【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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永遠なる魂

083.リドを迎え撃つ!

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 マシャランを後にし、3日。

 ノルト達はできる限り急ぎながらヒューリアの助言通りに北へと急いでいた。

 道案内を務めるのはシュルス。
 ヒューリアの勧めるままに彼を連れて来たが、今のところこれと言って目立った功績はないようだ。

 時折、木々の切れ目から雄大に聳える青い山々が見える。
 あれが世界中にあると言われるメルマトラと外界を分つ山脈のひとつであり、ここでの名前は『ロン=ドゥの棲家』と呼ばれている。

 近くからは川の濁流の音が聞こえていた。


「大丈夫かい、サラ。しんどかったら俺がおぶって……」
「大丈夫です。危ないから前見て下さい」

 にべもなくサラにそう言われたそばからシュルスが尻餅をつく。

「はあ、全く。バカな事してないで早く立って」

 やれやれとサラが差し出す手を嬉しそうに握り返す。

 そんな呑気なシュルスと対照的にロゼルタが忌々しそうに舌打ちをする。

「結構差が縮まってきたな。最初はマシャランの手前でグズグズしてやがったのに」

 勿論それは彼らを追っているリドのことだ。

 人間のノルトとアンナがいる以上、魔族やエルフ族のペースで進む訳にはいかないのだ。

「最初は俺達の痕跡を探りながら付いて来ている感じだったが、どうやら気配を直接捉えたよーだぜ」とテスラ。
「だな。かなりスピードが上がってやがる」
「ここらで俺が時間稼ぎしてやってもいいんだが……」

 グルリと上を見回し、

「バケモンの気配がする。並大抵の奴じゃねー。こいつぁリドよりやべーかも」

 その言葉に怯えたシュルスがサラに抱き着く。

「ひょ、ひょっとしてそれって、ロン=ドゥではぁ?」
「間違いないでしょう。それにしてもこの禍々しさは……確かにヒューリア様が仰る様に、この世にいてよい存在ではなさそうですね」

 無表情でシュルスを引き剥がすサラの額から、珍しく冷たい汗が流れる。

 サラが言うには山脈だけではなく、もうこの辺り一帯も『ロン=ドゥの棲家』と呼ばれる地域だそうだ。

「むっ! ノルト、アンナ、気をつけろ。また来るぞ!」

 ロゼルタが叫ぶと同時に恐ろしげな地鳴りが前方から聞こえてくる。

 それとほぼ同時に地面がグラグラと揺れだし、ノルトの足元が覚束なくなる。
 木の根に足を取られこけそうになった所をテスラにズボンごと掴まれ、持ち上げられた。

「あ、有難うございます、テスラさん」

 十秒程すると揺れが収まった。
 ノルトを下ろし、「今までの地震で一番でかかったな」と呟く。

「近くにミゼランという流れの急な川があるのですが、あれが氾濫したらまずいです。早く通り抜けましょう」とサラ。
「あ! あれがロン=ドゥ?」アンナが指を差して叫ぶ。

 幾つかの木々を越えたところで地鳴りから逃げる様にして南の方へと走る巨体が2体。

 ノルト達のすぐ近くだが彼らには目も止めないようだ。

「いやあんなのな訳ねーだろ。ありゃただのオーガだ」とロゼルタ。
「そ、そう言われると、確かにラドニーの研究所で見たことがあったようななかったような」
「またリドがスピードを上げたぞ。バカな事言ってねーで急いで走れ……」

 だがそこで考えを変えたようだ。

「いやもう間に合わねーか。おいアンナ、あれテイム出来るか? 何かの役に立つかも知れねー」
「ええぇ、あんな大きいのを?」
「大丈夫です、自信持ってアンナさん。ファイトっ!」

 アンナにニコリと笑いかけ、背中から弓と矢を外し、突然戦闘準備を整えながらサラが言う。

 言われるがまま両手を上げ、アンナが2体のオーガに向かって念じ始めた時。

「追い付いたぞ。ここまでだ」

 ゾッとする殺気と聞いた事のある低い声が響く。

 フュルトから彼らを追って来た覇王、リド=マルストの声だ。
 その力は先の戦いで身をもって知っている。

「しつこいヤローだな、テメーは」

 それでもテスラは全く臆さない。

 瞬時にリドへと向かい、後ろ手でノルトに奥に退がれと指示をする。
 すぐさまノルトはアンナの手を取り距離を取った。リドの踏み込みの距離と速さが想像を絶するものだというのはフュルトで嫌というほど味わっているからだ。

 テスラは剣を抜き放つと即座に黒い剣士の姿となり、リドの首に斬り掛かった!

 だがリドの手が剣に向けられ、また剣が止まる。
 30年前にはなかった力だ。

「つい最近見た妙な技だな。しかしこの前とはちょっと状況が違うぜ」

 ギロリとリドを睨み、そう言ったテスラのすぐ後ろから飛び出したのはこの世の物かと疑う程美しい白髪を靡かせたロゼルタだ。

 吸血鬼の能力で一時的に長く伸ばした爪をたて、テスラの反対側から切り裂かんと腕を振り下ろす。

 フュルトの町では皆バラバラの状態で敵と遭遇してしまったために戦力が分散されたが、今一瞬で腹をくくり、逆にリドを待ち構えていたのはテスラ達の方だった。

 しかしロゼルタの攻撃もリドの不思議な手により届かない。

 構わず彼女はもう片方の腕でリドの目を裂きにいった。リドの両手は彼らの攻撃を塞いでいる。
 従ってその攻撃は間違いなく当たる筈、だった。

 リドは口を大きく開くと、なんとロゼルタの親指の付け根の辺りに噛み付いた!

「うっ! ……っのクソヤロー!」

 まさかの反撃に毒づくロゼルタ。

 力を入れたロゼルタの腕は人間のそれとは比較にならない強度を持つ。
 だが今、自分の手のひらを噛むその顎は、少し力を入れれば親指ごと、あっさりと食い千切るだろうと感覚として分かる。

 しかしリドはそうはしない。
 そのまま彼女を見ながら「フフン」と楽しそうに笑ったかと思うとペロリと手のひらを舐めた。

「げっ!」

 思いもしない変態的な行為にさすがのロゼルタも悲鳴を上げた。

「な、なにすんだテメー! 気持ちワリー!」
「クックック。いい味だロゼルタ。すぐに全身、味わってやる」

 あまりの嫌悪で彼女の背筋にゾクゾクゾクと寒気が走る。

 ふと ――。
 今し方まで浮かべていたリドの嫌らしい笑みが消えた。

 ゆっくりと、リドが自らの胸を見た。

 その場にいたテスラとロゼルタすら気付かない間に、リドの胸に1本の矢が深々と突き刺さっているではないか。

「いつの間に」思わず呟くリド。
「串刺しの刑です。クソチン野郎」

 フュルトでは完璧に防がれたサラの弓。

 それが、リドの両側からテスラとロゼルタが攻撃したその僅かな間を通り抜け、見事にリドの胸を射抜いていた。

「サラか……ふふ」

 口から一筋の血を垂らし、笑う。

 容赦無くサラが次の矢を番えた時、リドが思ってもいない事を言った。

「ククク。里の長老を生贄にして逃げるとは。サラ、お前の正義もたかが知れるな?」

 その場の全員がリドの言葉の意味が理解できなかった。







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