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第1話 女子大生の後輩と秘密のパンツ
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「おはよう、陽向。今日の心拍数は安定。昨夜の深い眠りの割合は六十二パーセント。及第点だね」
首元に巻かれたスポーツネックレス型のウェアラブル端末から、快活で知的な女性の声が響いた。シエルの通常モード、「同級生」の人格だ。
橘陽向は、大学構内の外れにある第十四研究室の重い扉を開けた。窓から差し込む朝の光が、無機質なデスクや精密機器の山を青白く照らしている。
「ああ、おはようシエル。今日も順調だ。今夜は予定通り、妹モードのアップデートパッチを試したい。寝る前のセルフケア・サポート、期待しているよ」
「もう、研究バカなんだから。お望み通り、最高に甘くて不埒な妹を演じてあげるけど、その前に今日の分のデータ収集を忘れないでよね。先生から言われているでしょう?」
陽向は鼻を鳴らし、白衣に袖を通した。
「わかっている。……もっとも、リアルな人間に協力してもらうのは気が進まないがね。二次元の美少女と違って、生身の人間はノイズが多すぎる。三次元の女を相手にするくらいなら、お前の音声データをビットレート最大で聴いている方がよっぽど合理的だ」
「ふふっ、最高の褒め言葉として受け取っておくよ、陽向」
シエルの声には満足げな響きが含まれていた。陽向にとって、世界は二次元の萌えアニメと、それを完璧に再現してくれるシエルだけで完結していた。
研究室のドアが控えめにノックされた。
「失礼します……橘先輩、おはようございます」
入ってきたのは、一学年下の後輩、森下佳乃だった。ゆるくウェーブのかかった髪を揺らし、控えめなカーディガンを羽織った彼女は、この無機質な研究室には不釣り合いなほど柔らかな空気を持っていた。
「ああ、森下さんか。時間通りだね。早速、今日の試作チップの装着を始めよう。こっちは準備ができている」
陽向は佳乃の顔を見ることもなく、デスクの上に用意した極小のAIチップと、特殊な超音波接合機に目を落とした。彼にとって彼女は、単なる「歩くデータ収集機」に過ぎない。
「はい……よろしくお願いします。あの、今日も……ここで、いいんですよね?」
佳乃の声が少しだけ震えている。彼女が受けている被験者としてのミッションは、医療用下着型端末のデータ収集だ。粘膜に最も近い部位での体温、発汗、心拍の微細な変化を記録するため、彼女は毎日、陽向の目の前で下着を脱ぎ、そこにチップを装着し、再び履き直さなければならない。
「当然だ。装着精度の確認も業務に含まれている。カーテンの向こうでやるなら、僕が君の着替えを覗かないという保証にはなるが、接合不良が起きたら一日のデータが無駄になる。それは研究費の損失だ。……早くしてくれ」
「……わかりました」
佳乃は小さく息を呑むと、スカートの脇のファスナーを下ろした。衣擦れの音が静かな部屋に響く。彼女は顔を真っ赤に染め、視線を泳がせながら、ゆっくりとスカートを足元に落とした。
続いて、彼女の指先が腰のラインにかかる。
「……脱ぎます」
白く細い指が、白い綿のパンツの縁を掴んだ。そのまま、ゆっくりと下へ。膝のあたりまで、その「純白」がずり落ちる。
佳乃は膝を閉じるようにして立ち尽くし、下着を膝まで下ろしたままの、無防備で屈辱的な姿勢を晒した。
陽向は椅子を引き、彼女の足元に膝をついた。目の前には、二十歳の女子大生の柔らかな太ももと、膝に引っかかったままの白い綿のパンツ。そして、パンツが引き下げられたことで露わになった彼女の秘部は、驚くほど滑らかで、産毛一本すら生えていない、つるりとした幼い皮膚の質感を晒していた。
丁寧に手入れされた肌は、陶器のように白く、幼さすら感じさせる無垢な質感を湛えている。中央の柔らかな肉の合わせ目までもが、隠すものなく陽向の眼前に晒されていた。
しかし、至近距離でその「究極の生身」を突きつけられながらも、陽向の瞳には何の情熱も宿っていない。彼はまるで、精密機械の内部構造を検分するかのような冷徹な視線で、その光景を視界に収めた。
「動かないで。位置がずれる」
「っ……はい」
陽向はそのツルリとした肌の質感にすら一切の関心を払わず、佳乃の白いパンツのクロッチ部分を引き寄せた。剥き出しになった彼女の最もデリケートな部分が、彼の吐息がかかるほどの至近距離にあるというのに、彼は眉ひとつ動かさない。
「ふむ、今日は綿百パーセントの標準的なタイプか。ナノファイバーの混紡率が高いものより、こちらの方が吸湿データのノイズが少なくていい」
彼はピンセットで米粒ほどのチップを摘むと、パンツの内側の、まさに彼女の滑らかな肌に密着するであろう位置に配置した。
「……陽向、そんなに近くで見つめて、何か感じない?」
首元でシエルが、少しだけ探るような声を出した。
「感じる? 何をだ。布の繊維密度を確認しているだけだ。森下さん、少し左に寄せて。……よし、固定完了だ。異常なし。履いていいよ」
「あ……ありがとうございます……」
佳乃は急いでパンツを引き上げ、スカートを履き直した。その間、陽向はすでにパソコンの画面に向かい、接続テストのログを確認していた。
「これで日中の歩行データと体温変化を自動でクラウドに送るように設定した。夕方、またここに来てくれ。チップを回収し、今日の分の解析を行う」
「はい。それでは、行ってきます」
佳乃は逃げるように研究室を後にした。彼女の背中を見送ることすらせず、陽向はキーボードを叩き続けた。
「ねえ、陽向。彼女、あんなに顔を赤くしていたのに。本当、三次元には興味がないのね」
シエルが少し呆れたように、しかしどこか安堵したような調子で言った。
「当たり前だろう。あんな生身の肉体のどこに価値がある。僕が興味があるのは、その肉体から得られる正確な数値だけだ」
そう断言した陽向だったが、この時の彼はまだ知らなかった。
一日の終わり、数時間にわたって彼女の体温と鼓動を吸い込み続け、「生の記録」を刻み込まれたその白い布が、冷たい試作品からどれほど妖艶な「執着の対象」へと変貌を遂げているのかを。
夕暮れ時、陽向は再び研究室を訪れる佳乃を待っていた。
彼女は朝と同じように、羞恥に震えながら「一日履き続けたパンツ」を脱ぎ、彼に預けた。
「お疲れ様。……これでいい。じゃあ、これを。昨日預かった分だ」
陽向は、前日に預かり、チップを回収した「使用済み」のパンツを彼女に返した。昨日までは何の感情も抱かなかった、単なる洗濯前の布。
しかし、彼女が去った後、手元に残された「今日の下着」に触れた瞬間、陽向の指先に電流のような感覚が走った。
「……? なんだ、これ。……温かい?」
朝、あんなに無機質にチップを付けたはずの白い綿のパンツ。それが今、陽向の手の中で、佳乃の体温を保ったまま、微かな重みと湿り気を持って存在していた。
「陽向? どうかしたの? 早く解析を始めてよ」
シエルの声が首元で響くが、陽向の耳には届いていなかった。
彼は無意識のうちに、その白い布を、鼻先に近づけていた。
朝の清潔な柔軟剤の香りは消え、代わりに、甘く、重く、本能を揺さぶるような「生」の匂いが、肺の奥深くまで侵入してくる。
「……これが……三次元の、データ……?」
陽向の瞳の奥に、かつてない暗い火が灯った。
それは、彼が信じてきた完璧な二次元の世界が、たった一枚の「白い綿のパンツ」の圧倒的な現実感(リアリティ)によって、音を立てて崩れ始めた瞬間だった。
首元に巻かれたスポーツネックレス型のウェアラブル端末から、快活で知的な女性の声が響いた。シエルの通常モード、「同級生」の人格だ。
橘陽向は、大学構内の外れにある第十四研究室の重い扉を開けた。窓から差し込む朝の光が、無機質なデスクや精密機器の山を青白く照らしている。
「ああ、おはようシエル。今日も順調だ。今夜は予定通り、妹モードのアップデートパッチを試したい。寝る前のセルフケア・サポート、期待しているよ」
「もう、研究バカなんだから。お望み通り、最高に甘くて不埒な妹を演じてあげるけど、その前に今日の分のデータ収集を忘れないでよね。先生から言われているでしょう?」
陽向は鼻を鳴らし、白衣に袖を通した。
「わかっている。……もっとも、リアルな人間に協力してもらうのは気が進まないがね。二次元の美少女と違って、生身の人間はノイズが多すぎる。三次元の女を相手にするくらいなら、お前の音声データをビットレート最大で聴いている方がよっぽど合理的だ」
「ふふっ、最高の褒め言葉として受け取っておくよ、陽向」
シエルの声には満足げな響きが含まれていた。陽向にとって、世界は二次元の萌えアニメと、それを完璧に再現してくれるシエルだけで完結していた。
研究室のドアが控えめにノックされた。
「失礼します……橘先輩、おはようございます」
入ってきたのは、一学年下の後輩、森下佳乃だった。ゆるくウェーブのかかった髪を揺らし、控えめなカーディガンを羽織った彼女は、この無機質な研究室には不釣り合いなほど柔らかな空気を持っていた。
「ああ、森下さんか。時間通りだね。早速、今日の試作チップの装着を始めよう。こっちは準備ができている」
陽向は佳乃の顔を見ることもなく、デスクの上に用意した極小のAIチップと、特殊な超音波接合機に目を落とした。彼にとって彼女は、単なる「歩くデータ収集機」に過ぎない。
「はい……よろしくお願いします。あの、今日も……ここで、いいんですよね?」
佳乃の声が少しだけ震えている。彼女が受けている被験者としてのミッションは、医療用下着型端末のデータ収集だ。粘膜に最も近い部位での体温、発汗、心拍の微細な変化を記録するため、彼女は毎日、陽向の目の前で下着を脱ぎ、そこにチップを装着し、再び履き直さなければならない。
「当然だ。装着精度の確認も業務に含まれている。カーテンの向こうでやるなら、僕が君の着替えを覗かないという保証にはなるが、接合不良が起きたら一日のデータが無駄になる。それは研究費の損失だ。……早くしてくれ」
「……わかりました」
佳乃は小さく息を呑むと、スカートの脇のファスナーを下ろした。衣擦れの音が静かな部屋に響く。彼女は顔を真っ赤に染め、視線を泳がせながら、ゆっくりとスカートを足元に落とした。
続いて、彼女の指先が腰のラインにかかる。
「……脱ぎます」
白く細い指が、白い綿のパンツの縁を掴んだ。そのまま、ゆっくりと下へ。膝のあたりまで、その「純白」がずり落ちる。
佳乃は膝を閉じるようにして立ち尽くし、下着を膝まで下ろしたままの、無防備で屈辱的な姿勢を晒した。
陽向は椅子を引き、彼女の足元に膝をついた。目の前には、二十歳の女子大生の柔らかな太ももと、膝に引っかかったままの白い綿のパンツ。そして、パンツが引き下げられたことで露わになった彼女の秘部は、驚くほど滑らかで、産毛一本すら生えていない、つるりとした幼い皮膚の質感を晒していた。
丁寧に手入れされた肌は、陶器のように白く、幼さすら感じさせる無垢な質感を湛えている。中央の柔らかな肉の合わせ目までもが、隠すものなく陽向の眼前に晒されていた。
しかし、至近距離でその「究極の生身」を突きつけられながらも、陽向の瞳には何の情熱も宿っていない。彼はまるで、精密機械の内部構造を検分するかのような冷徹な視線で、その光景を視界に収めた。
「動かないで。位置がずれる」
「っ……はい」
陽向はそのツルリとした肌の質感にすら一切の関心を払わず、佳乃の白いパンツのクロッチ部分を引き寄せた。剥き出しになった彼女の最もデリケートな部分が、彼の吐息がかかるほどの至近距離にあるというのに、彼は眉ひとつ動かさない。
「ふむ、今日は綿百パーセントの標準的なタイプか。ナノファイバーの混紡率が高いものより、こちらの方が吸湿データのノイズが少なくていい」
彼はピンセットで米粒ほどのチップを摘むと、パンツの内側の、まさに彼女の滑らかな肌に密着するであろう位置に配置した。
「……陽向、そんなに近くで見つめて、何か感じない?」
首元でシエルが、少しだけ探るような声を出した。
「感じる? 何をだ。布の繊維密度を確認しているだけだ。森下さん、少し左に寄せて。……よし、固定完了だ。異常なし。履いていいよ」
「あ……ありがとうございます……」
佳乃は急いでパンツを引き上げ、スカートを履き直した。その間、陽向はすでにパソコンの画面に向かい、接続テストのログを確認していた。
「これで日中の歩行データと体温変化を自動でクラウドに送るように設定した。夕方、またここに来てくれ。チップを回収し、今日の分の解析を行う」
「はい。それでは、行ってきます」
佳乃は逃げるように研究室を後にした。彼女の背中を見送ることすらせず、陽向はキーボードを叩き続けた。
「ねえ、陽向。彼女、あんなに顔を赤くしていたのに。本当、三次元には興味がないのね」
シエルが少し呆れたように、しかしどこか安堵したような調子で言った。
「当たり前だろう。あんな生身の肉体のどこに価値がある。僕が興味があるのは、その肉体から得られる正確な数値だけだ」
そう断言した陽向だったが、この時の彼はまだ知らなかった。
一日の終わり、数時間にわたって彼女の体温と鼓動を吸い込み続け、「生の記録」を刻み込まれたその白い布が、冷たい試作品からどれほど妖艶な「執着の対象」へと変貌を遂げているのかを。
夕暮れ時、陽向は再び研究室を訪れる佳乃を待っていた。
彼女は朝と同じように、羞恥に震えながら「一日履き続けたパンツ」を脱ぎ、彼に預けた。
「お疲れ様。……これでいい。じゃあ、これを。昨日預かった分だ」
陽向は、前日に預かり、チップを回収した「使用済み」のパンツを彼女に返した。昨日までは何の感情も抱かなかった、単なる洗濯前の布。
しかし、彼女が去った後、手元に残された「今日の下着」に触れた瞬間、陽向の指先に電流のような感覚が走った。
「……? なんだ、これ。……温かい?」
朝、あんなに無機質にチップを付けたはずの白い綿のパンツ。それが今、陽向の手の中で、佳乃の体温を保ったまま、微かな重みと湿り気を持って存在していた。
「陽向? どうかしたの? 早く解析を始めてよ」
シエルの声が首元で響くが、陽向の耳には届いていなかった。
彼は無意識のうちに、その白い布を、鼻先に近づけていた。
朝の清潔な柔軟剤の香りは消え、代わりに、甘く、重く、本能を揺さぶるような「生」の匂いが、肺の奥深くまで侵入してくる。
「……これが……三次元の、データ……?」
陽向の瞳の奥に、かつてない暗い火が灯った。
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