9 / 19
第2話 ホトトギス
蜃気楼
しおりを挟む
先に移住していた若いメンバーが次々に去っていく。
残っているのは伊藤いわく『怖い人間』ばかり。
差別はよくないとわかっていても、やはり目の当たりにすると怖い。
「お疲れ様です!」
それでも佐伯は各現場を回って、ドリンクなどを配って交流を持とうとした。
「おお兄ちゃん、いつもありがとな」
親方がひたいの汗を片手で拭いながら佐伯の声に笑顔で答える。
「大学出の兄ちゃんから見たら俺達はヤー公に見えるかもしれんが、仕事は完璧にこなすから安心しな」
日に焼けた肌に和彫の入れ墨。
見た目は怖いが話すとフランクで、なんとなく篠宮を思い出す。
内面は優しくて普通の人とわかるまで、人は見た目で判断するから、街に出ると治安が悪くなったように感じる。
ぽつぽつ開店し始めた女性が接客する飲食店で、親方衆が集まって情報交換している。
「佐々木って若造、何も知らないのか?」
「おたくの現場も佐伯さん経由の仕事だろう?何だか闇を感じるぜ」
「住居はさ、そんな煩雑な手続きはないだろうけど、病院やでかい店は政治家が絡んでんじゃねえのか?」
「おい、酒の席でやめろ」
一瞬でシン、と場の空気が凍る。
「今請け負っているやつだけ片付けて撤収しよう。何もなければ業界好景気だったということで」
お互いぐるりと目を合わせて小さく頷く。あとは酒を飲んでお開きとなった。
ドリンクを配り終わってシェアハウスに戻ると、玄関で数人が揉めていた。
「どうした?」
「佐々木さん、お世話になりました」
大きなかばんを持った連中が頭を下げる。
「君たちもここを出るの?」
ああ、なんか面倒くさくなってきたなあ。
「じゃ、遅くならないうちに行きな」
何か言われると思っていた連中が呆然とつっ立っている。
彼らを掴んで止めていた山中も、その手を放して佐々木の後を追って中に入っていく。
共有スペースでぽつんと立っている佐々木の後ろ姿に、山中は勢いよく抱きついた。
「すいません!必死に止めたんですがどうしても出ていくって」
「止めなくていい」
長時間太陽に照らされて熱くなった体。
山中をふり切って、汗と一緒に疲労も流してしまおうと思いシャワーを冷水で浴びた。
シャワールームを出ると山中が部屋着とバスタオルを持って立っていた。
「はい、どうぞ。お疲れ様」
俺をいたわろうとする山中の行動になぜか無性に腹がたつ。
「え…?…あ……佐々木さん?」
持ってきた部屋着をはたき落として俺は山中を壁に押しつけて、無理やりキスした。
「…ん……」
困惑していた瞳をゆっくり閉じて、お互いを貪る。
唇が離れたときには山中は自力で立つことが出来ないくらい体の力が抜けていた。
俺はまだ全裸だった。山中のジーンズに手を入れると欲望がそそり立っている。
「この淫乱」
後ろを向かせてジーンズを脱がして、ほぐすことなく一気に中に入れた。
「な…に……あぁ……っ…う…ん…」
逃げ道を探すように山中の指が壁を這っている。
「イヤか?」
「……」
まぶたに涙を浮かべて山中は弱々しく首をふった。
「いい子だ」
「さ…さき…さ…ん……」
密閉された空間にグチュグチュと卑猥な音が響く。
「熱…い……あ…つ………」
朦朧としている山中は、絶頂に達して意識を失った。
その夜、シェアハウスを巨大な炎が襲った。
山奥の道を緊急車両が苦戦して向かうが、巨大な炎は壁のようになって行く手を阻んだ。
残っているのは伊藤いわく『怖い人間』ばかり。
差別はよくないとわかっていても、やはり目の当たりにすると怖い。
「お疲れ様です!」
それでも佐伯は各現場を回って、ドリンクなどを配って交流を持とうとした。
「おお兄ちゃん、いつもありがとな」
親方がひたいの汗を片手で拭いながら佐伯の声に笑顔で答える。
「大学出の兄ちゃんから見たら俺達はヤー公に見えるかもしれんが、仕事は完璧にこなすから安心しな」
日に焼けた肌に和彫の入れ墨。
見た目は怖いが話すとフランクで、なんとなく篠宮を思い出す。
内面は優しくて普通の人とわかるまで、人は見た目で判断するから、街に出ると治安が悪くなったように感じる。
ぽつぽつ開店し始めた女性が接客する飲食店で、親方衆が集まって情報交換している。
「佐々木って若造、何も知らないのか?」
「おたくの現場も佐伯さん経由の仕事だろう?何だか闇を感じるぜ」
「住居はさ、そんな煩雑な手続きはないだろうけど、病院やでかい店は政治家が絡んでんじゃねえのか?」
「おい、酒の席でやめろ」
一瞬でシン、と場の空気が凍る。
「今請け負っているやつだけ片付けて撤収しよう。何もなければ業界好景気だったということで」
お互いぐるりと目を合わせて小さく頷く。あとは酒を飲んでお開きとなった。
ドリンクを配り終わってシェアハウスに戻ると、玄関で数人が揉めていた。
「どうした?」
「佐々木さん、お世話になりました」
大きなかばんを持った連中が頭を下げる。
「君たちもここを出るの?」
ああ、なんか面倒くさくなってきたなあ。
「じゃ、遅くならないうちに行きな」
何か言われると思っていた連中が呆然とつっ立っている。
彼らを掴んで止めていた山中も、その手を放して佐々木の後を追って中に入っていく。
共有スペースでぽつんと立っている佐々木の後ろ姿に、山中は勢いよく抱きついた。
「すいません!必死に止めたんですがどうしても出ていくって」
「止めなくていい」
長時間太陽に照らされて熱くなった体。
山中をふり切って、汗と一緒に疲労も流してしまおうと思いシャワーを冷水で浴びた。
シャワールームを出ると山中が部屋着とバスタオルを持って立っていた。
「はい、どうぞ。お疲れ様」
俺をいたわろうとする山中の行動になぜか無性に腹がたつ。
「え…?…あ……佐々木さん?」
持ってきた部屋着をはたき落として俺は山中を壁に押しつけて、無理やりキスした。
「…ん……」
困惑していた瞳をゆっくり閉じて、お互いを貪る。
唇が離れたときには山中は自力で立つことが出来ないくらい体の力が抜けていた。
俺はまだ全裸だった。山中のジーンズに手を入れると欲望がそそり立っている。
「この淫乱」
後ろを向かせてジーンズを脱がして、ほぐすことなく一気に中に入れた。
「な…に……あぁ……っ…う…ん…」
逃げ道を探すように山中の指が壁を這っている。
「イヤか?」
「……」
まぶたに涙を浮かべて山中は弱々しく首をふった。
「いい子だ」
「さ…さき…さ…ん……」
密閉された空間にグチュグチュと卑猥な音が響く。
「熱…い……あ…つ………」
朦朧としている山中は、絶頂に達して意識を失った。
その夜、シェアハウスを巨大な炎が襲った。
山奥の道を緊急車両が苦戦して向かうが、巨大な炎は壁のようになって行く手を阻んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる