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09.仮面の男 1
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仮面祭りの会場となる市街地はものすごい人込みだった。
「気をつけなきゃすぐに離れ離れになっちゃいそうね」
隣を歩くコリンナが言う。
私もそう思う。
ちらりと後ろを見ると、ついてきている護衛も人込みに押されて、少しずつ距離ができていた。
護衛は、コリンナの希望で少し離れてついてくることになっていた。町娘の私たちにべったりと護衛がはりついているのもおかしな話だからだ。
確かに、コリンナが考えている街歩き程度なら、護衛は少し離れた場所にいても問題はない。逆にそのことが私の計画には好都合でもある。
これなら、うまくいくかも……?
ちょっと、期待値が上がる。
周囲は、みんな色とりどりの仮面をつけて歩いている。祭りだからおしゃれをしてきているのだろう、華やかなかっこうの人も多いし、魔女だったり、道化師だったりと、明らかに仮装と思われる人も少なくはない。
そういう人たちは顔全体を覆う仮面をつけているので、少々不気味でもある。
私達みたいに顔半分が隠れる程度の仮面ではなく、顔全体を覆う仮面をつけてしまうと、精霊も騙せそうな気がしてくる。
そんな華やかな人の流れの中にいても、騎馬で移動する制服姿の警邏隊の人たちはよく目立った。あちこちにいる。
「エレオノーラ、見て、すごいわね」
コリンナが指し示す先に、ものすご――――――く背が高い人たちがいた。派手な装束、ふわふわと動く手足。何か棒のようなものの上に立ち、棒を持って長い手足を動かしているようだ。
くるりと背の高い人が一人、こちらを向く。
その人が私のほうをじっと見ている。
――何かしら……?
それに見とれてしまったのがいけなかった。ドン、人込みに突き飛ばされて、私は通りに転がり出た。
「あぶない!」
誰かが叫ぶ。はっと顔を上げると、すぐそばに警邏隊の姿が。彼らは騎馬隊である。馬上の隊員が慌てて手綱を引くのが見えたが、間に合わない。
ぶつかる……!
ぎゅっと目を閉じたその時、ものすごい力で私は歩道に連れ戻された。ほとんど引きずられるようなかっこうで、だ。
地面の上を引きずられてしまったことで、ビリッとスカート部分が裂ける音がした。
「ぼうっとしていたらダメだろう!」
怒りをはらんだ男の人の声が降ってくる。
聞き覚えがある声にはっとなって顔を上げると、仮面をつけた男性がこちらを見降ろしている。シャツにスラックスという非常にくだけたかっこうだ。仮面の上にのぞいている髪の毛は黒……癖があって、短い。仮面で影になっているから目の色はわからない。
「あの……」
「そんなところに座っていたら通行人の邪魔になる。立って」
男性が手を差し伸べてくる。思わずその手に自分の手を重ね、立ち上がろうとしたところで、ビリリッとさらに布が避ける音が聞こえた。どうも裂けたスカート部分を踏んだまま立ち上がってしまったらしい。
裂けた布からペチコートが覗く。
私はあわてて裂けた部分をかき寄せた。
恥ずかしい。
仮面をつけていてよかった。私、顔が真っ赤だわ。
「今、もしかして、スカートが裂けたんじゃないのか?」
男性が聞いてくる。音が聞こえたのね。私は頷いた。
それにしても、この人、声が似ている。
アルトウィン様にそっくり。
けれど、口調は全然違う。
髪色も髪型も違うし、第一、国王ともあろうお方がこんなところに一人でいるはずがないから、他人の空似というか、声だけ似ているだけの人なんだろうけれど。
声だけは本当にそっくりで、妙に焦ってしまう。
ああ、だけど、こんなことになるなんて思わなかった。これでは計画どころではない。コリンナを探さなくては。
「スカートが裂けたのが今日でよかったな。いくらでも変装用の衣装を売っている」
「ごめんなさい。私、大きなお金は持ってきていないの」
暗にスカートを買えという男性に、私は首を振った。露店で使えるようにと多めにお小遣いはもらってきているが、服となると、私のお小遣いでは無理だろう。庶民の金銭感覚がわからない私でも、それくらいはわかる。
「俺が引っ張ったせいで破れたんだろう? それくらいは出すさ」
「いいえ、けっこうです。見ず知らずの方にそこまでしていただくことは」
「だけどそのかっこうで歩くつもりか? 下着が見えてるぞ」
彼の指摘に、私は言葉に詰まった。
「……しかたがありません……」
確かに大きく裂けたスカートからは、下のペチコートが覗いている。スカートは大きく破れてしまっており、破れた部分を手で持ってもペチコートは隠せない。
「警戒心が強いな。別に取って食おうなんて思ってない。もしかして仮面祭りは初めて?」
「え、ええ。初めてです」
「それでか。俺はアロイス。君は?」
「私はエレ……、エレイン」
「エレインか。かわいい名前だな。もちろん本名ではないんだろう?」
もちろん?
「ええ……もちろん違います」
「そうそう。仮面をつけている間は別人にならなくてはならない。本名なんて名乗ってはいけない。本当のことも、話してはいけない」
そう言ってアロイスが私の破れたスカート側に立ち、人込みから私を連れ出す。
庇ってくれたんだわ。そんなちょっとした仕草にドキリとする。
アルトウィン様みたい。
そういえば、妃候補になるよりも前、どこかの庭園でのお茶会に呼ばれたことがあった。貴族の子どもたちの顔合わせのような場だったと思う。しかし顔合わせが済んでしまうと、大人たちの社交の場に早変わり、子どもたちは放置された。
私はとても退屈だった。ほかの令嬢たちのようにおとなしくおしゃべりなんてできない。退屈だから庭園を散策していたら、庭木にスカートをひっかけて破いてしまった。
普段からおてんばだった私、人前ではお行儀よくしなさいと言われていたのに、やってしまった。困り果てた私のためにこっそり人を呼んで庭園から連れ出してくださったのは、当時は王太子だったアルトウィン様だった。
そのおかげで私は、大人に怒られずに済んだのだ。
よかったね、と、あとでアルトウィン様に囁かれた時のドキドキを覚えている。
あの頃のアルトウィン様は、今よりももう少し近い感じがした。
いつからだろう、遠くに感じるようになったのは。記憶をたどってみると、妃候補になってからだ、ということに気付く。……やはりコリンナが関係しているのだ。
だめだめ、昔のことなんて思い出している場合ではない。
そういえば、そのコリンナはどこに行ったのかしら。護衛は?
あたりを見回すが、それらしい人物はどこにも見当たらない。
「どうかしたのか?」
アロイスが聞いてくる。
「友達とはぐれてしまったみたいで……」
「そうか。この人込みでは見つけ出すのは至難の業だな。帰りの待ち合わせ、みたいなことはしていないのか?」
「泊まっているお屋敷の」
言いかけて、本当のことを言ってはいけないのだったと思い出す。
「家の名前は覚えているわ」
「ふうん……なら、あとで近くまで送っていこう」
「あとで?」
「こうしよう。そのスカートを俺が買う代わりに、君は少し俺に付き合う。それなら俺に奢らせても罪悪感はないだろう? 俺が君の時間を買い取るようなものだから。俺も友達とはぐれて、一人で祭りを回る羽目になって、寂しかったんだ」
『運命を変えたいのなら、マールバラへお行き』
占い師の言葉が頭の中でこだまする。
『そこでおまえさんは、一人の若者と出会うだろう。彼がおまえさんの運命を変えてくれる』
これは運命? それとも単なる偶然?
知らない人にホイホイついていってはいけないことくらい、私だって知っている。
その時、風向きが変わってふっと甘い匂いが漂ってきた。どこかで嗅いだことがある、と思って記憶をたどり、それがあの占い師の部屋で焚かれていたお香だと思い出す。
何もしなければ、不幸な結婚が待っている。
私は運命を変えるのだ。
そのために、ここまで来たのだ。
こう見えても武門の娘、少しは腕に覚えがある。人通りがあり警邏隊が巡回している場所なら、万が一のことがあっても逃げることはできるだろう。
よし、決めた。
「ええ、いいわ。友達が見つかるまでなら」
「そうだな。俺も友人が見つかるまで。一緒にマールバラの仮面祭りを見て回ろう」
目を上げた私に、アルトウィン様によく似た声でアロイスが頷いた。
「気をつけなきゃすぐに離れ離れになっちゃいそうね」
隣を歩くコリンナが言う。
私もそう思う。
ちらりと後ろを見ると、ついてきている護衛も人込みに押されて、少しずつ距離ができていた。
護衛は、コリンナの希望で少し離れてついてくることになっていた。町娘の私たちにべったりと護衛がはりついているのもおかしな話だからだ。
確かに、コリンナが考えている街歩き程度なら、護衛は少し離れた場所にいても問題はない。逆にそのことが私の計画には好都合でもある。
これなら、うまくいくかも……?
ちょっと、期待値が上がる。
周囲は、みんな色とりどりの仮面をつけて歩いている。祭りだからおしゃれをしてきているのだろう、華やかなかっこうの人も多いし、魔女だったり、道化師だったりと、明らかに仮装と思われる人も少なくはない。
そういう人たちは顔全体を覆う仮面をつけているので、少々不気味でもある。
私達みたいに顔半分が隠れる程度の仮面ではなく、顔全体を覆う仮面をつけてしまうと、精霊も騙せそうな気がしてくる。
そんな華やかな人の流れの中にいても、騎馬で移動する制服姿の警邏隊の人たちはよく目立った。あちこちにいる。
「エレオノーラ、見て、すごいわね」
コリンナが指し示す先に、ものすご――――――く背が高い人たちがいた。派手な装束、ふわふわと動く手足。何か棒のようなものの上に立ち、棒を持って長い手足を動かしているようだ。
くるりと背の高い人が一人、こちらを向く。
その人が私のほうをじっと見ている。
――何かしら……?
それに見とれてしまったのがいけなかった。ドン、人込みに突き飛ばされて、私は通りに転がり出た。
「あぶない!」
誰かが叫ぶ。はっと顔を上げると、すぐそばに警邏隊の姿が。彼らは騎馬隊である。馬上の隊員が慌てて手綱を引くのが見えたが、間に合わない。
ぶつかる……!
ぎゅっと目を閉じたその時、ものすごい力で私は歩道に連れ戻された。ほとんど引きずられるようなかっこうで、だ。
地面の上を引きずられてしまったことで、ビリッとスカート部分が裂ける音がした。
「ぼうっとしていたらダメだろう!」
怒りをはらんだ男の人の声が降ってくる。
聞き覚えがある声にはっとなって顔を上げると、仮面をつけた男性がこちらを見降ろしている。シャツにスラックスという非常にくだけたかっこうだ。仮面の上にのぞいている髪の毛は黒……癖があって、短い。仮面で影になっているから目の色はわからない。
「あの……」
「そんなところに座っていたら通行人の邪魔になる。立って」
男性が手を差し伸べてくる。思わずその手に自分の手を重ね、立ち上がろうとしたところで、ビリリッとさらに布が避ける音が聞こえた。どうも裂けたスカート部分を踏んだまま立ち上がってしまったらしい。
裂けた布からペチコートが覗く。
私はあわてて裂けた部分をかき寄せた。
恥ずかしい。
仮面をつけていてよかった。私、顔が真っ赤だわ。
「今、もしかして、スカートが裂けたんじゃないのか?」
男性が聞いてくる。音が聞こえたのね。私は頷いた。
それにしても、この人、声が似ている。
アルトウィン様にそっくり。
けれど、口調は全然違う。
髪色も髪型も違うし、第一、国王ともあろうお方がこんなところに一人でいるはずがないから、他人の空似というか、声だけ似ているだけの人なんだろうけれど。
声だけは本当にそっくりで、妙に焦ってしまう。
ああ、だけど、こんなことになるなんて思わなかった。これでは計画どころではない。コリンナを探さなくては。
「スカートが裂けたのが今日でよかったな。いくらでも変装用の衣装を売っている」
「ごめんなさい。私、大きなお金は持ってきていないの」
暗にスカートを買えという男性に、私は首を振った。露店で使えるようにと多めにお小遣いはもらってきているが、服となると、私のお小遣いでは無理だろう。庶民の金銭感覚がわからない私でも、それくらいはわかる。
「俺が引っ張ったせいで破れたんだろう? それくらいは出すさ」
「いいえ、けっこうです。見ず知らずの方にそこまでしていただくことは」
「だけどそのかっこうで歩くつもりか? 下着が見えてるぞ」
彼の指摘に、私は言葉に詰まった。
「……しかたがありません……」
確かに大きく裂けたスカートからは、下のペチコートが覗いている。スカートは大きく破れてしまっており、破れた部分を手で持ってもペチコートは隠せない。
「警戒心が強いな。別に取って食おうなんて思ってない。もしかして仮面祭りは初めて?」
「え、ええ。初めてです」
「それでか。俺はアロイス。君は?」
「私はエレ……、エレイン」
「エレインか。かわいい名前だな。もちろん本名ではないんだろう?」
もちろん?
「ええ……もちろん違います」
「そうそう。仮面をつけている間は別人にならなくてはならない。本名なんて名乗ってはいけない。本当のことも、話してはいけない」
そう言ってアロイスが私の破れたスカート側に立ち、人込みから私を連れ出す。
庇ってくれたんだわ。そんなちょっとした仕草にドキリとする。
アルトウィン様みたい。
そういえば、妃候補になるよりも前、どこかの庭園でのお茶会に呼ばれたことがあった。貴族の子どもたちの顔合わせのような場だったと思う。しかし顔合わせが済んでしまうと、大人たちの社交の場に早変わり、子どもたちは放置された。
私はとても退屈だった。ほかの令嬢たちのようにおとなしくおしゃべりなんてできない。退屈だから庭園を散策していたら、庭木にスカートをひっかけて破いてしまった。
普段からおてんばだった私、人前ではお行儀よくしなさいと言われていたのに、やってしまった。困り果てた私のためにこっそり人を呼んで庭園から連れ出してくださったのは、当時は王太子だったアルトウィン様だった。
そのおかげで私は、大人に怒られずに済んだのだ。
よかったね、と、あとでアルトウィン様に囁かれた時のドキドキを覚えている。
あの頃のアルトウィン様は、今よりももう少し近い感じがした。
いつからだろう、遠くに感じるようになったのは。記憶をたどってみると、妃候補になってからだ、ということに気付く。……やはりコリンナが関係しているのだ。
だめだめ、昔のことなんて思い出している場合ではない。
そういえば、そのコリンナはどこに行ったのかしら。護衛は?
あたりを見回すが、それらしい人物はどこにも見当たらない。
「どうかしたのか?」
アロイスが聞いてくる。
「友達とはぐれてしまったみたいで……」
「そうか。この人込みでは見つけ出すのは至難の業だな。帰りの待ち合わせ、みたいなことはしていないのか?」
「泊まっているお屋敷の」
言いかけて、本当のことを言ってはいけないのだったと思い出す。
「家の名前は覚えているわ」
「ふうん……なら、あとで近くまで送っていこう」
「あとで?」
「こうしよう。そのスカートを俺が買う代わりに、君は少し俺に付き合う。それなら俺に奢らせても罪悪感はないだろう? 俺が君の時間を買い取るようなものだから。俺も友達とはぐれて、一人で祭りを回る羽目になって、寂しかったんだ」
『運命を変えたいのなら、マールバラへお行き』
占い師の言葉が頭の中でこだまする。
『そこでおまえさんは、一人の若者と出会うだろう。彼がおまえさんの運命を変えてくれる』
これは運命? それとも単なる偶然?
知らない人にホイホイついていってはいけないことくらい、私だって知っている。
その時、風向きが変わってふっと甘い匂いが漂ってきた。どこかで嗅いだことがある、と思って記憶をたどり、それがあの占い師の部屋で焚かれていたお香だと思い出す。
何もしなければ、不幸な結婚が待っている。
私は運命を変えるのだ。
そのために、ここまで来たのだ。
こう見えても武門の娘、少しは腕に覚えがある。人通りがあり警邏隊が巡回している場所なら、万が一のことがあっても逃げることはできるだろう。
よし、決めた。
「ええ、いいわ。友達が見つかるまでなら」
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