【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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口の悪い魔人達と俺様ノルト

040.セントリアに打つ布石(6) ノルト出撃

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 テスラとバルハムが再会する少し前 ――

 宿ではノルトが心配そうに窓の外を見ては手を揉んでいた。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。ロゼルタなんだから」
「そうですよ。あの方に敵う人なんてここにはいません」

 アンナとサラにそう言われるが気が気でない。

 唐突にロゼルタの恐ろしい殺気がこの辺りまでしたかと思えばそこから全く気配がしなくなり、次いで突然何十と発生した魔物の群れの気配にサラやアンナが気付いたからだ。

(でも僕が行った所で邪魔にしかならないだろうし……)

 その思いで我慢していた。
 やがて町の中で爆発音がしたかと思うと、大量の死霊達が群れをなしてその建物に傾れ込んでいくのが見えた。

「す、凄い事になってますね。死霊レイスがあんなに沸いているのは久しぶりに見ました」

 サラはノルトの頭越しに、窓から身を乗り出して言う。

「あの建物は確か……昔と変わってないとすれば警備砦です」
「ほう。あれがそうですか。という事はロゼルタさんが煽動したのかもしれませんね」
「ロゼルタさんが?」
「あの中には魔物の気配がかなりあります。死霊レイスを隠れ蓑に魔物達と共に砦を襲い、テスラさんを奪い返しに行かれたのでは」
「さっきの凄い殺気は魔物達を従わせるため……」

 スラムを調べに行くだけと言っていたため、そんな事は思いもしなかったノルトだったが、そう言われてみるとなるほど、さすがはロゼルタ、と思えた。

 だが今度はそのロゼルタが向かったスラム街の方で火の手が上がる。

「え? あれ! か、火事?」

 アンナがノルトの横で大声を上げた。

 暗い夜なのが余計にそれを際立たせる。特にスラムの辺りは老朽化した建物が多く、一旦火がつくと燃え広がるのも早い。

 煙が立ち昇るのを見ていたその時、虫の知らせにも近い、何か途轍もなく嫌な予感がノルトを襲う。

「僕、行って来ます」
「え!? だ、ダメです。ロゼルタさんがここにいる様にと」

 驚いたサラが止めようとするが、ノルトは首を振った。

「僕が行かないと。そんな気がするんです」

 決意に満ちたその顔と言葉に圧倒され、二の句が継げなくなったサラは、

「わかりました。その代わり私も行きます。マァムさんとエイミィさんは絶対にアンナさんと一緒にここにいて下さい。万が一の時は必ずアンナさんを守って下さい」

 そう言うのが精一杯だった。

「わかった!」
「気を付けてね!」
「ノルト。何があったのかわかんないけど……気を付けて」

 そのアンナに頷くと、すぐにサラに向かって言った。

「サラさん、急ぎましょう」
死霊レイスの大群と火事、どちらに行かれますか?」
「スラム……あの火事の方へ!」

 取る物も取り敢えず2人は宿から飛ぶ様に出て行った。


 ◆◇

 火事の方へと近付くにつれ、それは娼婦街の一角、丁度この町に来た日にテスラがマリヤに声を掛けられていた辺りの建物が燃えているという事がわかった。

 嫌な胸騒ぎは一向に消えず、不安と焦りは増すばかりだった。

 火事現場に着くと娼婦と思われる女性達が水を掛けたり、大声で助けを呼んだりしている。

 その叫び声の中の1つがノルトの耳に一際鮮明に入って来た。

『まだ中にマリヤがいる!』

(マリヤ! あの……おばさんだ)

 なぜか彼を避けようとしている様に思える女性、今朝会った時はとても体調が悪そうだった女性。

(エキドナさん、力を!)

 その力を思い描くと同時に彼の視界が広がり始める。

 エキドナの目 ――

 魔界メルタノの魔王、エキドナは物理的な遮蔽物を透過して、自身周辺1km 程度を見通す目を持っていた。

 ノルトの目にその『エキドナの目』が憑依する。
 目の前で燃え盛る建物の構造がX線写真の様に鮮明に映った。瞳を調節しマリヤを探す。もっと奥の方へ、と思った瞬間、景色がブレた様に見えた。

(な、なんだ?)

 そう思う間もなく、見ていた部分のすぐ横、炎が激しく回り始めている部屋のひとつでなんとロゼルタを見つけた。

「な、なんでロゼルタがこんな所に!」
「え? ロゼルタさんが?」

 しかも信じられない事に彼女は今、殺されかけていた。

「行ってくる」
「あっ、えっ!?」

 説明する暇などない、そう判断したノルトはサラの目の前で姿を消した。

(んんん、もう! 絶対に守れって言われてますのに……しかもいつの間にかになってるし!)


 そのノルトが転移した先は床に寝転がるロゼルタの。空中だ。

 その2人の間にもう1人、体格から恐らく男と思われる見知らぬ人物がいた。

 全身を黒装束で包み、表情は窺い知る事は出来ない。その男は左手でロゼルタの首を締め、反りのある短剣を持つ右手を振り翳し、今まさにロゼルタの首を刈らんとしている所だった。

(ク、馬鹿力め! 仕方ねーこうなったら……)

 ノルトが現れたのはロゼルタが魔人化を覚悟したのと同時だった。

 落ちる勢い、体の捻りを利用して男の背後から首に蹴りを入れた。

「!」

 すんでで気付いた男は信じられない体捌きでグニャリと上半身を捻ってそれを避け、すぐさま2人から距離を取る。

(ノ、ノルト! バカな、なんでこんなとこに)

 自分を助けた目の前のそれがノルトだと気付いたと同時に彼が落ちて来た。動けなかったロゼルタの近くに手と足を着地し、顔がぶつかる手前で止まる。

「こ、こら、何してんだこんなとこで」

 ノルトにだけ聞こえる程の小さな声で言う。

「来なきゃならない気がしたんでね。立てる?」
「お前……あー、俺様ってやつか」

 差し出されるノルトの小さな手を握って立つ。

 その手はあの頼りない少年のそれではなく、力強さに溢れた手だった。
 立ち上がれば文字通り大人と子供の差があるが、その迫力はロゼルタに引けを取らない。

 ロゼルタを襲っていた男は燃え盛る炎をモノともせず、遠巻きにノルトを頭のてっぺんから爪先まで観察した。

「ふむふむ。ネイトナからの情報にあったぞ……12、3歳の少年、お前だな?」

(ネイトナ!)
(ネイトナだと!?)

 そう思ったものの2人とも顔には出さない。

「違うね。俺は14だからな」
「魔王隠匿の容疑がかかっている。他の奴は?」
「他の奴? なんの事かわからないな」

 その答えを待たず、男は残像を残す程の動きでノルトの目の前へと移動し、ノルトがそれを認識した時には既に拳が撃ち抜かれ、その小さな体は炎の激しい壁へと吹き飛んでいた。

って……えな!」

 痛みに耐え、空中でクルンと回転し、壁を蹴って再び男へと向かう。

 それと同時に彼の中で眠る、この上なく強力な相棒に向かって叫ぶ。

(ネルソッ!)

 かつて魔導王として恐れられた魔界スルークの王の名を呼び捨てた。途端にその呼び掛けに答える様に時の流れがスローになる。

『余が出てこなくても頑張れる様になって来たじゃないか。結構結構』

 この緊迫した場には似つかわしくない、ネルソの呑気な調子が頭に直接流れ込んでくる。

『オーグを起こしてくれ!』

 頭の中でネルソにそう叫んだ。











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