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口の悪い魔人達と俺様ノルト
044.セントリアに打つ布石(終) ネイザールへ
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その頃、ノルト、アンナそしてサラの3人は案外ロゼルタ達の近くにいた。
昨日の火事で半分は灰となった娼婦街の建物の中だ。
マリヤの病気の話をしたノルトに、サラが『もし宜しければ私が見てみましょうか?』と提案したからだ。
「ゴホッゴホッ……」
「大丈夫ですか?」
「うん……ノルト、なんだか今日はまた昨日と雰囲気が違うね」
「う、すみません」
そんなぎこちない親子の会話の前でサラが目を瞑り、手を合わせている。
アンナは双方の邪魔をすまいと静かに座っていた。
やがてサラの手が白く光り、マリヤを照らす。大きく深呼吸し、静かに精霊へと語りかけた。
「交感せよ。光の精霊王、キジェシス」
その言葉の後、アンナやノルトですらその気配を感じる程の神々しい霊気がサラに舞い降りる。彼女の輪郭がぼやける程のそれは大きく煌めき、数秒の後に消えていった。
神妙な面持ちでサラがゆっくりと目を開く。
「ふむう」
「ど、どう、サラ。何か分かった?」
強い精霊の気配に戸惑いながらアンナが尋ねる。サラは彼女に一度頷くが、すぐに首を捻る。
「え。どっちなの?」
「ご病気の原因は分かりましたが……まあとにかくマリヤさん。原因は取り除き、怪我となっていた部分も治癒致しました。つまりもう治りました」
「へ?」
狐につままれた様な顔でポカンとするマリヤの手をとり、ノルトが喜色を浮かべた。
「ありがとうございます! サラさん」
「え? その、治った……え?」
「はい。もう大丈夫ですよ、マリヤさん。再発する様なものでもありません」
「はあ。あ、ありがとう」
首を傾げ、搾り出す様に言ったものの、一瞬の事で全く実感が湧かない。
だが確かに常にあった、喉の奥と胸の辺りでの嘔吐き、引っかかり、痒み、そして痛みはなくなっている。
そんなマリヤの代わりとばかりにアンナが聞く。
「一体何だったの?」
「ううむ、それが」
サラは視線を自分の手に移し、それをアンナの方へと向けて開いた。
よくよく目を凝らすとその手のひらで1センチにも満たない、ぶよぶよとした白い虫が体を畝らせている。
「ギャッ!」
それに気付いたアンナが驚いてノルトに飛びついた。
「ななな何なのよそれ! そんなの目の前に持って来ないでよ!」
だがサラは全く平気な様子で手のひらを自分の目の前に持っていき、右から左から観察をし始めた。
「これ、屍蟲というんですが、メルマトラの沼などの湿地帯によくいる虫なんですよね。何故それがマリヤさんの体内にいたのか。それがわからないのです」
「メ、メルマトラ? そんなのがマリヤさんの体の中に?」
「はい。滅多に生物には寄生しないのです。稀に喉の辺りに寄生する場合もあって、入って来る食物を先に食べるんです。その時に激しく顎を動かすので体内に傷がついてひどい時は吐血します」
「うぇぇ。ぞっとしないわね」
虫から少しでも離れようとノルトの後ろに逃げるアンナをよそに、サラはしきりと首を傾げていた。
「あたい、メルマトラなんかに行った事ないんだけどねえ。一体なんで」とマリヤ。
「ですよねえ。こいつの1番の感染経路はメルマトラで沼水を飲んだり、死肉を食べたりする事なんですが、それ以外だと感染した人間との唾液交換位でしょうか」
「あたいら、仕事ではキスしないから……」
だがすぐにアッと明らかに何かに思い当たった様だ。手のひらで口を抑え、考え込む。
ノルトが気遣いながらマリヤの顔を覗き込む。
「1人だけ……2か月位前、かな。言われてみれば咳が出だしたのもそれくらいだよ」
「どんな奴ですか!?」ノルトが目を怒らせた。
「とっても綺麗な、若くて可愛らしい女の子だったんだ」
「え、ええ? 女なの!?」
思わず叫んだのはアンナだった。
マリヤが言うには、それはフラッとやって来た1人の少女だったという。最初は気にもしていなかったのだが、立ち並ぶ娼婦を値踏みする様に見て歩きながらマリヤに声を掛けた。
『お姉様、私としてくれない?』
『え、あたいとかい?』
女性との経験もあったマリヤだが、自分の子供ほどに見える少女との行為は初めての経験だった。
部屋に通し、改めて見る少女の姿はマリヤが羨む程に美しいものだった。
肩甲骨の辺りで綺麗に揃えられたきめ細かな漆黒の髪、明らかな容姿の幼さとそぐわない妖しい雰囲気を持った目と唇、一糸纏わぬその姿はまるで童話に出て来る天使の様だった。
戸惑いつつも少女を寝かせようとすると、
『うふ。違うの。私がお姉様をイカせたいの』
その形の良い赤い唇から、耳を疑う言葉が漏れた。
それから先はあまり覚えていない。
言うだけあって少女の愛撫は男女含めてマリヤがかつて経験した事のないものだった。
プロの筈のマリヤはごくあっさりと、しかも何度も何度も昇天した。
かと思えば焦らしに焦らされ、それと知らず『お願い』とマリヤがねだってしまう程のものだった。
今でも強烈に印象に残っているのは、マリヤに跨り、涎を垂らしながら愉悦に満ちた表情を浮かべる少女の顔と、断る隙とタイミングを与えず何度もされた、それだけで絶頂を迎える程の全身が蕩ける程のくちづけだった。
途中からマリヤは失神していた。
気付けば少女の姿は既になく、枕元には何十回分かと思われる程の金が袋に入れられ、置かれていた。
何度もイキ果てた余韻と疲労で、マリヤはその後3日間、路地に立てなかった。
話の途中からノルトに聞かせてはならないと、彼の耳に深く指を突っ込んでいたアンナだったが、彼女自身にもあまりに刺激の強過ぎる内容に顔を茹で上がらせていた。
「咳が出始めた時期とほぼ同じ、というのであれば感染源はその少女で間違いなさそうですね」
アンナとは正反対にマリヤの話を平然と聞いていたサラが言う。
「あんな小さな子が……でも咳なんかひとつもしていなかったけどねえ」
「まず見た目通りの歳かどうかはわかりません。お話を聞く限りはその可能性は非常に高いと思います。もしそうであればその正体も薄々、推測はつきます」
「まさか、魔族!?」
思わず身を乗り出すノルトが叫ぶ。
彼の知る魔族とはロゼルタやテスラであり、今までに出会ってきた人間に比べてはるかに善に近い存在だった。
ノルトの表情から敏感にそれを読み取ったサラが言う。
「人間にも色々いる様に、魔族にも色々いるんですよ、ノルトさん。そう、例えば……暗黒魔導師と言われるクリニカの様に」
「クリニカって……確かリドの仲間で、元々はロゼルタさんの国の、サキュバス」
「そうです。……ただマリヤさん、相手は子供位の見た目だったんですよね?」
「うん。ほんと、ノルトと同じか、下手するともっと幼い位」
ふむ、とサラは顎に手を遣る。
数十年前、ひと時とはいえ同じパーティにいたサラは当然クリニカの容姿はよく知っている。
「うーん。難しい所ですね。魔人状態の彼女はロゼルタさんやテスラさんと背丈は同じ位なんですよ。人化した時にどうなるかはわからないですけど、ただそこまで変わるものか」
マァムの様に、制約付きではあるものの人間の外見に化けるという能力を持っていればまた話は変わってくるものの、言われてみればロゼルタにしてもテスラやマクルル、ドーンにしても見た目は魔人時の面影がある。
勿論、その雰囲気は完全に別人と言っていい程だが。
「ま、何にせよ治ったんだったらそれでいいよ。次からは気をつけるしね」
「そうですね。この話は私達も心に留めておきます」
「お母さん、もう、大丈夫ですか? その……体調もそうだけど……」
心配そうに覗き込むノルトが言いたいのは、
(もう死のうとしない? って事だろうね)
とわかり、ニコリと笑いかける。
「優しい、子に育ったね。こんな事望むのはおこがましいし、お前の気が変わったなら放っといてくれていいんだけどさ、その……お前と一緒に、暮らせる様になるのを夢見てもうちょっと頑張ってみるよ」
それを聞いたノルトの顔が明るくなり、
「……! はい! 僕もそうします!」
「でも、本当、無理しなくていいからね」
「ううん。僕も、いや僕がお母さんと一緒に住みたいんです」
その言葉でまたマリヤの目頭が熱くなった。
◆◇
「じゃあ後は任せたぜ、バルハム」
飛竜に乗ったテスラが声をかけた。バルハムは嬉しそうに笑うとハイッと叫ぶ。
「エイミィ、マァム。お前ら、あんまりおイタはするなよ?」と言ったのはロゼルタだ。
結局彼女らはバルハムの元でロゼルタ達の指示を待つ事になった。とにかくロゼルタと離れたくなかった2人だったが不承不承納得する。
「まあある程度我慢はしますけど」
「でもあんまり連絡が無かったら王都の奴らヤりまくって干からびさせますから!」
涙ながらに言ったその言葉にアッハッハと高笑いし、
「よし行くぞ。ノルトにアンナ、しっかりしがみついておけ」
「はい!」
「大丈夫!」
同時にテスラとサラの方の飛竜もフワリと羽根を広げ始めた。
「行ってきます。お母さん」
「体に気をつけるんだよ」
「はい。お母さんも」
満足そうな顔で頷き合った。
やがて2体の飛竜はネイザール王国へ向けて空高く舞い上がり、あっという間に見えなくなった。
◆◇
数日後。
スラムに1人の男がやって来た。
その服装はリルディアの兵隊なのだが、この辺りの住人にはわからない。
実は彼はネイトナの部下であり、人相書を持ってノルト達を探していた。
娼婦街にやってきた彼は、たまたま目についたマリヤに声をかけた。
「おい。この者達を見かけなかったか?」
マリヤは男に見せられた人相書きをチラリと見、すぐに興味をなくした様に、
「こんな奴ら知らないね。そんなことよりお兄さん、1発やってかないかい?」
「うるさいババア! ……やれやれ、こんなとこ探す意味あるのかね」
ブツブツ言いながら男は去って行った。その後ろ姿を笑いながら見ながら、
(手配書まで回るなんて……何してんのか知らないが、あたいの子がやる事だ、信じてるよ)
(頑張れ、ノルト)
大きく背伸びをしながら、
「さて、あたいももうひとふんばりするか。……お。そこの男前のお兄さん、どうだい? あたい、これ上手いんだよ」
相変わらずの手付きで声を掛け始めた。
昨日の火事で半分は灰となった娼婦街の建物の中だ。
マリヤの病気の話をしたノルトに、サラが『もし宜しければ私が見てみましょうか?』と提案したからだ。
「ゴホッゴホッ……」
「大丈夫ですか?」
「うん……ノルト、なんだか今日はまた昨日と雰囲気が違うね」
「う、すみません」
そんなぎこちない親子の会話の前でサラが目を瞑り、手を合わせている。
アンナは双方の邪魔をすまいと静かに座っていた。
やがてサラの手が白く光り、マリヤを照らす。大きく深呼吸し、静かに精霊へと語りかけた。
「交感せよ。光の精霊王、キジェシス」
その言葉の後、アンナやノルトですらその気配を感じる程の神々しい霊気がサラに舞い降りる。彼女の輪郭がぼやける程のそれは大きく煌めき、数秒の後に消えていった。
神妙な面持ちでサラがゆっくりと目を開く。
「ふむう」
「ど、どう、サラ。何か分かった?」
強い精霊の気配に戸惑いながらアンナが尋ねる。サラは彼女に一度頷くが、すぐに首を捻る。
「え。どっちなの?」
「ご病気の原因は分かりましたが……まあとにかくマリヤさん。原因は取り除き、怪我となっていた部分も治癒致しました。つまりもう治りました」
「へ?」
狐につままれた様な顔でポカンとするマリヤの手をとり、ノルトが喜色を浮かべた。
「ありがとうございます! サラさん」
「え? その、治った……え?」
「はい。もう大丈夫ですよ、マリヤさん。再発する様なものでもありません」
「はあ。あ、ありがとう」
首を傾げ、搾り出す様に言ったものの、一瞬の事で全く実感が湧かない。
だが確かに常にあった、喉の奥と胸の辺りでの嘔吐き、引っかかり、痒み、そして痛みはなくなっている。
そんなマリヤの代わりとばかりにアンナが聞く。
「一体何だったの?」
「ううむ、それが」
サラは視線を自分の手に移し、それをアンナの方へと向けて開いた。
よくよく目を凝らすとその手のひらで1センチにも満たない、ぶよぶよとした白い虫が体を畝らせている。
「ギャッ!」
それに気付いたアンナが驚いてノルトに飛びついた。
「ななな何なのよそれ! そんなの目の前に持って来ないでよ!」
だがサラは全く平気な様子で手のひらを自分の目の前に持っていき、右から左から観察をし始めた。
「これ、屍蟲というんですが、メルマトラの沼などの湿地帯によくいる虫なんですよね。何故それがマリヤさんの体内にいたのか。それがわからないのです」
「メ、メルマトラ? そんなのがマリヤさんの体の中に?」
「はい。滅多に生物には寄生しないのです。稀に喉の辺りに寄生する場合もあって、入って来る食物を先に食べるんです。その時に激しく顎を動かすので体内に傷がついてひどい時は吐血します」
「うぇぇ。ぞっとしないわね」
虫から少しでも離れようとノルトの後ろに逃げるアンナをよそに、サラはしきりと首を傾げていた。
「あたい、メルマトラなんかに行った事ないんだけどねえ。一体なんで」とマリヤ。
「ですよねえ。こいつの1番の感染経路はメルマトラで沼水を飲んだり、死肉を食べたりする事なんですが、それ以外だと感染した人間との唾液交換位でしょうか」
「あたいら、仕事ではキスしないから……」
だがすぐにアッと明らかに何かに思い当たった様だ。手のひらで口を抑え、考え込む。
ノルトが気遣いながらマリヤの顔を覗き込む。
「1人だけ……2か月位前、かな。言われてみれば咳が出だしたのもそれくらいだよ」
「どんな奴ですか!?」ノルトが目を怒らせた。
「とっても綺麗な、若くて可愛らしい女の子だったんだ」
「え、ええ? 女なの!?」
思わず叫んだのはアンナだった。
マリヤが言うには、それはフラッとやって来た1人の少女だったという。最初は気にもしていなかったのだが、立ち並ぶ娼婦を値踏みする様に見て歩きながらマリヤに声を掛けた。
『お姉様、私としてくれない?』
『え、あたいとかい?』
女性との経験もあったマリヤだが、自分の子供ほどに見える少女との行為は初めての経験だった。
部屋に通し、改めて見る少女の姿はマリヤが羨む程に美しいものだった。
肩甲骨の辺りで綺麗に揃えられたきめ細かな漆黒の髪、明らかな容姿の幼さとそぐわない妖しい雰囲気を持った目と唇、一糸纏わぬその姿はまるで童話に出て来る天使の様だった。
戸惑いつつも少女を寝かせようとすると、
『うふ。違うの。私がお姉様をイカせたいの』
その形の良い赤い唇から、耳を疑う言葉が漏れた。
それから先はあまり覚えていない。
言うだけあって少女の愛撫は男女含めてマリヤがかつて経験した事のないものだった。
プロの筈のマリヤはごくあっさりと、しかも何度も何度も昇天した。
かと思えば焦らしに焦らされ、それと知らず『お願い』とマリヤがねだってしまう程のものだった。
今でも強烈に印象に残っているのは、マリヤに跨り、涎を垂らしながら愉悦に満ちた表情を浮かべる少女の顔と、断る隙とタイミングを与えず何度もされた、それだけで絶頂を迎える程の全身が蕩ける程のくちづけだった。
途中からマリヤは失神していた。
気付けば少女の姿は既になく、枕元には何十回分かと思われる程の金が袋に入れられ、置かれていた。
何度もイキ果てた余韻と疲労で、マリヤはその後3日間、路地に立てなかった。
話の途中からノルトに聞かせてはならないと、彼の耳に深く指を突っ込んでいたアンナだったが、彼女自身にもあまりに刺激の強過ぎる内容に顔を茹で上がらせていた。
「咳が出始めた時期とほぼ同じ、というのであれば感染源はその少女で間違いなさそうですね」
アンナとは正反対にマリヤの話を平然と聞いていたサラが言う。
「あんな小さな子が……でも咳なんかひとつもしていなかったけどねえ」
「まず見た目通りの歳かどうかはわかりません。お話を聞く限りはその可能性は非常に高いと思います。もしそうであればその正体も薄々、推測はつきます」
「まさか、魔族!?」
思わず身を乗り出すノルトが叫ぶ。
彼の知る魔族とはロゼルタやテスラであり、今までに出会ってきた人間に比べてはるかに善に近い存在だった。
ノルトの表情から敏感にそれを読み取ったサラが言う。
「人間にも色々いる様に、魔族にも色々いるんですよ、ノルトさん。そう、例えば……暗黒魔導師と言われるクリニカの様に」
「クリニカって……確かリドの仲間で、元々はロゼルタさんの国の、サキュバス」
「そうです。……ただマリヤさん、相手は子供位の見た目だったんですよね?」
「うん。ほんと、ノルトと同じか、下手するともっと幼い位」
ふむ、とサラは顎に手を遣る。
数十年前、ひと時とはいえ同じパーティにいたサラは当然クリニカの容姿はよく知っている。
「うーん。難しい所ですね。魔人状態の彼女はロゼルタさんやテスラさんと背丈は同じ位なんですよ。人化した時にどうなるかはわからないですけど、ただそこまで変わるものか」
マァムの様に、制約付きではあるものの人間の外見に化けるという能力を持っていればまた話は変わってくるものの、言われてみればロゼルタにしてもテスラやマクルル、ドーンにしても見た目は魔人時の面影がある。
勿論、その雰囲気は完全に別人と言っていい程だが。
「ま、何にせよ治ったんだったらそれでいいよ。次からは気をつけるしね」
「そうですね。この話は私達も心に留めておきます」
「お母さん、もう、大丈夫ですか? その……体調もそうだけど……」
心配そうに覗き込むノルトが言いたいのは、
(もう死のうとしない? って事だろうね)
とわかり、ニコリと笑いかける。
「優しい、子に育ったね。こんな事望むのはおこがましいし、お前の気が変わったなら放っといてくれていいんだけどさ、その……お前と一緒に、暮らせる様になるのを夢見てもうちょっと頑張ってみるよ」
それを聞いたノルトの顔が明るくなり、
「……! はい! 僕もそうします!」
「でも、本当、無理しなくていいからね」
「ううん。僕も、いや僕がお母さんと一緒に住みたいんです」
その言葉でまたマリヤの目頭が熱くなった。
◆◇
「じゃあ後は任せたぜ、バルハム」
飛竜に乗ったテスラが声をかけた。バルハムは嬉しそうに笑うとハイッと叫ぶ。
「エイミィ、マァム。お前ら、あんまりおイタはするなよ?」と言ったのはロゼルタだ。
結局彼女らはバルハムの元でロゼルタ達の指示を待つ事になった。とにかくロゼルタと離れたくなかった2人だったが不承不承納得する。
「まあある程度我慢はしますけど」
「でもあんまり連絡が無かったら王都の奴らヤりまくって干からびさせますから!」
涙ながらに言ったその言葉にアッハッハと高笑いし、
「よし行くぞ。ノルトにアンナ、しっかりしがみついておけ」
「はい!」
「大丈夫!」
同時にテスラとサラの方の飛竜もフワリと羽根を広げ始めた。
「行ってきます。お母さん」
「体に気をつけるんだよ」
「はい。お母さんも」
満足そうな顔で頷き合った。
やがて2体の飛竜はネイザール王国へ向けて空高く舞い上がり、あっという間に見えなくなった。
◆◇
数日後。
スラムに1人の男がやって来た。
その服装はリルディアの兵隊なのだが、この辺りの住人にはわからない。
実は彼はネイトナの部下であり、人相書を持ってノルト達を探していた。
娼婦街にやってきた彼は、たまたま目についたマリヤに声をかけた。
「おい。この者達を見かけなかったか?」
マリヤは男に見せられた人相書きをチラリと見、すぐに興味をなくした様に、
「こんな奴ら知らないね。そんなことよりお兄さん、1発やってかないかい?」
「うるさいババア! ……やれやれ、こんなとこ探す意味あるのかね」
ブツブツ言いながら男は去って行った。その後ろ姿を笑いながら見ながら、
(手配書まで回るなんて……何してんのか知らないが、あたいの子がやる事だ、信じてるよ)
(頑張れ、ノルト)
大きく背伸びをしながら、
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