BLちょっと長い短編集

希京

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第2話 ホトトギス

蜃気楼

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先に移住していた若いメンバーが次々に去っていく。
残っているのは伊藤いわく『怖い人間』ばかり。
差別はよくないとわかっていても、やはり目の当たりにすると怖い。

「お疲れ様です!」
それでも佐伯は各現場を回って、ドリンクなどを配って交流を持とうとした。

「おお兄ちゃん、いつもありがとな」
親方がひたいの汗を片手で拭いながら佐伯の声に笑顔で答える。
「大学出の兄ちゃんから見たら俺達はヤー公に見えるかもしれんが、仕事は完璧にこなすから安心しな」
日に焼けた肌に和彫の入れ墨。
見た目は怖いが話すとフランクで、なんとなく篠宮を思い出す。

内面は優しくて普通の人とわかるまで、人は見た目で判断するから、街に出ると治安が悪くなったように感じる。

ぽつぽつ開店し始めた女性が接客する飲食店で、親方衆が集まって情報交換している。
「佐々木って若造、何も知らないのか?」
「おたくの現場も佐伯さん経由の仕事だろう?何だか闇を感じるぜ」
「住居はさ、そんな煩雑な手続きはないだろうけど、病院やでかい店は政治家が絡んでんじゃねえのか?」
「おい、酒の席でやめろ」

一瞬でシン、と場の空気が凍る。
「今請け負っているやつだけ片付けて撤収しよう。何もなければ業界好景気だったということで」
お互いぐるりと目を合わせて小さく頷く。あとは酒を飲んでお開きとなった。

ドリンクを配り終わってシェアハウスに戻ると、玄関で数人が揉めていた。
「どうした?」
「佐々木さん、お世話になりました」
大きなかばんを持った連中が頭を下げる。

「君たちもここを出るの?」
ああ、なんか面倒くさくなってきたなあ。
「じゃ、遅くならないうちに行きな」

何か言われると思っていた連中が呆然とつっ立っている。
彼らを掴んで止めていた山中も、その手を放して佐々木の後を追って中に入っていく。

共有スペースでぽつんと立っている佐々木の後ろ姿に、山中は勢いよく抱きついた。
「すいません!必死に止めたんですがどうしても出ていくって」
「止めなくていい」

長時間太陽に照らされて熱くなった体。
山中をふり切って、汗と一緒に疲労も流してしまおうと思いシャワーを冷水で浴びた。

シャワールームを出ると山中が部屋着とバスタオルを持って立っていた。
「はい、どうぞ。お疲れ様」
俺をいたわろうとする山中の行動になぜか無性に腹がたつ。

「え…?…あ……佐々木さん?」
持ってきた部屋着をはたき落として俺は山中を壁に押しつけて、無理やりキスした。
「…ん……」
困惑していた瞳をゆっくり閉じて、お互いを貪る。
唇が離れたときには山中は自力で立つことが出来ないくらい体の力が抜けていた。


俺はまだ全裸だった。山中のジーンズに手を入れると欲望がそそり立っている。
「この淫乱」
後ろを向かせてジーンズを脱がして、ほぐすことなく一気に中に入れた。
「な…に……あぁ……っ…う…ん…」
逃げ道を探すように山中の指が壁を這っている。
「イヤか?」
「……」
まぶたに涙を浮かべて山中は弱々しく首をふった。
「いい子だ」
「さ…さき…さ…ん……」
密閉された空間にグチュグチュと卑猥な音が響く。
「熱…い……あ…つ………」
朦朧としている山中は、絶頂に達して意識を失った。

その夜、シェアハウスを巨大な炎が襲った。
山奥の道を緊急車両が苦戦して向かうが、巨大な炎は壁のようになって行く手を阻んだ。



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