【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

146.起源の魔王(6) ロゼルタの死

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「いやぁぁぁっ!」
「ドーンさんっ! ドーンさん!」

 アンナとサラの半狂乱の声が響く。

 だが逆にそれがノルトを冷静にさせた。

(あいつは魔王と共にいる俺を嬲って愉しんでいる)
(テスラの時、俺を殺せたのに殺さなかった)
(次に狙うのは魔族のロゼルタか、エルフのサラだ)
(これ以上、絶対に、やらせるかっ!)

 みっつの血溜まりを見、そのあまりの呆気ない幕切れと別れに悲しみよりも怒りが煮えたぎる。

(みんな……仇は絶対に……とる!)

 サラとロゼルタの中間に転移するとリドリリアに体を向け、低く構えた。

 そのノルトの様子を見てリドリリアが不敵に笑う。

「触手よりも早く動く自信があるか? 触手を抑える自信があるか? 面白い。じゃあ次は誰にしようかな……」

 触手の先がロゼルタとサラどちらにしようかと言わんばかりに首を振る。

「決めた」

 リドリリアが顎を上げ、目線をサラへと向けた。

 触手が恐るべきスピードでサラへと伸びる。

 すぐさまサラとの間に転移し、割って入った。

「さあ、どうやって防ぐのか見せてくれ!」

 リドリリアが愉しそうに目を細める。

 ノルトの眼前に迫り来る触手の恐怖に耐え、ぎりぎりまで引きつけた。

『今だ』

 ランティエの号令がかかる。

「『衝撃反射リフレクト=インパクト』ぉぉ!」

 触手には何の攻撃も防御も効かない。

 であればその攻撃力をそのまま返してはどうか。ランティエと相談し、その結論に至った。

「なるほどぉ! だが残念だったな」

 リドリリアが手を叩いて笑う。

 衝撃反射リフレクト=インパクトは発動したが何の手応えもない。

 ふと気付くと触手はノルトの目の前から忽然と姿を消していた。

「ハッ……? ど、どこへ!?」
「いやあ!」

 声の主はすぐ隣にいたアンナ!

「な、なに!?」

『しまった、やられた!』

 ランティエの激しい後悔の思いがノルトに伝わってくる。

 ぎりぎりまで引き付けたのはノルトだけではなかった。リドリリアも同じ事を考え、激突する寸前でノーマークだったアンナへと矛先を変えた。

「アッハッハ! 衝撃反射リフレクト=インパクトか。なかなかいいぞ。攻撃と防御を兼ねる魔法と見た。だけど残念」

 アンナは触手に巻き付かれ、あっという間にリドリリアの元へと連れて行かれてしまった。

「ノルトォ!」
「アンナ!」
「いや……ノ、ノル……んぐ!」

 アンナの口の中に触手の先端が突っ込まれた。

「この子は魔物を召喚出来る様だし、面倒なことをされないよう、口を塞がせてもらう」

 リドリリアの手のひらがノルトに向けられた。

 ちょうどアンナを救出するため転移しようと体を強張らせた瞬間のことだった。

「お前は動くな」
「……!」

 捕縛魔法をかけられた訳ではない。

 が、その声の響きに気圧され、嫌な予感がし、ノルトは転移をやめた。

「フフ。いい判断だ。動いてたらこの子は死んでたよ」
「お前……一体何を」
「宣言しよう。今から最後の魔族を殺すよ。ただし」

 リドリリアの背中の辺りから再び霊気オーラが現れ、もう1本の触手へと変化し、ロゼルタへとゆっくり伸びていく。

「お前はそこから一歩も動いてはならない。動けばこの娘を殺す」
「なん、だと……」

 アンナを指差し、リドリリアが言う。
 ノルトは顔を強張らせたまま、動けなくなった。

 それが脅しではないのは躊躇なく殺されたテスラ達3人の姿が物語っている。

「ノル、ト……」

 サラでもアンナでもないその声は、既に死んでいてもおかしくない状態のロゼルタが発したものだった。

 サラの連続の治癒ヒール吸血鬼ヴァンパイアである彼女の不死性によって体は僅かながらに治癒を始めていた。

「ロゼルタ!」
「聞け……あたしの事は、放っておけ。あたしは、もう……動けねー」
「ロゼルタ……嫌だ、嫌だ、俺はお前を守るんだ」
「へっ……そういや……んな事、言ってたなあ」

 触手が遂にロゼルタの頭上に辿り着き、その先端を彼女の顔に向けた。

「ノルト……頼む……魔王様を……復活……」

 最後にノルトが見た彼女の顔は、笑っていた。

 次の瞬間、黒い触手はその美しい顔を蹂躙する様に、躊躇なく突き刺し、破壊した。

「うわぁぁぁぁ! ロゼルタァァ!」

 ノルトの叫びは虚しくその部屋に消えた。

「フッフッフ。これであとは人間が2匹にエルフが1匹」

 リドリリアが触手をゆっくりと戻そうとしたその時。

 既に息絶えたと思っていたロゼルタの体があった辺りから赤い霊気オーラが小さな球となり、リドリリアに向かい、その体を貫いた。

「ガフッ! ……ク……ま、まだ生きているだと……?」

 だがノルトにはわかった。

 ロゼルタはもう死んでいると。

(ロゼルタ……ロゼルタ……)

 旅を始めてからの彼女はとても優しかった。人化していた影響もあったかもしれないが、彼を一番に考え、時にはまるで母の様に接してくれたロゼルタにノルトも一番の信頼を置いていた。

(また救えなかった……助けられなかった)

 後悔の念が押し寄せる。

『気持ちはわかるが切り替えろ』

 ランティエの抑揚の無い声が聞こえる。

 聞き様によっては血も涙もない様に感じる。だが長く彼ら魔族と関わって来たノルトには分かっている。

 彼らは人間よりも情に厚く、優しいことを。

(わかってる。わかってるさ)

 そして今一度、ロゼルタの最後の行為について考えた。

(今のはロゼルタのブラッドシュート……死ぬ前に最後の力で発動させておいたんだ)
(でもなんでそんな事を?)

『おかしい』

 ランティエが呟く。

 ノルトと同じ疑問が彼にもあったのだろうか。

 いや違う。

『どうして今の攻撃がリドリリアんだ?』

 その言葉で最初ドーンと2人でリドリリアと対峙した際、彼らの魔法が予想だにしない方法で弾かれたのを思い出した。

(……確かに! 本当だ)

『想像だが……今なら攻撃が当たる、ロゼルタはそう言いたかったんじゃないのか?』

(今なら……さっきと違うのは……ハッ! ひょ、ひょっとして、触手が!?)

『吾輩もそう思った。あの触手、元はといえばリリアの神属性の霊気オーラだ。あれがあいつの謎のバリアの正体なんじゃないか?』

 であればそれが攻撃に回っている間しか勝機はない。

 燃える様な目でリドリリアを睨み付けた。
 だがアンナを人質に取られている今、迂闊に動く事はできなかった。

「クク。良い目をしている。まだ望みを捨てていない目だ」

 触手をクルクルと動かし、もう一度ノルトの方へと向かって来た。

「フッフッフ。まだ手を出すなよ? 動けばこちらの少女を殺す」
「卑怯者め……外道野郎」
「アハハ。酷い言い草だ。今も昔もよってたかって私を殺しに来た癖に」

 その触手はノルトの頭上を通り越して背後のサラを捕まえた。

「あう! んんっ!」
「な、何を!」

 アンナと同じ様にサラの口にもグロテスクなものが詰め込まれた。勿論、至近距離でのエルフの一撃を警戒したのだ。

 触手はリドリリアの元へと戻り、宙吊りとなったアンナとサラが何とも言えない表情でノルトを見た。

 助けを求めているのではない。

 ふたりは足枷になってしまったことを悔いていた。

 リドリリアはひとり残されたノルトに向け、不敵な笑みを浮かべる。

「さあ助けたい方を選ぶがいい。どっちの娘が好みだ?」
「な、なに?」
「約束しよう。お前が選んだ方だけ助けてやる。もうひとりは……そうだな。私の子でも産んでもらおうか。今はのリドの姿だが、なに、本来の肉体などすぐに取り戻せる」

 そのあまりの下卑た話にノルトの額に癇筋が畝る。

「まあ私1人でも子孫は作れるが現世の女に産ませるのも一興だ」
「クソ野郎……」
「いずれエルフは絶滅させるが……その前に絶望を与えるのもよい。どちらを選んでもよいぞ?」

 神剣デスニトをドラックに投げ付けた為、残るもう1本をすらりと鞘から抜いた。

「そうだ。選ばない、という選択肢も付け加えてやろう。優しいだろ? その場合はお前の精一杯の攻撃を一度だけ受けてやろう。と言っても」

 手にした魔剣を嬉しそうに見つめながら、

「その後、魔王を宿したお前はこの剣で中の魔王ごと必ず殺してやるがね」
「う……ぐ……」
「さ、どうするね。人間の娘か? エルフの娘か? それとも、私を殴ってすっきりしてから3人仲良く死ぬか?」

 プルプルと震える拳を血が出るほど握りしめ、ノルトの目が憎悪に染まった。















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