2 / 11
オークション
しおりを挟む
「それではご自由にご鑑賞ください」
長い挨拶の後男がそう締めくくって、待ちかねたように集まっていた大人たちが席を立つ。
挨拶の間おのおの目をつけていたと思われる『商品』に近づいて『商談』が行われていた。
よく見るとお兄さんたちはほぼ下着姿で、急に連れてこられたせいか僕は夏の制服のブレザーを着たままだった。
僕はどうしたらいいんだろう。
塾を無断で休んでしまった。
親にも連絡が行っているだろうし、帰って怒られるのが怖い。
というか、ここはどこで何が行われているのかわからない。
「おい、君、ぼーっとしてないで買われるようにせめて笑顔で立ってろ。誰にも買われなかったら処分されるぞ」
急に背後から声をかけられて恐る恐る振り向くと、スーツを着崩して黒髪をラフに後ろに流している、さっきの男の人と少し似ている雰囲気の人が立っていた。
「君、年は?」
「…12」
「は!?」
何だろう。僕なにか怒られることしたのかな。
怖くなって体中にぎゅっと力が入る。
男はふう、とため息をついた。
「ここは人を買うイベントで、俺は客、キミは商品だ」
「…は?」
今度は僕が声を上げる番だった。
「まあ座りな」
男は無人の円形テーブルの椅子を引いて座って足を組んだ。
僕は離れた席におずおずと座る。
「家に帰りたい」
帰りたくないけど、ここにいるのは危ないということはわかった。
「俺がキミを買った程にしてここから連れ出してやる。工藤のやつついに年齢無視して人集めし始めたな、まったく…」
工藤、さっき名前を聞いたような気がする。
目の前のおじさん…、いや男の人は、乱暴にお酒の瓶を取り上げて、ふたつのグラスに注いでひとつを僕のほうに押しやった。
「飲まなきゃやってられない状況になるぞ。一口でもいいから飲んどけ」
ジンジャーエールみたいな色をしたそれを、少しだけ飲んでみる。
甘くて、苦い。
「おい、工藤」
おじさんがさっきの男の人を呼んだ。
「お前まさかこの子買う気か?ついにそこまで行ったか…」
「うるさいな。いくらだ」
そのあたりまで聞こえていた気がする。
また気を失って、次の記憶は大きな屋敷の門の前まで来ている車内から始まった。
長い挨拶の後男がそう締めくくって、待ちかねたように集まっていた大人たちが席を立つ。
挨拶の間おのおの目をつけていたと思われる『商品』に近づいて『商談』が行われていた。
よく見るとお兄さんたちはほぼ下着姿で、急に連れてこられたせいか僕は夏の制服のブレザーを着たままだった。
僕はどうしたらいいんだろう。
塾を無断で休んでしまった。
親にも連絡が行っているだろうし、帰って怒られるのが怖い。
というか、ここはどこで何が行われているのかわからない。
「おい、君、ぼーっとしてないで買われるようにせめて笑顔で立ってろ。誰にも買われなかったら処分されるぞ」
急に背後から声をかけられて恐る恐る振り向くと、スーツを着崩して黒髪をラフに後ろに流している、さっきの男の人と少し似ている雰囲気の人が立っていた。
「君、年は?」
「…12」
「は!?」
何だろう。僕なにか怒られることしたのかな。
怖くなって体中にぎゅっと力が入る。
男はふう、とため息をついた。
「ここは人を買うイベントで、俺は客、キミは商品だ」
「…は?」
今度は僕が声を上げる番だった。
「まあ座りな」
男は無人の円形テーブルの椅子を引いて座って足を組んだ。
僕は離れた席におずおずと座る。
「家に帰りたい」
帰りたくないけど、ここにいるのは危ないということはわかった。
「俺がキミを買った程にしてここから連れ出してやる。工藤のやつついに年齢無視して人集めし始めたな、まったく…」
工藤、さっき名前を聞いたような気がする。
目の前のおじさん…、いや男の人は、乱暴にお酒の瓶を取り上げて、ふたつのグラスに注いでひとつを僕のほうに押しやった。
「飲まなきゃやってられない状況になるぞ。一口でもいいから飲んどけ」
ジンジャーエールみたいな色をしたそれを、少しだけ飲んでみる。
甘くて、苦い。
「おい、工藤」
おじさんがさっきの男の人を呼んだ。
「お前まさかこの子買う気か?ついにそこまで行ったか…」
「うるさいな。いくらだ」
そのあたりまで聞こえていた気がする。
また気を失って、次の記憶は大きな屋敷の門の前まで来ている車内から始まった。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる