福引きで当てた魔獣王の愛し子

れく高速横歩き犬

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19我が家

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 月の精霊達から月の実をもらい帰る途中、オレはまた魔物と遭遇してしまい絶賛猛烈ダッシュ中だった。


「うわあああああ───!!!」


グオオオオオオ



 熊型の魔物に追いかけられ、魔力切れのオレは魔法が使えない。月の実は一口齧っただけだから完全回復には至らなかったみたいだ。でも体力は戻ってたから走れるのはよかった!
 くつそー!魔法が使えたら熊(魔物)なんて倒して熊(魔物)鍋にしてやるのに!

 そう思っていたら、木の根に躓いて顔面から盛大に転んだ。自分の鼻血より懐に抱えたアラデア君を確認する。お腹をちょっと曲げて倒れたから、潰れてなくてよかった。


グオオオオオオ


「ぜんぜん、よくなかった!!!」


 ついに魔物に追い付かれてしまい、まさにオレの方が今夜の鍋になりそうな時だった。


キュウアアアアアアアア


 甲高い声が聞こえたかと思うと、上空から何か巨大なモノが降ってきて魔物にのしかかった。下敷きになった魔物はその重みの衝撃で絶命したのか、動かない。
 その生き物は三メートルはあった熊の魔物より若干大きく、金色の毛を持つキツネのような生き物だった。バカでかいキツネだ。


「ユト」
「うわっ!?でっかいキツネが喋った!」
「私だ」
「あ、あれ?」


 キツネが喋ったのではなく、正確にはその背中に乗っていた者が喋った。


「ロギア!」


 ロギアだ、ロギアが居る!ロギアはでかいキツネから降りると、駆け寄って来てオレを抱き締めた。相変わらず馬鹿力だけど、今はその温もりが安心でいっぱいになる。


「なぜ勝手に出て行った」
「ちゃんと伝言残しただろ?それにアラデア君も一緒・・・・あ!アラデア君潰れてない!?ちょっと、ロギア退いてよ」
「む・・・」


 懐の中のアラデア君は無事でまだ寝てるみたいだ。ロギアが懐の中に手を突っ込んで、アラデア君を取り出したかと思うと後ろのでかいキツネに向かって放り投げた。


「アラデア君──────!?!?」


 すると器用に口でキャッチしたでかいキツネ・・・まさか食べるのか!?


「ロギア、何するんだ!アラデア君がでかいキツネに食べられちゃうだろ!」
「落ち着け。アレは、ウルベルだ」
「アラデア君がウルベル君に食べられちゃうだろ???・・・・・え、そうなの?」
「あぁ」


 でかいキツネは、そうだと言うように首を縦に振る。


「・・・・本物か確かめるから、ちょっとフサフサの大きな尻尾を触らせて下さい」
「却下だ」
「ええー!ロギアのケチ!」
「何があったのかは大方予想がつくが、大人しく待っていなかったのだからお仕置きが必要か?」
「謝るけど、お仕置きは要らないです」
「まったく・・・・心配した」
「う、うん・・・ごめんな、ロギア」


 懐にはもうアラデア君が入ってないから、ロギアは遠慮なくギュウギュウと抱き締めてきた。
 満足するまで抱き締めると、ようやく解放された。頬や髪を撫でられる。


「なぁ、ロギアは何でここがわかったんだ」
「魔物鳥の伝言と、アラデアの魔力の波長を追って来た。アラデアが消耗したあの状態と言う事は、衰弱したが助かったという事だな。あったんだな、月の実が」
「うん。あった。詳しい事は屋敷に戻ってから話すけど、月の実はあった」
「・・・そうか。戻ろう、ユト」
「うん。あ、その前に村にちょっと寄ってくれ。おじいさんに渡す物があるから」
「はぁ・・・わかった」


 ダメって言われるかと思ったけど、ロギアは了承してくれた。実はでかいキツネだったらしいウルベル君の背中に乗ると、フワッとまるで羽のように走り出した。
 毛がフサフサで気持ちいい・・・思わずしがみついて背中に頬擦りしてしまう。「ゥキュアアアアアアア~」って可愛い鳴き声上げるウルベル君、でかくても可愛いな。口にはアラデア君咥えてるけど。

 村に戻るとおじいさんの家を訪ねた。念の為にウルベル君には森で待機してもらう。
 そして月の実は本当にあって精霊と会った事を話すと、嬉しそうに笑う。そして預かった物を渡すと腰を抜かした。


「これが月の実の種じゃと・・・精霊様の恩恵をわしが持ってていいのかのう?」
「月の精霊の妹から渡されたし、いいんじゃないかな?供物をくれる優しいおじいさんが嘘つき呼ばわりされる事を、心を痛めてたみたいだし」
「そうか・・・・」
「この種を育てて月の実が成れば、村の人から嘘つきって呼ばれないね」
「いや、この種は誰にも言わずに育てる。実が成ってもそっとしておこう。お前達が、わしは嘘つきではないと信じてくれているだけで十分じゃ。むしろわしが亡き後に、この木を回収してくれんかの?精霊様の恩恵を人間の欲に使われるのも忍びない」
「わかった」
「ユトと私の配下が世話になったな。安心しろ、責任を持って回収させよう」
「・・・・ユトさん、そちらの方は?」
「私はユトの景品だ」
「違うだろ。えーと、オレの主のヴァルハーゼン伯爵様です」
「ヒエエエエエ!?」


 ロギアの正体を知り、またしてもおじいさんは腰を抜かした。


 色々と大変な目には合ったけど、無事に屋敷に戻って来た。ウルベル君は元のタヌキの姿に戻ってしまい、アラデア君を大事に抱える。


「ユトさん、弟を守ってくれてありがとうございましゅ」
「そんな事ない、元はと言えばオレが連れ出して危険な目に合わせたし・・・」
「それに関しては色々と問いただすことがありそうだな、ユト」
「うっ・・・・・」
「だが無事でよかった。もう二度とするな」
「うん」


 ロギアはオレを優しく抱き締めて来たから、ここはオレも突っぱねるなんて事はしない。謝罪の意味も込めて、抱き締め返してやる。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後はオレとウルベル君で食事を作って、皆でゆっくり過ごした。ロギアも仕事はやめてソファーで寛いでいる。無理矢理オレを横に座らせてな。
 傍らにはフワフワの布が敷き詰められた籠に入ったまだ寝ているアラデア君。魔力の消耗が激しくて回復するのに時間がかかるみたいだ。

 仕事の合間にウルベル君がやって来て、アラデア君を抱っこした。


「ウルベル君、来て」
「ユトさん?」


 手を広げておいでと招くとちょっと困った顔をしたが、ロギアが頷くと近付いてオレの脚の間に座った。後ろからそっと抱き締めてやる。
 まぁ、そしたらさすがにムッとした顔のロギアがウルベル君達ごとオレを抱き締めて来たけどな。


「なんかこうやってくっついてると親子みたいだな」
「そうでしゅね。ロギア様が父でわたくしが兄、アラデアは弟・・・」
「そしてユトが母だな」
「オレのポジションがおかしい。性別すら違う」
「ユトさん・・・わたくしやアラデアの姿を見て魔族と違うとお気付きでしゅか?」
「うん、アラデア君にもちょっと経緯を聞いたけど精霊なんだろ?月の精霊も言ってた」
「はい。わたくしとアラデアは心無い者の迫害に合い命尽きようとした時に、ロギア様が眷属として迎えて下さいましたでしゅ」
「辛いなら無理に話さなくていいよ。ウルベル君達が何でもいいけど、可愛い家族なのは変わらないし」
「ユトさん・・・ありがとうございましゅ!ありがとうございましゅ・・・・ぅっ、ぅっ」


 ウルベル君のつぶらな瞳から大粒の涙が溢れ、ロギアが優しく頭を撫でた。
 落ち着いたウルベル君は、仕事に戻ると元気よく部屋を出て行く。気を利かせたのかアラデア君も持って行ってしまった。

残されたオレとロギア・・・・気まずい。


「オレも仕事に・・・・わっ」
「行かせるか」


 立ち上がるも腕を引っ張られてロギアの胸に倒れ込む。またしてもギュウギュウにされ、オレはもはや抵抗を諦めて大人しくしていた。逃げないと分かると力を緩めて背中を撫でたり、髪や耳に鼻を埋めて匂いを嗅ぎ出す獣なロギア。


「ユト」
「なに?」
「私の寵愛を受けてもなお逃げようとするなら、それ相応にお前を縛り付ける事になる」
「ちょ・・・寵愛って・・・・。うーん、ロギアは多分雛の刷り込みみたくオレに母親みたいへな愛情向けてるだけだと思うだ」
「それはないな」
「な、なんで!?」
「私がお前を愛しているからだ」
「あっ、あい!?」


ロギアがオレを・・・愛してる???


 愛してるってのは家族とか友情的な意味の愛してるじゃないのか?一応ロギアを孵化させたのはオレだし・・・・。
 戸惑っていると、ロギアは手を取って何度もその手の至る所にキスしてくる。オレの言葉を待ってるのか?

 
 どうしよう・・・・愛してるって・・・どう答えればロギアは傷付かないんだ?ロギアの目が見れない。すると鼻にキスされた。


「ユト、今すぐ答えなくていい。ただ私がお前を想っている事は胸に秘めておいてくれ。初めはユトの瞳や魔力に惹かれたかもしれないが、お前を見ているうちに強く優しく時には無鉄砲なところも愛おしくなって来た。それに、私の配下の家族になってくれた」
「あ・・・の・・・ぁ、ッ」


 上手く言葉を紡げないでいると、口にキスされる。すぐに離れたけど思わず離れるロギアを追おうとしていた。
 はっとするとそれに気付いたロギアが、ちょっと笑みを溢している。恥ずかしくてロギアの胸元に頭をグリグリと押し付けて誤魔化してみる。


「ぅ・・ロギアはズルい!」
「私がか?」
「カッコイイしエロいし強いし!」
「私は強くはないさ。見ろ」
「ん?・・・うわッ!?わプッ!」


 突然押し付けてた胸元の感触がなくなったと思ったら、フワフワした何かに顔を埋める。顔を上げると腹這いになった魔獣化したロギアになっていた。
 条件反射的に魔獣化ロギアを抱き締めた。


「ず、ずるいぞ!その姿は反則だろ!」
「フフフ、ユトが側に居てくれるなら私のプライドなど捨てよう」
「そこは男として残しておけよ。はぁ・・・もしかしたら、ずっとロギアの気持ちに応えないかもしれないぞ?いいのか」
「いい」
「・・・・そっか。でも、ロギアの事は好きだからな」
「今はその言葉だけでいい」
「うん・・・」


 するとまたあっという間に人型になったロギアが、今度はオレを押し倒して来た。サワサワと身体をまさぐっている・・・・。


「し、しないぞ!」
「私はまだ何もしていない。期待しているのか?可愛いな」
「可愛いのは、魔獣化のロギアとかウルベル君を言うんだよ」
「そうか」


 ロギアはしばらくそのままオレがしたように胸元に頭を押し付けたり、抱き締めるのだった。
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