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口の悪い魔人達と俺様ノルト
027.俺様ノルト(8) 俺様ノルトだわ!
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(エキドナさん……起きて……)
逃げるとなった時から嫌な予感がしていたノルトはずっとエキドナに語り掛けていた。
出来る事なら発現させたくはないが、最悪は仕方無い。死んでしまったら終わりだからだ。
『ふああわわわわ。あらノルト君、おはよう』
少女の寝起きの様に少し惚けてはいるが、透き通った聞き心地の良い声が頭の中に響く。
(エキドナさん! よ、よかった、間に合った)
『ふむふむ。あら、嫌な魔法ね。私がやられちゃった原因になったやつだわ』
エキドナはノルトが説明せずとも感覚を共有しているせいか、すぐに事態を理解する。
(はい。でもあの時より相手の力は弱いと思うんですが……転移出来ませんか?)
するとエキドナは少し不思議そうな声で言った。
『出来ると思うけど……いちいち私に言わなくてもノルト君がしていいのよ?』
(へ? い、いや、僕は魔法なんか……)
戸惑うノルトにウフフと可愛く笑う声が聞こえた気がした。
『気付いてないのね。貴方は私達4人の魔王と同一人物なの。つまりこの世で最強の人間だわ! ……と言ってもオーグとランティエはまだ寝てるみたいだし、私達全ての力を使えるようになるにはまだまだみたいだけど』
『あああ、それ言っちゃったらダメじゃない、エキドナちゃん』
その残念そうな声はネルソの声だった。
『あら。どうして?』
『いや……だってノルトが余を呼び出してくれなくなるだろ。出番なくなるじゃん!』
『貴方ねぇ』
感覚を共有する彼らは一瞬でそのやり取りをする。
(取り敢えず分かりました! 有難う御座います、エキドナさん!)
『頑張ってね! 無理な時は頼っていいからね!』
『コホン。時々、余を呼んでよいからな?』
ラドニーの捕縛魔法で動きの止まったノルト達に圧倒的な数の死霊が迫る。
「チッ。ドーン! このデバフ、打ち消せねーのか?」
「ううむ。この程度、魔人にさえ戻れば簡単なんじゃが……なんともこの体が弱い」
「クッ!」
既に10体近くの死霊達が辿り着き、最後尾だったロゼルタ、マクルルと戦闘が始まった。
(僕が転移……使えるだろうか。いや! やるんだ。やらないと!)
怒り狂ったラドニーの叫びが部屋の中で反響した。
「逃すかこの身の程知らずのクソガキ共めぇぇ! てめぇら如きが偉大なるクリニカ様に造られた、このヴァンパイアとハイエルフの合成魔人、百年を生きたラドニー様に敵うかぁぁ!」
髪を振り乱し、狂乱状態となったラドニーが自分の素性を暴露する。
「クソッタレめ。たかが百歳で威張ってんじゃねー! 俺らよりよっぽどガキじゃねーかよ!」
「合成魔人だったのか。道理でおかしな気配だと思ったぜ」
「クリニカを侮辱されて脳みその何かがキレちまったようじゃな」
テスラ達が観察する間を与えず、大きく目を見開いたラドニーの手のひらが鈍く紫に光る。
「『メルマトラの瘴気』!」
不意に紫色の濃霧が天井から雪の様に舞い降りて来た。
この世界の中心にある巨大なメルマトラという地域に実際にある瘴気ガスで、触れれば弱い者ならものの数秒で死に至る。
「チッ、厄介な……仕方ねー! 魔人化して……」
「ロゼルタ!」
叫んだのはテスラでもドーンでもない、なんとノルトだった。
今までに2回、ネルソを発現させた時の様に髪が逆立ち、目付きは竜の様に鋭くなっていた。
「お……ノルト?」
「俺に任せろ。転移する。あまり遠くには飛べないが、取り急ぎ外に出る」
「ダメ……」
ダメだ、と言おうとしてノルトがネルソやエキドナの霊気を纏っていない事に気付く。瞳の色も深い茶色のままだった。
逡巡している間にもガスは刻々と下へ、彼らへと舞い降りており、身を屈めなければ触れてしまう程だった。
ノルトの急激な変化を見たアンナが唐突に叫ぶ。
「お、俺様ノルトだわ!」
彼女だけが知っている、人が変わったとしか思えないノルトの人格だった。
「俺様ノルト、だと?」
「ええ! 川で私を救ってくれた時に現れたの!」
もはや毒霧は彼らに降り注ぎ、皆、床に伏せた。
「な、なんだか知らねーが……よし、任せたっ!」
「『転移』!」
毒霧が完全に床へと充満し、ラドニーは涎を垂らし、愉悦の表情を浮かべる。
「ウェッウェッウェッ……クリニカ様に反逆する者は何人たりとも生かしてはおかん。どれ。奴らの死体をドラゴニアにやるか……」
ラドニーは余裕綽々で毒霧が完全に消え去るのを待つ。
しばらくして、その場に誰もいない事に気付き、愕然となった。
逃げるとなった時から嫌な予感がしていたノルトはずっとエキドナに語り掛けていた。
出来る事なら発現させたくはないが、最悪は仕方無い。死んでしまったら終わりだからだ。
『ふああわわわわ。あらノルト君、おはよう』
少女の寝起きの様に少し惚けてはいるが、透き通った聞き心地の良い声が頭の中に響く。
(エキドナさん! よ、よかった、間に合った)
『ふむふむ。あら、嫌な魔法ね。私がやられちゃった原因になったやつだわ』
エキドナはノルトが説明せずとも感覚を共有しているせいか、すぐに事態を理解する。
(はい。でもあの時より相手の力は弱いと思うんですが……転移出来ませんか?)
するとエキドナは少し不思議そうな声で言った。
『出来ると思うけど……いちいち私に言わなくてもノルト君がしていいのよ?』
(へ? い、いや、僕は魔法なんか……)
戸惑うノルトにウフフと可愛く笑う声が聞こえた気がした。
『気付いてないのね。貴方は私達4人の魔王と同一人物なの。つまりこの世で最強の人間だわ! ……と言ってもオーグとランティエはまだ寝てるみたいだし、私達全ての力を使えるようになるにはまだまだみたいだけど』
『あああ、それ言っちゃったらダメじゃない、エキドナちゃん』
その残念そうな声はネルソの声だった。
『あら。どうして?』
『いや……だってノルトが余を呼び出してくれなくなるだろ。出番なくなるじゃん!』
『貴方ねぇ』
感覚を共有する彼らは一瞬でそのやり取りをする。
(取り敢えず分かりました! 有難う御座います、エキドナさん!)
『頑張ってね! 無理な時は頼っていいからね!』
『コホン。時々、余を呼んでよいからな?』
ラドニーの捕縛魔法で動きの止まったノルト達に圧倒的な数の死霊が迫る。
「チッ。ドーン! このデバフ、打ち消せねーのか?」
「ううむ。この程度、魔人にさえ戻れば簡単なんじゃが……なんともこの体が弱い」
「クッ!」
既に10体近くの死霊達が辿り着き、最後尾だったロゼルタ、マクルルと戦闘が始まった。
(僕が転移……使えるだろうか。いや! やるんだ。やらないと!)
怒り狂ったラドニーの叫びが部屋の中で反響した。
「逃すかこの身の程知らずのクソガキ共めぇぇ! てめぇら如きが偉大なるクリニカ様に造られた、このヴァンパイアとハイエルフの合成魔人、百年を生きたラドニー様に敵うかぁぁ!」
髪を振り乱し、狂乱状態となったラドニーが自分の素性を暴露する。
「クソッタレめ。たかが百歳で威張ってんじゃねー! 俺らよりよっぽどガキじゃねーかよ!」
「合成魔人だったのか。道理でおかしな気配だと思ったぜ」
「クリニカを侮辱されて脳みその何かがキレちまったようじゃな」
テスラ達が観察する間を与えず、大きく目を見開いたラドニーの手のひらが鈍く紫に光る。
「『メルマトラの瘴気』!」
不意に紫色の濃霧が天井から雪の様に舞い降りて来た。
この世界の中心にある巨大なメルマトラという地域に実際にある瘴気ガスで、触れれば弱い者ならものの数秒で死に至る。
「チッ、厄介な……仕方ねー! 魔人化して……」
「ロゼルタ!」
叫んだのはテスラでもドーンでもない、なんとノルトだった。
今までに2回、ネルソを発現させた時の様に髪が逆立ち、目付きは竜の様に鋭くなっていた。
「お……ノルト?」
「俺に任せろ。転移する。あまり遠くには飛べないが、取り急ぎ外に出る」
「ダメ……」
ダメだ、と言おうとしてノルトがネルソやエキドナの霊気を纏っていない事に気付く。瞳の色も深い茶色のままだった。
逡巡している間にもガスは刻々と下へ、彼らへと舞い降りており、身を屈めなければ触れてしまう程だった。
ノルトの急激な変化を見たアンナが唐突に叫ぶ。
「お、俺様ノルトだわ!」
彼女だけが知っている、人が変わったとしか思えないノルトの人格だった。
「俺様ノルト、だと?」
「ええ! 川で私を救ってくれた時に現れたの!」
もはや毒霧は彼らに降り注ぎ、皆、床に伏せた。
「な、なんだか知らねーが……よし、任せたっ!」
「『転移』!」
毒霧が完全に床へと充満し、ラドニーは涎を垂らし、愉悦の表情を浮かべる。
「ウェッウェッウェッ……クリニカ様に反逆する者は何人たりとも生かしてはおかん。どれ。奴らの死体をドラゴニアにやるか……」
ラドニーは余裕綽々で毒霧が完全に消え去るのを待つ。
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