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砂漠の王太子
053.砂漠の王太子(終)
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「ガフッ」
信じられないといった顔付きで矢の刺さった自分の胸を見た。その口から血が噴出する。
誰が撃ったかはわからないがこの機は逃せない、とサラがユークリアへ手のひらを向けた。
「魔法の、矢!」
その前の強烈な一矢がなければ弾かれていたかもしれないそれは、ユークリアの筋肉のガードを突き破った。
「ウガッ!」
痛みを堪えているのか、ユークリアは仰け反って天に向かって奥歯を噛み締める。
そこにようやく辿り着いたのはロゼルタだった。
「テメー……大爆発とはやってくれんじゃねーか……もう少しで……死ぬ、とこだったぜ」
額から血を流し、そんな恨み言を口にしながらユークリアを睨んで短剣で斬りかかる。既にそれを避ける力はユークリアにはなく、衝撃の度に小さく呻きながらただ、耐えていた。
だが先程の、テスラですら失神するほどの凝縮された魔法の爆発は、当然ロゼルタの体にも多大なダメージを与えていた。
斬りつけながら遂に片膝を突いた。
「クッ……」
自分で考えていたよりも傷が深い。くそったれ、の一言が言えない。どうやら魔人化しなければとどめをさせないようだ。
(ここでリドに最も近いこいつにまでバレちまうのは避けたかったが……あたしらが徐々にスルークに近づいている事を悟られるかもしれねーしな)
だからこそテスラですら自重し、人化した状態で力を振り絞っていたのだ。だがそんな事を言っている場合ではなくなった。
ユークリアはというとロゼルタの攻撃が止んだ事で徐々に傷が治癒し始めていた。サラに開けられた穴も塞がり始める。
(あの娘はサラの知り合いらしいし見過ごす訳にはいかねーな)
と、最後の力を振り絞りもう一度立ち上がった時。
風のような速さで砂漠馬を駆ってひとりの男が現れた。
「何者かは知らんがよくぞこいつを止めてくれた。後ほど礼はする」
ぼやけた視界で馬上を見た。
(人間?)
魔法使い達が着るようなローブとはまた一風違った、ワンピース型の白い衣を羽織っていた。頭部はマフラーのような白い布を巻いており、編み込まれたバンドで額の辺りで止めている。
長さの違う2本の剣を腰に差しており、襷掛けで弓を背負い、手にはロゼルタが見たことも無いような長い剣を持っていた。
(だれ……だ?)
男はロゼルタが生きている事をチラリと確認するとユークリアへと襲い掛かった。
「さて待たせたな。王家の宝弓の味はどうだったかね。ここからはこのハミッドが相手をしてやる」
それは妹の危機に単身、馬を駆ってユークリアを追いかけてきたネイザールの王太子、ハミッドだった。
「貴様……しつこい奴」
体を震わせながらハミッドを睨みつけながらもユークリアは損傷の回復に努めた。
「ふん、魔族だったとはな。外道リドに与する魔族め。聖剣ラヴィンドラの威力を味わうが良い!」
ハミッドの長剣による一撃はユークリアの体を斜めに切り裂く。するとその傷口からはその肉体が焦げ付くような音と煙が上った。ユークリアは悲鳴を上げ、傷口を抑えてのたうち回る。
「聖剣の傷は魔族にはきつかろう。大人しく首を差し出せ」
だがユークリアの方も必死の抵抗を見せた。頭を落とされれば魔族といえども死ぬしかない。そこを狙うハミッドとそこだけは撃たせまいとするユークリアの撃ち合いとなった。
だが僅かな隙をつき、ハミッドの剣が遂にその首に届く。
(殺った!)
ハミッドがそう思った瞬間、再びユークリアの瞳が輝き、またも爆裂音が轟いた!
だがその直前。
ユークリアの狙いを先程と同じ大爆発とヤマを張ったサラの詠唱が少し早く終わっていた。
「ラン=キルシドの永久氷壁」
ユークリアの周囲に発生した氷の壁は、その凶悪な爆破エネルギーを全て吸収した。削られ、溶かされても補完され、一定の厚さに保たれるのだ。
それはまさしく、この世の果て、ラン=キルシドにある、炎神ムシュフルですら溶かせないと言われる永久氷壁そのものだった。
「バカな」
恐らく今の弱った状態で繰り出せる、ユークリア最大の攻撃だった。それを防がれたユークリアに焦燥の色が浮かぶ。
(た、たった一度でタイミングを読み、しかもあの極大エネルギーを防ぎ切っただと)
(リドですらあれを防ぐ事は出来なかったというのに)
まさかそのリドと同じパーティにいたサラが相手にいるとは夢にも思わないユークリアが呆然とする。
一方のハミッドも目の前で突然氷の壁が立ち並び、しかもその中で凄まじい爆発が起こるという、今までに見た事のない光景を見、反射的に腕で顔を覆い、目を瞑っていた。
「ユークリア様!」
その一瞬の、絶妙なタイミングでやってきたのは最初の大爆発の時に最も遠い位置にいたユークリアの配下の1人だった。
彼は飛竜を駆り、ユークリアがナウラを手にした後すぐに脱出出来るようにと旋回を続けていた。
その飛竜が真上に来た瞬間、力を振り絞ったユークリアが大きく跳び上がる。
見事にその背に着地すると地上のハミッドに一瞥をくれ、続けてノルト、テスラ、ロゼルタ、アンナの顔を順番に見、「お前達の顔は覚えた。次会った時が楽しみだ」と呟いた。
◆◇
数百の砂漠馬の軍勢が砂塵を巻き上げる。
町でのハミッドの指示を余すところ無く伝えたフロニーによって動いたネイザール王国軍だった。
全員、サラに傷を治療してもらった後、意識のないノルト、テスラ、アンナ、ナウラは馬車で寝かされていた。
ハミッドはロゼルタとサラに頭を下げ、人懐っこくお礼を言った後、マフラーを取ったサラに驚いた。
「サラではないか! そうかそれでナウラを助けてくれたのだな」
「お久しぶりです、太子。飛竜の上で後ろ手に縛られたナウラが見えたのでつい」
「つい魔法の矢をぶちかましてやったんだな」
後を継いだロゼルタがサラと笑い合う。
「ロゼルタと言ったか。お前達、何故ネイザールへ?」
「なに、特にこの国には用はねー。少し旅をしているだけさ」
「ふむ」
数秒ロゼルタの目を鋭く見つめると、
「わかった。妹の恩人の言う事だ。これ以上は聞くまい」
「そうしてくれると助かる」
ロゼルタ達の旅に何か目的があると薄々気付いているハミッドの言い振りだった。勿論ロゼルタもそれを分かった上で笑いながらそう答えた。
「俺達に出来る事があったらなんでも言ってくれ」
「気にすんな。あたしらは仲間のサラが助けたから手伝っただけだ」
「親父からも礼をさせたい。是非ともこのまま城まで来て欲しい」
「急ぐ旅でもなし、断る理由はねーな。こいつらも無理矢理起こす訳にもいかねーし」
気を失ったままのノルトの髪を少し手でかき分けてふふっと笑う。
「そういえば!」
突然サラが手を叩く。
「婚約者のメイさんもこちらに?」
期待に満ちた目で言ったサラだったが、眉を寄せて黙って腕を組むハミッドを見て「あ……」と失言だったことを理解した。
メイはロトス王国の王女であり、ハミッドとの恋仲は市民の間でも噂されるほどだった。
「メイは……来れない」
「ど、どうしてですか? ロトスとネイザールは今は国交はないですが王家同士は家族さながらの付き合いだったはず」
「マッカだ」
その名前を聞いたサラと、そしてロゼルタの体がピクリとはねた。
マッカはかつての英雄パーティのひとり。
ハーフオークであり、その戦闘力はリドに引けを取らないと言われる。
「奴は今、実質ロトスの軍事を掌握している。奴が口を出しているのだ。恐らくメイを狙って……」
「それはいけない!」
大声を出して立ち上がったサラが馬車の天井に頭をぶつけ、声にならない悲鳴を上げる。
「落ち着けサラ。わかっている。あいつに狙われたらメイに抗う術はないだろう」
「あのヤローはリド以上に女は犯す対象でしかねーからな」とロゼルタ。
「マッカを知っているのか?」
「ああ。よーく、知ってるぜ」
なにせ経緯はどうあれ、最終的にロゼルタを殺したのはマッカなのだ。その時の事を思い出し、ギリッと歯を慣らすロゼルタを見てハミッドがどう思ったのか、
「お前も奴の被害者か。気持ちは察する。近々お前の分も恨みを晴らしてやろう」
「と言いますと?」
サラが頭を抑えて聞く。
「ロトス王城に忍び込み、メイを攫う」
「バカな!」
再び立ち上がりまた同じように強く頭を打つサラを見てロゼルタは「バカだなお前」とその頭を撫でる。
「マッカと闘る気か?」
「当然」
笑いもせずにハミッドが言う。
「あの豚ヤローは強いぞ」
「知っている。だが奴がメイを狙っている以上避けられん。それにロトスが表向きリルディア、というよりリドに従う素振りをしているのは奴がいるせいだ。取り除いて再び我が国と手を結ばせたい」
「なるほどな」
考え込むようにロゼルタが腕を組み、窓の外を見た。と同時にビクッとその体が驚きで波打つ。
ノルトと目が合っていたのだ。
「ロゼルタさん、どうするんですか?」
「お、お前、聞いてたのか」
すると今度は、
「あんなバカでかい音を聞いて寝てられないわよ」とアンナ。
どうやらサラが2度頭をぶつけた音のせいで全員、意識を取り戻したようだった。
「すみません……」
頭を抑えながらサラが小さくなる。
「サラがこの娘を助けた事でいい展開になったじゃねーか」
まだはっきりとは意識が戻っていない様子のナウラを見ながらニヤリと笑ったのはテスラだった。少し考えたロゼルタだったが、やがて彼と同じように笑った。
「だな……ハミッド。その話あたしらも乗った。詳しく聞かせてくれ」
「なに?」
思ってもいなかったロゼルタの申し出にハミッドの眉が跳ねた。
信じられないといった顔付きで矢の刺さった自分の胸を見た。その口から血が噴出する。
誰が撃ったかはわからないがこの機は逃せない、とサラがユークリアへ手のひらを向けた。
「魔法の、矢!」
その前の強烈な一矢がなければ弾かれていたかもしれないそれは、ユークリアの筋肉のガードを突き破った。
「ウガッ!」
痛みを堪えているのか、ユークリアは仰け反って天に向かって奥歯を噛み締める。
そこにようやく辿り着いたのはロゼルタだった。
「テメー……大爆発とはやってくれんじゃねーか……もう少しで……死ぬ、とこだったぜ」
額から血を流し、そんな恨み言を口にしながらユークリアを睨んで短剣で斬りかかる。既にそれを避ける力はユークリアにはなく、衝撃の度に小さく呻きながらただ、耐えていた。
だが先程の、テスラですら失神するほどの凝縮された魔法の爆発は、当然ロゼルタの体にも多大なダメージを与えていた。
斬りつけながら遂に片膝を突いた。
「クッ……」
自分で考えていたよりも傷が深い。くそったれ、の一言が言えない。どうやら魔人化しなければとどめをさせないようだ。
(ここでリドに最も近いこいつにまでバレちまうのは避けたかったが……あたしらが徐々にスルークに近づいている事を悟られるかもしれねーしな)
だからこそテスラですら自重し、人化した状態で力を振り絞っていたのだ。だがそんな事を言っている場合ではなくなった。
ユークリアはというとロゼルタの攻撃が止んだ事で徐々に傷が治癒し始めていた。サラに開けられた穴も塞がり始める。
(あの娘はサラの知り合いらしいし見過ごす訳にはいかねーな)
と、最後の力を振り絞りもう一度立ち上がった時。
風のような速さで砂漠馬を駆ってひとりの男が現れた。
「何者かは知らんがよくぞこいつを止めてくれた。後ほど礼はする」
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(人間?)
魔法使い達が着るようなローブとはまた一風違った、ワンピース型の白い衣を羽織っていた。頭部はマフラーのような白い布を巻いており、編み込まれたバンドで額の辺りで止めている。
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(だれ……だ?)
男はロゼルタが生きている事をチラリと確認するとユークリアへと襲い掛かった。
「さて待たせたな。王家の宝弓の味はどうだったかね。ここからはこのハミッドが相手をしてやる」
それは妹の危機に単身、馬を駆ってユークリアを追いかけてきたネイザールの王太子、ハミッドだった。
「貴様……しつこい奴」
体を震わせながらハミッドを睨みつけながらもユークリアは損傷の回復に努めた。
「ふん、魔族だったとはな。外道リドに与する魔族め。聖剣ラヴィンドラの威力を味わうが良い!」
ハミッドの長剣による一撃はユークリアの体を斜めに切り裂く。するとその傷口からはその肉体が焦げ付くような音と煙が上った。ユークリアは悲鳴を上げ、傷口を抑えてのたうち回る。
「聖剣の傷は魔族にはきつかろう。大人しく首を差し出せ」
だがユークリアの方も必死の抵抗を見せた。頭を落とされれば魔族といえども死ぬしかない。そこを狙うハミッドとそこだけは撃たせまいとするユークリアの撃ち合いとなった。
だが僅かな隙をつき、ハミッドの剣が遂にその首に届く。
(殺った!)
ハミッドがそう思った瞬間、再びユークリアの瞳が輝き、またも爆裂音が轟いた!
だがその直前。
ユークリアの狙いを先程と同じ大爆発とヤマを張ったサラの詠唱が少し早く終わっていた。
「ラン=キルシドの永久氷壁」
ユークリアの周囲に発生した氷の壁は、その凶悪な爆破エネルギーを全て吸収した。削られ、溶かされても補完され、一定の厚さに保たれるのだ。
それはまさしく、この世の果て、ラン=キルシドにある、炎神ムシュフルですら溶かせないと言われる永久氷壁そのものだった。
「バカな」
恐らく今の弱った状態で繰り出せる、ユークリア最大の攻撃だった。それを防がれたユークリアに焦燥の色が浮かぶ。
(た、たった一度でタイミングを読み、しかもあの極大エネルギーを防ぎ切っただと)
(リドですらあれを防ぐ事は出来なかったというのに)
まさかそのリドと同じパーティにいたサラが相手にいるとは夢にも思わないユークリアが呆然とする。
一方のハミッドも目の前で突然氷の壁が立ち並び、しかもその中で凄まじい爆発が起こるという、今までに見た事のない光景を見、反射的に腕で顔を覆い、目を瞑っていた。
「ユークリア様!」
その一瞬の、絶妙なタイミングでやってきたのは最初の大爆発の時に最も遠い位置にいたユークリアの配下の1人だった。
彼は飛竜を駆り、ユークリアがナウラを手にした後すぐに脱出出来るようにと旋回を続けていた。
その飛竜が真上に来た瞬間、力を振り絞ったユークリアが大きく跳び上がる。
見事にその背に着地すると地上のハミッドに一瞥をくれ、続けてノルト、テスラ、ロゼルタ、アンナの顔を順番に見、「お前達の顔は覚えた。次会った時が楽しみだ」と呟いた。
◆◇
数百の砂漠馬の軍勢が砂塵を巻き上げる。
町でのハミッドの指示を余すところ無く伝えたフロニーによって動いたネイザール王国軍だった。
全員、サラに傷を治療してもらった後、意識のないノルト、テスラ、アンナ、ナウラは馬車で寝かされていた。
ハミッドはロゼルタとサラに頭を下げ、人懐っこくお礼を言った後、マフラーを取ったサラに驚いた。
「サラではないか! そうかそれでナウラを助けてくれたのだな」
「お久しぶりです、太子。飛竜の上で後ろ手に縛られたナウラが見えたのでつい」
「つい魔法の矢をぶちかましてやったんだな」
後を継いだロゼルタがサラと笑い合う。
「ロゼルタと言ったか。お前達、何故ネイザールへ?」
「なに、特にこの国には用はねー。少し旅をしているだけさ」
「ふむ」
数秒ロゼルタの目を鋭く見つめると、
「わかった。妹の恩人の言う事だ。これ以上は聞くまい」
「そうしてくれると助かる」
ロゼルタ達の旅に何か目的があると薄々気付いているハミッドの言い振りだった。勿論ロゼルタもそれを分かった上で笑いながらそう答えた。
「俺達に出来る事があったらなんでも言ってくれ」
「気にすんな。あたしらは仲間のサラが助けたから手伝っただけだ」
「親父からも礼をさせたい。是非ともこのまま城まで来て欲しい」
「急ぐ旅でもなし、断る理由はねーな。こいつらも無理矢理起こす訳にもいかねーし」
気を失ったままのノルトの髪を少し手でかき分けてふふっと笑う。
「そういえば!」
突然サラが手を叩く。
「婚約者のメイさんもこちらに?」
期待に満ちた目で言ったサラだったが、眉を寄せて黙って腕を組むハミッドを見て「あ……」と失言だったことを理解した。
メイはロトス王国の王女であり、ハミッドとの恋仲は市民の間でも噂されるほどだった。
「メイは……来れない」
「ど、どうしてですか? ロトスとネイザールは今は国交はないですが王家同士は家族さながらの付き合いだったはず」
「マッカだ」
その名前を聞いたサラと、そしてロゼルタの体がピクリとはねた。
マッカはかつての英雄パーティのひとり。
ハーフオークであり、その戦闘力はリドに引けを取らないと言われる。
「奴は今、実質ロトスの軍事を掌握している。奴が口を出しているのだ。恐らくメイを狙って……」
「それはいけない!」
大声を出して立ち上がったサラが馬車の天井に頭をぶつけ、声にならない悲鳴を上げる。
「落ち着けサラ。わかっている。あいつに狙われたらメイに抗う術はないだろう」
「あのヤローはリド以上に女は犯す対象でしかねーからな」とロゼルタ。
「マッカを知っているのか?」
「ああ。よーく、知ってるぜ」
なにせ経緯はどうあれ、最終的にロゼルタを殺したのはマッカなのだ。その時の事を思い出し、ギリッと歯を慣らすロゼルタを見てハミッドがどう思ったのか、
「お前も奴の被害者か。気持ちは察する。近々お前の分も恨みを晴らしてやろう」
「と言いますと?」
サラが頭を抑えて聞く。
「ロトス王城に忍び込み、メイを攫う」
「バカな!」
再び立ち上がりまた同じように強く頭を打つサラを見てロゼルタは「バカだなお前」とその頭を撫でる。
「マッカと闘る気か?」
「当然」
笑いもせずにハミッドが言う。
「あの豚ヤローは強いぞ」
「知っている。だが奴がメイを狙っている以上避けられん。それにロトスが表向きリルディア、というよりリドに従う素振りをしているのは奴がいるせいだ。取り除いて再び我が国と手を結ばせたい」
「なるほどな」
考え込むようにロゼルタが腕を組み、窓の外を見た。と同時にビクッとその体が驚きで波打つ。
ノルトと目が合っていたのだ。
「ロゼルタさん、どうするんですか?」
「お、お前、聞いてたのか」
すると今度は、
「あんなバカでかい音を聞いて寝てられないわよ」とアンナ。
どうやらサラが2度頭をぶつけた音のせいで全員、意識を取り戻したようだった。
「すみません……」
頭を抑えながらサラが小さくなる。
「サラがこの娘を助けた事でいい展開になったじゃねーか」
まだはっきりとは意識が戻っていない様子のナウラを見ながらニヤリと笑ったのはテスラだった。少し考えたロゼルタだったが、やがて彼と同じように笑った。
「だな……ハミッド。その話あたしらも乗った。詳しく聞かせてくれ」
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