【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

142.起源の魔王(2) リリアの脅威

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「最初に言っておくぞ」

 その場にいる全員に向けてドーンが言う。

「奴には魔法が効かん。見た事のない弾き方をされた」
「わかりました」

 即答したのはサラだ。

「まずは全員ボロボロのようですので……『治癒ヒール』!」
「よし。なら近接メンバーで行くぜ」

 そう言ったのはロゼルタ。だがテスラが笑いながら言う。

「ドラックとノルトがもう行っちまってるぜ」
「ああ? ……ったく」

 同じ様にロゼルタもどこか嬉しそうに笑う。ノルト達の後を追う様にマクルル、テスラと共にリドリリアの元へと走る。

 その場に残ったのはサラ、アンナそしてドーンの3人だ。まずはサラの緑の霊気オーラが揺蕩いだした。

リドリリアは圧倒的闇属性。対抗するには……交感せよ、キジェシス!」

 光り輝く霊気オーラが燦然と輝き、彼女の身に光の精霊王キジェシスが舞い降りる。

「『光輝の王衣サファ=カーフ』」

 キジェシスの詠唱と共に全員の頭上に金色の粒子が舞い降りた。

 完全なる光属性のその防御は全属性、特に闇属性に対して物理、魔法共に精霊王級の加護を与える。

 通常ならそれでキジェシスは消え去り、制御はサラに戻るはずだった。だがキジェシスはそのまま皆を見下ろすようにサラの頭上に浮かび、手を合わせた。

 当然、サラは無防備状態となる。

 それに気付いたアンナがすぐさま「ショル=ヌー!」と叫ぶ。

 それに応えて現れた3体の怪物は彼女達を取り囲み、万が一の攻撃に備えた。

「儂は闇には闇でいくとしよう。疾風のメビクオ、闘争のアポカリプス、お前達の力を貸せ。『漆黒の風』……『暗黒の闘神』!」

 ドーンが詠唱を終えるとノルト達のパーティ全員に黒い霊気オーラが一瞬舞い降りた。

 彼らの肉体はその2つの闇の加護によって増強され、素早さや攻撃力が飛躍的に向上した。

 加護バフを受けたテスラとマクルルがフルパワーで剣、戦斧を振るう!

 だがそれは不敵に微笑むリドリリアの手前でピタリと止まる。

 それを見たロゼルタが、ならばと爪を伸ばし直接串刺しにせんと突きを放つ。

 ひと呼吸の後、ドラックの槍、そしてノルトの蹴りがリドリリアを襲う。

 だがそれらの攻撃は全てリドリリアに触れる事なく、空中で静止した。

「お前達はそれでも私の子孫かい? 情けない」
「俺は違うが」

 諦めずに2度3度と突き刺しながらそう言ったのはドラック。

「お前は……竜人族じゃないか。まだ生き残っていたんだね」

 リドリリアは直立不動のままドラックをチラリと見た。

(この感じは)

 ノルトは初発の蹴りが空間で止まった感触に覚えがあった。

(メルマトラでリドと戦った時のあれか)

 あの時オーグの力を宿していた強力な膝蹴りは、確か今と同じ様に空中で止められた。

(あの時はランティエの衝撃反射リフレクト=インパクトが当たってそれから……そうか!)

 一撃を加えればその後は当たると思い出した。

 だがその一撃がなかなか当たらない。

「どうした。私はまだ何もしていないが」

 手を広げたリドリリアが戯けた表情を見せる。

「ヤロー……!」

 その仕草が癇に障ったのか、テスラが怒涛の攻撃を見せる。

 それを涼しい顔で見つめるリドリリアの背後でドラックが小さく呟く。

「竜気開放……」

 彼の持つ槍が赤竜の霊気オーラを放つ。

「竜槍……燐炎!」

 赤竜バルチカの竜性と攻撃力が槍そのものに宿る。

「おおおおあああっ!」

 ドラック渾身の突きはリドリリアのガードを遂に突き破り、背中から心臓の位置を貫いた!

 更に槍から噴き出した赤と緑が混在した炎は槍の通り道から体内を燃やし出す。

 だが次の瞬間、背中からがドラックを突いた。

 予想だにしない反撃を脅威的な反射神経で両手のひらを重ねて防ぐがその勢いは止まらない。
 リドリリアの背から生えた不気味な剣はあっさりとそのガードを突き破り、ドラックの肩を串刺しにした後、霧となって消えた。

 その衝撃でドラックは遥か後方まで吹き飛び、尻餅をついた。

「ふう。サラ達の加護がなければ体が弾け飛んでいたかもしれん。……ふふ。これほどの敵と出会えるとは」

 恐怖と歓喜が入り混じった表情で笑う。

 一方、ノルトはドラックの槍がリドリリアのガードを貫いたのを見逃さなかった。

「おりゃあ!」

 瞬時に輝く白い霊気オーラをむき出しにし、その顔面に蛮王オーグの膝蹴りをみまう。

 同時にマクルルも動いた。
 リドリリアは前から魔王の膝蹴り、後ろからマクルルのラリアットを同時にくらう。

 初めてリドリリアの口から血が噴き出した。

 だがドラックの時と同じく、ダメージを受けた箇所の近くから剣が現れ、瞬時にふたりに斬りかかる。

 今を逃すまいと急いで攻撃をしたふたりはもろにその反撃を受け、ドラック同様、後方にふき飛んだ。

(今の霊気オーラは現世の魔王か……リドが言っていた、内に魔王を飼う少年、あの子がそうか)

 リドリリアは口の血を指で拭いながらそんな事を考えた。

 だがすぐに人の体の感触を味わうように手を握り、開きを繰り返す。

「これだこれ。この脆い肉体……実に懐かしい。ふふ」

 ドラックとノルト、マクルルの3人の攻撃で傷付いたのがまるで嬉しい出来事のように笑う。

 チラリとその3人を見るといつの間にか全員の負傷箇所が治癒していることに気付く。

 サラが召喚した光の精霊王キジェシスによる連続の完全回復魔法だった。

「エルフめ、やはりこの時代でも忌々しい」

 ギロリとサラを睨む。

「エルフは生かしておかないよ。根絶やしにしてやる」
「やらせるか!」

 正面に立ち塞がり、剣を振るったのはテスラ。

 だがもうそれらは当たらない。

 しかしリドリリアが仰け反った。

 見ると彼の腹から爪の伸びた女性の腕が生えている。
 いや、背後からのロゼルタの一撃がリドリリアの体を貫いたのだ。

 同時にテスラの剣がリドリリアを肩から斜めに切り裂く。

 血飛沫があがるが吹き飛んだのはテスラとロゼルタの方だった。

 テスラは同じ様に体を斜めに深く切り裂かれ、ロゼルタは右腕が切断、その上で鳩尾の辺りを剣で突き刺された。

 リドリリアの腹に残されたロゼルタの片腕はなんとそのままその体に吸収されてしまった。

「これが吸血鬼の女王ヴァンパイアクイーンの腕の味か。実に美味い」
『あれでは……復元できない!』

 テスラとロゼルタの傷は瞬時に治癒させたものの、キジェシスですら欠損部位はそれがないと復元が出来ない。

「心配すんなサラ、いや精霊王か?」

 口の端から血を垂らしながらロゼルタがフンッと力むと失った右腕が再生する。

 確認するように右腕を左右に捻り、リドリリアを睨む。

「こいつあー……骨が折れそうだぜ」

 彼女達に受けた攻撃などまるでなかったかのように綺麗に治癒した体を反らし、ニヤリとほくそ笑むリドリリアを見てため息をついた。

「ふ……ふっふっふ。今の世の魔神達はこの程度か。これならリドにやらせても勝っていたな」

 腰に下げた2本の剣のうち、1本をスラリと引き抜くと、その剣先をサラにピタリと据えた。

「この神剣デスニトはかつて私が魂魔転生を使い魔神化した際、闇の神アリオンダッチからいただいた、神ですら切り裂く剣」

 ブンッとひと振りすると黒い粒子がキラキラと不気味に光る。

「やはり最初の贄はエルフかな。その精霊ごと真っ二つにしてあげよう」

 リドリリアの姿がブレた様に見えた次の瞬間、もう彼はサラにあと数歩という所まで迫っていた。

「クッ……」

 あまりの速さに一瞬反応が遅れたドーンの隣でいち早く反応したのはアンナ!

「ショル=ヌー!」

 3体の黒い怪物の尾がリドリリアのガードを突き破り、串刺しにした。

 が、次の瞬間、その3体は粉微塵になって弾け飛んでいた。

「ショ、ショル、ヌー!」
「ハッハッハァァッ! 終わりだエルフゥ!」

 リドリリアの神剣がキジェシス、そしてサラに向かって振り上げられた。













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