【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

143.起源の魔王(3) 魔神化の力

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 キジェシス、そしてサラに向かって見えない程の速さで振り下ろされた剣は、しかし空を斬る。

「あん?」

 サラを救ったのは4人の魔神の中では最速を誇るマクルルだ。

 彼女を抱き、とにかくリドリリアから離れんと走る。

 だがいつの間に追い抜かれたのか、彼の前にリドリリアが立ち塞がった。

「やるね、さすがは優れた種族のバーバリアン。だが無駄だよ」

 リドリリアが神剣をマクルルへと向けニヤリと笑う。

「うおおお!」

 マクルルは抱いていたサラを地面に置き、オーグもかくやと思われるほどの迫力で膝蹴りを放った。

「魔怨呪砲」

 小さくリドリリアが呟く。

 神剣デスニトの剣先が紫に鈍く光ったかと思った次の瞬間、マクルルは遥か後方に吹き飛び、意識を失った。

 更にその姿は徐々に濃い紫に染まっていく。

「うふふ。強力な太古の呪詛に蝕まれる気分はどうかな? それが全身に回れば魔神だろうが神だろうが死ぬ。傷はすぐ治せるだろうけどあれの解呪は時間がかかろう。もっとも……」

 途中からサラ、そしてキジェシスへと視線を移して言った。

「解呪などさせないけどね」

 戯けた調子でまたも剣先をサラに向けた。

 再び振り下ろされた剣は今度はドラックによって防がれた。

「またお前か。懲りないな」
「俺より強い奴と闘える機会など滅多にないのでな。竜槍!」

 呆れた様な顔つきのリドリリアに向かって槍を振るいながら叫ぶ。

「乱舞!」
「……!」

 まるで百の腕が生えたかの様なドラックの乱れ突き!

 しかも一撃一撃が竜の霊気オーラを纏う赤槍バルチカの強大な威力を秘める。

 すぐにリドリリアのガードは崩れ去り、その体は血に染まり、肉片が弾け飛んだ。

「鬱陶しい竜族め!」

 激しく突かれながらも信じられない動体視力と素早さで槍の穂先を自らの手のひらに突き刺し、槍を掴んでみせた。

 ドラックが両腕の力こぶを見せて引き抜こうとするが、さして力を入れていないかに見えるリドリリアの手から槍は微動だにしない。

 リドリリアは少し顎を上げてフンと笑い、

「『絶対の魅了グランド=チャーム』」

 ポツリと言った。

 刹那、リドリリアの背後に何とも妖艶なリリア本体の姿が浮かび上がり、その全身から紫の霊気オーラが放たれた。

 思いもしない攻撃に驚愕の表情を浮かべたドラックだったが、すぐに目がトロンと半眼になり、放心したようにその場に棒立ちとなった。

「闘いにストイックな奴ほど、こんなのに弱いんだよねえ」

 笑いながら揶揄う様にそう言うと、デスニトを一閃!

 ドラックの鍛え抜かれた肉体からパッと血飛沫が噴き上がる。

 リドリリアは槍を離すと、

「さっき私の心臓を貫いたのはお前だったな」

 前蹴りを放ち、ドラックから少し距離を取ると、ノルト達が助けに入る間も無く神剣と呼んだデスニトを投げ付けた!

 それはドラックの心臓に突き刺さり、その勢いで彼の体は広間の壁まで吹っ飛び、そこで磔となった。

 暫く呻いていたが、すぐにピクリとも動かなくなり、指先までダランと力が抜けたのが遠目からでもわかった。

「マクルルさん……、ド……ドラックさん!」

 数秒前にキジェシスから制御を戻されたサラが叫ぶ。

 リドリリアがそのサラに指を向け、

「魔怨呪砲」

 マクルルに放ったのと同じ呪いの魔法を放つ。

「『死の騎士デスナイト』!」

 不意にサラの目の前に、騎士の姿をした死者達が現れた。そのうちの1体がサラの身代わりとなり、その魔法を受けた。

 だが元々死者である彼らに呪いは効かない。

「その魔法は対象1体に回避不可の強力な呪詛を与えるものじゃろう。相手が死者なら何の役にも立たんうわ言じゃ」

 そう言うドーンをギロリと睨むリドリリアがサッと剣を振るうとあっという間に死者の群れは消え去った。

 だがその間に今度はノルトがサラとリドリリアの間に立ち塞がった。

 目の前に現れたノルトに向けてリドリリアは何も言わずにゆっくりと剣を振りかぶる。

 突然激しい打撃音が鳴った。

 それはリドリリアが横から殴られた音だった。

 ノルトが見たこともない何者かによってリドリリアの顔面は激しく歪んだ。

 濃い紫のアイシャドウが印象的で、髪、唇、そして瞳が深い赤色をしていた。

 肌は白く、全身1ミリの無駄もない鋼の様な筋肉で覆われ、しかし途轍もなく美しい女性。

「ロ、ロゼルタか!?」

 それこそが吸血鬼の女王ヴァンパイアクイーンロゼルタが究極の戦闘モードといえる魔神に変化した姿だった。

 その力は圧倒的でリドリリアが纏うガードを難なく突破し、物理ダメージを与えている。

 一方、その反対側。

 そこには悪魔そのもの、と思える者がいた。

 漆黒の肌、髪と瞳は金色だ。

 体中の筋肉が盛り上がり、黒い霊気オーラを纏う大剣を持っていた。

 彼の攻撃もリドリリアのガードをものともせず、恐ろしいまでの膂力で放たれる斬撃はリドリリアの体を易々と斬り裂き、すぐに血だるまにしていった。

「あっちはテスラか!」
「ふたりともこの時のために魔神化を残しておいてくれたようじゃ」

 ノルトが初めて見るふたりはリドリリアに負けない程の治癒力で、受けた反撃ダメージを即座に回復させ、その途方もない攻撃力は確実にリドリリアにダメージを与えていった。

 リドリリアの顔が少しずつ歪んでいく。

「こ……の、クソガキ共めえ!」
「あたしらはテメーのじゃねーんだぜ」
「勝手にガキ呼ばわりしてんじゃねーぞ、

 罵り合いながらのその戦闘は今までにノルトが見たどれよりも苛烈な戦闘だった。

 リドリリアの攻撃は息を吐くように発する魔法と見えない程に素早い拳での攻撃、更にそれ以外にもロゼルタとテスラが加えた攻撃に対しての自動的な反撃があった。

 つまり2体1の優位性は全くなく、むしろ手数はリドリリアの方が多いほどだった。

 それであっても尚、ロゼルタとテスラ、恐るべきふたりの魔神は徐々にリドリリアを押していった。















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