福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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4 でしゅとの再会

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 今日の騎士見習いとしての務めを果たし、帰宅したオレはオレの目を疑った。いや、何バカな事言ってるんだって思われるかもしれないけど疑うしかない目の前の光景。


「ロギアが普通の服着てる・・・」


 ロギアが高級そうなスーツをビシッと着込んで、テーブルで優雅に多分紅茶飲んでる。オレの帰宅に気付くと立ち上がり、両手を広げて歩いて来た。


「うわっ」
「ユト!待ちわびた・・・」


 でもロギアの腕はオレに届く前に間に入った誰かに遮られた。お盆でな。


「我が王に触れるな、下賎な人間め」


うん??????どちら様?????
 

 これまたすごい美少年が目の前に。肩まで切り揃えた灰色の髪に、神秘的な紫の瞳。歳は15、6歳くらいかな?睨んだ顔でも美少年だ。


「あの・・・」
「このお方は人間ごときが軽々しく触れられないほど尊き存在!本来なら同じ空間で息を共有するのもおこがましいのだ!」
「・・・・ロギア、いつからそんなに偉くなったんだ?」
「アラデア、私の愛し子に無体を働くのはやめろ」
「しかしロギア様!」
「・・・アラデア」
「ッ!!!も、申し訳ありません」


 ほうほう、この美少年はアラデア君と言うのか。するとオレより下の方から、別の声が聞こえてきた。


「ごめんなさいでしゅ。わたくしの弟が失礼な発言をしたでしゅ」
「・・・・でしゅ?」


でしゅ


 どこかで聞いた口調だと声の主を見下ろすと、子供の身長ほどの二足歩行のタヌキのような茶色いふわふわの生き物が紫のつぶらな瞳で見上げていた。
 オレは秒速でそのタヌキを抱きしめていた。


「可愛すぎるだろがーーーー!!!」
「ぎゃーーーーーーでしゅ~!!!」
「ユト!私より先に他の男を抱き締めるな!」
「兄さーーーーーん!!!おのれ野蛮な正体をついに現したな人間!!!」


 その後、なんか4人でもみくちゃになってたらさすがに先生に怒られた。
 気を取り直して椅子に座るが、当然のようにロギアがオレの隣に座って肩を抱いてきた。アラデア君がオレのこと瞬殺しそうな顔で見てるから、ヤメロ。


「取り乱して悪かったな、タヌキ君」
「わたくしは、ウルベルと申しますでしゅ。魔獣王ロギア様の忠実な下僕でしゅ」
「ウルベル君か、うんうん。可愛い忠誠心だな」
「おい!兄さんの話をちゃんと聞け!」
「あー・・・アラデア君?だっけ?ウルベル君と種族的に似てないよね。義兄弟?」
「失礼な!ちゃんと血は繋がっている。同じ姿で生まれるとは限らないのだ、僕等はな」
「なるほど・・・・って、普通にロギアの配下って暴露したけどいいの?魔族だよな?」
「魔族と聞いてもっと驚かないのか」
「いや、魔族だからって別に何か今すぐするとかないだろ?そんな気があったらオレはこの部屋に入る前に死んでるよ」
「・・・・・」


 どうやら可愛いタヌキのウルベル君と、ヒステリック美少年アラデア君は兄弟で魔族らしい。まぁ停戦協定中の世の中だから、人間の国に訪れる魔族は最近じゃ珍しくもない。
 それより一番大問題なのは、ロギアが本物の魔獣王かもしれない事だった。


「えっと・・・どこから聞けばいいの?ロギアが魔族なのは知ってるけど、そんなに大事な王様を福引きの景品にしてたわけ?」
「500年前勇者に倒されてしまったロギア様を見つけた時、すでにその御身は卵に封印されていた。魔族による仕業ではないようで解呪出来なかったから、人間に悟られないよう匿っていたのだ。だがロギア様が自力の復活の気配を感じ、さらに魔力を蓄えようと波長の合う手頃な魔導士を探していた。魔力に富んだミスラならちょうどと思い、福引きを餌に見つけたのがお前だ」
「それで魔王様景品なのもどうかと思うぞ」
「欲深い人間はおまけに弱いからな。というわけで、お前はもう用済みだ。ロギア様の復活の糧になった事をせめてもの手向けに、孤児院に寄付をしてやろう」
「・・・いや、要らない」
「なに?」


 オレは適当に選ばれた上に、ロギアに大事な魔力を吸われてた事になるよな?助けた恩人に仇を返されて素直に喜ぶほど、オレはお気楽ではない。
 そして今までニコニコ黙って話を聞いていた先生も、口を開いた。


「私もお断りです。家の大事な子を危険に晒しただけでなく家畜呼ばわりですか?例え死んでも貴方達魔族の魔力全てを差し出して大事な御身とやらを救えばよかったのではないですか?人間を頼っている時点で貴方達が我々を見下す行為をしている時点でおこがましいにも程がある。お帰りなさい、二度とこの地に足を踏み入れるべきではない」


 先生ーーーーー!!!なんかさらりと毒舌カッコイイ事言ってるぞ!金にちょっとがめついとか思っててごめんなさい!

 さすがに反論出来ないのか、アラデア君はぐっと言葉を飲み込んでいるようだ。ウルベル君なんて涙ぐんで下を向いてしまった。可哀想だけど、可愛い。
 でも先生の毒舌オーラをぶち破るような怒気が部屋を覆った。横を見るとロギアが険悪な顔をしている。


「院長の憤りに返す言葉もないが、私の下僕を侮辱するのはいただけない。全ては私の敗因が原因だ、非は私にある」
「そんな!ロギア様のせいじゃないでしゅ!」
「わ、我が王が人間にへりくだってはいけません!我々の死を持って償いを・・・」


「お前らバカなの?」


一体オレは何を見せつけられているんだ?


「もうさ、その勇者が強かったのは仕方ないけど今はこうして皆再会して生きてるから第二の人生エンジョイすればよくない?人間に復讐したいならすればいいけど、魔導騎士団めちゃくちゃ強いし聖剣も降臨しちゃってるからあんまり勝ち目ないと思う。あと、今の魔王が決めた停戦協定破ったら魔王も敵になるよ?楽しくない第二の人生の始まりだよ?」


 アラデア君とウルベル君は愕然とした顔でオレを見つめた。先生は相変わらずニコニコしてるけど。
 先に場の雰囲気を割ったのは、ロギアだ。オレの頭を抱き寄せると、髪にキスした。この野郎、何回オレからキスを奪えば済むんだ。わざとらしく鬱陶しげにロギアの身体を押しやると、楽しそうに笑っていた。


 なんだ、魔獣王だってちゃんと普通に笑えるじゃないか。


「気が変わった。その楽しい第二の人生エンジョイを謳歌してみよう」
「ろ、ロギア様!正気ですか!?」
「わたくしはロギア様が幸せならそれでいいでしゅ。あと美味しい物があれば言う事なしでしゅ」
「兄さんまで!僕は認めませんからね!」
「ではアラデアはどこかでひっそりと一人で生きるといい」
「え・・・それはそれで嫌です」
「長い付き合いでしたでしゅ。さようなら、我が弟よ・・・でしゅ」
「兄さんまで冷たい!!!ウッ・・・ウッ・・」


 忠義を尽くす主と最愛の兄に冷たくされアラデア君は泣き崩れた。脆いな、案外完璧主義者で計画ちょっとでもズレると挫折するタイプなのかな?
 すると冷たいかと思ってたロギアが声をかけてやる。


「冗談だ、半分な。アラデアがそうしたいなら止めはしないが、無計画で動くほど浅はかなお前ではないだろう?500年の間に何かしらの成果は出しているはずだ」
「ロギア様・・・・はい、もちろんです」


 立ち直ったアラデア君はビシッと背筋を伸ばして真剣な顔をする。普通にしてればやっぱり美少年だな。


「単刀直入に申せば、ロギア様には帝国四星花のヴァルハーゼン伯爵家のご当主となって頂きます」

「ヴァルハーゼン伯爵家!!!」

「これはまた・・・大きく出ましたね」


 オレはテーブルから身を乗り出すほど驚き、先生もさすがに笑顔が消えている。


「帝国民なら知らぬ者も居ないでしょう。皇帝と同等の権力を持つ4大貴族、四星花です。家柄というより個人の魔導士としての権力を持つのが意味合い的に大きいですが」
「え、え、でも500年も眠ってたロギアがいきなり当主になれるわけ?」
「500年かけて我々魔族がその地位を築いてきたと言った方が正しいです。元々四星花の当主だった女性に魔族が介入し、子孫を存続させてきました。現当主は半魔になりますが、丁度後継ぎも居ないので養子として貴族入りします。もちろん、女の子供が居た場合はロギア様の伴侶となりますが」
「壮大過ぎる計画・・・」
「しかし、四星花は帝国の中枢。皇帝陛下とあの魔導士長が魔族を受け入れるとは・・・なるほど、世の中知らぬ事がいいと言う事ですね」


 察しのいい先生がその答えを言おうとしたが、アラデア君がすごくいい顔するから途中で言葉を飲み込んだ。
 頭は良くないけど、オレもそうする。


「すでにロギア様のお迎えの準備も整っております。今すぐにでも御出立つ致しますか?」
「さすがアラデアだ、仕事は早いな。私が当主となり実権を握った暁には、ユトも正式に迎え入れよう」
「いや、いいって」
「き、貴様!一度ならずも二度三度と我々の好意を無下にするのか!」
「だから、押し付けられた好意はいらないって。でもまぁ、アラデア君とウルベル君が頑張ったのは認めるよ。好きなんだな、ロギアのこと」
「な、なっ!そのような不埒な情を主に向けるなど身の程をわきまえない愚か者の・・・」
「はい、好きでしゅ!ロギア様はとても優しい方なのでしゅ」
「・・・兄さん」
「ほらな?嫌われるより好かれる方がロギアだって嬉しいはずだ」
「私はお前に好かれている気がしないのだが」
「それはロギアの登場の仕方が悪かったな」
「とにかく、ロギア様をいつまでもここに置いておくのは不憫でならない。やはり早急に後出立を」
「え、今から歩いて行くの?」


 さすがに日も暮れた夜道を歩くのは危険だろう。いや、魔獣王が危険物かもしれない。


「さすがに今日は遅いし明日にすれば?」
「気遣い無用だ、すでに馬車が表に到着している」
「え、馬車の音なんてしなかったけど・・・」


 オレ達が外に出ると、馬車が確かに到着していた。でも普通の馬車じゃない、まず馬じゃない。3本の角が生えた牛みたいな生き物だった。


「馬車じゃないじゃん」
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