福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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13モテ期来たまた男限定でな!

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 翌日、騎士団の様子も見たいとロギアに言うと意外とあっさり承諾してくれた。私の側を離れるなとか言いそうだったのに。あ、ちょっと自惚れてたかもしれない・・・。


 そんなわけで普通の馬を借りて(ロギアは魔獣を貸すと言ったけど全力で断った)、帝都へ到着した。

 まずは見習い騎士担当の小隊長へ挨拶へ行くと事前に通達されてたみたいで、「大出世だな、護衛頑張れよ。死ぬなよ」と激励された。え・・・何その不穏な言い方。ちなみに小隊長に精霊の泉を聞いてみたけど、知らないらしい。


 自室の片付けしようと宿舎の廊下を歩いていたら、騎士見習い仲間が気付いて声をかけてくれた。


「フレナ、すごいな!四星花のヴァルハーゼン伯爵家当主の護衛騎士に任命なんて」
「うーん、大出世って言われたけどやってる事は屋敷の掃除だしなぁ」
「え、そうなのか?大貴族だし雇い人だってたくさん居るだろ?まさか・・・イビられてるのか!?」
「いや、違うよ。前の人達を一度解雇したから、今使用人募集中なんだ」
「マジかよ。俺、立候補しちゃおうかな」
「やめとけ、お前じゃ食糧庫尽きそう」
「な、そんな事ないぜ!ダイエットしてるからな」


 ちょっと肥満気味の見習い騎士は、ダイエットアピールしてるけど去年から全然痩せてないの知ってるからな。


「それより、フレナはいつ非番なんだ?」
「ん?来週辺り取らせて貰おうかなと思ってるよ」
「よければ買い物行かないか?新しい生活に必要な日用品とかあるだろ?」
「いや、もうすでに屋敷に用意してあるから大丈夫だ」
「じゃあ、遠乗りは?」
「主人(ロギア)の護衛があるから無理だ」
「フレナ、今から訓練しないか?」
「あっ、お前!訓練っていいながらフレナにお触りする気だろ!」
「な、何言ってるんだ!純粋に訓練に誘ってるだけだ。お前こそ、この前拾ったフレナのタオルどこやった!」
「も、もちろん洗濯して返したさ」


 いや、返されてないから。動揺し過ぎだぞ、お前ら。それよりまたモテ期来た?男限定だけど。嬉しくないな・・・。


「おーい、ユト~!」
「あ、オリヴァン」


 向こうからまた顔馴染みが走って来た。オリヴァン・トゥーリ君、見習い騎士同期生でつい最近友達になった。めちゃくちゃ親切で良い奴だ。


「ここ数日見ないと思ったら、凄い事になってるね」
「まぁ、成り行きで。急に居なくなって悪いな」
「気にしないで。でもユトが居ない間、ユトに気がある人達の落ち込みようが凄かったよ」
「ハハ・・・・」


 そのまま地の底まで落ちて静かにしててくれてもいいんですよ。


「しばらくここ離れるから、オリヴァンと会えないの寂しいな」
「そうなんだ・・・でも、新しい仕事身体に気をつけて頑張ってね」
「ありがとう」


 オリヴァン君、本当に良い奴だな。屋敷で働いてくれないかな。あと何気にオリヴァン君が手に持ってる箱が気になるんだけど。何入ってるんだろう?


「オリヴァン、その箱何?」
「あぁコレ?野菜の苗だよ」
「野菜の・・・苗?」


 箱の中を見せてくれると、確かにまだ緑色の葉っぱだけの状態の苗木が入っていた。


「家は子爵家だけど裕福ってわけでもないから、副業に野菜とかも販売してるんだ」
「野菜かぁ。今度買わせてもらおうかな。あ、屋敷の先輩使用人が野菜作りたいって言ってたから今度教えてやってくれよ」
「いいよ。都合付く日にでも呼んでよ」
「わかった。そうだ、オリヴァンは精霊の泉か月の実って知らないか?」
「うーん、確かそれって・・・精霊様の澄んだ土地にしかない食べ物だっけ?」
「お、よく知ってるな」
「前に文献で読んだ事あるけど、どこにあるかは知らないなぁ。あ、でも山一つ越えた東の村に精霊の泉をたまたま見つけたって人なら居るらしいよ」
「本当か!」
「うん」


 文献に載ってるって事は存在はしてるって事だよな?やっぱりミスラの土地は精霊と関わりが深いから、もしかして本当に月の実あるかも。
 東の村か・・・山一つなら早馬とかでそんなに遠くないかも。後で訪ねてみるかな。


「じゃあ、俺はもう行くから。またね」
「あぁ、またな」


 オリヴァン君が去った後、よくよく考えたら獣全開容姿のウルベル君を見てびっくりしないかな。しかも喋るし。思わず誘ったけど、どうしよう。ウルベル君もアラデア君みたく、人型になれないかなぁ。耳と尻尾が付いてても獣人ですって説明すれば、魔族とはわからないだろ。あ、・・・あの太い尻尾等身大触りたい。
 もしダメなら、アラデア君を身代わりに野菜の事教えてもらおうかな。


「フレナ、ところでさっきの誘いだか・・・」


 忘れてた!!!癒し系オリヴァン君の登場にすっかり他の騎士達も居る事を。どうしよう、はっきり断ってもいいけど相手は一応貴族だしなぁ。出来れば穏便に断りたいけど・・・。


「あの、今日は返答出来ないので後ほどでもいいですか?」
「いつだ?」
「え、、、」
「いつなら空いてるんだ?」
「おい、フレナが困ってるだろう。遠出はすぐ決められないけど、訓練の手合わせなら今からでも出来るよな?」
「えーと・・・ハハハ」


 墓穴を掘った。はっきり断る選択肢を選ぶべきだった!このままだと前に騎士団に居たヒスティア先輩の二の舞いじゃないか。どうしようか・・・。

あ!あれは、ルシエスじゃないか!?

 ちょっと離れた場所にルシエスと他の騎士達がゾロゾロと歩いていた。任務帰りか?グッドタイミングだ。


「おーい!・・・じゃなかった、クォデネンツ団長~!」


 ルシエスの方へ走って行きながら、わざと大声で名前を呼ぶと周囲の騎士達はギョッとした目でオレを見た。帝国最強の騎士に気軽に声かけてる時点で確かに異常だからな。


「ユト!!!」


 一方ルシエスは、すぐさまオレに気付くと神々しい光を放ちながら(オレの幻覚)美の神すらも霞む笑顔で両手を広げて待ち構えていた。


飛び込めと?


その神の領域に飛び込めと?


無理だ。


 残念ながらルシエスの手前で止まり真面目な顔をする。オレが調子に乗ってここで笑顔出すと、ルシエスが崩壊するからな。さすがに部下達の前では、団長の威厳は保ってやらないと。


「なぜそこで飛び込んで来ないんだ」


 無理だった。強制的に抱きしめて来たルシエスに、オレも騎士達も目が点になっていた。さすがにマズイと思い小声で怒る。


「コラ、ルシエス・・・公私混同はダメだぞ」
「どうして?ユトの方から可愛いく走って来たのに、受け止めなかったら男として失格だろう?」
「なんの失格条件だよ、それ。とにかく一度離れて話を合わせてくれよ」
「ん?」
「後ろの騎士達がちょっと面倒くさい」
「・・・・あぁ」


 ルシエスがしつこい先輩騎士達を見ると、後ろから息を詰めるような悲鳴が聞こえた。大丈夫?後ろ見えないけど、先輩達生きてるよな?
 ちょっとさすがに可哀想になって来て、ルシエスのマントを引っ張りながら何とか首だけ上を向けた。


「なぁ、ルシエス。もういいから」
「・・・・」
「ルシエス?」


「かわいい!!!!!!!」


・・・・・こいつもダメだった。


 さらに離すまいとギュウギュウ締め付けるもんだから、さすがに身体が痛い。ルシエスの馬鹿力め。


「わかった、わかった。とりあえず痛いから離してくれ」
「あ、すまない」


 やっとオレを解放したルシエスだけど、二の腕まだ擦ってるからちょっと引いた顔して離れてみたらこの世の終わりみたいな顔された。


「クォデネンツ団長、あの・・・その者は?」


 控え目に後ろで待機してたルシエスの部下さんが恐る恐るオレ達の関係を探りに来た。


「妻だ」
「違います。(孤児院で)長い付き合いなだけです」


 ルシエスの色んな物を通り越してすでにゴールインしてた言葉を即座にバッサリ切った。昔からルシエスは妄想癖があったから気にしてなかったけど、人前でさすがにゴールインな妄想はやめような。
 ちょっと主語が抜けた気もするけど、ゴールインだと思われるよりはましかな?


「あの団長に・・・恋人が」
「こういう素朴な感じが好みだったのか」
「それよりさっきの笑顔は国家の秘宝に値するな。後で肖像画にして残すべきじゃないか」
「あと銅像も立ててもらおうぜ」


・・・・・コラァ!!!ルシエスの部下の騎士達ーーー!!!


「お前達気が早すぎるぞ、まだ我々は式も挙げてないというのに。まぁ、近々そうなる予定だかな。新居には呼んであげよう」

「「おおおおぉおお!!!」」


 騎士達の謎の歓喜の歓声が上がるけど、ごめんな・・・オレはテンション下がりだ。
 とりあえず当初の先輩騎士達の誘いを断るという目的はルシエスの妄想勘違いによって牽制されたんじゃないだろうか。チラッと見ると、一瞬目が合って残念そうな顔をしていた。何人かは崩れ落ちて泣いてた。ここは心を鬼にして見届けよう。


「そうだ、ユト。お前・・・ヴァルハーゼン伯の護衛騎士になったのか」
「うん、そうだよ?成り行きだけど、お給金上がるし孤児院への仕送りももっと出来るからいいかな」
「よくない!奴は、ま・・・・・まともな奴じゃない」
「ルシエス、人を見た目で判断したらダメって院長先生も言ってたろ?今度屋敷に来いよ、美味しい料理作ってくれる・・・人が居るんだ」


ウルベル君は人とは呼べない。


「わかった、今からでも行こう。そして奴の魔窟からユトを救い出し、俺達の新居へ・・」
「また誘うから。じゃあな!」
「あ!ユ、ユト!」


 これ以上ルシエスの妄想が爆発する前に、逃げよう。

 その後はチラチラこっちを見る騎士とか居たけど、ルシエスの妄想牽制のおかげで何事もなく過ごした。途中から実は魔物鳥(というよりロギア)が痺れを切らしたように、木とか窓からじっと見てるのを耐えかねて早々にヴァルハーゼン家へ帰るのだった。
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