福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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11《ロギア視点》会合

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 ユトがヴァルハーゼン伯爵家に住む事を了承してくれた。念入りに裏に手を回し確実に逃げられないようにしたが、ユトの性格的に簡単には首を縦に振る事はないと思っていたが喜ばしい事だ。
 もしそれでも拒絶されたら地下に用意してあったユト専用の部屋に閉じ込める所だった。


ユトには屋敷で一番いい部屋を宛がおう。


 入浴後、食堂でウルベルが用意した食事を食べる。ユトは美味しいと器用にフォークとナイフを使って貴族の様に食している。あれでも騎士だ、マナーは心得ているのだろう。ただの孤児院育ちではないと感心した。
 マナーと言えば、私の隣に座るのは普通ならあり得ないが今は私達しか居ないので気にする事はないだろう。


「ロギア、口に付いてる」
「うむ」
「ロギア様、フォークやナイフは端からお使い下さい。あ、それはデザートスプーンです」
「・・・くっ」


 ・・・それに引き換え私の不甲斐なさ。人間の知識や文化を学んでも、魔獣王としての生活が身にしみているため人間のように食器を器用には使えない。初めはアラデアに教えられた通りやってみたが、途中からイライラしてきてとうとう手掴みをしてしまった。
 横でアラデアが正してくれようとするが、上手くいかない。

 もう食事を摂るのはやめようかとした時、横からユトが口を拭ってくれた。思わぬ行動にじっとユトを見つめてしまう。


「なに?」
「いや、・・・すまない」
「なんで謝るんだ?」
「当主になったというのにこの不甲斐なさだ。やはり私は魔獣は魔獣。人真似などやめた方がいいのだろう」
「生まれたの子供だってみんな一つずつ覚えるんだから、気にする事ないと思うよ。ロギアは魔族なんだし無理して覚える事もないよ。でも貴族としての威厳を保ちたいって望むならマナーだって教える」
「・・・是非頼む」
「任せて!小さい子の世話は得意なんだ」
「私は子供か、フフ」


 ユトと話していると自然と笑う事が多くなった。魔獣王の頃は笑みすらなかったというのに。
 横目に見るとウルベルがハンカチを顔に当てて、涙を拭いていた。アラデアは床にがっくりと手を着いて震えている。お前達、何をしているんだ?


「そういえば、ここに住んでた前の当主さんと奥さんはどうしたんだ?」
「彼等はロギア様のために無事に務めを果たした。土地や報酬も与え、余生は不自由なく暮らせるだろう」
「へぇー、そうなんだ。よかった。でも屋敷の使用人まで解雇する必要あった?けっこう広いぞ、ここ」
「必要ない。僕と兄さんが居れば十分だ。ロギア様は賑やかなのは好まない」
「そうなのか?ロギア」
「魔獣王だった頃はそんな楽しい事もなかったから、そうかもしれないが・・・今はユトと賑やかに生活するのも良いかもしれんな」
「だ、そうだぞ?」
「ろ・・・ロギア様・・・」


 私もこうも簡単に丸くなったものだ。確かにウルベル達だけでは屋敷の全てを管理するのは難しいだろう。アラデアが補佐として私に付いて回れば、ウルベル一人では余計に回らないだろう。


「アラデア、近々屋敷の使用人を募集しお前の判断で相応しい者を厳選しろ。種族は問わん」
「しかし・・・」
「アラデア、私は同じ事を言うつもりはない」
「御意・・・」


 アラデアは完璧主義で計画通りいかないと気落ちする癖がある。それを除けば優秀この上ないというのに。

 人間に紛れて生きるため、ここまで外堀は固めた。対価を払ったのは痛手だが、今の私には必要はないだろう・・・。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 数日前、ヴァルハーゼン伯爵家の当主を引き継ぎミスラの皇帝と四星花との謁見に呼び出された。登城は後回しにしてすぐユトを迎えに行きたかったが、アラデアに物凄い剣幕で馬車に詰め込まれてしまい仕方なく城へ赴いた。

 用意された席は5つ、皇帝を中心に四星花の席が対を成すように置かれていた。


ミスラの皇帝エクス・ギーレン・ミスラ

魔導師長フェリア・ノーグ

魔導騎士団団長ルシエス・クォデネンツ

魔導商会会長ラドリオ・ダルファム


 そしてこの私、ヴァルハーゼン伯爵家当主ロギア・ヴァルハーゼン。


「ヴァルハーゼン伯爵家の新しき当主にして四星花の新しき同胞よ、よく参られました。魔導帝国ミスラの皇帝エクス・ギーレン・ミスラ陛下に代わり、ノーグ伯爵家当主フェリア・ノーグが挨拶を申し上げます」


 フェリア・ノーグがそう述べる。ピンクの髪に水色の瞳で見た目は10代そこそこの可愛い顔をしているが、最低でも150年以上は生きてるじじいだ。魔力で年齢操作しているのだろうが、そんな事は普通の魔導士には出来ない。魔力が桁違いなのだろう。


「僕は、ラドリオ・ダルファム。ダルファム伯爵家当主でね、魔導商会の会長もしているんだ。君はどんな取引をしてくれるのか楽しみだね。新しい出会いを歓迎するよ」


 ラドリオ・ダルファム。焦茶色の髪にオレンジ色の瞳の優男といった雰囲気か。歳は40代だろうが若々しい。魔導商会か、今後の生活の為に品揃えを見るのもいいだろう。ユトと見に行くのもいいだろう。


「・・・・」
「ルシエス、無作法ですよ。名前くらいは名乗りなさい」
「ルシエス・クォデネンツ。クォデネンツ侯爵家当主。魔導騎士団団長、以上だ」
「申し訳ありません、彼はシャイなのです」
「なにがシャイだ、普通に挨拶しただろう」


 ・・・・・こいつが、勇者クォデネンツの末裔というわけか。なるほど、確かに魔力や精霊力を感じる。傍らの剣は精霊剣か。
 事を構えればお互い無事では済まなそうだな。そう思っているのが伝わったのか、クォデネンツが私を睨む。


「俺はまどろっこしいのは嫌いだ。率直に言うが、お前は魔族だろう。なぜここに居る」


・・・予想通りそう来たか。率直過ぎるのも問題だな。さっきから一言も発しないが、皇帝陛下の御前でよくも勝手に発言出来たものだ。四星花は皇帝と同等の地位にあるとはいえ、若さゆえか。
 ここで下手に虚偽を付けばややこしい事になるだろう。包み隠さず話し、相手の出方を見るか。


「貴殿の察しの通り、私は魔族だ。魔獣王ロギア・・・と言えばわかるか?」


 クォデネンツの顔つきがさらに険しくなったかと思った瞬間、空を切り裂く音が鳴った。目には見えないが攻撃されたと反射的に机を蹴り上げ体制を低くする。机は真っ二つに割れ、その隙間から腕に宿した瘴気をクォデネンツに向けて放とうとしたが目の前に展開された魔法障壁に止まる。
 少し目をやると、ノーグがニッコリと笑った。こいつの魔法か・・・。
 
 一方クォデネンツの方は、何と皇帝の剣に自らの精霊剣を地に抑え込まれていた。


「す・・すみません、城を壊されると僕が怒られるので・・あの、ここは穏便に」


 今まで一言も喋らなかったお飾りの皇帝かと思っていたが違ったようだ。紡ぐ言葉は怯えで震えているが、剣術はクォデネンツを凌ぐだろう。
 今回は皇帝の勇気に免じて場を収めるとしよう。クォデネンツもそう感じたのか剣を収めた。

 割られた机は新しい物と交換され再び会合が再開された。少し気にはなったが、隣に座っていたダルファムは微動だにせずずっと座って居たな・・・肝が座っているというか命知らずというか。


「ラドリオ・ダルファムは肝が座っているな」
「え?とても驚いて腰が抜けて動けなかったよ」
「・・・・・」


ある意味強者だ。


「さて、話を戻しますがヴァルハーゼン伯が魔族というのはルシエス以外は承知しています。といっても皇帝陛下と我々四星花と宰相、そして一部の大貴族のみですが」
「フェリア殿、なぜ俺だけ省かれているのですか」
「貴方はちょっと正義感真っ直ぐ過ぎて、そもそもヴァルハーゼン伯爵家が魔族の血を引いてると知ったら真っ先に突撃して行くでしょう?」
「否定はしないが、俺はそこまで浅はかではないぞ」
「でも今、ヴァルハーゼン伯を攻撃しましたよね?」
「ぅっ・・・・」


 どうもこの若いクォデネンツの当主は、直情型のようだな。これでよく魔導騎士団の団長まで伸し上がったものだ。
 500年前のクォデネンツは、敵全滅の為なら味方ごと消し去る非情さも持ち合わせていたというのに。


「何だ」
「いや、お前の剣術もなかなかのものだと思ってな」
「貴様に褒められても嬉しくない、気持ち悪い」
「そうか」


 私が若きクォデネンツを観察してるのを不快に思ったのか、隠そうともせずに嫌そうな顔をする。ある意味わかりやすくて接しやすい。


「まぁまぁお二人とも、皇帝陛下の御前でみっともない子供げんかはよしなさい」
「ダルファム殿まで・・・」
「何も我々だって無条件に魔族を受け入れたりしませんよ。双方にとって利益となる代償を差し出してるんですから。こちらからは爵位と領地の権利とかね」
「魔族なのに人間の土地に住みたいとか、変わった奴だな」
「私にも色々あるのだ。心配しなくても今さら勇者と決着付けようとか、人間への復讐など微塵も考えていない」
「・・・」
「そしてヴァルハーゼン伯から我々に差し出してくれる代償は何かな?500年前の当時の皇帝が密約していた内容は実のところ、我々もまだ知らないのでね」


 やっと本題に入ったか。アレを渡せば私は自由だが、この先また戦乱の世が訪れるかもしれない。迷うが、今の私には必要ないだろう。
 他にもっと大事なものを手にしたのだから。


「500年前のクォデネンツの聖剣の欠片だ」


私がソレを口にすると、明らかに皆が動揺した。


「聖剣の・・欠片だと・・」
「失礼ながら、それは事実でしょうか?もし本物ならあのクラリシス王国への宣戦布告と見られるでしょう」
「いや、そもそも500年前の聖剣は使用されて消滅したのではないですか?」
「それはクォデネンツの思惑通りのシナリオだ。聖剣は消滅したのではなく折られたからな。クォデネンツ本人によって」
「そんな馬鹿な!勇者がなぜそんな事を」
「さぁ・・・なぜだろうな。私の知り得ぬ事だ。そして目の前で折られた聖剣の欠片を、配下に託した」
「その者はどこに?」
「勝手に歩き回っているが捕まえるのは簡単だ、とだけ言っておこう」
「なんだその謎掛けのようなヒントは。本当は聖剣の欠片などないのだろう!」
「信じまいと勝手だが、聖剣の欠片はある」
「ッ!」


 私はクォデネンツを見据えて、真実のみを告げるだけだ。私が否定すれば、・・・彼を否定する事になる。
 双方睨み合いの沈黙を破ったのは、ダルファムだった。


「ではこうしましょう。聖剣の欠片があるという前提で話しますね。大掛かりな嘘を付いてまで500年も復活を待っていただけの魔獣王ロギアだとは思いませんので、おそらく限りなく真実でしょう。場所を言わないのは保険みたいなものですかね。今ここで教えて後々我々が即座に裏切るのを恐れているのでしょう」


ラドリオ・ダルファムは頭が回るようだ。


「しかし一方的な謎掛けのようなヒントでは、もし見つからなかった場合我々にとってはデメリットでしかありません。まぁ、いつかは血族が見つけたとしても正直なところ僕は今すぐ聖剣の欠片が欲しい。あ、もちろん純粋な商売魂からですけど」


 まぁ、そう思うのは当然だろう。今度はノーグが少し考える仕草で口を開いた。


「陛下、私もダルファム伯の意見に賛成です。聖剣の欠片だとしても、あのクラリシス王国に引けを取らないかと。もしかすると再生出来れば、本物の聖剣として我が国の利益になりましょう」
「新しい火種にならないかな・・・僕は無理して欲しいとは思わないけど・・」
「・・・そう言えば、近々私の末の弟子が城で働きたいと言っていましたよ」
「えっ!本当!?」
「聖剣を持つ陛下のお姿はさぞ、あの子の尊敬の眼差しを浴びる事間違いなしです」
「そ、そんな事・・・ヘヘ。じゃあ聖剣の欠片を探す事にしよう」


 何の話しかはわからないが、この皇帝流され過ぎてないか?大丈夫なのか、この国は・・・。


「さて、話は固まったようなのであともう少しヒントを頂けませんか?動くものを捕らえるのはなかなかハードルが高いので」
「そうだな・・・まずアレは物に憑依するタイプの魔族だ。そういえば、魔導商会にも一度入荷された事があるようだが運が良ければまだ倉庫に居るかもしれんな」
「えっ、そうなのですか!では後で探索致しましょう」


 最大限のヒントを与えてしまったな。近々アレも捕まるだろう。だがこれでいいのかもしれない。アレには長きに渡り酷な使命を背負わせてしまった。


「ヴァルハーゼン・・・殿」
「なんだ?」
「そんなに長く隠していた物をなぜ明け渡す気になった」
「・・・今度は大事なものを失くしたりはしない。ただ平穏に生きれればいい、それだけだ」
「・・・・そうか」


 クォデネンツはそれだけ聞くと、後は私への興味を失くしたようだ。その後は私も皇帝達の会話には参加せず静かに会合が終わるのを待った。


早く会いたい


私の命より大事な、ユトに・・・
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