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砂漠の王太子
048.アンナの闘い
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サンドワームとの闘いの後、ノルトはロゼルタに『最後に少し油断しちまったな。あれがリドなら今頃お前はこの世にいねー。だが現時点では及第点だ。よくやった』と言われていた。
(何よ。あれで及第点とかロゼルタのやつ、厳し過ぎじゃない?)
そう思いながらアンナは不満げに頬を膨らます。
それに気付いたサラは彼女の耳元で『あれはロゼルタさんの最大の賛辞ですよ。あれ以上褒めるとノルトさんが伸びませんしね』と囁いた。
その後、アンナはサラと同じテントで精霊魔法を習う。勿論一朝一夕に出来るものではない。
(こりゃあ鍛錬が必要だわ)
そう覚悟し、やがて眠りについた。
夜 ――
さて出発しようかと皆、テントの外に出た。それと同時にアンナが叫ぶ。
「いやあ何よこれぇ!」
彼らを待っていたのは野生の砂漠トカゲの群れだった。
2つのテントを囲むように大小入り混じった砂漠トカゲが数十匹!
しかも彼らはどちらかというとアンナとサラの方向に顔を向けている。
テントの周りには寝ている間に魔物や獣が入り込まないよう、トカゲ屋から貰った術式を施していた。それが無ければ今頃テントは踏み潰されていたかもしれない。
サラも驚きはしたものの、顎に手を置きふーむと唸り、
「これは……なるほど。アンナさん」とアンナを見た。
「えっ。なに?」
「このトカゲさん達、きっとアンナさんを慕って集まってきたんだと思いますよ」
「は、はぁぁぁ!?」
と、口では驚きながらもこの短期間で出会った多くの魔物の中で、自分めがけて襲って来ているのではと感じたのは1体や2体ではない。
「し、慕って、ですって?」
アンナの言葉にサラは満面の笑みで頷く。
「だって。ここにいる子達に敵意が見えませんもの」
「え……」
言われてみればそうだった。
砂漠トカゲは厳密には魔物ではなく生き物だ。基本的には温厚で雑食のため余程のことがなければ手強い人間を襲ったりはしない。
とはいえ、彼らを取り囲み、数としては圧倒的に優位なのはトカゲ達の方だ。それがアンナを見てグルルグルルと喉を鳴らしている。
「え、ええぇぇぇ」
「さあアンナさん。今こそ貴女の素晴らしい力で彼らを追い払いましょう」
「う……」
サラに促され、渋々前に出た彼女はなんとなく両手を突き出す。
だがそこで何をどうして良いかわからず、取り敢えず「立ち去りなさい」と小さく言ってみた。
するとどうだ。
彼女の目の前の2匹のトカゲが首を振り、キョロキョロと目を動かしたかと思うと向きを変え、砂漠の方へと消えて行くではないか。
隣のテント組のロゼルタとテスラもこれには驚いた。
「こいつぁすげーな」
「これだけ見ればアンナは蜥蜴テイマーだが、あいつは研究所でミノタウロスも操っていたからな」
「そんなテイマー、聞いたことねーな」
先頭のトカゲがいなくなっても次から次へと後ろから前に詰めてくるトカゲを相手に、アンナは「立ち去りなさい」と彼女にしては根気よく声をかけていた。
それを見ながら何かに気付いたサラがロゼルタ達に近付いた。
「私、このトカゲさん達を見て思い出したんですけど」
「何を?」
「アンナさん、ロスからウィンディアへ行く途中もウィンディアの町中でもずっと魔物や合成魔物が自分を襲いに来ている気がする、と言っていました」
そう言われてロゼルタ達が顔を見合わせた。ノルトがハッとした顔になり、
「そ、そうです。言ってました!」
「もっと言うと、最初のロスの大型合成魔物3体と気味悪いやつ1体です。なぜあれらは研究所から逃げ出した後、一直線にアンナさんのお家に来たのでしょう?」
「……!」
「答えはきっと……アンナさんがいまだ自分の真の力に気付いておらず、無自覚に引き寄せているからではないか、と私は思います」
そのあまりの突拍子のなさにロゼルタとノルトが顔を見合わせる。額から汗を流しながらテスラはニヤリと笑う。
「それがマジならとんでもねーな。五百年以上生きているがそんな話は聞いた事がねー。下手すりゃあ……」
「あの能力の最終系がなんなのかわかんねーが、ひょっとしたらあたしらでも統率できない、それこそ世界中にいる魔物達を軍隊として率いれるかもしれねー」
ロゼルタも信じられないといった表情だった。
だが当のアンナは「あーもう! いい加減にしてよ!」とトカゲの群れに向かって怒っていた。
その姿を見てプッとサラが噴き出し、
「まあ、そこに辿り着くのは当分先でしょうし。それにアンナさんには私と近い何かをずっと感じているのです。私は彼女を信じています」と言った。
そんな彼らの頭上で大きな羽根が羽ばたく音が聞こえてきた。
「んあ? 飛竜……じゃねーな」
「ありゃあマルティコラスだな。数百年ぶりに見たぜ」
マルティコラス。
筋肉質な4本足と胴体を持ち、大きな翼とその魔力で空を飛ぶことも出来る。
その顔は見ようによっては人間の顔にも見える気味の悪いもの。更にその体は飛竜や砂漠トカゲにも匹敵するほどの大きさだ。
魔物であるだけにその力は同サイズの生き物を軽く凌駕し、魔力を纏った足の爪の一撃はまともに喰らえば飛竜ですら致命傷を負う。
「あれほどの魔物でもアンナさんに引き寄せられるんですね。アンナさん恐るべし」
冗談とも本気ともつかない顔でサラが言う。
「アンナ!」
「ひえ! な、なによ!」
突然叫ばれて驚いたアンナがロゼルタの方を向いた瞬間、目の前の砂漠トカゲにペロリと顔を舐められた。
「ギャ――! 痛ででで! なにすんのよバカ!」
怒られたトカゲは心なしかシュンと落ち込んだ様子を見せるとすごすごと体の向きを変え、砂漠へと消えて行った。
「ペットとじゃれついてる場合じゃねーぞ。上を見てみろ」
「どこがペットなのよ! 好きでじゃれてるんじゃないっつーの、まったく……上?」
眉を寄せて上を向いた。
そこにいたのは大きな翼を羽ばたかせながら見下ろす、彼女が見たことのない怪物のような魔物だった。
何より恐ろしいのはその奇妙な人面がアンナを見下ろして睨んでいたことだった。
「ギャ――ッ! ななななによあれ!」
「やかましー女だな。あれはマルティコラスだ。あれもトカゲと同じ様に出来るか?」
「ややややってみる」
両手をマルティコラスへ向け、大きな声で「立ち去りなさいぃぃ!」と叫ぶ。
彼女の目の前では砂漠トカゲ達が首を傾げてキョトンとアンナの方を見ていた。
マルティコラスは暫くジッとアンナを見つめていたが、やがて上空を旋回し出したかと思うと急降下を始め、アンナに向けてその口を開いた。
アンナはヒッと呻くと目を瞑ってしまった。
「まずいぜ。あれには魔物避けの術式が効いてねー」
テスラが短く叫ぶ。
いつの間にかアンナのそばに寄っていたサラが右手を胸の前に掲げ、
「風の精霊王フルムよ、我らをお守り下さい……『風路のマント』」
アンナにだけ聞こえるほどの小さな声で言った。
彼女達の頭上に空気の膜のようなものができ、マルティコラスと夜空が歪む。
それとほぼ同時にマルティコラスの大きな口から炎が放たれた。
が、それは彼らには全く届かず、膜に沿って拡散し、消えた。
マルティコラスはそれを見ると再び上昇し、牽制するようにまた旋回し始めた。
サラはアンナの背中に手を回し、優しく微笑むと、
「さ、次はアンナさんの番です。あのおっさん顔に一発かましましょう!」
「は? いやいや、むりむりむりむり」
「今日のお昼、一緒に勉強したではありませんか。あれです。あれ」
「いや今日のって……まだ成功してないじゃない」
「オホホ。そんなのはぶっつけ本番ですよ。体で覚えるのが一番手っ取り早いんです」
「あ、あんたもなかなか無茶苦茶ね……知ってたけど……」
仕方ないと腹を括り、アンナが両手を組み、目を瞑った。
「えーと、なんだっけ……風を纏い、風を統べる者シルフィス……その力で我に災いをもたらすかの者に正義の廻風を……『飄風』」
唱えている途中からアンナの体からは薄く白い霊気が漂い出していた。
それを見たサラが息を呑む。
(白……が示す特性は普通、『地』や『力』ですが。アンナさんからそんな匂いはしませんね。それ以外で考えると他者への『労り』や『誠実』を示している? いや……)
そんな事を考えていると、「ででででた!」とアンナの大きな叫び声が聞こえてきた。
ハッとして空を見上げると、マルティコラスの周囲に渦巻く旋風が見えた。その風の渦でマルティコラスが浮力を失う。
なんとか立て直そうと何度も翼を羽ばたかせていた。
「さすがです、アンナさん。明日はこれをお教えしましょう。見ていて下さい……正義の矢は正義に刃向かう者を罰する。光の精霊コーサイよ、邪悪に連なるかの者を撃ち払え。『光射』」
「ながっ」
アンナがその短い感想を言い終わるより早く、サラの手のひらから出た一筋の光線はマルティコラスの片方の羽根を簡単に突き破り、その周囲を焼け焦がした。
それによってどれだけ魔力を振るおうとも揚力を得られなくなったマルティコラスはそのままズドンと砂漠トカゲの群れの中へと墜落した。
「さあアンナさん。仕上げです!」
珍しく興奮気味のサラの声には直接答えず、代わりに大きく頷いた。
再び砂漠トカゲに手のひらを向け、「退け」と言うと後退りするようにトカゲがいなくなる。
開けたその場所には代わりにマルティコラスが、落ちた衝撃で失神して倒れていた。
その魔物に向かって命じる。
「マルティコラスよ、目を開けなさい」
すると言葉通りにゆっくりと目だけが開いていった。
「マルティコラス。これより私の命に従いなさい」
まるでそれに応えるかのようにグルルォォと喉で鳴く。暫くそのまま無言で睨み合っていたが、やがてアンナがサラへと振り返り、
「サラ。彼女を治癒してあげて。もう歯向かわないわ」
サラはその言葉に満足そうに頷き、治癒を唱えると、
「あのマルティコラス、女の子だったんですね」
とポツリと呟いた。
(何よ。あれで及第点とかロゼルタのやつ、厳し過ぎじゃない?)
そう思いながらアンナは不満げに頬を膨らます。
それに気付いたサラは彼女の耳元で『あれはロゼルタさんの最大の賛辞ですよ。あれ以上褒めるとノルトさんが伸びませんしね』と囁いた。
その後、アンナはサラと同じテントで精霊魔法を習う。勿論一朝一夕に出来るものではない。
(こりゃあ鍛錬が必要だわ)
そう覚悟し、やがて眠りについた。
夜 ――
さて出発しようかと皆、テントの外に出た。それと同時にアンナが叫ぶ。
「いやあ何よこれぇ!」
彼らを待っていたのは野生の砂漠トカゲの群れだった。
2つのテントを囲むように大小入り混じった砂漠トカゲが数十匹!
しかも彼らはどちらかというとアンナとサラの方向に顔を向けている。
テントの周りには寝ている間に魔物や獣が入り込まないよう、トカゲ屋から貰った術式を施していた。それが無ければ今頃テントは踏み潰されていたかもしれない。
サラも驚きはしたものの、顎に手を置きふーむと唸り、
「これは……なるほど。アンナさん」とアンナを見た。
「えっ。なに?」
「このトカゲさん達、きっとアンナさんを慕って集まってきたんだと思いますよ」
「は、はぁぁぁ!?」
と、口では驚きながらもこの短期間で出会った多くの魔物の中で、自分めがけて襲って来ているのではと感じたのは1体や2体ではない。
「し、慕って、ですって?」
アンナの言葉にサラは満面の笑みで頷く。
「だって。ここにいる子達に敵意が見えませんもの」
「え……」
言われてみればそうだった。
砂漠トカゲは厳密には魔物ではなく生き物だ。基本的には温厚で雑食のため余程のことがなければ手強い人間を襲ったりはしない。
とはいえ、彼らを取り囲み、数としては圧倒的に優位なのはトカゲ達の方だ。それがアンナを見てグルルグルルと喉を鳴らしている。
「え、ええぇぇぇ」
「さあアンナさん。今こそ貴女の素晴らしい力で彼らを追い払いましょう」
「う……」
サラに促され、渋々前に出た彼女はなんとなく両手を突き出す。
だがそこで何をどうして良いかわからず、取り敢えず「立ち去りなさい」と小さく言ってみた。
するとどうだ。
彼女の目の前の2匹のトカゲが首を振り、キョロキョロと目を動かしたかと思うと向きを変え、砂漠の方へと消えて行くではないか。
隣のテント組のロゼルタとテスラもこれには驚いた。
「こいつぁすげーな」
「これだけ見ればアンナは蜥蜴テイマーだが、あいつは研究所でミノタウロスも操っていたからな」
「そんなテイマー、聞いたことねーな」
先頭のトカゲがいなくなっても次から次へと後ろから前に詰めてくるトカゲを相手に、アンナは「立ち去りなさい」と彼女にしては根気よく声をかけていた。
それを見ながら何かに気付いたサラがロゼルタ達に近付いた。
「私、このトカゲさん達を見て思い出したんですけど」
「何を?」
「アンナさん、ロスからウィンディアへ行く途中もウィンディアの町中でもずっと魔物や合成魔物が自分を襲いに来ている気がする、と言っていました」
そう言われてロゼルタ達が顔を見合わせた。ノルトがハッとした顔になり、
「そ、そうです。言ってました!」
「もっと言うと、最初のロスの大型合成魔物3体と気味悪いやつ1体です。なぜあれらは研究所から逃げ出した後、一直線にアンナさんのお家に来たのでしょう?」
「……!」
「答えはきっと……アンナさんがいまだ自分の真の力に気付いておらず、無自覚に引き寄せているからではないか、と私は思います」
そのあまりの突拍子のなさにロゼルタとノルトが顔を見合わせる。額から汗を流しながらテスラはニヤリと笑う。
「それがマジならとんでもねーな。五百年以上生きているがそんな話は聞いた事がねー。下手すりゃあ……」
「あの能力の最終系がなんなのかわかんねーが、ひょっとしたらあたしらでも統率できない、それこそ世界中にいる魔物達を軍隊として率いれるかもしれねー」
ロゼルタも信じられないといった表情だった。
だが当のアンナは「あーもう! いい加減にしてよ!」とトカゲの群れに向かって怒っていた。
その姿を見てプッとサラが噴き出し、
「まあ、そこに辿り着くのは当分先でしょうし。それにアンナさんには私と近い何かをずっと感じているのです。私は彼女を信じています」と言った。
そんな彼らの頭上で大きな羽根が羽ばたく音が聞こえてきた。
「んあ? 飛竜……じゃねーな」
「ありゃあマルティコラスだな。数百年ぶりに見たぜ」
マルティコラス。
筋肉質な4本足と胴体を持ち、大きな翼とその魔力で空を飛ぶことも出来る。
その顔は見ようによっては人間の顔にも見える気味の悪いもの。更にその体は飛竜や砂漠トカゲにも匹敵するほどの大きさだ。
魔物であるだけにその力は同サイズの生き物を軽く凌駕し、魔力を纏った足の爪の一撃はまともに喰らえば飛竜ですら致命傷を負う。
「あれほどの魔物でもアンナさんに引き寄せられるんですね。アンナさん恐るべし」
冗談とも本気ともつかない顔でサラが言う。
「アンナ!」
「ひえ! な、なによ!」
突然叫ばれて驚いたアンナがロゼルタの方を向いた瞬間、目の前の砂漠トカゲにペロリと顔を舐められた。
「ギャ――! 痛ででで! なにすんのよバカ!」
怒られたトカゲは心なしかシュンと落ち込んだ様子を見せるとすごすごと体の向きを変え、砂漠へと消えて行った。
「ペットとじゃれついてる場合じゃねーぞ。上を見てみろ」
「どこがペットなのよ! 好きでじゃれてるんじゃないっつーの、まったく……上?」
眉を寄せて上を向いた。
そこにいたのは大きな翼を羽ばたかせながら見下ろす、彼女が見たことのない怪物のような魔物だった。
何より恐ろしいのはその奇妙な人面がアンナを見下ろして睨んでいたことだった。
「ギャ――ッ! ななななによあれ!」
「やかましー女だな。あれはマルティコラスだ。あれもトカゲと同じ様に出来るか?」
「ややややってみる」
両手をマルティコラスへ向け、大きな声で「立ち去りなさいぃぃ!」と叫ぶ。
彼女の目の前では砂漠トカゲ達が首を傾げてキョトンとアンナの方を見ていた。
マルティコラスは暫くジッとアンナを見つめていたが、やがて上空を旋回し出したかと思うと急降下を始め、アンナに向けてその口を開いた。
アンナはヒッと呻くと目を瞑ってしまった。
「まずいぜ。あれには魔物避けの術式が効いてねー」
テスラが短く叫ぶ。
いつの間にかアンナのそばに寄っていたサラが右手を胸の前に掲げ、
「風の精霊王フルムよ、我らをお守り下さい……『風路のマント』」
アンナにだけ聞こえるほどの小さな声で言った。
彼女達の頭上に空気の膜のようなものができ、マルティコラスと夜空が歪む。
それとほぼ同時にマルティコラスの大きな口から炎が放たれた。
が、それは彼らには全く届かず、膜に沿って拡散し、消えた。
マルティコラスはそれを見ると再び上昇し、牽制するようにまた旋回し始めた。
サラはアンナの背中に手を回し、優しく微笑むと、
「さ、次はアンナさんの番です。あのおっさん顔に一発かましましょう!」
「は? いやいや、むりむりむりむり」
「今日のお昼、一緒に勉強したではありませんか。あれです。あれ」
「いや今日のって……まだ成功してないじゃない」
「オホホ。そんなのはぶっつけ本番ですよ。体で覚えるのが一番手っ取り早いんです」
「あ、あんたもなかなか無茶苦茶ね……知ってたけど……」
仕方ないと腹を括り、アンナが両手を組み、目を瞑った。
「えーと、なんだっけ……風を纏い、風を統べる者シルフィス……その力で我に災いをもたらすかの者に正義の廻風を……『飄風』」
唱えている途中からアンナの体からは薄く白い霊気が漂い出していた。
それを見たサラが息を呑む。
(白……が示す特性は普通、『地』や『力』ですが。アンナさんからそんな匂いはしませんね。それ以外で考えると他者への『労り』や『誠実』を示している? いや……)
そんな事を考えていると、「ででででた!」とアンナの大きな叫び声が聞こえてきた。
ハッとして空を見上げると、マルティコラスの周囲に渦巻く旋風が見えた。その風の渦でマルティコラスが浮力を失う。
なんとか立て直そうと何度も翼を羽ばたかせていた。
「さすがです、アンナさん。明日はこれをお教えしましょう。見ていて下さい……正義の矢は正義に刃向かう者を罰する。光の精霊コーサイよ、邪悪に連なるかの者を撃ち払え。『光射』」
「ながっ」
アンナがその短い感想を言い終わるより早く、サラの手のひらから出た一筋の光線はマルティコラスの片方の羽根を簡単に突き破り、その周囲を焼け焦がした。
それによってどれだけ魔力を振るおうとも揚力を得られなくなったマルティコラスはそのままズドンと砂漠トカゲの群れの中へと墜落した。
「さあアンナさん。仕上げです!」
珍しく興奮気味のサラの声には直接答えず、代わりに大きく頷いた。
再び砂漠トカゲに手のひらを向け、「退け」と言うと後退りするようにトカゲがいなくなる。
開けたその場所には代わりにマルティコラスが、落ちた衝撃で失神して倒れていた。
その魔物に向かって命じる。
「マルティコラスよ、目を開けなさい」
すると言葉通りにゆっくりと目だけが開いていった。
「マルティコラス。これより私の命に従いなさい」
まるでそれに応えるかのようにグルルォォと喉で鳴く。暫くそのまま無言で睨み合っていたが、やがてアンナがサラへと振り返り、
「サラ。彼女を治癒してあげて。もう歯向かわないわ」
サラはその言葉に満足そうに頷き、治癒を唱えると、
「あのマルティコラス、女の子だったんですね」
とポツリと呟いた。
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