【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

147.起源の魔王(終) 黄金と虹

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「さ、どうするね。人間の娘か? エルフの娘か? それとも、私を殴ってすっきりしてから3人仲良く死ぬか?」

 プルプルと震える拳を血が出るほど握りしめ、ノルトの目が憎悪に染まった。

「そうか、うっかりしていたよ。もうひとつ、4つ目の選択肢があったな。『僕には選べない』が」

 悔しそうに唇を噛むノルトが面白くて堪らないといった様子で顔を緩ませる。

「よし。カウントダウンをしよう。ゼロになったら全員、残酷に殺してやる。5……4……3……」

 黙っているノルトを見かねてランティエが少し焦ったように口を出した。

『チッ。どうするノルト』

 だがどれを選んだとて全員不幸にしかならない選択肢だった。

 どちらかを選ぶというのもサラとアンナに残酷過ぎる。

「2……1……」

 そしてノルトは決めた。

(決めた。ブチ殺す)

『お、おい。落ち着けノルト』

(うるさい。!)

『は、はああ?』

(いいな。全力だ)

『お、お前……』

 一瞬でそんなやり取りをし、ノルトは叫んだ。

「リリアッ! お前は絶対許さねー! 存在ごと、俺が消してやる!」

 まるでテスラが乗り移ったかのような口振りで叫び、リドリリアへと猛ダッシュを始めた。

「3番目の選択肢か。お嬢さん方、見捨てられたようだぞ?」

 アンナとサラを見やって含み笑いをする。

 リドリリアと目と鼻の位置まで来たその時。

 ノルトの全身から黄金に輝く霊気オーラが噴き出した。

 今まで黄色だったそれは仲間の死を乗り越えて成長したノルトを守る様に彼の周囲に吹き荒れた。

「金の霊気オーラか! 初めて見たぞ。さあ、一撃食らってやる。お前の全力を見せてみろ!」

 不敵に笑うリドリリアが両手を広げ、ノルトの攻撃を待つ。

「死にやがれぇぇぇ!」

 右腕に霊気オーラが集まるとその拳はまるで金で出来た砲弾の様になった。

「グオッ!」

 それはリドリリアの腹に触れるや否や周囲を一瞬で蒸発させ、断面から血の一滴すら出ない程の火力で表面を焼き尽くし、貫通した。

「お、おおおお……」

 驚愕の表情を見せたリドリリアの体が震える。

 このまま押し切れ、そう自分に言い、拳を引き抜き、2発目のために腰に手を当てた。

 だがリドリリアが口を開く。

「なかなか……良い腕と度胸。でもそれくらいじゃ無理だな」

 ブスリ、刃物が刺さる気味の悪い音が聞こえた。

「あがぁっ!」

 リドリリアが手にしていたリドの魔剣。それがノルトの心臓を突き刺し、貫いた音だった。

「んんんん!」

 喋れないアンナが絶叫する。

「フッフ。なかなか面白い余興だった。が、終わってみると実に呆気無い。さ、お前達を殺して終わりにするとしようか」
「誰が、誰を殺すだって?」

 声の主はノルトではない。

 明らかに彼の背後から聞こえてきた。

 慌てて振り返り、触手で捉えていたふたりの方を見、呆然とした。


 彼が見た事もない、『4人の魔族』がそこにいた。


 ひとりは少年の姿でマントを羽織り、サラを抱いていた。

 ひとりはリリアですら見た事が無い程の美しい女性で、アンナを抱いている。

 ひとりは先程殺したマクルルをも上回る体躯でもって触手を力づくでひきちぎっており、

 ひとりは黒髪で精悍な顔付きで、有り得ない程の魔力でもって触手を蒸発させた。

「きっ、貴様ら一体……何者だっ!」

 狼狽するリドリリアに対して黒髪の男がマントを翻し、顎を上げて言う。

「ご機嫌よう、先祖殿。お初にお目にかかる。余は魔導王ネルソ=ヌ=ヴァロステである」

 それはロン=ドゥの体内でリドによって魔剣『魔喰』に吸収されていたネルソだった。

 彼らは実体として存在しているのではなく、ノルトの黄金の霊気オーラが彼らを形作っていた。

 あの虹色に煌めく不思議な館の中で、ノルトから出たネルソと同じようなものだったが、あの時よりもより鮮明に、より現世での姿に近しい姿で現れた。

「ネルソ……な、何故……リドが殺したのではなかったのか……で、では」

 巨躯の魔族が口を開く。

「蛮王オーグ。その魔剣とやらで俺を殺すんじゃなかったのか? ああ?」

 続いてロングドレスをたなびかせた美貌の女性がアンナの頭を撫でながら言う。

「次元魔導王エキドナ。敬えないご先祖様ね。やる事なす事趣味が悪いわ」

 最後にサラを抱いた金髪の少年が歯を剥いて笑う。

「死霊王ランティエ。お前の事はノルトの中からずっと見ていたぞ。覚悟するがいい」

 ギリッと歯を鳴らせたリドリリアは、だが不敵に笑う。

「クッ……クックック。なるほど。つくづく私は4人の魔王というものに縁があるらしい。だが貴様達を殺せばもう私に歯向かう者はいない」

 ネルソがフフンと鼻で笑う。

「余達を殺す、か。お前にそれができるかな?」
「なんだと? 調子に乗るなよ貴様達」
「吾輩は覚悟しろ、と言ったんだぜ? 覚悟は出来たか?」
「な、なにを……」

 そこでハッと何かに気付いた様に慌てて振り向いた。

 そこにいたのは胸に魔剣が刺さったまま、神々しく光り輝き宙に浮くノルト、そしてその彼を背後から抱き抱える様に姿を現したメルマトラの女王、ヴィクトリアだった。

「きっ……貴様ぁ! リドに殺されたんじゃあなかったのか!」
「今の私はただの光の下級精霊ウィル=オ=ウィスプです。大した力はありませんが、その代わりに首を刎ねられた程度で死にはしません」
「クッ!」

 怯えた様にリドリリアが強大な魔力を振い出す。
 ドス黒い霊気オーラが一気に噴き出すと邪悪な気配が再び辺りを染める。

 が、それはまるで風船が萎むように消えていった。

「な……ば、バカな……」
「終わりです。あの時と同じく、あなたのオーラは4人の魔王が完全に抑えている」
「クッ……ならば……最強の暗黒神の力で皆殺しだっ! 交感せよ! アリオンダッチ!」

 それが顕現すれば、そのパワーはネルソ達とて危うい、超次元的な神の力。

 だが、何も起こらなかった。

「な、なんだ……どうして来ない……なぜ! アリオンダッチ!」
「無駄です。私の後ろを見なさい」
「は?」

 虹色に煌めく彼女の背後に、一際白く光り輝く人型の何かがいるのが見えた。

「な、に……あれは、まさか……」
「最高神ヴァルダです。私の1万年分の奉公の賃金代わりに来ていただけました。ヴァルダ様にはいくらアリオンダッチといえど、敵わない」
「あ……ああ……」

 ヴィクトリアがノルトの胸に刺さった魔剣を引き抜き、目を光らせるとその剣は粉々となった。

 静かに顔を上げ、リドリリアを睨む。

「リリア。私達は長く生き過ぎました。さあ、神の元へ参りましょう」
「や、やめろ……やめろぉぉ!」

 ふわっと柔らかな虹の霊気オーラが現れた。リドリリアの顔を両手で挟み、ヴィクトリアの体は上へと昇り始める。

 同じ様にリリアもリドの体から離れ、何か喚きながら昇っていく。

 リリアはヴィクトリアから逃れる事も出来ず、そのまま天井へと消えて行った。

 それによって意識をなくしたリドの体は受け身を取る事なく地面に倒れた。

 それと同時に。

 ネルソ達の姿がゆっくりと物質化していった。

 長い旅路の果てに、遂に彼ら4人は全ての魔族の悲願であるかつての姿を取り戻し、現世で復活したのだ。


 一方のノルト。

 ゆっくりと瞼を開き、目を開けた。

「久しいな、ノルト。いやちゃんと会うのは初めてだが」
「ネルソ、様……?」

 放心した顔つきで小首を傾げた。

 取り憑かれたような足取りでふらふらとネルソへと近付き、背の高い彼の顔を見上げた。

「大ピンチだったが……よく切り抜けたな」
「ネルソ様」
「最後に余とエキドナを救い出したのも……あん?」

 ノルトはネルソの腰の辺りに手を回し、抱き着いた。

「ちょ、ちょ……どうしたノルト」
「ネルソ様……」

 自分の名を呼び、一体どうするのかと怪訝な顔をしていたネルソの腹の辺りにノルトは顔を押し付け、唸り始めた。

「う――……うううううう」

 その直後、ノルトの目から堰を切ったように涙が溢れ出した。

「うわぁぁぁん……ネルソ様ぁ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「うわわわ! ちょ、待て、どうしたのだノルト」
「ごめんなさい、ごめんなさいい!」

 いくらネルソが声を掛けても一向に泣き止まず、ひたすら謝り続けるノルトに困り果て、3人の魔王達に救いを求めるが、皆、素知らぬふりだ。

「ずっと謝りたかった……僕が……僕が調子に乗ったせいでネルソ様とエキドナ様を……うわぁぁぁぁん!」
「いいいや、よいよい、よいから気にするな」
「テスラさんも、ロゼルタさんも……みんな死んじゃった。僕のせいで、僕のせいで……うわあああ!」

 手の施しようがなくなったネルソは、ひとつ鼻息を吐くと黙ってノルトの頭を撫でた。

 そのノルトを膝を突いて後ろから抱きしめたのはエキドナだ。

「ノルト、気にしなくていい。みんな、よくやったとあなたを讃えていると思うよ」
「エキドナ様……」
「そうだ。奴らを死なせてしまったのはむしろ余達の力不足」
「ネルソ様……」

 最後にノルトは一際大きな声で「みんな、ごめんなさいい!」と叫ぶとそのまま棒立ちになって泣いた。

 サラとアンナも泣いた。


 そんな中、ふとランティエが気付いた。

「おい待て。リドヤローはどこへ行った?」

 先程まで床に倒れていた筈のリドの体がなくなっていた。















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