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3魔導騎士団
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また新しい変態さんが出てきましたね。一応補足ですが、幼馴染のルシエスさんはユトとは三角関係とかにはなりません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
卵から魔獣が生まれたなんて誰が信じるというんだ。オレだってまだ信じてない。
魔獣王ロギアと名乗る変態を連れてオレは、孤児院の院長室を訪れた。途中早起きした子供達がチラホラと柱から覗いていた。
「院長先生」
「おや、おはようございます。ユト」
薄茶の柔らかな髪に、同じ色の瞳の穏やかそうな顔の40歳手前のこの男性こそ、孤児院の院長サライ・レイフォード。本人はまだ30代ですとこっそり主張しているけど。
院長はニコニコしながらオレの後ろの変態を見つめていた。
「後ろの変態はユトのストーカーですか?」
「はい、そうです」
「おい、違うだろう」
「冗談ですよ。ユトの腕の痣を見ればなんとなく察せます。昨夜は賊にでも襲われてその方に助けて頂いたのでしょう?」
「ウッ・・・鋭い」
「・・・腕は痛みますか」
「この程度ならすぐ治ります、大丈夫です」
先生はおっとりしてる雰囲気があるけど、案外鋭い。人の気持ちを察する事が出来るし、少しの変化も読み取る。神様みたいな人だ。
立ち上がると深くロギアに礼をした。
「あぁ、そうだった。先生、こっちの人はロギアって言って・・・・異国の冒険者です」
苦し紛れのウソだけど、人は傷付けてないからセーフだろう。
「孤児院の院長をしております、サライです。家の子が世話になったようですね。感謝します」
「うむ、私の愛し子を育てた事大儀であった」
「なんでお前が偉そうなんだ。というか愛し子って何だよ」
「ユトは私の寵愛を受けているからな。私のモノなのだから当然だ」
「昨日会ったばかりだろう。どこら辺に惹かれる要素があったのか全く理解できないんだけど。オレ、見ての通り平凡モブ並みの容姿だし」
「何を言ってるんだユトは魔族よりも勇敢で魔獣よりも美しいぞ」
「何言ってるんですかユトは神族よりも尊く精霊よりも清いのです」
・・・・なんで会ったばかりなのに二人とも意気投合してるんだ。あとオレを美化し過ぎ。
「二人とも目が腐ってるんだな、かわいそうに」
「視力なら山の向こうまで見えるぞ」
「私も正常です。ここ最近は医者要らずです」
「・・・・うん、まぁこの話は置いといて。先生、ロギアをしばらくここに置いていいですか?タダ飯は食わせないし、ちゃんと孤児院の手伝いもさせますから」
「それは構いませんが」
「ロギア、ちゃんと大人しくしてるんだぞ」
「私はいつも冷静だ。それより私も騎士団とやらに着いて行っていいか?」
「それはダメだ。お前みたいな人間離れした美形連れてってたら街が大騒ぎだ。そもそも騎士団は許可がないと入れないし、身元不明じゃ門前払いだな」
「なるほど。ユトが私の容姿を気に入ったのは良い事だ」
「人の話を聞け」
ロギアが例えば本当に魔獣王なら、この自信満々で自分に都合よく解釈する性格は魔王に違いないなとオレは思った。
「あ、こんな事してる場合じゃなかった!騎士宿舎に行かないと」
「宿舎・・・そこがユトの仕事場なのだな」
「下っ端は宿舎の仕事するのが決まりだからな。先生、すみませんがロギアの事お願いします」
「ええ。気を付けて行っておいで」
「ユト、ちょっと待て」
「なに?・・・・うぶっ!?」
オレの手を掴んだかと思うと、突然逞しい身体に抱き締められた。ちょっと待て、息できないから離してくれ馬鹿力め。
バタバタと手でロギアの身体を叩くと、それに気付いて離してくれた。
「ぷはっ!・・・はぁはぁ・・・お前は恩人を殺す気か」
「いや、これから私の愛し子が男共の貪欲の坩堝の中へ飲み込まれ慰み物になるかと思うと・・・やはり私が先に・・・」
「黙れ変態」
何の坩堝かは知らないが、そんな不埒な事をオレにしようとする気を起こす輩なぞ騎士団には居ない。女の子にだって告白された事ないのに。あれ・・・オレってガチ目に魅力ない?ちょっと哀しくなってきた。
ブツブツ言ってるロギアを置いて、オレは王都へと出向く事にした。途中廊下で、子供達が「あの大きい人は怪獣?」とか純粋に可愛いこと言うから「変態だから近寄ったらダメだぞ」と釘を差しておいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔導騎士団
皇帝陛下直属の近衛騎士団は、精霊魔法と精霊武器が使え才能ある者しか入団出来ないミスラの最高戦力だ。そこそこの貴族よりも階級は上だ。
と言っても人間より魔物を相手に戦う事が多いけど。そんな雲の上の集団に、平凡な孤児のオレが入団してるなんて本当に今でも夢だと思ってる。
オレの戦力?
剣は何とか使えるようになったし、元々火属性の精霊魔法はそこそこ使えた。たまに暴発してるけど。
そんな事より今日の仕事だ。騎士団の宿舎に着いたオレは、さっそく掃除道具を手に気合いを入れた。まぁ、そういう事だ・・・下っ端の下っ端な見習い騎士のやる事は宿舎の掃除。でもその下積みから上へ行く者だっているんだから、いつかは正式な騎士になれるかもしれない。オレの寿命が尽きる頃には、多分。
「よし!今日も張り切って綺麗にしよう・・・・うわっ!?」
ドンっと何かにぶつかるとオレは尻餅をついた。
「どこの迷子の子供かと思ったら、フレナか」
「・・・・ヒスティア先輩」
朝から最悪だ。ヒスティア男爵家の子息で次期当主。見習い騎士だがオレよりは上。派手さを好み、人を見下すので仲間内からの評判は悪い。特にオレのような平民上がりには、風当たりは強い。
ちなみにオレの姓は騎士団に入って、フレナと名付けられた。
「おいおい、綺麗にする前からさらに汚してどうするんだよ」
「すみません、今すぐに片付けます。今日は取り巻きは居ないんですね」
「ん?まぁ、たまにはな。それより、手伝ってやろうか?」
「いえ、結構です。ヒスティア先輩の綺麗な召し物が汚れますから・・・ッ!」
「遠慮するなよ、そこの部屋で上に行く為のノウハウを教えてやるからよ」
「ぐっ・・・本当に結構ですから・・ぐえっ」
強い力で昨日ケガした腕を捕まれ、一瞬怯んだら近くの部屋に連れ込まれそうになった。このままでは何かヤバい気がする。全力で逃げようとするが、相手の方が力が強かった。
部屋が目前に迫ると、突然腕を離されてオレは床にダイブした。しかも変な声を出して。
「ヒスティア、何をしている」
凛とした覇気のある声・・・まるで天から雷鳴が降ってきたみたいな雄々しさ。
起き上がってその声の主を見上げると、少し短い金の髪に緑の瞳のこれまたどえらい男前な美丈夫が立っていた。キラキラ王子様かよ・・・。
「だ、クォデネンツ団長・・・」
ルシエス・クォデネンツ魔導騎士団長。若干23歳の若さで団長に登り詰めたエリートオブエリート。
その目を見たら妊娠するとか女の子の間で噂になるほどの凛々しい瞳が一瞬オレを見ると、今度は突き刺すような険しい瞳でヒスティア先輩を問いただす。さすがに先輩は戦意喪失だ。目が泳いでいる。
「答えないか、何をしている」
「あ・・・その、こ、転んだフレナを手助けしておりました!」
「・・・そうなのか?ユト・フレナ見習い騎士」
「え、あ~・・・はい、そんな感じです。騎士団長殿」
「・・・・そうか。持ち場に戻れ、ヒスティア」
「は、ハッ!」
ヒスティア先輩はビビリ腰でよろめきながら逃げるように走って行った。
先輩が完全に見えなくなると、団長が手を差し伸べてくれる。優しく起こしてくれると、オレの腕を見て目をしかめた。
「ユト、ケガしてるのか?」
「・・・・一応ここ公共の場だから名前で呼ぶのナシな。ルシエス」
「ふふ、すまない。久しぶりに会えたからな」
「同じ王城努めだけど全く会えないのも不思議だよな」
「全くだ。今度、皇帝陛下にユトを俺付きにしてもらうよう進言しておこう」
「やめてくれ、オレも命は惜しい。お前のファンから暗殺されそうだ」
「なら俺の家の使用人・・・養子でもいいんだぞ。ユトなら歓迎だ」
「オレは貴族になるつもりないから。どうせならその金を孤児院に送ってやってくれ。先生が咽び泣くぞ」
「サライ先生も相変わらずそうだな」
実はオレとルシエスは、孤児院の一緒に育った幼馴染だ。よく二人で探検と院を抜け出して先生に怒られた。ルシエスは元々精霊魔法も剣術も得意で、その才能を見出されて早くに魔導騎士団へ入団した。あっという間に団長になって、本当に凄い奴だ。ちなみにオレを魔導騎士団に推薦したのはルシエスらしい。職権乱用したな、コイツ。
まぁ、幼馴染として誇らしい。ちょっと遠くなった存在みたいで寂しいけどな。
「というか、本当に奇遇だな?おかげで助かった」
「・・・あぁ、まぁ、たまたま通りかかったからな。それより腕のケガは?」
「昨日、山賊に会ってちょっとな」
「山賊!本当に大丈夫なのか!」
「うん?助けてくれた人が居たし。あ、そうだよ聞いてくれよ。昨日王都で怪しい二人組の露店商がさ福引きやってて、魔獣の卵とかウソ付いてくれたんだよね」
「魔獣の卵?」
「あー、それは偽物なんだけど。変な奴等がのさばるのは王都としてかんばしくないから、警備強めて欲しいな。団長特権で♡」
「・・・・・ッ」
オレは気持ち悪いとわかっていながらも、久しぶりの再会に茶目っ気を出してワザとウインクしてやった。
ルシエスは咄嗟に口元を抑えて後ろを向いてしまった。あ、ゴメン。気持ち悪すぎた?
「ルシエス、気持ち悪いことしてゴメン。吐きそう?」
「いや・・・あまりの・・・さに鼻血が出そうで」
「???ティッシュ持って来る?」
「別の事に使いそうだから、いい」
「そうか?」
ルシエス、頭いい癖にちょっとバカなんだな。鼻血が出たら鼻拭くのに、他に何に使うんだ?
「今度非番の日に二人で会わないか?」
「いいけど、団長って忙しいんだろ?休みもぎ取れるのかよ」
「皇帝陛下をもぎってでも、もぎ取る」
「おい、それは怖いだろ」
「約束だ」
「うん、約束だな。気長に待つよ」
「持ち場に戻らないと・・・またな、ユト」
「だから名前で呼ぶな。あぁ、またな、ルシエス」
最後に名残惜しそうにオレの指をそっと掴んだルシエスは、持ち場へと戻って行った。団長は基本的に城の奥だからな。
予期せぬ幼馴染との再会に喜びながら、オレはオレの仕事をする為に持ち場へと向かうのだった。
また新しい変態さんが出てきましたね。一応補足ですが、幼馴染のルシエスさんはユトとは三角関係とかにはなりません。
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卵から魔獣が生まれたなんて誰が信じるというんだ。オレだってまだ信じてない。
魔獣王ロギアと名乗る変態を連れてオレは、孤児院の院長室を訪れた。途中早起きした子供達がチラホラと柱から覗いていた。
「院長先生」
「おや、おはようございます。ユト」
薄茶の柔らかな髪に、同じ色の瞳の穏やかそうな顔の40歳手前のこの男性こそ、孤児院の院長サライ・レイフォード。本人はまだ30代ですとこっそり主張しているけど。
院長はニコニコしながらオレの後ろの変態を見つめていた。
「後ろの変態はユトのストーカーですか?」
「はい、そうです」
「おい、違うだろう」
「冗談ですよ。ユトの腕の痣を見ればなんとなく察せます。昨夜は賊にでも襲われてその方に助けて頂いたのでしょう?」
「ウッ・・・鋭い」
「・・・腕は痛みますか」
「この程度ならすぐ治ります、大丈夫です」
先生はおっとりしてる雰囲気があるけど、案外鋭い。人の気持ちを察する事が出来るし、少しの変化も読み取る。神様みたいな人だ。
立ち上がると深くロギアに礼をした。
「あぁ、そうだった。先生、こっちの人はロギアって言って・・・・異国の冒険者です」
苦し紛れのウソだけど、人は傷付けてないからセーフだろう。
「孤児院の院長をしております、サライです。家の子が世話になったようですね。感謝します」
「うむ、私の愛し子を育てた事大儀であった」
「なんでお前が偉そうなんだ。というか愛し子って何だよ」
「ユトは私の寵愛を受けているからな。私のモノなのだから当然だ」
「昨日会ったばかりだろう。どこら辺に惹かれる要素があったのか全く理解できないんだけど。オレ、見ての通り平凡モブ並みの容姿だし」
「何を言ってるんだユトは魔族よりも勇敢で魔獣よりも美しいぞ」
「何言ってるんですかユトは神族よりも尊く精霊よりも清いのです」
・・・・なんで会ったばかりなのに二人とも意気投合してるんだ。あとオレを美化し過ぎ。
「二人とも目が腐ってるんだな、かわいそうに」
「視力なら山の向こうまで見えるぞ」
「私も正常です。ここ最近は医者要らずです」
「・・・・うん、まぁこの話は置いといて。先生、ロギアをしばらくここに置いていいですか?タダ飯は食わせないし、ちゃんと孤児院の手伝いもさせますから」
「それは構いませんが」
「ロギア、ちゃんと大人しくしてるんだぞ」
「私はいつも冷静だ。それより私も騎士団とやらに着いて行っていいか?」
「それはダメだ。お前みたいな人間離れした美形連れてってたら街が大騒ぎだ。そもそも騎士団は許可がないと入れないし、身元不明じゃ門前払いだな」
「なるほど。ユトが私の容姿を気に入ったのは良い事だ」
「人の話を聞け」
ロギアが例えば本当に魔獣王なら、この自信満々で自分に都合よく解釈する性格は魔王に違いないなとオレは思った。
「あ、こんな事してる場合じゃなかった!騎士宿舎に行かないと」
「宿舎・・・そこがユトの仕事場なのだな」
「下っ端は宿舎の仕事するのが決まりだからな。先生、すみませんがロギアの事お願いします」
「ええ。気を付けて行っておいで」
「ユト、ちょっと待て」
「なに?・・・・うぶっ!?」
オレの手を掴んだかと思うと、突然逞しい身体に抱き締められた。ちょっと待て、息できないから離してくれ馬鹿力め。
バタバタと手でロギアの身体を叩くと、それに気付いて離してくれた。
「ぷはっ!・・・はぁはぁ・・・お前は恩人を殺す気か」
「いや、これから私の愛し子が男共の貪欲の坩堝の中へ飲み込まれ慰み物になるかと思うと・・・やはり私が先に・・・」
「黙れ変態」
何の坩堝かは知らないが、そんな不埒な事をオレにしようとする気を起こす輩なぞ騎士団には居ない。女の子にだって告白された事ないのに。あれ・・・オレってガチ目に魅力ない?ちょっと哀しくなってきた。
ブツブツ言ってるロギアを置いて、オレは王都へと出向く事にした。途中廊下で、子供達が「あの大きい人は怪獣?」とか純粋に可愛いこと言うから「変態だから近寄ったらダメだぞ」と釘を差しておいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔導騎士団
皇帝陛下直属の近衛騎士団は、精霊魔法と精霊武器が使え才能ある者しか入団出来ないミスラの最高戦力だ。そこそこの貴族よりも階級は上だ。
と言っても人間より魔物を相手に戦う事が多いけど。そんな雲の上の集団に、平凡な孤児のオレが入団してるなんて本当に今でも夢だと思ってる。
オレの戦力?
剣は何とか使えるようになったし、元々火属性の精霊魔法はそこそこ使えた。たまに暴発してるけど。
そんな事より今日の仕事だ。騎士団の宿舎に着いたオレは、さっそく掃除道具を手に気合いを入れた。まぁ、そういう事だ・・・下っ端の下っ端な見習い騎士のやる事は宿舎の掃除。でもその下積みから上へ行く者だっているんだから、いつかは正式な騎士になれるかもしれない。オレの寿命が尽きる頃には、多分。
「よし!今日も張り切って綺麗にしよう・・・・うわっ!?」
ドンっと何かにぶつかるとオレは尻餅をついた。
「どこの迷子の子供かと思ったら、フレナか」
「・・・・ヒスティア先輩」
朝から最悪だ。ヒスティア男爵家の子息で次期当主。見習い騎士だがオレよりは上。派手さを好み、人を見下すので仲間内からの評判は悪い。特にオレのような平民上がりには、風当たりは強い。
ちなみにオレの姓は騎士団に入って、フレナと名付けられた。
「おいおい、綺麗にする前からさらに汚してどうするんだよ」
「すみません、今すぐに片付けます。今日は取り巻きは居ないんですね」
「ん?まぁ、たまにはな。それより、手伝ってやろうか?」
「いえ、結構です。ヒスティア先輩の綺麗な召し物が汚れますから・・・ッ!」
「遠慮するなよ、そこの部屋で上に行く為のノウハウを教えてやるからよ」
「ぐっ・・・本当に結構ですから・・ぐえっ」
強い力で昨日ケガした腕を捕まれ、一瞬怯んだら近くの部屋に連れ込まれそうになった。このままでは何かヤバい気がする。全力で逃げようとするが、相手の方が力が強かった。
部屋が目前に迫ると、突然腕を離されてオレは床にダイブした。しかも変な声を出して。
「ヒスティア、何をしている」
凛とした覇気のある声・・・まるで天から雷鳴が降ってきたみたいな雄々しさ。
起き上がってその声の主を見上げると、少し短い金の髪に緑の瞳のこれまたどえらい男前な美丈夫が立っていた。キラキラ王子様かよ・・・。
「だ、クォデネンツ団長・・・」
ルシエス・クォデネンツ魔導騎士団長。若干23歳の若さで団長に登り詰めたエリートオブエリート。
その目を見たら妊娠するとか女の子の間で噂になるほどの凛々しい瞳が一瞬オレを見ると、今度は突き刺すような険しい瞳でヒスティア先輩を問いただす。さすがに先輩は戦意喪失だ。目が泳いでいる。
「答えないか、何をしている」
「あ・・・その、こ、転んだフレナを手助けしておりました!」
「・・・そうなのか?ユト・フレナ見習い騎士」
「え、あ~・・・はい、そんな感じです。騎士団長殿」
「・・・・そうか。持ち場に戻れ、ヒスティア」
「は、ハッ!」
ヒスティア先輩はビビリ腰でよろめきながら逃げるように走って行った。
先輩が完全に見えなくなると、団長が手を差し伸べてくれる。優しく起こしてくれると、オレの腕を見て目をしかめた。
「ユト、ケガしてるのか?」
「・・・・一応ここ公共の場だから名前で呼ぶのナシな。ルシエス」
「ふふ、すまない。久しぶりに会えたからな」
「同じ王城努めだけど全く会えないのも不思議だよな」
「全くだ。今度、皇帝陛下にユトを俺付きにしてもらうよう進言しておこう」
「やめてくれ、オレも命は惜しい。お前のファンから暗殺されそうだ」
「なら俺の家の使用人・・・養子でもいいんだぞ。ユトなら歓迎だ」
「オレは貴族になるつもりないから。どうせならその金を孤児院に送ってやってくれ。先生が咽び泣くぞ」
「サライ先生も相変わらずそうだな」
実はオレとルシエスは、孤児院の一緒に育った幼馴染だ。よく二人で探検と院を抜け出して先生に怒られた。ルシエスは元々精霊魔法も剣術も得意で、その才能を見出されて早くに魔導騎士団へ入団した。あっという間に団長になって、本当に凄い奴だ。ちなみにオレを魔導騎士団に推薦したのはルシエスらしい。職権乱用したな、コイツ。
まぁ、幼馴染として誇らしい。ちょっと遠くなった存在みたいで寂しいけどな。
「というか、本当に奇遇だな?おかげで助かった」
「・・・あぁ、まぁ、たまたま通りかかったからな。それより腕のケガは?」
「昨日、山賊に会ってちょっとな」
「山賊!本当に大丈夫なのか!」
「うん?助けてくれた人が居たし。あ、そうだよ聞いてくれよ。昨日王都で怪しい二人組の露店商がさ福引きやってて、魔獣の卵とかウソ付いてくれたんだよね」
「魔獣の卵?」
「あー、それは偽物なんだけど。変な奴等がのさばるのは王都としてかんばしくないから、警備強めて欲しいな。団長特権で♡」
「・・・・・ッ」
オレは気持ち悪いとわかっていながらも、久しぶりの再会に茶目っ気を出してワザとウインクしてやった。
ルシエスは咄嗟に口元を抑えて後ろを向いてしまった。あ、ゴメン。気持ち悪すぎた?
「ルシエス、気持ち悪いことしてゴメン。吐きそう?」
「いや・・・あまりの・・・さに鼻血が出そうで」
「???ティッシュ持って来る?」
「別の事に使いそうだから、いい」
「そうか?」
ルシエス、頭いい癖にちょっとバカなんだな。鼻血が出たら鼻拭くのに、他に何に使うんだ?
「今度非番の日に二人で会わないか?」
「いいけど、団長って忙しいんだろ?休みもぎ取れるのかよ」
「皇帝陛下をもぎってでも、もぎ取る」
「おい、それは怖いだろ」
「約束だ」
「うん、約束だな。気長に待つよ」
「持ち場に戻らないと・・・またな、ユト」
「だから名前で呼ぶな。あぁ、またな、ルシエス」
最後に名残惜しそうにオレの指をそっと掴んだルシエスは、持ち場へと戻って行った。団長は基本的に城の奥だからな。
予期せぬ幼馴染との再会に喜びながら、オレはオレの仕事をする為に持ち場へと向かうのだった。
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