【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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口の悪い魔人達と俺様ノルト

017.ロゼルタ、謎の感情に戸惑う

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 翌日、日が丁度真上に来た頃、彼らの前に幅の広い川が現れた。

 流れは非常に緩やかで、水の色から深くなっている部分も分かり易い。汗だくになっていた彼らの間に歓声が上がる。

「よし。そんなに急ぐ旅でもねー。ちょっと休憩だ!」

 言うが早いか、ロゼルタは器用にスルスルとワンピースを脱ぎ、下着を脱ぎ、ものの数秒で素っ裸になってしまった。

「うわわわわっ!」

 そのあまりの素早さに、すぐ後ろにいたノルトは彼女の肩から腰、尻からスラリと伸びる長い足までの芸術的とも言える曲線美をもろに見てしまい、慌てて目を覆う。

「どうした、魔物か!?」

 その声にロゼルタは慌ててノルトの方へと振り向き、短剣に手を伸ばす。

「ふっっはああぁぁぁぁ!」

 今度は正面からあられも無い姿を見てしまったノルトは顔を真っ赤にし、失神する寸前だった。

「なんだ、どうしたんだ? 何もいねーようだが?」

 倒れそうになるノルトを抱き締め、周囲を警戒する。

「ちょ、ちょっと離れなさいよ! なんてふしだらなの!」

 アンナが強引に2人の間に割り込んだ。

「ふしだら?」
「ちょ、とにかく離れなさい……ってば!」

 ノルトを見ると既に顔は充血して真っ赤になり、そのまま気を失っていた。

「ノルト? 大丈夫?」
「一体どうしたんだ? 体調でもワリーのか?」

 どうやらロゼルタは本気でノルトを心配している様だ。アンナの腕の中で白目を剥いて失神しているノルトを眉を寄せて覗き込む。

「いやちょっと……文化が違い過ぎてどう言ったらいいのかわからないけど、と、とにかくノルトにそんな格好見せないで!」
「そんな格好?」

 そこで初めて自分の裸が原因だと言われている事に気付く。だがそれでもどこを隠すでもなく、逆に見せつける様に姿勢良く立ち、不思議そうな顔をして首を傾げた。

「ありゃ。人間の男は女の裸が好きなんじゃねーの? メルタノのサキュバス達はいっつもツヤツヤしてたぜ」
「ばばばばバカじゃないの!? ノルトはそんなゲスな男共とは違うのよ! 純真でウブなんだから!」
「へーへー。そりゃ悪かったなぁ。じゃ、介抱は任せたぜ? あたしは先に楽しんでるわ。お前も後でノルトと一緒に来いよ」

 そう言って筋肉質で見事なスタイルを惜しげもなく晒すとクルリと回って川の方へと行ってしまった。

 それを睨む様にして見ていたアンナがギョッとする。

 ロゼルタだけではない。
 ドーンも、テスラも、そしてどちらかと言うと人間寄りと思っていたサラでさえ、いつの間にか素っ裸になっていたのだ。

「なななななあぁぁぁ!?」

 空いた口が塞がらないとはまさにこの事だった。ノルトを抱えたまま、あんぐりと口を開けたまま暫く放心した様に川辺で遊ぶ彼らを見ていた。

 ふと気配を感じ、背後を見るとマクルルが仁王立ちしていた。思わずホッとして声を掛ける。

「よ、良かった。マクルルはまともよね?」
「まとも?」
「え? だって、その、服、脱いでないし」

 そう言われてまるで暗殺者の様な自らの暑苦しい格好を見、またアンナへと視線を戻し、

「まともかどうかはさておき、これだけ魔物が多い所だ。見張りがいるだろう?」
「……な、なるほど」
「う、うぅん」
「ハッ! ノルト!?」

 腕の中のノルトが目を覚ます。

「お、お嬢様。一体、何が……」

 アンナは泣きそうな顔になり、ノルトを抱き締めて叫ぶ。

「あ――ん、ノルトぉ。みんながぁ、変よう!」
「変?」

 そう言われて思い出す。
 ロゼルタの美しい体を鮮明に。前からも後ろからも全て見てしまった。

 再び顔を赤くし、騒がしい川の方に目をやる。

 そこにはロゼルタを初め、ここにいる3人以外が一糸纏わぬ姿で水浴びをしている姿があった。
 先程のアンナと同じく、ポカンと口を開ける。

「魔族って……裸は恥ずかしいものではないんですか?」

 マクルルに聞いてみる。
 ギロリと目だけをノルトに移すとマクルルは少し考えてから言った。

「普通は人前で裸にはならないな。普段は我々も服を着ているし」
「でも躊躇なく裸になりましたよね」
「仲間だからだな」

 仲間……口の中で反芻し、

「な、仲間だから……なるほど!」
「バカッ!『なるほど!』じゃないわ!」

 口と頭を叩く手が同時だった。ノルトの顔に自分の顔を近付け、目を吊り上がらせて言う。

「騙されたらダメよ、ノルト。この人達はを持っているんだから。あなたは純粋だからすぐに毒されそうだわ。私と一緒にいましょう。そうしましょう、ね?」
「でもアンナ、みんな楽しそうだよ?」
「ぐっ……」

 言い返す言葉が見つからずそこで黙ってしまった。
 そんな事を話していると不意に川の方が更に騒がしくなる。

「おいこらテメー、何、勝手に人の乳揉んでんだ!」

 ロゼルタの声だった。黙っていれば女神と言われてもすんなり信じてしまう程の外見だが、口を開けばまるで山賊の首領の様だ。だが口の悪さはテスラも負けてはいない。

「は? 何言ってんだテメー。誰が好き好んでそんな脂肪の塊なんて揉むんだ。テメーの乳が勝手に俺の手にくっついてきたんだろーがっ!」
「んな訳あるかコラ。テメーさては脳みそまで人化しちまったな? あたしとヤリてーんだろこら」
「はあ? ふざけてんじゃねーぞこのクソビッチ。テメーの方こそヤリたくなって俺の手に吸い寄せられたんじゃねーのか?」

 聞くに堪えない言葉で罵り合う2人の間にサラが割り込んだ。

「おふたりともその辺で。一応、子供も2人いる事ですし」

 その言葉でまだ座り込んだままのノルトとアンナに目をやる。

 一気にトーンダウンした2人を前にサラはニマッと笑うと突然、左手でロゼルタの胸を鷲掴み、

「ひにゃああ! テ、テメー何すんだぁぁ」

 更に右手でテスラの股間、いやその一物を力一杯握った。

「グハッ! いででで! ははは離せ、クソエルフ!」
「ウフフッ。これでおあいこですね? さ、仲良くしましょう」
「意味わかんねーわ!」
「ふざけんな、天然エルフ!」
「え? う、うわわわわちょっと!」

 2人に抱え上げられたサラはそのまま少し深くなっている方へと放り投げられた。

 その一連の様子をノルトとアンナはずっと黙って眺めていた。
 すると突然彼らの後ろからドーンの声がした。

「やれやれ。あいつらも子供じゃのう」
「うわっ」

 先程まで彼らと一緒に川で遊んでいた筈のドーンがいつの間にか背後に回っていた。

 無論彼女も真っ白で細い、水に濡れた肢体を晒したままだ。

「あ! ダメよノルト、見ちゃ!」
「あううう……」

 アンナの手のひらで目を隠されてもがく。

「これアンナ。お前が恥ずかしくて裸にならないのは結構じゃがノルトは行きたそうじゃぞ? あまり束縛すると男は離れてしまうぞ。程々にしてやれ」
「なっ……」

 そっと手のひらを離すと上目遣いにノルトがアンナを見つめていた。

「僕も……遊びたい」

 それはドーンの言葉の後押しがあったとは言え、これまで自分を押し殺して生きていたノルトが、やっと勇気を出して他人に意見を言えた瞬間でもあった。

「アンナも、行こう? みんな一緒だし、川に入っちゃえば恥ずかしくないよ」
「……」

 暫く顔を真っ赤にしてうーと唸っていたアンナだったがやがて、

「マクルル! あんたちょっとあっちの方向見張りなさいよ!」
「……」

 アンナの我儘に特に怒るでもなく、マクルルは首を竦めて後ろを向いた。と同時に素早くワンピースとズボンを脱ぎ、

「何してんの早く脱ぎなさいよ! 私だけなんてズルいわ!」

 内股になり、胸と股間を手で隠す姿に思わずノルトも赤くなるが、その言葉にはにかむ様に少し微笑み、大きく頷く。


 そうして彼らもようやく川遊びに混じる。

 つい今しがたまで全裸断固拒否の姿勢を貫いていたアンナだったがそんな事は忘れたかの様に気持ち良さそうに仰向けに浮いたり、尻だけを川面に出して潜ったりしていた。

「所々、深い所もあるから気をつけろよ」

 ロゼルタが保護者の様に言う。泳げないノルトは膝程の深さの所で屈んで水浴びをしていた。足元に水棲スライムを見つけ、手に取りはしゃぐ。

「おおお! 初めて見た!」
「どうした?」

 ロゼルタが微笑を見せて振り向く。

 ノルトは両手いっぱいの大きさのそれを持ち、ロゼルタに見せようとバシャバシャと走り出した。

「おい。危ねーぞ」
「ああっ!」

 ロゼルタがノルトを抱く様に両手を出したと同時にノルトがヌルッとした石のに足を滑らせ、転げそうになった。

「ほら、言わんこっちゃねー」

 笑顔でノルトの両脇に手を入れ、すんでのところで助けだす。

 一方のノルトはスライムを落としそうになり、慌てて出した手が何とかスライムをキャッチしたようだ。

「んん……おい、テメーもか?」
「え?」

 言われて暫くしてから気付いた。
 彼の手にあったのはスライムではなく、お椀型に整った美しいロゼルタの乳房だったのだ。

 そんな人間の男なら誰もが羨むふたつのものを手にしながらノルトは数秒固まっていた。

 今までの人生が走馬灯の様に脳裏を過ぎり、この数日の恐怖、そして楽しかった事を思い出し、(僕の人生、短かったけど最後にみんなと出逢えて良かったな)と死を覚悟した。

「ほら、しっかり立て。何を見せたかったんだ?」
「あ、え? あ、スライムを……見つけて……」
「スライムか。そういや、さっきいたな」
「あれ?」
「どうした?」
「ぼ、僕を殺さないんですか?」

 真面目腐った顔でそう言うノルトを面食らった顔で数秒見つめ、やがてロゼルタは腹を抱えて大声で笑い出した。

「な、なんであたしがお前を殺すんだよ。ひーーおかしー」
「なんだクソアマ、俺ん時と態度が違い過ぎるじゃねーか!」

 やっかみも多少は含まれていたのか? テスラが大声で怒鳴る。

「テメーみてーなウスノロとノルトを一緒にすんじゃねー」

 テスラにそう怒鳴り返しておいて、ノルトに優しい笑みを向ける。

「バカだなお前。お前はもうあたしらの仲間じゃねーか。言ってくれたら乳位、いくらでも揉ませてやるぜ?」

 人間ならまず言わないだろう、そんなセリフを言うと優しくノルトを抱き締めた。

「ふあっ」

 その温もりはノルトに今まで感じた事の無い、そして恐らくは無意識の内に渇望していた感情を芽生えさせる。

 それは男性本能の卑猥な部分ではなく、彼の知らない『母』という未知の存在への欲求を刺激した。

 いつの間にかノルトの目からは二筋の涙が頬を伝い、キュッと優しくロゼルタを抱き返し、「ごめんなさい」と言った。

 一方で、背中に回された、歳の割には小さなノルトの両手と胸に埋めた顔の感触、鼻腔をくすぐる子供独特の匂いは、ロゼルタの方にもついぞ感じた事のない感覚を芽生えさせた。

 戸惑ったロゼルタが慌ててノルトを体から引き剥がす。その目には、顔を赤くして自分でも知らないまま涙を流し、彼女に何かを求めているノルトの顔が映る。

「うっ……くっ……」

 そこにテスラが近付き、場の空気に全く削ぐわないを入れた。

「クックック。おいクソアマ。雌の顔になってんぞ?」
「バッ……」

 だがそれ以上の言葉が出ず、代わりに右の拳を腰の捻りと共に真っ直ぐ突き出した。

「ぐあっ」

 という悲鳴と共にテスラの体が宙を舞った。

(ク……なんだこの感情は……やべー。何か知らねーがこれはやべーぞ)

 遠目にその様子を見ていたドーンは、

「ロゼルタめ……子を産む前に母になりおったか?」

 真面目な顔付きでポツリと言った。















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