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18《ロギア視点》知らせ

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 ユトを風呂で可愛がるうちに、恥じらうのが伝わって来て我慢が出来ずに散々愛でてしまった。明け方まで眠ってしまったユトの寝顔を眺めながら、満ち足りた心の余韻に浸っていた。

 だが、その幸せの時を邪魔する無粋なモノが窓から覗いていた。


 部屋の中をジッと覗く、1羽のネズミ。誰の使いかは魔力の波動で予想が付く。


「ラドリオ・ダルファム」


 四星花の一人で魔導商会の大貴族ラドリオ・ダルファム。使いのネズミは片言で伝言を喋る。


───カケラヲミツケタ、シロへコラレタシ


「予想外に早かったな。いいだろう、出向こう」


 それだけ伝えると、ネズミは消え去る。聖剣の欠片をあるものに預けていたが、たった数日で見つけるとは伊達に四星花を名乗ってはいないようだ。
 名残惜しいが、寝ているユトに口付け・・・・口の中まで舐め回して、身体のあちこちに吸い付いて私の痕を残すと満足して離れた。


 登城するとすでに召集されていた皇帝と四星花が着席していて、特にユトの幼馴染だとかいうルシエス・クォデネンツが隠しもせずに嫌そうに顔を向けた。
 相変わらず可愛い顔の年齢詐欺な魔導士長フェリア・ノーグと、半分目が閉じてる寝起きらしき皇帝エクス・ギーレン・ミスラ・・・・これで剣術が達人の域を越えてるというのだから世も末だな。

 呼び出した当の本人である、ラドリオ・ダルファムの隣に座るとニッコリと微笑まれた。私はそれを無視して、別のものを見た。


 部屋に入る前からわかってはいたが・・・・・隠しもせずに堂々とよく連れて来たものだ。


「それは何だ」
「ん?君の言ってた聖剣の欠片の依代だろ?僕の屋敷や店を全部ひっくり返して探したら、倉庫に挟まってたんだ」
「そんな事は見ればわかる。なぜここに連れて来て貴様の膝に座らせている。しかも何だ、そのふざけた格好は」
「あ、これ?可愛いでしょう。家の使用人は皆、男女この服だから」


 聖剣の依代であるものは、長く白い髪の美しい魔導人形だ。見目は10歳ほどの人間の姿をしているが、知らぬ者から見たらダルファムが幼児趣味の変態にしか見えないだろう。
 しかも一応は少年型だが、着せられている服は女性の使用人が着るメイド服と呼ばれるものだ。

私は哀れな元配下の姿に溜息をついて、名前を呼んだ。


「クー、起きろ」


 名前を呼ぶと、パチリと目が開き宝石のような赤い瞳が覗く。ついでにダルファムもうっとりとした顔で覗いていた。
 クーはダルファムの顔を手で押し退けると、膝を降りて私の横に隠れた。

 ちなみに、ダルファムは絶望的な顔して固まっていた。


「さて、これはクー。私の配下で魔導人形だ。言うまでもないと思うが、これの中に聖剣の欠片が入っている」
「見た所、魔術が何重にも施されているようですね?解除は出来るのですか?」
「さすが魔導士長ノーグだが・・・解除方法までは教えるつもりはない。言っただろう?これは私の身の安全を守るための保険だ」
「なるほど、ではこちらで解除を試みても?」
「構わん。これはもうお前達の物だ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「・・・・クーはやらないぞ」


 見つけたらくれてやるという約束通り、聖剣の欠片は確かに帝国の所有物となる。だがクーも貰えると勘違いしたのか、ダルファムも礼を言った。
 私の拒否の言葉に、また絶望的な顔した。表情はないし喋らないが、クーも嫌そうな雰囲気を醸し出していたからな。


「おい、・・・・いや、ヴァルハーゼン伯。貴様、ユトを使用人から外せ」
「・・・・なんだと」
「どうせ貴族の特権を使って無理矢理引き入れたんだろう。ユトが傷付くのは許せない」
「・・・ふん。私は無理強いはしていない。嫌ならユトは帰るだろうし、昨夜は共に風呂でむつみあい今は私のベッドで寝てい・・・・」


ベキイイイイ


 クォデネンツの座っていた机が割れた。おそらく拳を叩きつけたのだろうが、力強すぎてそうなったんだろう。
 皇帝はその衝撃でハッキリと覚醒し、涙目になっていた。隣では冷静にクォデネンツに弁償を要求するノーグ。ダルファムはもはや、クーに拒絶されて絶望の淵から戻って来ない。


「やはり、貴様はここでコロス」
「やめておけ。地位も名誉も友情も失くすぞ」
「地位や名誉は要らない!ユトは俺のものだ!」


───パリン


 クォデネンツの小僧が生意気な事を言うのでつい魔力が乱れて天井のランプを割ってしまった。後ほどシャンデリアにして賠償してやろう。

私とした事が大人気ないな、フフフ。


「貴様のもの?ユトは慰みものの道具ではないぞ」
「だが貴様を慕ってるわけではないだろう?」
「慕ってるわけではないが、恋い慕っている確率は高いな。何せユトとは口付けを交わした仲──」


キイイイイイン


 そう言いかけた時にはすでに目前には剣を抜いたクォデネンツが迫っていた。だが剣が届く前にまたしても皇帝がクォデネンツの剣を受け止めていた。

本当にこの者は何者なのだ?


「へ、陛下!恐れながらいかに陛下といえども、この者を討つのを邪魔立てなさるのは許せません!」
「あの・・・・とりあえず、城の中でケンカはダメです。本当に僕が怒られるので・・・。これ以上やるならクォデネンツ伯は爵位の剥奪と、あと・・・えー・・・ユト?とかいう人を永久禁固刑です。国家を揺るがした大罪人として」
「なっ・・・・」
「それは困る。私は潔くクォデネンツとの仲違いを忘れてやってもいい。ついでにこの部屋のランプをシャンデリアに変えてやろう」
「ヴァルハーゼン伯は大人だなぁ」
「ぐっ・・・・わかり・・ました。この場は陛下の顔を立てて引きましょう」


 納得してない顔があからさまだが、剣を収めて席に戻る。皇帝も気が抜けたのか、半泣きだ。剣はともかく、こんなに気弱でこの先やっていけるのか?


「そんなに気になるならクォデネンツ伯が、ヴァルハーゼン伯の所へ遊びに行って確かめてくればいいじゃないかな?」
「え・・・・」
「・・・・・」


 皇帝はのん気に発言すると、クォデネンツが私の方を向く。嫌な予感しかない。


「ヴァルハーゼン伯、先ほどの無礼を詫びよう。これはあくまで外交目的の提案だが、貴殿の貴族としての働きを垣間見たいのだが邸宅を訪ねても良いだろうか」
「・・・・・・・・・」


 率直だな。そんなにユトに会いたいのか?いいだろう、いかに私とユトが主従以上にして運命すらも越えた関係だと言うことをこの若造に完膚なきまでに見せつけてやろう。


「いいだろう。こちらも都合をつけて出迎える準備をしてやる」
「感謝する」


 顔が笑っていないぞ、クォデネンツ。不本意だが仕方ない、屋敷に呼んでやろう。


 その後は用はないとばかりに退室し、屋敷に戻った矢先の事だ。
 ウルベルが私の早い帰還にあからさまに驚くので問い正すと、ユトに贈った魔物鳥を持って来た。


魔物鳥がユトの声で告げる。



───ちょっと月の実探しに行ってくる!



「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ロギア様?」
「ウルベル、すまないが本体の方に戻ってくれ。今すぐに」
「は、はいでしゅ!」
「あの無鉄砲者を連れ戻す」


 やはりユトを自由にしておくのは間違いだった。私の元に縛り付けておかねば・・・・。


そして私は屋敷を飛び出すのだった。
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