143 / 154
最終章 魔王をその身に宿す少年
143.起源の魔王(3) 魔神化の力
しおりを挟む
キジェシス、そしてサラに向かって見えない程の速さで振り下ろされた剣は、しかし空を斬る。
「あん?」
サラを救ったのは4人の魔神の中では最速を誇るマクルルだ。
彼女を抱き、とにかくリドから離れんと走る。
だがいつの間に追い抜かれたのか、彼の前にリドが立ち塞がった。
「やるね、さすがは優れた種族のバーバリアン。だが無駄だよ」
リドが神剣をマクルルへと向けニヤリと笑う。
「うおおお!」
マクルルは抱いていたサラを地面に置き、オーグもかくやと思われるほどの迫力で膝蹴りを放った。
「魔怨呪砲」
小さくリドが呟く。
神剣デスニトの剣先が紫に鈍く光ったかと思った次の瞬間、マクルルは遥か後方に吹き飛び、意識を失った。
更にその姿は徐々に濃い紫に染まっていく。
「うふふ。強力な太古の呪詛に蝕まれる気分はどうかな? それが全身に回れば魔神だろうが神だろうが死ぬ。傷はすぐ治せるだろうけどあれの解呪は時間がかかろう。もっとも……」
途中からサラ、そしてキジェシスへと視線を移して言った。
「解呪などさせないけどね」
戯けた調子でまたも剣先をサラに向けた。
再び振り下ろされた剣は今度はドラックによって防がれた。
「またお前か。懲りないな」
「俺より強い奴と闘える機会など滅多にないのでな。竜槍!」
呆れた様な顔つきのリドに向かって槍を振るいながら叫ぶ。
「乱舞!」
「……!」
まるで百の腕が生えたかの様なドラックの乱れ突き!
しかも一撃一撃が竜の霊気を纏う赤槍バルチカの強大な威力を秘める。
すぐにリドのガードは崩れ去り、その体は血に染まり、肉片が弾け飛んだ。
「鬱陶しい竜族め!」
激しく突かれながらも信じられない動体視力と素早さで槍の穂先を自らの手のひらに突き刺し、槍を掴んでみせた。
ドラックが両腕の力こぶを見せて引き抜こうとするが、さして力を入れていないかに見えるリドの手から槍は微動だにしない。
リドは少し顎を上げてフンと笑い、
「『絶対の魅了』」
ポツリと言った。
刹那、リドの背後に何とも妖艶なリリア本体の姿が浮かび上がり、その全身から紫の霊気が放たれた。
思いもしない攻撃に驚愕の表情を浮かべたドラックだったが、すぐに目がトロンと半眼になり、放心したようにその場に棒立ちとなった。
「闘いにストイックな奴ほど、こんなのに弱いんだよねえ」
笑いながら揶揄う様にそう言うと、デスニトを一閃!
ドラックの鍛え抜かれた肉体からパッと血飛沫が噴き上がる。
リドは槍を離すと、
「さっき私の心臓を貫いたのはお前だったな」
前蹴りを放ち、ドラックから少し距離を取ると、ノルト達が助けに入る間も無く神剣と呼んだデスニトを投げ付けた!
それはドラックの心臓に突き刺さり、その勢いで彼の体は広間の壁まで吹っ飛び、そこで磔となった。
暫く呻いていたが、すぐにピクリとも動かなくなり、指先までダランと力が抜けたのが遠目からでもわかった。
「マクルルさん……、ド……ドラックさん!」
数秒前にキジェシスから制御を戻されたサラが叫ぶ。
リドがそのサラに指を向け、
「魔怨呪砲」
マクルルに放ったのと同じ呪いの魔法を放つ。
「『死の騎士』!」
不意にサラの目の前に、騎士の姿をした死者達が現れた。そのうちの1体がサラの身代わりとなり、その魔法を受けた。
だが元々死者である彼らに呪いは効かない。
「その魔法は対象1体に回避不可の強力な呪詛を与えるものじゃろう。相手が死者なら何の役にも立たんうわ言じゃ」
そう言うドーンをギロリと睨むリドがサッと剣を振るうとあっという間に死者の群れは消え去った。
だがその間に今度はノルトがサラとリドの間に立ち塞がった。
目の前に現れたノルトに向けてリドは何も言わずにゆっくりと剣を振りかぶる。
突然激しい打撃音が鳴った。
それはリドが横から殴られた音だった。
ノルトが見たこともない何者かによってリドの顔面は激しく歪んだ。
濃い紫のアイシャドウが印象的で、髪、唇、そして瞳が深い赤色をしていた。
肌は白く、全身1ミリの無駄もない鋼の様な筋肉で覆われ、しかし途轍もなく美しい女性。
「ロ、ロゼルタか!?」
それこそが吸血鬼の女王ロゼルタが究極の戦闘モードといえる魔神に変化した姿だった。
その力は圧倒的でリドが纏うガードを難なく突破し、物理ダメージを与えている。
一方、その反対側。
そこには悪魔そのもの、と思える者がいた。
漆黒の肌、髪と瞳は金色だ。
体中の筋肉が盛り上がり、黒い霊気を纏う大剣を持っていた。
彼の攻撃もリドのガードをものともせず、恐ろしいまでの膂力で放たれる斬撃はリドの体を易々と斬り裂き、すぐに血だるまにしていった。
「あっちはテスラか!」
「ふたりともこの時のために魔神化を残しておいてくれたようじゃ」
ノルトが初めて見るふたりはリドに負けない程の治癒力で、受けた反撃ダメージを即座に回復させ、その途方もない攻撃力は確実にリドにダメージを与えていった。
リドの顔が少しずつ歪んでいく。
「こ……の、クソガキ共めえ!」
「あたしらはテメーの子じゃねーんだぜ」
「勝手にガキ呼ばわりしてんじゃねーぞ、クソ先祖」
罵り合いながらのその戦闘は今までにノルトが見たどれよりも苛烈な戦闘だった。
リドの攻撃は息を吐くように発する魔法と見えない程に素早い拳での攻撃、更にそれ以外にもロゼルタとテスラが加えた攻撃に対しての自動的な反撃があった。
つまり2体1の優位性は全くなく、むしろ手数はリドの方が多いほどだった。
それであっても尚、ロゼルタとテスラ、恐るべきふたりの魔神は徐々にリドを押していった。
「あん?」
サラを救ったのは4人の魔神の中では最速を誇るマクルルだ。
彼女を抱き、とにかくリドから離れんと走る。
だがいつの間に追い抜かれたのか、彼の前にリドが立ち塞がった。
「やるね、さすがは優れた種族のバーバリアン。だが無駄だよ」
リドが神剣をマクルルへと向けニヤリと笑う。
「うおおお!」
マクルルは抱いていたサラを地面に置き、オーグもかくやと思われるほどの迫力で膝蹴りを放った。
「魔怨呪砲」
小さくリドが呟く。
神剣デスニトの剣先が紫に鈍く光ったかと思った次の瞬間、マクルルは遥か後方に吹き飛び、意識を失った。
更にその姿は徐々に濃い紫に染まっていく。
「うふふ。強力な太古の呪詛に蝕まれる気分はどうかな? それが全身に回れば魔神だろうが神だろうが死ぬ。傷はすぐ治せるだろうけどあれの解呪は時間がかかろう。もっとも……」
途中からサラ、そしてキジェシスへと視線を移して言った。
「解呪などさせないけどね」
戯けた調子でまたも剣先をサラに向けた。
再び振り下ろされた剣は今度はドラックによって防がれた。
「またお前か。懲りないな」
「俺より強い奴と闘える機会など滅多にないのでな。竜槍!」
呆れた様な顔つきのリドに向かって槍を振るいながら叫ぶ。
「乱舞!」
「……!」
まるで百の腕が生えたかの様なドラックの乱れ突き!
しかも一撃一撃が竜の霊気を纏う赤槍バルチカの強大な威力を秘める。
すぐにリドのガードは崩れ去り、その体は血に染まり、肉片が弾け飛んだ。
「鬱陶しい竜族め!」
激しく突かれながらも信じられない動体視力と素早さで槍の穂先を自らの手のひらに突き刺し、槍を掴んでみせた。
ドラックが両腕の力こぶを見せて引き抜こうとするが、さして力を入れていないかに見えるリドの手から槍は微動だにしない。
リドは少し顎を上げてフンと笑い、
「『絶対の魅了』」
ポツリと言った。
刹那、リドの背後に何とも妖艶なリリア本体の姿が浮かび上がり、その全身から紫の霊気が放たれた。
思いもしない攻撃に驚愕の表情を浮かべたドラックだったが、すぐに目がトロンと半眼になり、放心したようにその場に棒立ちとなった。
「闘いにストイックな奴ほど、こんなのに弱いんだよねえ」
笑いながら揶揄う様にそう言うと、デスニトを一閃!
ドラックの鍛え抜かれた肉体からパッと血飛沫が噴き上がる。
リドは槍を離すと、
「さっき私の心臓を貫いたのはお前だったな」
前蹴りを放ち、ドラックから少し距離を取ると、ノルト達が助けに入る間も無く神剣と呼んだデスニトを投げ付けた!
それはドラックの心臓に突き刺さり、その勢いで彼の体は広間の壁まで吹っ飛び、そこで磔となった。
暫く呻いていたが、すぐにピクリとも動かなくなり、指先までダランと力が抜けたのが遠目からでもわかった。
「マクルルさん……、ド……ドラックさん!」
数秒前にキジェシスから制御を戻されたサラが叫ぶ。
リドがそのサラに指を向け、
「魔怨呪砲」
マクルルに放ったのと同じ呪いの魔法を放つ。
「『死の騎士』!」
不意にサラの目の前に、騎士の姿をした死者達が現れた。そのうちの1体がサラの身代わりとなり、その魔法を受けた。
だが元々死者である彼らに呪いは効かない。
「その魔法は対象1体に回避不可の強力な呪詛を与えるものじゃろう。相手が死者なら何の役にも立たんうわ言じゃ」
そう言うドーンをギロリと睨むリドがサッと剣を振るうとあっという間に死者の群れは消え去った。
だがその間に今度はノルトがサラとリドの間に立ち塞がった。
目の前に現れたノルトに向けてリドは何も言わずにゆっくりと剣を振りかぶる。
突然激しい打撃音が鳴った。
それはリドが横から殴られた音だった。
ノルトが見たこともない何者かによってリドの顔面は激しく歪んだ。
濃い紫のアイシャドウが印象的で、髪、唇、そして瞳が深い赤色をしていた。
肌は白く、全身1ミリの無駄もない鋼の様な筋肉で覆われ、しかし途轍もなく美しい女性。
「ロ、ロゼルタか!?」
それこそが吸血鬼の女王ロゼルタが究極の戦闘モードといえる魔神に変化した姿だった。
その力は圧倒的でリドが纏うガードを難なく突破し、物理ダメージを与えている。
一方、その反対側。
そこには悪魔そのもの、と思える者がいた。
漆黒の肌、髪と瞳は金色だ。
体中の筋肉が盛り上がり、黒い霊気を纏う大剣を持っていた。
彼の攻撃もリドのガードをものともせず、恐ろしいまでの膂力で放たれる斬撃はリドの体を易々と斬り裂き、すぐに血だるまにしていった。
「あっちはテスラか!」
「ふたりともこの時のために魔神化を残しておいてくれたようじゃ」
ノルトが初めて見るふたりはリドに負けない程の治癒力で、受けた反撃ダメージを即座に回復させ、その途方もない攻撃力は確実にリドにダメージを与えていった。
リドの顔が少しずつ歪んでいく。
「こ……の、クソガキ共めえ!」
「あたしらはテメーの子じゃねーんだぜ」
「勝手にガキ呼ばわりしてんじゃねーぞ、クソ先祖」
罵り合いながらのその戦闘は今までにノルトが見たどれよりも苛烈な戦闘だった。
リドの攻撃は息を吐くように発する魔法と見えない程に素早い拳での攻撃、更にそれ以外にもロゼルタとテスラが加えた攻撃に対しての自動的な反撃があった。
つまり2体1の優位性は全くなく、むしろ手数はリドの方が多いほどだった。
それであっても尚、ロゼルタとテスラ、恐るべきふたりの魔神は徐々にリドを押していった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる