【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

148.リド=マルストの最期

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「い、今の今までここにいたのに!」

 サラが驚いて口に手を当てた。

 オーグが鼻をヒクヒクとさせるとギロリとドラックが磔になっている方を見た。

「オタオタすんじゃねえ。あそこだ」

 皆、オーグが指す方を一斉に見た。

 そこにはドラックに突き刺された剣を引き抜くリドがいた。

「リドォォッ!」

 ランティエが叫ぶ。

 見えない程の速さで剣を振ると剣に付着していたドラックの血が壁に点々と飛び散った。

「ギャーギャーと泣き喚きおって……まあお陰で目は覚めたがな」

 リドが背を向けたまま低い声で言う。

 その姿は遠目でも老いた姿、つまりリド本来の姿だとわかった。
 だがその体力、剣の鋭さは魔界侵略時のそれを凌ぎ、今が全盛期だということも知っている。

「リリアめ。いらん事をしおって……中途半端に力を持った魔族はこれだから困る」

 体を反転させ、ノルト達の方へと歩き出した。

「ロゼルタとドーンを死なせたか。だがサラを残し、エキドナが蘇ったことでよしとしようか」
「相変わらずイカれてんな? お前」

 ランティエが自分の頭を指差し、リドを挑発する様に言う。だがリドは全く動じない。

「逃げぬのなら斬り捨てるが、よいのだな?」
「は? 逃げるだと? 逃げないといけないのはお前じゃないのか?」

 確かにいくら尋常ではない剣技の持ち主とはいえ、4人の魔王、サラ、アンナそしてノルトが揃っている。

 テスラ達を欠いたとはいえ、圧倒的に不利なのはリドの方と思えた。

「フッ。よかろう。そう思うならかかって来い」
「おもしれー。あん時の恨み、百倍にして返させて貰うぜ」

 オーグが腕を回し、リドに向かおうと歩き出した。

 その肩に手を置いたのはネルソだった。

「なあオーグ、ここはノルトに任せないか」
「え!?」

 驚いたのはオーグではなく、当のノルトだった。

「ぼ、僕ですか!?」
「ノルトなら我ら4人分、そしてテスラ達の分まできっちり仇を討ってくれるだろう」
「……」

 オーグはノルトを見、リドを見、またネルソに向かい、

「いいぜ。ランティエとエキドナはどうだ?」

 意外にもすんなりとそう言った。

「いいとも。頼むぜ、吾輩の弟子」
「ノルトは余の弟子だ」
「いーや。吾輩だね」
「私もいいよ。でも気をつけてノルト」

 ノルトは皆の顔を見、サラとアンナの顔を見、ネルソにひとつ頷くと最後にリドを睨み、ひと言呟いた。

「ブチ殺してやる」

 瞬時に髪を逆立て、いまや完全に金色に輝く霊気オーラを振り撒いた。

 本来、その状態は中に魔王がいる事で成り立っていたもので、魂の重複からくる興奮状態を逆手に取った強化状態だったがノルトはひとりでその状態を再現してみせた。

「行けノルト。余達の恨みを晴らしてくれ」
「任せとけっ!」

 言うなりノルトがロケットの様にリドに襲いかかった。

 アンナがネルソに近づいて顔を上げる。

「なんで、なんでノルトなの?」

 ネルソはアンナの方を見ず、腕を組んでノルトの戦いに視線を送っていた。

「リドを許す事は出来ぬ……が、リドに余達4人がかりでやるのは我らの矜持が許さぬ。でもノルトなら、あの子になら任せられる。余達の想いを受け継ぎ、テスラ達、いやリドに酷い目に遭った全ての者の無念を汲み取り、昇華してくれるだろう」
「……」

 そこまで言われては返す言葉がなかった。


「まさかお前が俺の相手に選ばれるとはな。哀れな奴」

 リドの剣がノルトの頭がある場所を横殴りに斬った。

 が、ノルトは体を沈ませてそれを回避、返す刀で飛び上がり、リドの顎に膝蹴りを見舞う。

 それは見事に命中し、リドの顎が上がる。

 間髪入れず頭上に転移し、落下の速度を利用して肘を顔面に打ち込んだ。

「ぐあっ」

 避けられるかと思いきや、それも見事に命中し、鼻血を垂らしながらヨロヨロと後退した。

(脆すぎる……何かを狙ってるのか?)

 だがそれは違うとすぐにわかった。

 リドの鎧は復元していたが、その下からドクドクと血が流れ出ている事に気付いたからだ。

 それで全てを悟った。

 リドは意識を取り戻したが、リドリリアへ与えたノルトの一撃は完全に治癒してはいなかったのだ。

 治癒の途中でヴィクトリアによってリリアだけが連れ去られてしまった。

 リドはほぼ致命傷であろうその傷を隠し、強気な言葉を吐き、あくまで戦う事を選んだ。

(なら……望み通り、やってやる。お前がいなけりゃロゼルタ達……いやお前にやられた全ての人達や魔族達は今でも幸せに暮らしていた筈なんだからな)

「終わりだ、リド」
「……う、ぐ……」

 剣を支えに何とか体勢を整えたリドを待っていたのは雷のように光が走る霊気オーラを全身に纏い、宙に浮かび、彼を睨み付けるノルトだった。

「リド! お前が殺した全員に謝って来い」
「……ほざけ」

 ノルトは子供の喧嘩の様に思い切り拳を振りかぶり、空中から振り下ろした。

 その拳から再び黄金の霊気オーラが砲撃の様に放たれ、身動き出来ないリドの胸部を撃ち抜いた!


「……見事だノルト」
「逞しく、なったね」

 ネルソとエキドナがそれぞれ独り言のように言った。


 だがそれを受けて尚、リドは倒れなかった。

 目、鼻、口のいずれからも血を噴き出し、その胸には大きな穴が空いているというのにだ。

 ノルトが着地し、ゆっくりとリドに向かって歩く。

 リドはそれを目で追いながらもブツブツと何かを言っていた。

「どうした……こんなもの、か……俺は……覇王……ひざま、ずけ……」

 ノルトは何も言わずにもう一度拳を引いた。

 と同時に、リドの首が宙を舞った。

「!?」

 何が起こったのかわからないノルトの目の前にリドの首は落ち、見開いた目はやがて光を失った。















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