越えるサキュバスだ。
かつてヴァンパイアクイーンのロゼルタ、アークウィザードのハルヴァラ、そしてサキュバスクイーンのクリニカの三人はメルタノの三賢者と言われ、強力な魔女軍団を統率していた。
彼女、クリニカは百年程前にメルタノから出奔、どういった経緯かは知られていないが、リド、マッカ、ドラック、サラと共に魔界討伐の英雄パーティ、つまり人間側についた魔族の魔導士である。
無尽蔵とも思える膨大な魔素を持ち、その闇魔法の数々は魔導王ネルソ=ヌ=ヴァロステに匹敵すると噂される程強力なもので、かつてはドーンとロゼルタも苦しめられたものだ。
だがラドニーというのは彼女の弟子である程度の記憶しかない。
「こんな所でクリニカの弟子が何をしておるんじゃろうな」
「気になるな」
ロゼルタはスタスタとドアの所へ行き、スッと開けた。
丁度ドアの向こうでテスラも同じ考えに辿り着き、怯えながらも精一杯強がっている兵士の胸ぐらを掴んで持ち上げながらどうしたものかと考えていた所だった。
彼の袖をひき部屋に呼び込むと再びドアを閉めてドーンを交える。すぐにテスラが小さな声で話し出す。
「どうする? 断るのは簡単だが情報収集のチャンスと言えなくもねーぜ」
テスラの考えが同じとわかり、ロゼルタとドーンの2人がうんと頷く。
「興味は大いにあるな。あの外道パーティの奴らが今、何を考えて何をしているのかは知っておきたいとこじゃ」
「あまり気乗りはせんが、クリニカの霊気は少なくともこの町では感じないしな。だがどうしてあたしらを……?」
「それも含めてラドニーに教えて貰おうではないか」
ドーンのその言葉で決まった。
テスラは部屋を出ると、皆引き込んでしまった為どうしたものかと困惑気味の兵士に言う。
「よし。何の用か知らねーが行ってやる」
「お、おう、そうか、よし」
「偉そーにしてんじゃねーぞ。客人扱いしろ」
「わ、わかった」
結局、テスラの勢いが勝った。
幸いサラの存在は兵士達に知られていない。かつて英雄パーティの一員だった彼女はラドニー程の相手には間違いなく顔が知られている。
彼女はひとり宿に残り、残りのメンバーだけで研究所へと向かう事になった。
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